若山詩音と安済知佳が初めて掛け合っ
た「SSSS.DYNAZENON」 「グリッドマ
ン ユニバース」には「なるほど!」
しかない

(c)円谷プロ(c)2023 TRIGGER・雨宮哲/「劇場版グリッドマンユニバース」製作委員会 「SSSS.GRIDMAN」と「SSSS.DYNAZENON」の世界観がクロスオーバーする劇場版「グリッドマン ユニバース」が、いよいよ3月24日から公開される。南夢芽役の若山詩音と飛鳥川ちせ役の安済知佳は、「アニメハックTV」第21回では息のあったトークと、ゲームへの振り切った挑戦で視聴者をわかせてくれた。2人が初めて掛け合った「SSSS.DYNAZENON」、台本を読んで「なるほど!」と感嘆したという「グリッドマン ユニバース」、お互いの好きなところについて、ざっくばらんに話してもらった。(取材・構成:五所光太郎/アニメハック編集部)
――「SSSS.DYNAZENON」のテープオーディションでは、キャラクターのセリフのほかにフリートークと一人芝居があったそうですね。
安済:はい。受けたいキャラクターのセリフとは別に、フリートーク1本と、指定されたシチュエーションの一人芝居を送ってくださいというものでした。たしか私は、ちせと香乃(※南香乃。夢芽の姉)のテープをだして、スタジオではフリートークなどはない普通のかたちでやりました。
 うちの母方の名字は榎木なのですが、榎木家に伝わるものもらいを治すおまじないというのを母が知っていたんですね。だったら榎木淳弥くんの家系でも絶対知られていると思って(編注:安済さんと榎木さんは従兄妹の間柄)、榎木くんに聞いたら「いや、知らんわそれ」と言われて、「なんで知らないの、榎木なのに」と言った翌日に榎木くんがものもらいになったという謎のフリートークをして。
若山:(笑いがこらえきれずに)何度聞いても面白い(笑)
安済:榎木くんが「SSSS.DYNAZENON」のオーディションをうけていることすら知らず、直近で面白かった話がそれしかなくて(笑)
――フリートークは、役が話しているという前提のものだったのでしょうか。
安済:いえ、安済知佳のフリートークです。一人芝居のほうもキャラクターでやってくださいではなくシチュエーションのみが指定されていて、役者ぞれぞれの感性で自由に演じてくださいというものでした。
――フリートークで名前をだした榎木さんとガウマ隊のメンバーで共演することになったのは、すごい偶然ですね。
安済:たまたまなんですけど、(麻中)蓬役に榎木くんの名前があったのは笑ってしまいました。個人的にちせのような中学生ぐらいの若い女の子をそれまで演じていなかったので、「SSSS.DYNAZENON」ではちょっと挑戦の意味でテープをださせてもらったところがあったんです。正直スタジオに通る可能性があるのは香乃のほうかなという気持ちがあったので、スタジオに通ったのはすごくうれしくて気合いが入りましたし、合格したときは本当にうれしかったです。
――若山さんはテープオーディションのフリートークで、どんなことを話されたのでしょうか。
若山:とても印象深いテープオーディションでした。私は自分の信念的なことをちらっと話したあと、ギターを弾きながら歌を歌いまして。
――「空の青さを知る人よ」で相生あおい役を演じたときにベースが弾けるエピソードを話されていましたが、ギターも弾けるのですね。
若山:ギターもベースもほんとにちょっとだけで、コードを弾くことしかできないんですけども――。
安済:すごい。
若山:そのときに歌った曲が監督的にけっこうヒットだったらしく、あとで聞いてあの選曲にしてよかったなと思いました。
――ちなみに、どんな曲を歌ったのでしょうか。
若山:あいみょんさんの「貴方解剖純愛歌 ~死ね~」という大変こわい曲で、そのときは夢芽っぽいなと思って歌いました。私はテープのときは夢芽だけで、スタジオでちせもやってくださいと言われました。
安済:あっ、私そういえば、夢芽(のテープ)もだしたな。
若山:そういえば、夢芽もうけたと言っていたような気がします。
安済:話さえぎっちゃってすみません。今、夢芽の「なんで、蓬くんが泣くの」ってセリフを言った記憶がばあっとでてきました。欲張って3役もだしてたんですね……ああそうだ、思い出した。私、「SSSS.GRIDMAN」のオーディションもうけているんですよ。
