L→R アフロ(MC)、UK(Gu)

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【MOROHA インタビュー】
根拠のある曲がしっかりと揃った
結成15周年を飾る5作目のアルバム

今年で結成15周年を迎えるMOROHAが5thアルバム『MOROHA V』をリリースした。アフロ(MC)の家庭環境を赤裸々に描いたミッドナンバー「ネクター」、コロナ禍における葛藤が渦巻く「主題歌」、大成功を収めた昨年の日本武道館公演前に完成させた渾身の「六文銭」など、濃厚な楽曲が並ぶ本作について語ってもらった。

「ネクター」では伝わりやすくはない
“愛憎”を書いた

結成15周年と聞いて、もうそんなに経ったのかと驚きました。

アフロ
びっくりしますよね! 俺らも結成の時期はそこまで細かく把握してないんだけど。
UK
“MOROHA”という名前をつけた日がそうなのか、もしくは最初にやったライヴの日を結成とするのか…みたいなね。
アフロ
覚えているのは、町田のファミリーマートの前で酒を呑みながら決めたことです。“MOROHA”にしようって。

MOROHAってアニバーサリーを手放しで喜ぶタイプではないですよね。

アフロ
節目はぶっちゃけ感じていないです。でも、周年って各所からご祝儀がいただけるようなムードがあるじゃないですか。それをフックにスタッフも仕事がしやすくなるし。だったら、俺ら的には“15周年と謳ってもいいよ”っていうくらい。とはいえ、祝ってもらえるのはシンプルに嬉しいですよ。このタイミングでこそ会いに来てくれる人もいるので。
UK
“15年もやってるんだな”っていうのは思いました。10周年の頃はあまりにも苦悩の日々が長かったせいか、“まだそんなもんなのか”みたいな感じだったんですけどね。

コロナ禍や日本武道館でのワンマンライヴ(2022年2月11日)を通して、自分たちが変わったことはありますか?

アフロ
12年前の東日本大震災の時、俺らは何もできなかったんですよ。「今、偽善者の先頭で」という曲をチャリティーでリリースはしたけど、体感としては自分のことでいっぱいいっぱいで。東北へ向かったBRAHMANのTOSHI-LOWさんやELLEGARDENの細美武士さんの背中を見せられただけだった。その後悔がずっと引っかかっていて、次にもし大変な出来事が起こったら必ず早く動きたいと思っていたんですよね。なので、コロナ禍が始まってすぐに曲を配信したり、『日程未定、開催確定TOUR』(困窮を極めるライヴハウスにMOROHAが会場費を先払いし、まずは現状を打破してもらおうと考えて組まれたツアー)を決めたり、過去の失敗を活かして今回は恐れず積極的に関与できました。
UK
俺はこの1〜2年で人として変われた気がします。鼓舞してくれる音楽と言ってもらえるMOROHAでも、コロナ禍で何もできなかった時間はもちろんあって。だけど、そこで過ごした時間がめっちゃ尊かったんですよね。ただ休んでいたわけじゃなくて、自分と向き合えたから。そうとらえられて、物事をあまりネガティブに考えなくなったというか。武道館でのライヴが終わった瞬間、くすぶったことも含めて良かったと感じたんです。全ては無駄じゃなかったんだなって。

内面が強くなった?

UK
もともと強いほうではあるんですけど、コロナ禍を経てさらに強くなれたと思います。
アフロ
UKは強いよね。ライヴでギターをミスッても、あまり引きずったりしないんですよ。
UK
そうだね(笑)。反省はするんですけど、その日で忘れます!
アフロ
この姿勢が俺はすごく心強くて、いつも隣で学んでます。前向きになるために、本気になるために必要なのは、たぶん失敗を引きずらないでスパッと忘れることなんだろうなと。落ち込むという行為は、自分に対して一生懸命やっている感が出るだけだから寒々しいんです。日々トライ&エラーを繰り返しながら、その間違いに気づいたりしながら、どんなメンタルでライヴに挑んだらいいのかを掴んできましたね。

