L→R 岩橋茅津(Gu)、汐田泰輝(Vo&Gu)、中村龍人(Ba)、清弘陽哉(Dr)

L→R 岩橋茅津(Gu)、汐田泰輝(Vo&Gu)、中村龍人(Ba)、清弘陽哉(Dr)

【Bye-Bye-Handの方程式
インタビュー】
大事なのは“何かにトキメキながら、
それに対して突き進む”という部分

新世代感覚のエモーションを表現することに長けたバンドとして大きな注目を集めているBye-Bye-Handの方程式から新作EPが届けられた。“風街突風倶楽部”と名づけられた同作は、青春感で全体を覆いつつテイストの異なる4曲を提示した手腕が光っている。ここにきてさらに個性を強めるとともに、より魅力を増した彼らの全員インタビューをお届けしよう。

僕らの曲の中で
一番うるさいんちゃうかな?

『風街突風倶楽部』の制作に入る前はどんなことを考えていましたか?

汐田
今回のEPは急きょリリースが決まったんです。もともとは全然違うもの…それこそ形態も、ボリュームも全然違うものを作ろうとしていたんですけど、それがコロッと変わりまして。急ピッチで作業を進めないといけなくて、1カ月くらいの間に作りました。レコーディングの日はすでに決まっていて、そこに間に合わせるために曲を作らないといけないんだけど、もう完全ゼロベースで何もないという状態だったんです。そういう中で、僕の頭の中に名前もない状態で「風街突風倶楽部」のストーリーだけがあって、曲を作らないといけないとなった時にそのことを思い出して制作に入りました。そこから「風街突風倶楽部」と「風鈴」を作って、「小さな怪獣」と「さよならですね。」はストックしてあった曲です。

いきなり予定が変わって、なおかつ時間もないという状況で良質な作品を作られたのはさすがです。では、『風街突風倶楽部』に収録されている曲を見ていきましょう。幕開けを飾る「風鈴」はトータルタイム47秒という全力疾走系のパンキッシュなナンバーですね。

岩橋
この曲は今回の制作で最後にできた曲です。レコーディングの4日前くらいにバンドで練習に入っていて、もう1曲増やしたいという話が出ていたので、短い曲を先頭につけ足そうということになったんですね。そこから“こういうリズムを叩いて〜、こういうギターを弾いて〜”みたいな話をして、“じゃあ、最後までやってみよう!”と4人でバッとやったのが、ほぼほぼ今のかたちだったんです。
汐田
そう! ライヴに向けた練習に入っていて、時間が30分余った際に作りました。できた時は歌をつけるかどうかすら考えていない状態だったんですよ。ちょうど次の日に東京の遠征ライヴがあって、僕は昨日スタジオで録った曲を聴きながら移動していて、車の中で歌詞とメロディーをつけました。だから、Bye-Bye-Handの方程式史上、初めて机に座らず、ギターにも触れずにできた曲です(笑)。45秒くらいでできたんちゃうかな? この曲は一切悩みたくないというのがあったから。
中村
悩みたくなかったね(笑)。「風鈴」を作った時は深夜に練習していて、しかも明日は東京でライヴやから朝起きないといけなくて、“眠た~い”とか思いながらガガガガ!っていう(笑)。本当に何も考えずに作ったら、“これ、めっちゃいいやん!”」というのができた。この曲はレコーディングでも、めちゃめちゃ適当に弾きましたね(笑)。ほんまにノリだけで(笑)。
清弘
「風鈴」は本当に初期衝動の塊という感じですね。2ビートが欲しいと言われて、“じゃあ、2ビート叩きます”ってドッパン・ドドパン・ドッパン・ドドパン!とやって、“OK!”っていう(笑)。次にくる「風街突風倶楽部」よりも少しテンポを遅くして、「風街突風倶楽部」が始まった時のブースト感が出るようにしたいとは考えましたけど、それくらいですね。レコーディングも勢い重視で叩きました。
汐田
“Oh,Yeah!”っていうコーラスも録りながら決めたんだよね?(笑)
中村
そうそう(笑)。“なんか言おうや”ということになって。

初期衝動やライヴを控えてアガがっている気持ちなどを反映させたことが、いい方向に出ましたね。1コーラス歌いきりの47秒で大丈夫かなと思ったりはしませんでしたか?

汐田
思わなかった。「風街突風倶楽部」のイントロみたいなイメージだったから短いほうがいいと思っていたし、この間初めて1分のショートチューン(2022年11月配信の「ソフビ人間」)をリリースさせてもらって、ショートチューンっていいなと思ったんです。ムーブにもなっているし、ライヴで演奏する時もあと1曲入れたいという時にもいいし、“このサイズでええやん!”と思いました。あと、がっつり2ビートみたいな曲をやるのも初めてで、僕らの曲の中で一番うるさいんちゃうかな? いい意味で“うるさっ!”みたいな曲ができて良かったと思っています。

《胸を高ぶらしてゆけ》と歌っている歌詞も相まって、「風鈴」は気持ちを上げてくれる一曲に仕上がっています。続くリード曲の「風街突風倶楽部」は青春感を湛えた、さわやかなファストチューンですね。