若山:えっ、初耳。
安済:その後、上田(麗奈)ちゃん(※新条アカネ役)や斉藤壮馬くん(※内海将役)たちから「めちゃくちゃいい現場だった」「楽しい」って話を聞いていたので、「SSSS.DYNAZENON」では絶対にやりたいって思っていたんです。とにかく引っかかってほしいという気持ちで、3役もだしていたのかもしれません。
 ちせでスタジオにいったとき、事前に監督から「声は幼くしなくていいです」と言われて、「やった!」と思ったのもよく覚えています。声色ではなく芝居で幼さを表現するように心がけて、収録では周りとの掛け合いで芝居をつくっていけました。あと、ちせは背が小さいので、収録ではマイクを見上げるように意識してしゃべっていた記憶もあります。
――オーディションの前に、関連作品として「SSSS.GRIDMAN」をご覧になったのではないかと思います。基本的にバトルシーン以外でBGMをつけない試みと、キャラクターたちのナチュラルな会話が印象的でした。
若山:すごく生っぽいといいますか、今まで身につけてきたものを一回全部脱ぎ捨てて、自分の延長線上にある“生身”でお芝居されているような雰囲気を感じて、素敵だなあと思いました。夢芽をつくるうえでも会話感などはそれに近づけようと、テープ録りでは参考にさせてもらったところがあります。
安済:うかってから見ようと思っていて、オーディションのときには申し訳ないのですが見ていませんでした。ちせ役がきまってから見たら、それはもうとっても面白くて、たしか一気見したはずで、斉藤壮馬くんに「めちゃくちゃ面白いね」と話した記憶があります。
 キャストの皆さんの会話感はもちろん、作中の時の流れ方が独特というか、ファンタジーとリアルが混ざりあう絶妙なバランスが楽しくて、見ていて気持ちがいいなと、のめりこみながら見た記憶があります。これまで特撮ものに触れていなかったので、その面白さを教えてもらったような感覚もあって、特撮で育ってきたわけではないのに、「あー、きたきたこれこれ」と思えるような演出や戦闘シーンも楽しませてもらいました。
 「SSSS.DYNAZENON」では「SSSS.GRIDMAN」の世界観がどう引き継がれるのか楽しみにしていましたし、と同時にきっと「SSSS.GRIDMAN」のことは引きずらなくてもいいんだろうなとも思っていました。そうしたら、第1回のアフレコのときに監督から「見ましたか、『SSSS.GRIDMAN』?」と聞かれて、「見ました」と答えたら「見なくていいです」と言われたので、「記憶から消します」と(笑)
安済・若山:(声をあわせて)見ちゃったよーっていう(笑)
――監督からキャストの皆さんにそういう話があったのですね。
安済:たぶん監督的には、「SSSS.DYNAZENON」には「SSSS.DYNAZENON」の物語があるからそんなに関係ないよということが伝えたかったんだと思います。
――「SSSS.DYNAZENON」の収録はいかがでしたか。キャストの皆さんには、先の展開などほとんど知らされなかったそうですね。
安済:誰がどうなるとかはまったく知らされてなかったのですが、メインキャストは最初の収録の前に監督からそれぞれお話を聞きました。収録はちょうどコロナ禍がはじまった時期と重なり、スタッフとキャストが集まって相談することなどができなかったので、メインキャストを中心に初回収録の前にそれぞれ30分ずつぐらい、個人面談のようなかたちで監督からキャラクターの説明をうけました。
 人によって説明されている内容は違っていて、ちせの場合は彼女の根っこの部分にある軸のようなものを教えてもらいました。それさえもっていれば、きっとどんなストーリーになっても、皆さんとの掛け合いや監督たちの導きによって楽しくやれるだろうなと思いましたし、実際なんの不安もなくやることができました。
 コロナ禍による分散収録がはじまったばかりで、役者も制作陣もみんな慣れていないなか、それでもこの作品は掛け合いが大事だからと音響制作担当の方がスケジュールをすごく上手く組んでくださったんです。そのおかげでコロナ禍の収録とは思えないほどみんなで“いい会話”ができて、相手の気持ちをうけとりあってでた言葉を収録できました。ブースに入るのを待つロビーが広くて、みんないるんだけどそれぞれ離れていたのを思い出しますね。内田雄馬くん(※オニジャ役)が変な動きをしていて――。
