梅田サイファー×ALI、ジャンルを超
えた悦楽の音空間に酔いしれる『HIG
H FIVE 2023』大阪公演オフィシャル
ライブレポート

次世代を担うアーティストがヘッドライナーに立ち、彼らが今一番共演したいアーティストをスペシャルゲストに迎える音楽イベント『HIGH FIVE 2023』。梅田サイファーがヘッドライナーを務め、盟友・ALIをスペシャルゲストに迎えた2月19日(日)Zepp Osaka Bayside公演のオフィシャルレポートが到着した。

2月19日(日)、Zepp Osaka Baysideにて『HIGH FIVE 2023』の大阪公演が開催された。今年で2回目を迎える本公演は次世代を担うアーティストがヘッドライナーに立ち、彼らが今一番共演したいアーティストをスペシャルゲストに迎え、全国5会場で対バン形式のイベントを展開。大阪公演では、昨年に続き梅田サイファーがヘッドライナーを務め、ゲストの盟友・ALIと、一夜限りの饗宴を繰り広げた。
先陣を切るのは東京・渋谷発、ボーカルのLEOを中心にメンバー全員がハーフの多国籍バンド・ALIだ。ファンクにソウル、ジャズなどのルーツミュージックをベースに、ヒップホップやロックなどを融合したバンドサウンドを武器に、1月25日には待望のメジャー1stアルバム『MUSIC WORLD』を発表。この日のステージはアルバムリリースツアーの真っ最中とあって、バンドの熱量は存分に昂ったままで当日を迎えていた。
濃赤の照明がステージを染めるなか「仁義なき戦いのテーマ」から「Dance you,Matilda」へ。感情を昂らせるホーンセクション、スリルあるギターの音色が鳴り響く。初っ端から血が滾るような鬱勃としたエネルギーをぶつけられ、観客のテンションが一気に高揚していくのがはっきりと伝わってくる。「ALI、始めます!」、LEOが声を張り上げて突入すると、途端にフロアからワッと歓声が湧きたつ。この日の公演はマスク着用であれば声出しが解禁されていることもあって、観客は瞬間々々の感情を拍手に、歓声に換え、メンバーへ思いを届ける。
「踊り狂おうぜ! 歌おうか! お前のハートに火をつけに来たんだよ!」、LEOが声高らかに言葉をかけ「VIM」「I want chance a Romance」へと続く。スカやラテン、ブルースと、ご機嫌で情熱的なサウンドに誰もが腰を揺らして踊りまくる。盛り上がりが大好きな大阪の人間は彼らの音と相性抜群! バチっと決めた揃いの黒スーツによく磨かれた革靴、バンドメンバーの息の合ったパフォーマンス、オールドスタイルなステージングとルーツミュージックの相性もたまらなくいい。観客からの喚声に煽られるようにLEOはマイクスタンドを振り回し、誰ひとり取り残さずALIの世界へと引っ張り込もうと、鋭い視線をフロアに向ける。
スタートダッシュで存分にテンションを高めたところで、「MELLOW CRUISE」「STAY IN THE GROOVE」と心地よいグルーヴで今度は感情を内側から解していく。限られた時間の中でも、緩急をつけた楽曲陣でバンドのポテンシャルを存分に打ち出していく彼ら。MCでは梅田サイファーとの出会いについて語りつつ、「素敵な時間を過ごせたら」と、この瞬間にしかない喜びを感じてほしいとライブに懸ける想いを語る。バンドの強い意志を随所に感じ、観客もじっと前を見据え、全身で彼らの音を、言葉を受け止めている。
ステージ後半には、もちろん期待していたコラボステージも披露! 彼らのワンマンツアーでもゲストラッパーとして参加しているKAZUOと「Wild Side feat.KAZUO」などをエモーショナルに鳴らし、「TEENAGE CITY RIOT feat.R-指定」ではR-指定と激しく声をぶつけ合う。さらに「FEELIN’ GOOD feat.梅田サイファー」ではR-指定に続き、KOPERU、peko、KZも加わるなど、生のバンドグルーヴに張り合うように、縦横無尽に主張するマイクリレーは爽快! ナニワの祭りというより、レゲエやラテンをミックスさせたサウンドは熱帯夜のカーニバルにでも巻き込まれたようで、オーディエンスは音の波に乗っかり大いに踊り、騒ぎまくる。
「音楽に性別、肌の色、職種、古いも新しいも、ジャンルも関係ない。音楽はいつだって最高だって伝えたい。怒りや悲しみ、感情を乗り越えてまた会おう!」と、音楽への愛を叫び、ラストはThe Beginning Of The Endのカバー曲「Funky Nassau」へ。ベースのグルーヴが生み出す極上のファンクサウンドで全身から喜悦の声を上げ、ステージを締めくくった。