アルバム収録曲の話も聞かせてください。3月に配信もされた「ネクター」は、アフロさんの複雑な家庭環境を綴った衝撃的な曲でした。

アフロ
本来はね、直球なノリのほうが往々にして求心力が生まれるものなんですよ。例えば、政治家がマニフェストを叫ぶ時もそうするでしょ? 音楽の作詞も、特にヒップホップはそっちの方向に行きがちで、単純明快かつパワフルな手法が伝わりやすい。その考えは俺の中にも当然あるんですけど、「ネクター」では伝わりやすくはない“愛憎”を書きました。この入り混じった感情が聴き手にちゃんと響いたのなら、MOROHAにとってネクストレベルの曲になると思いますね。じいちゃんが亡くなったことをきっかけに、こういうテーマに触れてみたくなったんです。自分の気持ちに決着をつけるためにも。

魚乃目三太さんの漫画をフィーチャーしたMVで「ネクター」を聴いた時は、1番だけの印象で言うと《それでも家族》の部分がちょっと受け入れがたい感じも正直言ってあって。というのも、最初はMVに出てくる男の子がアフロさんのことだとすぐに理解できず、架空の家族のストーリーと勘違いしてしまっていたから。だとすると、そんな意図はなくても、DV的な行為を無責任に肯定しているようにも取れるじゃないですか。

アフロ
はい。自分でもきわどいことを歌っていると思います。

でも、2番の《俺》《自分》という言い回しでアフロさんの物語であり、実体験だったんだと伝わって、覚悟や責任が伴った視点で聴くと、最初の印象が一気に反転しました。本人の話で本人がリアルにこう思っているのなら、こっちも受け止め方がまったく変わってくるし、むしろ人間の感情の複雑さ、時に矛盾さえしてしまう部分を見事に表現した名曲だなって。

アフロ
めっちゃ嬉しいです。言ってくれたこと、俺もすげえ共感しますよ。自分の話だと納得できて、架空の話だとなんか受け入れがたいってのは確かにある。その“許せる/許せない”“理解できる/理解できない”みたいな事柄を表現するのって本当に難しいですね。例えば、さだまさしさんの「償い」もさださんご本人の話ではなくて、あの方が第三者として書いた、それでいて加害者に寄り添う面が見える曲なので、聴いていてものすごく考えさせられます。
UK
いい曲かそうじゃない曲かは制作段階でパッと実感することが多いんですけど、「ネクター」はすぐにいい曲だと思いました。“いい曲”とあえて言いきります。歌詞も“これしかないでしょ!”というジャストな言葉が当てはまったし、ギターも感情が入り混じったメロディーにできたし。ちょうど「エリザベス」とか「花向」とかやさしい曲を同時期にいっぱい作っていて、やさしいバフがかかっていたのかもしれないです(笑)。

“ネクター”というタイトルになった理由は?

アフロ
曲中でも歌っているとおり、うちのじいちゃんはめちゃめちゃ酒好きだったから、病気で手の施しようがなくなっちゃって。お医者さんも“正直言って、できることはもうないので、食べたいもの、飲みたいものをあげてください”となった時に、じいちゃんが欲しがったのがネクターだったんです。湿っぽい話なんだけど、あんなに暴れてきた人が最期に酒じゃなくて甘い飲みものを望むのかっていう。それがやけに印象的でね。

この曲に対するご家族の反応も気になります。

アフロ
家族の恥を曝すような曲だけに、最初は姉ちゃんに“出すな!”と言われましたよ。とはいえ、俺はこれまでも家族の曲は歌ってきて、マイナスな内容を書いた途端にそうやって引っ込めちゃうと、“自分の仕事って何なんだ?”となるじゃないですか。なので、“親父と母ちゃんに聴かせてみていい?”と説得して、最終的にOKをもらった感じです。歌詞で相当ディスった親父も深く頷きながら、“もっと酷い想いをさせてきた自覚があるから、このくらいなんでもないよ。今後の生き様でちゃんと更新していく。死ぬ間際にネクターを飲みたがったことは親族もみんな知っているし、じいちゃんへの愛情が伝わるし、家族全員がしっかりつながれるこのタイトルなら出していいぞ”と言ってくれました。
L→R アフロ(MC)、UK(Gu)
アルバム『MOROHA V』

OKMusic編集部

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