tetsuya率いるL'Arc~en~Cielのコピ
ーバンド“Like~an~Angel”初ライ
ヴに見た、完璧な遊び心から生まれた
彼にしかできないレクリエーションの

Like~an~Angel "1st LIVE"

2023.5.30 代官山UNIT
2023年4月1日。tetsuyaが自身のSNSで告知した情報は世間を騒つかせた。
【「Like~an~Angel」2023.5.30 1st LIVE “Like~an~Angel” are Vo.xxxx G.xxxx B.tetsuya Dr.xxxx Don’ t miss out!】という限られた情報のアップは、エイプリルフールだったこともあり、それを見た者達を騒つかせる結果となったのだ。
しかし、その翌日、その詳細が発表され、tetsuya率いるL'Arc~en~Cielのコピーバンド“Like~an~Angel”(ライク アン エンジェル) の1stライヴ開催決定ということが分かったのである。本人が在籍するコピーバンドとは前代未聞の構想であるが、常に観客を楽しませたいと企んでいる根っからのエンターテイナーであるtetsuyaらしい発想だと思えば、とても納得のいく話である。
そして迎えた当日2023年5月30日代官山UNIT。
tetsuya以外のメンバーが明かされていない状態であったにも関わらずチケットは即日完売だったこともあり、開演17:00からの1stステージと開演20:30からの2ndステージ共に、ライヴハウスの外は開場を待つ観客達で溢れかえっていたほどだった。
会場に入ると場内は久しぶりに体感するライヴハウスならではの高揚感を煽る光景だった。人数規制の無くなった収容人数100%で埋め尽くされたフロアは、すっかりコロナ前の景色を取り戻していたのだ。
この日は1曲目のみ撮影OKというアナウンスがされていたため、オーディエンスは自らのスマートフォンを掲げ、ライヴの始まりを待っていた。
SEが流れ、メンバーがステージに登場した。告知の段階ではtetsuya以外のメンバーはxxxxで記されており、その正体が明かされていなかったこともあり、オーディエンスはそこで初めてメンバーを知ることとなったのだ。それは会場に来たファンの“お楽しみ”を増やす計らいの一つだったことが伺える。
メンバーはドラム、ギター、ヴォーカルの順に呼び込まれステージへと姿を現した。ドラムは摩天楼オペラのhibiki、ギターはex. ViViDのreno、ヴォーカルはjekyll。
そして、最後にtetsuyaが呼び込まれるとフロアからは大きな歓声が上がった。
jekyll、reno、tetsuya、hibikiがステージに揃い、Like~an~Angelの正真正銘一発目のライヴとなる1stステージの幕が切って落とされた。記念すべき1曲目は「READY STEADY GO」。軽快なドラムのリズムがオーディエンスに火を付ける。tetsuyaはhibikiと目を合わせアイコンタクトを取った後、右手を高く掲げてオーディエンスを煽った。renoの歯切れのいいカッティングのギターが加わり、jekyllが“are you ready?”と煽り、オーディエンスがその声に応え、ドラムが加速し曲は始まっていった。jekyllの声が曲に乗った瞬間、オーディエンスはリズムに乗りながら驚きを隠せない歓声を上げ、その場を騒つかせた。それもそのはず、瞬間的に自らの耳を疑ったほどに驚くほどL'Arc~en~Cielを彷彿させる歌声だったのだ。メロディアスながらも難解な構成で成り立っているL'Arc~en~Cielの楽曲を完璧に歌いこなせる者はそうそういない。しかし、jekyllの歌声は、果てしなく完璧に近い質感を放っていたのだ。
オーディエンスは、tetsuyaが用意してくれて初めて出逢うことになった“Like~an~Angel”と、愛してやまないL'Arc~en~Cielの楽曲に全力で応え、手を挙げ、声を上げた。
虹色の照明とミラーボールが回転し会場を照らす中で届けられた「EXISTENCE」では、jekyllがtetsuyaの肩に手を回して歌った瞬間、フロアからは湧き上がるような歓声が漏れ聞こえた。もちろん、この曲も完璧な質感である。これは只事ではない。“コピーバンド”と聞かされていただけだったこともあり、“tetsuya本人がやるコピーバンドのライヴ”という、お楽しみイベント的な認識で気楽に参加したものの、ここまで度肝を抜かれるとは。