若山:マエケン体操されてましたよね。
安済:そうそう、マエケン体操だ。(実際に両肩をまわしながら)文字じゃ伝わらないと思いますが、肩甲骨を動かすこの動きを遠目でみると「何してんの?」って思うんですよ(笑)。動きだけでムードメーカーになってくれて、他の皆さんとも密に話すことはできないんだけども、いい雰囲気の現場になっていました。
若山:第1回や第2回のときは、あまりに等身大すぎて夢芽がどういうキャラクターか全体像をつかみきれていない実感がありました。そんなとき制作陣のどなたかから、「夢芽は特撮にくわしくないところが逆に今の女子高生らしくて、そこがいいところなんです。『なんとかビーム』みたいに言うときもあるんですけど、そういう子なんです」という話を聞いて、ああそうかとすごく納得できたのを覚えています。回を重ねるごとに彼女のいろいろな面がみえてきて、最終回をむかえる頃には自分の中で夢芽がひとりの多面的な人間としてできあがった感覚があって、よかったなと思いました。
――夢芽は、あえて人との約束を守らない行動をとっていて、序盤は見ていて戸惑いました。演じながら、どんなことを感じていたのでしょうか。
若山:最初の時点では、彼女がなぜそういうことをしているのかまったくわからなくて、不思議ちゃんというか、ちょっとおかしな子であるようにしか見えないですよね。考えなしでそういうことをやっちゃう子に見えてもいいのかなと思っていました。第1回、第2回の頃は、ちょっとミステリアスというか“まったく理解できなさそう”という感じをイメージしながらやっていたかなと思います。本心が表にでるまでの距離が長い子というイメージもあって、だから感情がとぼしくみえるのかもしれないというふうにも考えていました。
 第1回でありがたかったのはリハーサル用のVTRとは別に、完全に色がついている状態の映像も一緒につけていただいたことです。それだけ絵が完成しているのに、尺を無視しまくって会話する夢芽と蓬みたいなこともときどきあって……。
安済:他のみんなもけっこうそうで、それが許される現場だったんですよね。掛け合いの会話感でうまれるものが優先というか、アフレコ用の映像にあるボールド(※キャラクターがしゃべっている間、表示される目印)の尺はそこまで気にしないでくださいと言ってもらえました。お互い信頼感があるからこそできる、ありがたい現場でした。
――「グリッドマン ユニバース」の台本を読んだときの感想を聞かせてください。
若山:2つの作品がどうやってクロスオーバーするのかいちばん気になっていたのですが、台本を読んで「ああ、なるほど!」「そういうことか!」と。みんな納得できるといいますか……説得力があるといったらおかしいけれど絶対にみんな「そうか!」となるだろうなと感じましたし、もしかしたら「SSSS.DYNAZENON」の見方も変わってくるかもしれないなと思いました。
 「SSSS.GRIDMAN」のキャラクターを演じる皆さんと作品内で会話できることにもすごく興奮しました。「SSSS.DYNAZENON」ももちろんですが、関わっていない「SSSS.GRIDMAN」に関してはもう、いちファンですので。
安済:私も台本を読んだとき「あー、なるほど!」と思いました。リハーサルVTRを見たときも、こういうかたちであの2人が並ぶのかとか、あのキャラクターってこうなのかとか、「SSSS.DYNAZENON」のときに知りたかったような要素もあって本当に面白くて、アフレコがすごく楽しみでした。
――「なるほど!」という部分については、これから劇場で見る両作品のファンの方もそう思うはずだと。
安済:うわってなりました(笑)
若山:あーーって。
安済:そう! あーーっていう。両作品の劇場総集編が限定2週間で上映されてからの「グリッドマン ユニバース」公開というのが本当にお見事な流れといいますか、ぜひそうやって楽しんでもらえたらなと思います。あと、どんなかたちにせよ絶対に戦闘シーンはでてきますから、その圧みたいなものを映画館のスクリーンと音響で感じられるのは“約束された楽しみ”になると思います。
――お2人は別の作品でも共演されていてご一緒される機会が多いと思います。お互いがそれぞれいいなと思っていることをうかがって締めさせてください。
安済:いっぱいありますけどねえ。(上着を脱ぎだす若山さんを見て)どうした?
