曲はロサンゼルス時代の生活を描きつつ、恋人との苦い別れを歌ったもの。この曲のすごいところは他人がカバーし、それがことごとく素晴らしいこと。PP&Mらのカバー以降も、キングストン・トリオ、ボブ・ディラン(『Self Portrait』(’70)でカバー)らのフォーク組、それ以外にもあの帝王エルヴィス・プレスリーまでが取り上げ、これもヒットしている。近年でもロック界からニール・ヤング、ポール・ウェラーやビリー・ブラッグ&ジョー・ヘンリーといった人がカバーするなど、世紀を越えた人気曲なのだから驚かされる。中でもブルーグラス界きっての超絶ギタリスト&シンガーとして日本でも信奉者が多いトニー・ライスは「Early Morning Rain」はもとより、自分のアルバムでは必ずライトフットの曲をカバーし、ついには全曲ライトフットの作品で固めた名盤『Tony Rice Sings
Gordon Lightfoot』も発表するほど、ライトフットに惚れ込んでいる。歌唱スタイルまでライトフットに似ている。意識していたのかもしれない。
歌詞に対してディランが絶賛していたわけだが、メロディーセンスも褒めるべきだろう。
作曲方法とか、本人が発言したものなど見聞きしたこともないのでわからないが、彼はLAで音楽学校(ウエストレイク音楽院)で学んだあと、しばらく採譜の仕事についていたという経歴がある。ということは、多くのフォークシンガーが(昔も今も)譜面は読めず、コード感覚で曲を作っていくという例が多いのに対し、もしかすると彼はきちんと譜面を起こしていたのかもしれない。その精緻なメロディーライン、バックバンドを従えた録音のアレンジ等から、そんなことを思ったりする。
ディランがカバーしたライトフットの「SHADOWS」(’82発売のアルバムタイトル・チューン)のリンクを貼ってみたが、この曲や本盤にも収録されている初期の「If You Could Read MY Mind」のような巧みなメロディー、それでいて瑞々しいほどにシンプルかつフォークらしさを失わない曲を書けてしまうライトフットの才能に、ディランならずとも唸らされてしまう。まったく、カナダというだけでなく、音楽界は惜しい人を失ったものだ。ライヴ盤も何作か残しているので、クオリティの高い彼のパフォーマーとしての姿もぜひ追体験してみることをおすすめする。