さすが、tetsuya。単なるレクリエーション、単なるサプライズでは終わらせない“やるからには意味がある”説得力のある企てであったことに、改めてtetsuyaらしさを感じた。tetsuya自身、jekyllの声に出逢ったとき、驚きを隠せなかったに違いない。そして、楽しませ好きなtetsuyaは、jekyllの声をヴォーカルとしたL'Arc~en~CielをL'Arc~en~Cielのファンにも聴かせたかったのだろう。とんでもないサプライズだ。
「Pretty girl」といった艶っぽく湿った楽曲も心地よいノリをフロアに流し込み、オーディエンスの体を揺らした。
3曲を届けたところで挟み込まれたのはrenoによるギターソロだった。世代的には随分遡ったルーツを持つrenoは、アルカトラスのギターとしても在籍していたことのあるスティーヴ ヴァイやゲイリー ムーアといった往年のハードロックギタリストから影響を受けた若手のギタリストである。1980年代のハードロック、ヘヴィメタルに影響を受けたL'Arc~en~Cielのギタリストであるkenと近いルーツを持つrenoが放つギターはとてもドラマティックだ。ギターソロでは得意のロングトーンを存分に響かせた泣きのフレーズと速弾きでオーディエンスを唸らせた。
ダークなギターフレーズから繋げられたのは「DAYBREAK'S BELL」。哀愁感の漂うドラマティックなこの曲も、メロディアスながら曲構成が複雑で、曲中に繊細なリレーションも存在するのだが、素晴らしく息の合った展開でオーディエンスを楽曲の世界観に引き込んでいたのだった。
「夏の憂鬱 [time to say good-bye]」が届けられた瞬間にもフロアから大きな歓声が上がった。1995年にリリースされた3枚目のシングル曲だ。楽曲は「さようなら」「Still I'm With You」といった流れで届けられていった。なかなかL'Arc~en~Ciel本体のライヴでは聴けない楽曲の並びとあって、オーディエンスは改めてこの楽曲たちと共に生きた自分たちの人生を重ね、Like~an~Angelが届けてくれているサウンドに高く手を掲げて盛り上がっていたのだった。
中盤に差し込まれたドラムソロでは、hibikiがメタルドラマーらしいどっしりと構えたドラムソロを届け、後半戦へと繋げていった。「I'm so happy」「Ophelia」「Blame」「Sell my Soul」「いばらの涙」と、L'Arc~en~Cielのライヴのセットリストとしては聴くことのできないだろう懐かしい楽曲たちが並べられた流れに、“ドL'(ドエル)=ファンたちが名付けたL'Arc~en~Cielの最上級のファンの名称”たちは、1曲ごとに異なる歓喜を表す大きな歓声を上げて応えていった。自らの人生と共に在った楽曲たちが目の前で高すぎる完成度で再現されていく様に、オーディエンスはすっかり聴き入り、改めてL'Arc~en~Cielというバンドの楽曲の良さと深さを噛み締めていた様子だった。
古い楽曲ながらも、全く時代を感じさせない楽曲の力を証明したこのブロックでは、tetsuyaの存在感も大きくクローズアップされていた様に思う。「I'm so happy」のメインヴォーカルに低音のハモリを絡め、「Ophelia」では蠢く魅惑的なベースフレーズを奏で、「Blame」「Sell my Soul」でも歌うようなマニアックなベースフレーズで低音を華やかに彩り、「いばらの涙」では高い位置で響くギターの音色とtetsuyaが奏でるベースの低音の対比の美しさが改めて際立つ形となって胸に刻まれていった。コピーバンドであったとしても楽曲の良さが際立つというのは、その楽曲の持つ力そのものが強いという証明でもあると言えるだろう。それと同時に、tetsuyaにしか弾くことができない独特かつ滑らかな運指でベースを奏で、時折ネックを自らの左胸に引き寄せた魅せ場を極め、鮮やかな楽曲の中では華麗なターンもキメる“tetsuyaという唯一無二のエンターテイナー”として確立されたプレイスタイルでステージに立つ彼は、L'Arc~en~Cielのリーダーとしても、ベーシストとしても、エンターテイナーとしても、素晴らしい創造力と表現力を発揮する逸材であることも証明されていた様に思う。
tetsuyaの感性と表現者としての実力は、やはり想像以上である。
全てにおいて完璧を極めるtetsuyaの完璧な遊び心から生まれたLike~an~Angelは、彼にしかできないレクリエーションの形だと改めて感じた。
しかしながら、すっかり聴き入っていたのだが、ここまで約1時間8分が経過していた。12曲を届ける中で一度のMCも入れずノンストップで届けられていたのだが、ここでjekyllがMCを取った。
