After the Rain 長い冬が明けて届け
られた春の音ーー約4年ぶりの有観客
ライブ・さいたまスーパーアリーナ公
演をレポート

After the Rain Tour 2023 - 春音 -

2023.4.30 さいたまスーパーアリーナ(スタジアムモード)
After the Rainがライブツアー『After the Rain Tour 2023 - 春音 -』の初日公演を4月30日、さいたまスーパーアリーナで開催した。同会場を皮切りに、Zepp Haneda、Zepp Namba、Zepp DiverCityの全4会場をまわるこのツアーは、2019年8月に富士急ハイランド・コニファーフォレストで行ったワンマンライブ以来、約4年ぶりの有観客ライブ。スタジアムモードで実施された初日公演は、もともと浦島坂田船が同会場を2日間抑えていたものの、そのうち1日をAfter the Rainに譲るという提案から実現したもの。また、このツアーから観客の声出しが解禁されたこともあり、会場には大勢のファンが駆けつけた。
定刻を過ぎ場内が暗転すると、ステージ後方の巨大スクリーンにオープニング映像が上映される。これに続いてスクリーンを通じてカウントダウンが始まると、最後に黒いコートを纏ったそらるまふまふが登場。そのまま「セカイシックに少年少女」から勢いよくライブをスタートさせると、キャッチーなメロディに乗せて奏でられる美しいハーモニーと個性の異なる2人の歌声によって、会場は一瞬にして興奮のるつぼと化す。その流れから「アイスクリームコンプレックス」へと続くと、客席からは悲鳴にも似た歓声が湧き起こり、白&青のペンライトで染め上げられ客席は大きなうねりを生み出すことに。オーディエンスは開演早々、クライマックスにも匹敵する盛り上がりでAfter the Rainの久しぶりの有観客ライブを大歓迎した。
After the Rain
最初のMCではそらるが「最高なんだが。気持ち良すぎる!」と告げると、客席からは再び歓喜の声が湧く。そして、「(まふまふの)目が潤んでいるんですけど、どうした?」と指摘すると、これを受けてまふまふが「バカ緊張するんですけど」と本音を吐露。続けて、「久しぶりですね。僕ね、ソロはお休み中なんですけど、After the Rainとそれを応援してくれる皆様のおかげでこうしてまたステージに上がってくることができまして……本当にありがとう!」と感謝の言葉を伝えていく。
After the Rain
2人の和やかなトークを経てライブに戻ると、ギターを抱えた2人が「負け犬ドライブ」や「10数年前の僕たちへ」を筆頭にロック色の強い楽曲を連発。ステージ前方に炎が吹き上がる演出を交えつつ、激しいギターサウンドと魅力的な2人のボーカルが独特の世界を作り上げていく。また、この日のために用意された未発表新曲「ナイトクローラー」では、まふまふが激しく奏でるギターに乗せてそらるが艶やかな歌声を響かせ、スリリングなバンドサウンドと相まって場内の熱量は急加速していった。
そらる
まふまふ
続くMCパートでは、そらるがツアータイトルにある『春音』に触れ、「長い長い冬(=コロナ禍)が明けて、季節的にも暖かくなってきたし、ライブだったり自分たちの活動も長い冬が明けて、春の音をみんなに届けたいという思いがあって、付けさせてもらいました」と理由を明かす一幕も。その後、「ここからはみんなが聴きたいと思ってくれている、かもしれないなって曲を中心に」と告げると、「恋の始まる方程式」からライブを再開させる。まふまふが曲名をコールした途端に、客席から喜びの声が湧き起こったこの曲を筆頭に、「モア」や「アイスリープウェル」「四季折々に揺蕩いて」と緩急に富んだ楽曲が繰り出され、カラフルな世界観が演出されていく。
After the Rain
メンバー紹介を交えた「コンティニュアム」のバンドセッションを経て、続く「1・2・3」では白基調の衣装に着替えたそらる&まふまふが登場。アリーナ中央へと延びた花道を歩きながらセンターステージにたどり着くと、フロアのボルテージは最高潮に達する。さらに、軽快なポップチューン「ネバーエンディングリバーシ」に続いて、ボカロの定番曲「脱法ロック」では2人がクレーンに乗って会場上空を回遊。まふまふが片足を柵に乗せながら歌う一方で、高所恐怖症のそらるがその場にへたり込みながら歌唱する一幕も。さらに、2人は王道ボカロ曲「ロキ」を繰り出すと客席の熱狂ぶりに応えるように、弾けたアクションでこの曲を歌って見せた。

そらる
まふまふ

この勢いのまま、ライブは終盤戦へと突入。和テイストの「折り紙と百景」で情熱的なボーカルを響かせたかと思えば、エモーショナルさが際立つ「夕刻、夢ト見紛ウ」ではクライマックスへ向けて熱量を高め続ける。そして、ドラマチックなアレンジが施された「桜花ニ月夜ト袖シグレ」とともに、ライブはエンディングを一旦迎えた。
オーディエンスのクラップ&コールに応えるように、「世界を変えるひとつのノウハウ」にてアンコールが始まると、ステージ下手からトロッコに乗ったそらる&まふまふが登場。この曲と、続く「絶対よい子のエトセトラ」を使って2人はアリーナを一周し、スタンド席から声援を送るファンに極上の歌声と最高の笑顔を振り撒き続けた。
After the Rain
バンドメンバーと観客との記念撮影を経て、この日のライブを振り返る2人。序盤は緊張を隠せなかったまふまふだったが、「緊張が解けたのは……「モア」あたり?」と口にすると、すかさずそらるから「遅っ!」とのツッコミが。そんな和気藹々とした空気の中、最後にそらるが「このあと(Zepp会場での)ツアーもありますし、また会いましょう。今日はありがとう!」と感謝を口にして、まふまふの奏でるギターとともに「テレストリアル」を披露する。息の合ったハーモニーで会場にピースフルな空気を充満させると、最後は「彗星列車のベルが鳴る」を観客にプレゼント。まふまふが「みんな、最高だったぜ。ありがとーっ!」と叫ぶと、2人はたくましさの中に繊細さも感じ取れる唯一無二の歌声を客席に届け、約4年ぶりの有観客ライブを大成功のうちに終了させた。
After the Rain

文=西廣智一
撮影=小松陽祐[ODD JOB] / 堀卓朗[ELENORE] / 加藤千絵 [CAPS] / 笠原千聖[cielkocka]

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