Dragon Ash “声出し解禁”8,000人
のシンガロングが響いた25周年ツアー
最終日をレポート

DRAGONASH 25th ANNIV. TOUR 22/23 ~ENTERTAIN~ FINAL

2023.2.23 国立代々木競技場第一体育館
『DRAGONASH 25th ANNIV. TOUR 22/23 ~ENTERTAIN~』と掲げ、2022年9月から全国25箇所のライブハウスとホールを回ったワンマンツアーが2023年2月23日、東京・国立代々木競技場第一体育館でついにファイナルを迎え、声出しを解禁されたこの日、8,000人の観客がシンガロングの声を上げた。
全国を回るワンマンツアーとしては3年ぶり。2時間半に及ぶ熱演だった。Kj(Vo, Gt)、櫻井誠(Dr)、BOTS(Dj)、hiroki(Gt)、T$UYO$HI(Ba)の5人がこの日、演奏したのは25年のキャリアを物語るアンコールを含めた計25曲。
ステージの前に降ろしたLEDスクリーンに映像を映し出しながら、彼らが1曲目に演奏したのは、《さあ始めようぜ 逆襲の時だ》と歌う「Entertain」。そして、「26年目1発目のライブ! Dragon Ashです!」とKjが声を上げ、2月8日に配信リリースされたアンセミックな新曲「VOX」を早速披露。自分たちがバンドを続ける理由がオーディエンスとの交歓にあることを今一度歌い上げると、そこから「Bring it」「天使ノロック」「Iceman」とバンドを代表するナンバーを繋げていく。メロディックパンクを思わせる2ビートに8ビート、さらにはレゲエの裏打ちのリズムまで飛び出す「Iceman」では、そのレゲエパートで「Let me hear! Say oh oh oh! もっと! Oh oh oh!」というKjの呼びかけに応え、オーディエンスのシンガロングの声が何かから解放されたように一際大きなものになる。Kjが満面の笑みで快哉を叫んだ。
「歌うって楽しいよね!」
オーディエンスのシンガロングは続けて演奏された「Life goes on」でさらに大きなものに。そして、「Under Age's song」から繋げた「陽はまたのぼりくりかえす」の歌と演奏に込めた熱が大きな波のように伝わり、いつしか会場全体に大きな盛り上がりが生まれたのだった。
「まさかこんな日が来るなんて思ってもみませんでした。素晴らしい光景を冒頭から見せていただいて、ちょっとウルっていうか、演奏に支障が来るぐらい感情が込み上げてきてしまいました。みんなの声がこんなに聞こえるなんて!」と観客に語りかける櫻井は早くも感無量といった様子だ。
「バンドとスタッフ一丸となって、みんながコロナ禍でも楽しめるライブって何だろうって模索しながらこの日を作り上げることができました。感謝しています。25年一緒に育っていってくれたみなさんと大切な曲たちを共有できればと思っています!」と櫻井がこの日のセットリストに込めた思いを改めて言葉にする。
ミクスチャーロックにラテンのテイストを加えた「Crush the window」「Ivory」といった曲が25年間におけるバンドの音楽性の進化・深化を今一度印象づけながら、5人は序盤の盛り上がりをさらに大きなものにしていく。そして、25周年を祝うために駆けつけたスケボーキングのSHIGEO、SHUNとKjがラップを掛け合い、会場を揺らした「Episode 4」で中盤の盛り上がりは頂点に! そして、その熱狂から一転、バラードともチルなナンバーとも言える「静かな日々の階段を」と繋げ、バンドが持つ振り幅をダイナミックに見せつけたのだから心憎い。
T$UYO$HIと櫻井が絶妙のコンビネーションで魅せる力強いリズムセクションとhirokiによる空間系のギタープレイも聴きどころだったアンセミックなナンバー「Tiny World」からの後半戦は、BOTSがDJプレイで繋げた「Jump」からはまさに怒涛の勢い。イントロに歓声が沸いた「百合の咲く場所で」、オーディエンスがKjとコール&レスポンスするようにシンガロングする、まさに本来の形で演奏された「Fantasista」、そしてラッパ我リヤをゲストに迎えた「Deep Impact」と、Dragon Ashのライブに欠かせないキラーチューンでたたみかけ、会場を大きく揺らしながらクライマックスにふさわしい景色を作り出していった。
その中で、「このツアーが始まってから音楽人生で一番怒られました」とKjは本来、自由であるべきライブを、さまざまな規制の中で行わなければいけないことに葛藤を感じていたことを明かした。それでもこの日、観客が声を出せるようにした選択は間違っていなかったという思いを込め「みんなが後ろ指を指されずに声を出せて、俺たちに届けてもらうって環境を、自分たちのワンマンでは本当に久しぶりに体験しています。どうもありがとうございます」と続けた。
