内田 彩

内田 彩

【内田 彩 インタビュー】
世界が素敵な方向に向かって、
みんなとまた新しい思い出を作れたら

内田 彩にとって約1年半振りとなるシングル「Preview」。収録曲の話題はもちろん、アーティストの自分と向き合って、普段から考えすぎるほどに考えているということ、さらにはアーティストとして将来的になりたい理想像など、ファンであれば誰もが気になるだろう話題をぶつけてみた。今年11月で音楽活動9周年を迎える彼女が今、プレビューする未来予想図とは?

声の使い分けは
とても気を遣っている

新曲「Preview」は自身もシルク・フォン・サンタナ役で出演するTVアニメ『転生貴族の異世界冒険録〜自重を知らない神々の使徒〜』OPテーマに起用されています。歌唱にあたりアニメの物語に寄り添う中で、どんなことを考えましたか?

このアニメでは主人公のカイン・フォン・シルフォード(CV:南條愛乃)が、とある事故で亡くなってしまい、異世界に転生して赤ちゃんから再び育っていくんです。今作の“Preview”というタイトルのとおり、人生を少し早回しで追体験するような感覚なのですが、この物語を自分事に置き換えてみたところ…私も明日はどうなるか分からないなって(笑)。

インタビュー冒頭から怖い発言が(笑)。

私の場合、歌やライヴの場があるので、ファンのみなさんが生き様や存在そのものを覚えてくれていると思うのですが、カインは転生前の境遇もあって、誰の記憶にも残らないままなんだと思うと悲しくなってしまって。劇中ではそんな部分もポップに描きつつ、転生後にはたくさんのヒロインたちから可愛がられるので、まだ報われはするんですけどね。

それは何よりですね。レコーディングの際に歌声のニュアンスについて意識したポイントは?

私にとって久しぶりとなるアニメのOPテーマなんですよね。作品の顔にもなりますし、全体的にコメディータッチな内容に合わせて楽曲も明るくキラキラとした曲調だったので、プレッシャーを感じつつ…思っていたよりも明るくならなかったです!(笑)

とてつもない振りオチですね(笑)。

歌い出しの音が低かったので、クールな雰囲気になりましたね。ただ、私の年齢やイメージを踏まえると、結果的にはうまく仕上がったのかも。毎回、レコーディングでは最初のキー合わせに難航して1時間くらいかかってしまうんです。

ひょっとすると内田さんは感覚派ではなく、思考派なアーティストですか?

楽曲を表現する上でとても考えちゃうんです! 今回で言えば、楽曲が流れるオープニング映像。レコーディングの時は映像がなかったので、ヒロインがひとりずつ流れるかたちで登場したり、バトルシーンもあるのかなと想像して。あとは、シルク以外のキャラクターでもオーディションを受けていたので、自分が演じる役と「Preview」を歌う声が似ないほうがいいかなとか。そのあたりの声の使い分けはとても気を遣っていますね。こんなふうに普段から余計なことばかり考えちゃうんです。もちろん、作品を完成させるために大切な過程なんですけど。

そうした時間があることで、ただ譜面どおりにうまく歌うという次元を超え、内田さんの感情のこもった“表現”としての歌があるんだと思いますよ。

そう感じてもらえていたら嬉しいです。今でこそ“これでいい”と理解しているのですが、“私のアーティスト性って何だろう?”って考えます。声優さんが音楽活動をする上で、楽曲ごとに違う表情を楽しめるのは素敵だと思うんです。ただ、例えば街中で知らない曲が流れていても、“この人の歌声だ”と気づいてもらえる特徴が欲しいなって。そのあたりも考えすぎてしまうし、音楽って本当に難しいですよね。

