美空ひばり「愛燦燦」歌詞の意味を考
察！人生ってどんなもの？

美空ひばりの代表的名曲を徹底解釈！

▲美空ひばり-愛燦燦【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

昭和の日本を代表する歌手・美空ひばりがデビュー40周年と49歳の誕生日を迎えた1986年5月29日にリリースされた名曲『愛燦燦』。

美空ひばりが自身の人生を投影したシングルというイメージが強いかもしれませんが、実は元々は味の素のCMソングでした。

「家族愛」がテーマの映像に合わせたCMソングの制作を依頼されたシンガーソングライターの小椋佳が作詞作曲を担当。

当初のCMにはクレジットもなく歌唱しているのが美空ひばりと気づかなかった視聴者も多かったそうですが、彼女が自身の歌声と表現力を持って楽曲に命を吹き込んだことにより、代表曲のひとつに挙げられるほどの人気を獲得してきました。

なぜこれほどまでに人々の心を惹きつけるのか、改めてこの名曲の歌詞に込められた意味を考察していきましょう。

愛燦燦 歌詞 「美空ひばり」
https://utaten.com/lyric/nm20041043

この楽曲では誰の人生にも起こり得る3つの状況を天気に例えて描いています。

1番で出てくるのは「雨」です。

「潸々」という言葉は「雨が降るさま」を表すと共に「涙をさめざめと流すさま」を表すため、主人公が降り続く雨のようにしきりに涙を流すほど悲しい状況に陥っていると解釈できます。

「わずかばかりの運の悪さを恨んだりして」のフレーズを見ると、その悲しみは避けることが可能だったようにも思えますし、運が悪い自分には避けようもないことだったと考えているようにも思えます。

どちらにせよ、すでに自分の身に降りかかった悲しみは運命として受け止めるしかありません。

誰もがそうやってつらい状況を耐え忍んでいるので「人は哀しい 哀しいものですね」と歌っています。

逆境を乗り越えて愛される喜びを知る

愛燦燦 歌詞 「美空ひばり」
https://utaten.com/lyric/nm20041043

2番では「風」が吹き荒れている様子が描かれています。

「散々」は「物事の程度が著しいさま」を表すので、激しい突風が襲ってくるような逆境に立たされているということでしょう。

嵐の中では持ち物を強く握っていないと何もかも吹き飛ばされてしまうものです。

主人公は逆境の中で「思いどおりにならない夢」を失くしてしまったようです。

苦しい状況に打ちのめされると、大切な夢や目標さえ失ってしまう人の弱さが「かよわい」と表現されています。

愛燦燦 歌詞 「美空ひばり」
https://utaten.com/lyric/nm20041043

3番で登場するのがタイトルの「愛燦燦」に繋がるフレーズです。

「燦々」は「太陽などが明るく光り輝くさま」を指す言葉で、温かく降り注ぐ太陽の光のような愛をその身に受けていることが分かります。

涙は悲しい時だけではなく、幸せを感じた時にも流れます。

悲しい経験や逆境を乗り越えてきた主人公が人から愛される喜びを知り、誰にも知られないように「心秘そかな嬉し涙」をこっそり流していると思うと心が温かくなりますね。

これは人は独りでは生きられず、人から愛されることによって困難さえ乗り越えられる心の強さを得るということを意味しているのかもしれません。

「人はかわいい」という言葉には、そんな人の純粋で無垢な心を愛おしく想う気持ちが示されているのではないでしょうか。

「優しく睫毛に憩う」の意味とは？

愛燦燦 歌詞 「美空ひばり」
https://utaten.com/lyric/nm20041043

サビで歌われる「過去達は優しく睫毛に憩う」というフレーズが気になった方は少なくないでしょう。

まず「憩う」は「休息する・くつろぐ」といった意味があります。

「過去達」と表現されるのは過去の様々な種類の記憶のことで、良いことも悪いことも含まれていると考えられます。

それらの記憶が睫毛で“くつろぐ”とはどういう状態なのでしょうか？

印象に残っている記憶のことを「瞼に焼きつく」と言い表すことがありますよね。

そのことをふまえるなら、睫毛は瞼よりも目から離れているため、それほど強烈に記憶されてはいないもののずっと目の前に漂って心をくすぐり続けているような印象を受けます。

時間が経てばつらかった記憶すら懐かしく思い出されることを考えると、確かに「人生って不思議なものですね」の言葉の通りだと感じます。

全ての思い出が主人公の心を優しく包み込んでいる様子を描いているようです。

愛燦燦 歌詞 「美空ひばり」
https://utaten.com/lyric/nm20041043

「未来達は人待ち顔してほほえむ」のフレーズからも幸せな雰囲気が感じ取れるでしょう。

「人待ち顔」は文字通り「人を待っているような顔つき」のことですが、待ち合わせている人がやって来るのを待っている時の顔には大抵楽しさや嬉しさが滲んでいるものです。

同じように今がどんなに大変な状況で泣いたり絶望したりするとしても、未来の日々は温かな微笑みでその人の訪れを待っています。

大変なこともあるけれど「人生って嬉しいもの」だから、諦めることなく自分の人生を歩んでいこうという前向きなメッセージが読み取れます。

人生って素晴らしい！
『愛燦燦』の短い歌詞の中には、深い人間ドラマが描かれていました。

そして穏やかな音楽と美空ひばりの語りかけるような温かい歌声により、全ての人の心に歌詞が沁み込み共感と慰めを得られる楽曲となっていますよね。

人間関係がより複雑になっている現代だからこそじっくり聴きたい名曲です。