そして「日本中にいる、かっこいいロックバンドがみんなのサンドバッグになるから、俺たちの音楽や生き方や歌詞やメロディや汗を、みんなのトリガーにして、感情を解放してほしいと思ってずっとロックバンドをやっています。最近ずっとライブハウスの中でも、この瞬間もみんなに我慢をさせています。フロントマンとしてこんなにかっこ悪いと思ったことは今まで一度もないけど、続けてきたよかった。今日みたいに楽しそうに声を出せる日がまた訪れるんだったら、また明日から俺たちは全然言うことを聞かないバチバチのライブハウスのロックバンドに戻ります!」と自ら矜持として持つロックバンド像を語りながら宣言。
そして、ミラーボールが放つ眩い光の中、《今日だって僕達は 生まれ変われるよ》と歌うアンセム「New Era」で本編を締めくくると、バンドはアンコールを求める観客の声に応え、「Drugs can't kill teens」(この曲でT$UYO$HIはIKÜZÖNEのベースを弾いた)、「Viva la revolution」「Curtain Call」の3曲をさらに演奏したのだが、「今日が革命前夜!」とKjが声を上げた「Viva la revolution」の前にメンバーそれぞれに語った言葉は、それぞれに25周年という節目に見つけた一つの答えでもあるのだろう。
「昔、ここにX JAPANhideさんのライブを観にきたことがあるんだけど、Dragon Ashも同じステージに立たせてもらうことができました。(hideに憧れていた)馬場育三(IKÜZÖNE)も喜んでいると思います」(櫻井)
「加入してから24年間、バンドを続ける中でいろいろありました。バンドを続ける意味がわからなくなった時期も正直ありました。でも、そこでやめるという選択肢は出ませんでした。その時思ったのは、意味がわかるまで続けよう、でした。その中で、バンドって何なんだろうって調べてみたら、結束するって意味が出てきた。なるほどと思いながら、ふとラバーバンドが目に入って、あ、こういうことなんだと思いました。俺たちは一つひとつの輪っかなんだ。一人ひとりがDragon Ashを繋ぎとめている輪っかなんだ、と。それは今日ステージに立っている5人だけじゃなくて、馬場育三、KenKen(Ba)、(ダンサーの)ATSUSHI、DRI-V、彼らの跡もしっかりDragon Ashに残っていると思います。そして、ステージに立っていた9人だけじゃなくて、スタッフ、今日来てくださっているみなさん、今までDragon Ashに携わってくれたみなさん一人ひとりがバンドの一部だと思っています。これからもみなさんで大きな輪っかを作って、バンドをしていきましょう」(BOTS)
「みなさんとこの場所でライブを作れたことを一生忘れません。気づけば26年目が始まっているので、みなさんの傍らに俺たちの音楽を、ライブを置いていただければうれしいです」(hiroki)
「25周年ツアーのファイナルでもあるんだけど、約3年続いたコロナ禍の制約のあるライブのファイナルという気がすごくしています。アリーナにイスが置いてあって、1個空けなきゃいけないってライブも今日が最後だと思う。今年はいろいろなバンドがとんでもないライブをするから、もうみんな我慢することないと思うし、今日がファイナルだけど、今日がまた新しい、バンドがまた爆発する始まりなのかなと思いました。何年か経ったら、コロナ禍ってあったよねって振り返る時が来るぐらい、爆裂するライブが戻ってくると思うけど、今日立ち会ってくれた人っていうのは、エンタメってものがぶっ壊れて、それが復活する瞬間を一緒に作ってくれたんだと思います。ロックバンドはこの世の中で一番かっこいい職業だと思っているんで、これからもよろしくお願いします」(T$UYO$HI)
「真っ先に思うのは、中学の時に始めた青春に25年間みんな付き合ってくれてるんだっていう、そのありがとうが一番でかい。自分たちが25年間やってきてすごいと思う前に、俺たちがやりたいことに25年間もみんなが付き合ってくれてるんだって。ただ思いつきで始めたことをこんなに続けてていいのかな、こんなにみんなにいいと思ってもらっていいのかなって気持ちもずっとありながらやっているけど、本当にありがとうなんですよ。この25周年のツアーを、自分たちができる一番美しい着地のしかたで、ここで終えるためにみんなと同じように俺たちはたくさんのことを我慢してきたから、今年はまた聞き分けのないバンドマンに戻って、路地裏のライブハウスで一からまた磨いていきます。ライブハウスで会いましょう」(Kj)
最後に演奏した「Curtain Call」は、別れの歌ではなくて、再会を約束するロックナンバーだ。力強いバンドの演奏にバックアップされながら、バラードとも言ってもいいくらいやさしいメロディを歌うKjの歌声が胸に染みる。アーミングとチョーキングに加え、ワウペダルも駆使して、鋭いトーンでhirokiが奏でるギターソロも聴きどころだった。
「ありがとうございました!」
ステージを降りる前にKjが上げた声が響きわたる中、2時間半に及ぶ熱演の余韻を味わいながら、すでに始まっている26年目を含め、Dragon Ashのこれからがますます楽しみになった。
取材・文=山口智男 撮影=TAKAHIRO TAKINAM

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