私個人としては、内田さんの音楽活動には明確な特徴があると思いますよ。話は戻りますが、「Preview」の歌詞で特に印象的なフレーズがあれば教えてください。

サビの《ひとりがふたりになって みんなになって 重なり合う声》です。アニメの登場人物たちにも、私自身にも重なる歌詞だと思います。それこそ久しぶりの新曲だし、コロナ禍で予定していたライヴが中止になるなど、私もファンのみなさんと一緒で寂しさや焦りを感じていた時期があったんです。なので、そうした暗い時間を抜けた先で、「Preview」を歌って明るい気持ちになれたらいいな。

この数年間が反映されているような歌だと。

世界が少しずつ素敵な方向に向かって、みんなとまた新しい思い出を作れたら…そんな気持ちが歌声に強く出ているかもしれないです。

続いてはカップリング曲「Endless roll」について。こちらは率直に感想を伝えさせてください。内田さんの音楽活動、終わっちゃうんですか!?

あははは。歌詞にも《エンドロールに》とあるくらいですからね。もちろん、私の音楽活動は終わらないですよ。でも、確かに同じような気持ちだったのかな? 私自身も物語のエンドロールに流れるような切なさや寂しさ、思い出を振り返った時に感じる成長、最後に置いていく感謝の雰囲気が出せるように意識しました。なので、終盤に向けて少しずつ笑顔のニュアンスを含んだ歌声にしています。

「Preview」とはまた違った笑顔ですよね。

そうですね。「Pale Blue」(2021年6月発表のシングル)のように、大人っぽく盛り上がりきらないようにしたので、「Preview」と合わせて良い塩梅のシングルにしてみました。

歌詞の内容はまるで走馬灯のようです。

レコーディングでは実際にこれまでのライヴや声優としての出演作品を思い浮かべたり、スタッフのみなさんと一緒に食事会で酔っ払った思い出が蘇ってきたりしました(笑)。

この曲でも内田さんにとって印象的なフレーズが気になります。

《振り返れば 愛おしくなる/巡り会えた奇跡 その一つ一つに/いつかありがとうを 贈らせて》ですね。自分がお姉さんになると、未来に向かうよりも過去の素敵な思い出、人生を振り返りがちになるもので。だからこそ、歌い方もいい意味で少し重くなっちゃったかな?

それだけメッセージが深いということです。他にも《二度と忘れたくない瞬間や/忘れたくても忘れられないこと》というフレーズを、音楽活動に当てはめてそれぞれ考えてみると?

ライヴ中にステージから落ちたことですかね(笑)。

2017年10月に開催した『AYA UCHIDA LIVE TOUR 2017 ICECREAM GIRL』のことですね。

自戒を込めて、忘れたいけど、忘れちゃいけない! あとは、2015年5月の『AYA UCHIDA 1st SOLO LIVE 2015「アップルミント Baby, Are you ready to go?」』で、「Breezin'」の歌詞が頭から全て飛んだ瞬間。ステージの上でもう半泣きでした。でも、忘れたくないことはたくさんあっても、忘れたいことは多くはないですね。

それでは忘れたくないことは?

30歳の誕生日にスタッフさんからサプライズでお祝いをしてもらったこと。当日は大阪でイベントがあったのですが、駅の改札やタクシー乗り場、途中で立ち寄ったお店など、全ての場所でスタッフさんがひとり、またひとりと姿を現すんです。

まるでフラッシュモブのような。

本当にそうですね!

先ほど話題に挙がった1stライヴでは、内田さんが手にはめたパンダのパペットをマイクと間違えるという事件もありました。

確かにありましたね! その事件は風化されぬよう、スタッフさんが缶バッジとしてグッズ化していたな。あれも一生残るのか~(笑)。

当時の会場だった東京の五反田ゆうぽうとホールも数年前に閉館してしまいました。内田さんの活動も、それほど長い歴史を持っているということですね。

そうですね。悲しいけれども、時間の流れを感じます。
内田 彩
シングル「Preview」【限定盤】(CD+Blu-ray)
シングル「Preview」【通常盤】(CD)

OKMusic編集部

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