ステージの袖から気合いを入れる声が聞こえ、メンバーが次々とステージに登場。梅田サイファー、この日はILL SWAG GAGA、KZ、KennyDoes、KBD a.k.a 古武道、KOPERU、コーラ、テークエム、Teppei、Peko、R-指定、Cosaqu、SPI-Kでのパフォーマンスだ。彼らも3月29日にメジャー1stアルバム『RAPNAVIO』のリリースを控えていることもあり、今まさに脂がノリまくった状態。先手のALIのステージの興奮をさらに高めるべく、1曲目にセレクトしたのはコント王決定戦『キングオブコント2022』のオープニングソングをリメイクした「KING」だ。エキサイトするトラックに“Who’ s the king?”と、マイクリレーで自身の存在を誇示。10MCともなると、各々のフロウ&リリックが渋滞しそうに感じるけれど、そんな懸念は無用。個性をぶつけ合いながらフロアを練り歩き、会場を盛り上げていく。
「熱くなる準備、できてる?」と観客を煽ると、「アチィ」でスリリング&バイタリティ溢れるラップをぶつけていく。爽やかに時に艶っぽく声色を変え、低音や高音に高速ラップ、随所にはめ込むフリースタイルと、ひと癖もふた癖もある10人のラッパーのテクニックとセンスは改めてハイレベルなものばかり。「無敵ライクセブンティーン」での腰砕けになりそうなバースもたまらなくカッコイイ。R-指定に注目がいきがちだけど、良い意味で彼の個性がフラットになる、それほどの強者揃いが梅田サイファーなのだと思い知らされる。
そもそも、梅田サイファーは大阪・梅田の百貨店をつなぐ歩道橋で始まったサイファーをきっかけに集まったヒップホップグループ。即興ラップを繋げていくサイファーは全国各地にあるけれど、梅田サイファーは1~2小節でマイクを奪い合う、ファイトクラブにも似た集団で、常に互いが1番を張り合っている。そんな彼らがメジャーの舞台で、どんなパフォーマンスを展開していくのか。「クソイケてる新曲聴きたくない?」と、この日初披露の「アマタノオロチ」でその意気込みを楽曲に打ち出していく。“ヤマタノオロチ”ならぬ“アマタノオロチ”、怪物たちが頭ひとつ抜きん出ようとぶつかり合うパフォーマンスに観客は大興奮。パンチライン効かせまくり、個性を打ち出さないと生き抜けない、梅田サイファーの最たる姿が垣間見える。
ライブはその後もグループの進化を見せつけるべく、「トラボルタカスタム」「梅田ナイトフィーバー’ 19」など、遊び心あるトラックに乗せて10MCの個性をたっぷりと披露。ラスト曲の前には「メジャーデビューだからと浮かれず、地に足をつけてやっていきたい。これからも色々あるだろうけど、それもすべてラップに換えて。末永く愛してください」。「ここ数年激動の2組で、このタイミングでの対バンは必然。1度始めたことは辞めない。色々な感情が渦巻くけど、残ったものを引き継いで歌っていきたい」と、メジャーデビューに向け、そしてALIとの対バンについての想いを吐露するメンバーたち。最終曲には「Show Must Go On」をピックアップ。タイトルのまま、“一生やり遂げる”と決意を込めたリリックを丁寧に歌い上げ、本編を締めくくった。
アンコールを前に、DJセットだけだったステージにギターとベースがセッティングされる。となると、もちろん今度は梅田サイファー✕ALIとのコラボだ。メジャー1stアルバム『RAPNAVIO』にもALIが楽曲制作に関係しているらしく、この日限りの特別編成でのパフォーマンスが実現。新曲「かまへん」はメンバーいわく“関西弁ならでは。バイブス高まる、便利で気持ちいい神ワード”を用いたリリックが印象的で、メンバーはみなにこやかな表情で歌い上げていく。そして最終曲「いつかまた」、“HIGH FIVE”に両手を掲げ、フロアとの垣根を打ち消すピースフルなテンションのまま、『HIGH FIVE 2023』大阪公演は終幕を迎えた。
次の『HIGH FIVE 2023』は2月23日(木・祝)の東京公演が終了し、3月5日(日)の名古屋公演を残すのみ。ヘッドライナーは Cody・Lee(李)、スペシャルゲストはASIAN KUNG-FU GENERATIONと、ニューカマーとベテランバンドのぶつかり合いが実現。こちらもどんな化学反応が起こるのか、ぜひとも注目してほしい。
TEXT BY 黒田奈保子
PHOTO BY 新保勇樹

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