汐田
とりあえずリード曲のことはいったん考えずに既存曲を録り始めようということになって、「小さな怪獣」をレコーディングしたんです。レコーディングしたスタジオは地下がスタジオで、1階がロビーみたいになっていて、みんなが地下で録っている時に僕は1階でリード曲を作るという状況で。その時に自分の中にあるストーリー…4、5人の学生の陰キャ集団が下敷きを使って風力を起こして、どうにかスカートをめくろうとする話なんですけど(笑)。そのストーリーを思い出して、それを曲にしたいと思ったんです。それで、いろいろ考えていたら冒頭の《風街突風倶楽部 風を巻き起こす》という歌詞とメロディーが出てきて、“風街突風倶楽部”はすごく気になる響きの言葉だと思ったんです。Bye-Bye-Handの方程式特有のちょっと引っかかる単語が生まれたことを感じて、そこから膨らませていきました。だから、この曲は本当に歌詞先行みたいなノリでしたね。架空のストーリーを曲にするということを、ここまでちゃんとしたのは初めてかもしれない。“勝手にタイアップ”みたいな感覚でした(笑)。

新しいことに挑戦されたんですね。個人的には、この曲の歌詞は“風”や“スカート”をモチーフにして、10代ならではのドキドキ感やワクワク感を表現した文学的なアプローチだと思ったのですが。

汐田
なるほど! それで、いきましょう(笑)。この歌詞はスケベ心を描いているけど、大事なのはそこじゃなくて“何かにトキメキながら、それに対して突き進む”という部分なんです。そこをちゃんと受け取ってもらえればと思います。

「風街突風倶楽部」のアレンジやレコーディングなどについても話していただけますか。

汐田
僕はこの曲のギターフレーズが気に入っていますね。ギターが担っている部分が結構大きいと思うので。
岩橋
僕らはDTMで楽曲を作ることが多くて、ドラムがまずデータを作ってきて、そこにベースを乗せて、バッキングのギターを入れて、そのあとに僕が自分のギターを入れるんですね。この曲は今までにはなかったことですけど、イントロが何も決まっていない状態だったんです。バッキングも入っていない中、ドラムのビートだけが鳴っていて“これでなんとかしてくれ!”みたいな感じで投げられて。“どうしよう?”って結構悩んで、イントロを作るだけで10時間くらいかかりましたね。そのうちの8時間くらいは、まったく何も浮かばなかったんです(笑)。いろいろ考えていく中で、今までは僕と泰輝がふたりで単音フレーズを弾くというのがなかったので、そういうアプローチで何か面白いことができないかなと思って。そういう発想でイントロを作ったので時間がかかったし、この曲のギターはかなりこだわりましたね。
中村
ベースは最初にこの曲を聴いた時からルートだと思ったんです。僕が変に味つけをして濃いものにするよりも、何もしないことでちょうどいい感じになる気がして。なので、ライヴでベースよりも自分が出るくらいの感じ…最悪何も弾いていなくてもいいくらいの簡単な方向でいくことにしました。最近の僕はスラップをしたり、動いたりしていたから、純粋なルート弾きで勝負したいとも思って、こういうベースにしました。どれだけルートをカッコ良く弾けるかというのは僕にとって永遠のテーマなんですよ。だから、この曲のベースはシンプルだけど、弾いていてつまらないというようなことはまったくないです。
清弘
ドラムに関しては、この曲は“風”ということで、吹き抜けるようにテンションが最高潮のまま最後までバーン!と突き抜けるイメージで叩きました。ただ、何かフックを入れないと平たい曲になってしまうで、2回目のサビでスネアロールを入れたりしました。そこはこだわらせてもらいましたね。
岩橋
ギターはさっき話したイントロがでかいというのがまずあって。あとは、僕は歌っているかのようなギターフレーズをつけることが多いんですけど、この曲は楽器隊全員で走っているような印象で作りました。イントロは“よーいドン!”の“よーい”みたいな感じなんですよ。みんながクラウチングして構えている。で、歌が入ってからみんなで走り出す…みたいなことをイメージしました。
汐田
この曲の歌は酸欠です、完全に(笑)。僕らの曲は4曲くらいカラオケとかにも入っているんですけど、全部加点しにくい曲なんですよ。ブレスのタイミングを考えていないメロディーなので息が続かないし、ビブラートもかけられない。だから、どれだけ歌がうまい人が歌っても90点台にもならなくて、今回の「風街突風倶楽部」はそれの極みですね(笑)。歌うのが本当に大変な曲だけど、僕は4カ月くらい前からヴォイトレに通い始めて、昔の声から今の声にだんだんなってきていて、ちゃんと今の自分の美味しい部分を活かすことができた実感はありますね。あと、純粋にCメロが自分的に気に入っています。作った時に若干カーペンターズみたいなメロディーだと感じていて、それからカーペンターズを聴き直してみた…「トップ・オブ・ザ・ワールド」とかを聴いたら“こんなにいい曲やったんや!?”って。今、自分の中でカーペンターズ・ブームがきています(笑)。
L→R 岩橋茅津(Gu)、汐田泰輝(Vo&Gu)、中村龍人(Ba)、清弘陽哉(Dr)
EP『風街突風倶楽部』

OKMusic編集部

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