jekyllは“とても素晴らしい特別な時間を設けられたことへの感謝と、32年目を迎えたL'Arc~en~Cielへの敬意と、集まったみんながこの時間を思う存分楽しんでくれたら嬉しい”というメッセージを英語で伝え、慣れない日本語で“まだまだいけるか?”と客席を煽り、「Driver's High」へと繋げた。
誰もが知る国民的ヒット曲でもある「Driver's High」でフロアは更に熱を上げ、本編は「GOOD LUCK MY WAY」で締め括られた。両手を高く挙げ、満面の笑みで一緒に歌い上げていたオーディエンスの幸せそうな顔は、何よりも元気をくれた時間となった。
鳴り止まないアンコールに応え、胸に“Like~an~Angel”のロゴが刻まれた揃いのバンドTシャツを身に着けて再びステージに登場したLike~an~Angel。
ここで初めてtetsuyaがMCを取った。
「ありがとう! 楽しい? みんなの想像の上をいってた? 本当? どれくらい上? 富士山の上? みんないろいろ想像してたでしょ? 誰なのかな? って。ベースを練習してる絵をアップしてるけどさ、実は蓋を開けたら俺がヴォーカルやったって(笑)。ちょっとこのベースのスピーカー見て一瞬“あれ? もしかしてベースtetsuyaじゃないんちゃうの!?”って思わへんかった(笑)?(ラルクとは違う機材なので) でしょ(笑)。みんなラッキーだよ。Like~an~Angelの誕生の瞬間を目撃できたってことは(笑)。久しぶりに聴いた曲とかあったでしょ? 大丈夫? 俺もなんかウルッときちゃって。久しぶりに聴いたよね。俺が久しぶりに演奏するんやから、久しぶりに聴いたでしょ。ね~。じゃあ、またちょっと懐かしい曲やろうかな。ハンカチの用意大丈夫? よし。じゃあ、久しぶりの曲やろうかな」
tetsuyaの言葉から始まったのは「賽は投げられた」。イントロのギターフレーズで客席からは悲鳴にも似た歓喜の声が湧き上がった。少し甘酸っぱさを感じさせる初々しい楽曲に、オーディエンスは飛び跳ねて応えていた。
ラストは「Pieces」。tetsuyaが1999年にこの世に送り出した名曲だ。
オーディエンスは上げた両手を左右にゆっくりと揺らしながら、緩やかな優しさで聴き手を包み込む不朽の名曲に体を委ねていたのだった。
「ありがとう~! まったね~!」
tetsuyaはいつもの挨拶を残しステージを後にした。
“めちゃくちゃ楽しかったね!”“いや、すごかったね~!”“ヤバかったね!”“想像を遥かにこえていた”。喜びと驚きと絶句が混じった感想を交わすファンたちは、tetsuyaのくれた時間を楽しそうに振り返って語り合い、大切そうに持ち帰っていたのだった。
tetsuyaがLike~an~Angelの最初のライヴに5月30日という日を選んでいたのは偶然ではないだろう。5月30日は、1991年に当時活動の拠点となった難波ロケッツでL'Arc~en~Ciel名義での初ライヴを行った日でもあったからだ。
敢えてこの日にtetsuyaがLike~an~Angelを誕生させたのは、L'Arc~en~Ciel愛そのものなのだと思う。
なかなか稼働しないL'Arc~en~Cielを、リーダーであるtetsuyaがLike~an~Angelとして広げていくことで、まだ本物を見たことのない世代へL'Arc~en~Cielを繋げていけるきっかけにもなると思うのだ。L'Arc~en~Cielを愛してやまないtetsuyaらしい発想と愛情の深さに、胸が熱くなった。
そんなL'Arc~en~Ciel愛と最高のレクリエーションであるLike~an~Angelは、10月7日に東京 日比谷野外大音楽堂で『PARALLEL WORLD 2023』と題したライヴを行うという。
百聞は一見に如かず。
“え~。コピーバンドでしょ~”と思わず、とにかく1度体感してみて欲しい。
通称ドL'も、L'Arc~en~Cielファンも確実に唸らす、とにかく手放しで楽しめる想像を超えた空間を体感できることを約束する。
新型コロナウイルス感染症蔓延を受け、その後ライヴから足が遠のいてしまった人たちも、きっとまた生で音を体感する喜びを再認識できる時間になるに違いない。このL'Arc~en~Ciel愛と最高のレクリエーション、Like~an~Angelが、世界を笑顔で包み込んでくれますように――。

取材・文=武市尚子 撮影=緒車寿一

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