写真左上段より時計回りに、鈴木慶一(Vo&Gu)、鈴木博文(Ba&Gu&Cho)、岡田 徹(Key&Cho)、夏秋文尚(Dr)、武川雅寛(Violin&Trumpet)、白井良明(Gu)

写真左上段より時計回りに、鈴木慶一(Vo&Gu)、鈴木博文(Ba&Gu&Cho)、岡田 徹(Key&Cho)、夏秋文尚(Dr)、武川雅寛(Violin&Trumpet)、白井良明(Gu)

【moonriders インタビュー】
リハはするんだけど、
原曲どおりにやろうなんて
誰も考えていない

我々が持っているレパートリーの
イメージが溶けてきている

“インプロビゼーションの世界ではmoonridersは新人だ”とおっしゃられましたけど、このアルバムはジャンルで言ってもポップスやロックと違うし、録音から編集までを考えるとライヴ盤とも違う。そういうところでもかなり面白い作品ではあるでしょうね。

鈴木
うん。スタジオで録ったものをエディットしたりミックスもしたりしているんで、言ってみればフランク・ザッパ的というかさ。ザッパもライヴの部分を突然挿入したりしているじゃない? そういう作り方ではあるね。

ここに来てmoonridersが新たなことにチャレンジした背景を改めて確認したいです。

鈴木
新人化していくのは大事だよね?
白井
大事ですよ。さっきも言ったけど、我々が持っているレパートリーのイメージが溶けてきているからね(笑)。
鈴木
1980年代はライヴでテープを使ったりして演奏していない音まで出したりしたけど、それってサイズが決まっちゃうし、1990年代に入ってコンピュータを使ったりしたけど、それもサイズが決まっちゃう。今はハードディスクをライヴで使う人たちが当たり前なんだけど、我々はあえて使わないんだよね。アレンジがどんどんリハで変わっていくんで。

音楽に限らず、物を作る楽しさはそういうところなのかもしれませんね。常にやり方をアップデイトさせていく。今日おふたりのお話を聞いてそんなふうに思いました。あと、レコーディングやミックスの話をしてくださっている様子がとにかく楽しそうで、終始“こんなことやっちゃいました”という感じですもんね(笑)。

白井
この年齢になってバンドをやっている人って、昔作ったものと同じコードで、同じベースを弾いて、同じような太鼓を叩いて…ということよりも、こうして自由にやったほうが楽しいんですよ。
鈴木
ファンの方はこれをどう聴いてくれるかな?

moonridersのファンは喜ぶと思いますよ。

鈴木
まぁ、moonridersのファンの方は変わっていくということに慣れているからね。それにしてもほどがあるかもしれないけどさ(笑)。
白井
(笑)。メジャーなレコード会社でね、こういう作品が出せるというのもいいですよね。ジャズみたいで。

「Jam No.2 in Z Minor and Major (Session10)」はロック寄りというか、“聴きやすい”というと語弊があるかもしれませんが、十分に普通のリスナーにも受け入れられるように思います。

鈴木
Session9とSession10はそういうテーマだったしね。それをDub Master Xさんがミックスしてるんで、そういう要素は強いと思う。リズムがあって調もあって。

5曲目まで聴いてきて、6曲目はすごくポップに聴こえますよね。

白井
あれはジャムですよね。
鈴木
いきなり弾き出したから。
白井
あれは優介くんがDmをやったんで、僕は“D”つながりでデヴィッド・ギルモアを(笑)。(※デヴィッド・ギルモアはPink Floydのギタリスト)
鈴木
私の意見としては、デヴィッド・ギルモアというよりも東アジアのバンドのようなフレーズも入れて。
白井
Dengue Feverでしょ? それも“D”つながり(笑)。まぁ、そんなことはどうでもいいか(苦笑)。(※Dengue Feverはカンボジアのサイケロックバンド)
鈴木
まぁ、面白いと思っていただけたら幸せです。

面白かったです。“Happenings Nine Months Time Ago in June 2022”のタイトルどおり、いろんなハプニングが詰まった作品であることもこの取材で理解しましたし。

鈴木
The Yardbirdsのパロディーですけどね(笑)。

そもそもインプロを6人、8人でやるmoonridersがすごいと思います。素人考えでも2、3人ならライヴをするようやれると思うのですが、大人数で各パートの押し引き、絡み合いを即興で行なうのは相当に大変でしょうから。

鈴木
それはあるね。2、3人だと目も合わせやすいし、“こう出たらこうする”というのが分かりやすい。やっぱり8人もいると聴こえていない音も鳴っているわけで、休む時もあるし、突っ走る時もあるし…という感じになってくるよね。
白井
30分くらいやっていた曲もあるんだけど、そのくらいになるとダレてきたりする。そのへんは新人ですから(笑)。
鈴木
飽きたら終わりなんだよ。

そうですか。でも、インプロの世界では新人なのでしょうが、ここまでのmoonridersのキャリアがあればこそ、そうした大人数での即興演奏が可能なのではないかと。

鈴木
キャリアを捨てていってるからじゃないの?(笑)
白井
(笑)。屈託なく新しいエリアにトライしましたよ。
鈴木
キャリアはね…邪魔っちゃ邪魔だよね。moonridersというイメージがあるじゃない? ブランドみたいなものが。そういうことで言えば、一回10年間休んだのが良かったかもしれないね。

取材:帆苅智之

アルバム『Happenings Nine Months Time Ago in June 2022』2023月3月15日発売 日本コロムビア/BETTER DAYS
    • COCB-54351
    • ¥3,300(税込)
ムーンライダーズ プロフィール

ムーンライダーズ:1976年のデビューから45年以上のキャリアを誇るロックバンド。70年代前半に活躍した、はちみつぱいを母体に1975年に結成される。76年に鈴木慶一とムーンライダース名義でアルバム『火の玉ボーイ』でメジャーデビュー。翌77年にムーンライダーズとして初のアルバム『MOONRIDERS』を発表し、以降コンスタントにリリースを重ねる。86年から約5年間にわたり活動を休止したが、91年にアルバム『最後の晩餐』で活動を再開。常に新しい音楽性を追求するサウンドは、同年代だけでなく数多くの後輩アーティストにも影響を与えている。また、各メンバーが積極的にソロ活動も行ない、それぞれプロデュースや楽曲提供など多方面で活躍中。ムーンライダーズ オフィシャルHP

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