若山:急にそわそわしちゃって(笑)
安済:詩音ちゃんとは「SSSS.DYNAZENON」の前にも「フラグタイム」という
作品でお会いしているようなのですが、申し訳ないことに私が覚えていなくて、初めてちゃんとお話ししたのもお芝居で掛け合ったのも、「SSSS.DYNAZENON」からなんです。本当に真面目でまっすぐで、気遣いがあって、でもたまに突拍子もないことをするっていう(笑)、最初から面白い子だなあと思っていて。私がご一緒した作品だと等身大で演じているキャラクターが多かったので、そうした詩音ちゃんの人間性が役の存在感や説得力みたいなものにつながるとめちゃくちゃ魅力を放つし、ほんとに“生きてる”って感じがするんですよね。掛け合いしていると私の中にもいろんな感情が生まれてきて楽しいなあって思わせてくれる役者さんという感じで、もう信頼をおきすぎていて……他に何かあります?
一同:(笑)
安済:それこそ「SSSS.DYNAZENON」の現場で、違う作品の現場でも一緒なんですと言われたときは、よっしゃーってほんとにうれしかった思い出があります。
若山:すごくうれしい……。
安済:またこうやって「グリッドマン ユニバース」でも一緒になって、いえーいって感じですね。
若山:知佳さんは、まずめちゃめちゃやさしいんですよ。「SSSS.DYNAZENON」の収録がはじまったとき、自分は今もですがほんとにそんなキャリアもなくて――
安済:なにいってんの先輩。
若山:やめてくださいっ。先輩いじりは駄目っ、駄目です。
安済:はっはっは(笑)
若山:自分はキャリアも経験も今よりずっと少ない人間だったので、キャストの皆さんのお名前をきいたときに、現場でどうしたらいいんだろう、そこに私が入って息をしてていいのかなあみたいに思ってしまって。
安済:そんなプルプルしてたの。
若山:人見知りなのと、しゃべりだしたら変なことや失礼なことを言ってしまうかもしれないからと、収録ではなるべく黙っているようにしていたんですけど、ほんとに皆さん素敵でフレンドリーにお話してくださる方ばかりだったので、なんてやさしい人たちだ……と思って話すようになり、そのなかでもとくにいっぱいお話したのが知佳さんで。
安済:まあ女子同士っていうのもあって。
若山:そのときから大好きだったわけなんですけども、「SSSS.DYNAZENON」と別の作品を経た今は自分の素をさらけだして、もう何も考えずに脊髄反射でお話しちゃうんです(笑)。お芝居も人間的にもほんとに素敵で、ずっと背中をおいかけていけたらうれしいなと……。
安済:いやいや、肩をならべていくんですよ……はっはっは(笑)
若山:もう、こういうこと言うから……(笑)。会うたびにニコニコしてしまうっていう感じで、もう好きすぎて他に言うことが選べないぐらいです。
安済:いやあ、うれしいです。
※若山詩音さん、安済知佳さんがゲスト出演した「徳井青空のアニメハックTV #21」もあわせてご視聴ください。
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