2023年2月5日 at Zepp Haneda(TOKYO)

2023年2月5日 at Zepp Haneda(TOKYO)

【神はサイコロを振らない
ライヴレポート】
『Zepp Tour 2023
「雪融けを願う飛行船」』
2023年2月5日
at Zepp Haneda(TOKYO)

2023年2月5日 at Zepp Haneda(TOKYO)
2023年2月5日 at Zepp Haneda(TOKYO)
2023年2月5日 at Zepp Haneda(TOKYO)
2023年2月5日 at Zepp Haneda(TOKYO)
2023年2月5日 at Zepp Haneda(TOKYO)
2023年2月5日 at Zepp Haneda(TOKYO)
2023年2月5日 at Zepp Haneda(TOKYO)
2023年2月5日 at Zepp Haneda(TOKYO)
2023年2月5日 at Zepp Haneda(TOKYO)
 全国5カ所のZepp Tourを東京公演で完走した神はサイコロを振らない。昨年のメジャー1stフルアルバム『事象の地平線』で、ポップチューンも作るロックバンドという側面もフロントマン柳田周作(Vo)の内省も全方位で表現したあとのニューフェーズがこのツアーに凝縮されていた。というのも、“Monthly Winter Release 冬の大三角形”と称して、2022年11月から2023年1月の間マンスリーでリリースしたデジタルシングル「キラキラ」「朝靄に溶ける」「夜間飛行」はいずれもこのZepp Tourを念頭に作られた連作であり、ライヴ表現のレンジを拡大する目的もあったからだ。もちろん、そこにはバンドが自然と開かれていったプロセスが存在する。

 さらにファイナルのこの日は晴れて声出しOKのタイミングと重なったことで、コロナ禍の中で活動を本格化したバンドにとってもファンにとっても初めてのコール&レスポンスや、心置きない歓声の発語が感動的だった。声出しOKの報せをライヴ冒頭に告げられたファンの盛り上がりがすごい。アッパーかつグルービーな「巡る巡る」「タイムファクター」「イリーガル・ゲーム」という3連投はド派手なライティングと映像演出も相まって、序盤から喰らいまくる。激しい体感からともに明るい方向へと、この場をシェアするような「1on1」のコール&レスポンス、さらにファイナルのみのスペシャルな時間になったasmiを招き入れての神はサイコロを振らない × asmiによる「朝靄に溶ける」と、ブロックごとのメリハリが効いた展開がポップチューンも昇華する今の神サイの独自性をより鮮やかに証明していた。とても暖かな気持ちになれたのはファンのasmiの歓待ぶり。登場から“可愛いー!”と声が飛び、話しても歓声が上がり、歌声にはじっくり耳を傾ける。彼女のプロフェッショナルな歌唱に、さすがに自分からオファーした柳田は音源に限りなく近い抑えた表現で世界観を作っていた。「朝靄に溶ける」で始まったブロックを静かに聴きたい「目蓋」と「徒夢の中で」につないでいったのも、すでに前回のツアーでの内省的な側面より、セットリストの緩急に力が注がれていた印象だ。

 セットリストのメリハリは「桃色の絶対領域」や「愛のけだもの」といったセクシーな楽曲をまとめたことでも際立ち、Sexy Zoneへの提供曲のセルフカバーである「桃色の絶対領域」ではホーンセクションのSEとのバランスも新鮮で、キタニタツヤとのコラボ曲「愛のけだもの」は柳田がひとりで歌うバージョンもパワフルになってきた印象だ。また、こうした16ビートの楽曲での桐木岳貢(Ba)の存在感は耳から聴こえる音だけでなく、明らかに低音の体感を下支えしていた。全体的に演奏のスキルアップは著しいが、桐木と黒川亮介(Dr)のリズム隊の進化は明らか。柳田がMCで彼らがツアー中も個人練習に打ち込んでいたことを明かしていたが、それはツアーに手応えがあるからこそなのだと思う。

 そして、終盤に初期衝動をアップデートしたような「キラキラ」で飾らないバンドの姿を見せ、神サイらしさを象徴する「クロノグラフ彗星」を挟み、本編ラストの「夜間飛行」でライヴを締め括れたことも、バンドの歴史と最新形がしっかり接続することを証明したようで頼もしかった。ポップス寄りの楽曲では細かいオブリガートや歌メロの裏をいくフレージングで彩っていたギターの吉田喜一が、「キラキラ」では無邪気にストロークする姿もファンにダイレクトに伝わっていたし、逆にイントロはパッドを叩く「夜間飛行」のエレクトロニックなアレンジをしっかり支えていた黒川の司令塔めいた存在感も頼もしかった。Zepp Tourを意識して作られた新曲3曲が機能し、ライヴハウスならではのフィジカルな楽しさも、じっくり見て聴いて曲に没入できるカタルシスも実現できたことは今後の彼らにとっても、ロックバンドの可能性においても獲得したものは大きい。

 とはいえ、そんなことより、アンコールを含め、全17曲を演奏し終えてオフマイクで感謝を述べる彼らとファンはようやく自由に手が届きそうな歓喜でいっぱいだった。その情景こそがこの日の記憶になるだろう。

撮影:Viola Kam (V'z Twinkle)/取材:石角友香


セットリスト

  1. 01.巡る巡る
  2. 02.タイムファクター
  3. 03.イリーガル・ゲーム
  4. 04.LOVE
  5. 05.1on1
  6. 06.REM
  7. 07.朝靄に溶ける with asmi
  8. 08.目蓋
  9. 09.徒夢の中で
  10. 10.解放宣言
  11. 11.桃色の絶対領域
  12. 12.愛のけだもの
  13. 13.キラキラ
  14. 14.クロノグラフ彗星
  15. 15.夜間飛行
  16. <ENCORE>
  17. 01.パーフェクト・ルーキーズ
  18. 02.illumination
神はサイコロを振らない プロフィール

カミハサイコロヲフラナイ:福岡発4人組ロックバンド。2015年結成以降、ライヴシーンのど真ん中で経験値を積み上げる中、19年発表の「夜永唄」が20年にバイラルヒットし、同年7月に配信シングル「泡沫花火」でメジャーシーンへ進出。11月には配信 EP『文化的特異点』をリリースし、12月にはSpotify年間バイラルチャートのTOP10入りを果たす。そして、21年3月にメジャー1st シングル「エーテルの正体」をリリースし、オリコン&ビルボード、ウィークリーチャートでTOP10入りをするなど、シーンでの存在感を目覚ましい勢いで高め続けている。22年3月にはメジャー1stフルアルバム『事象の地平線』を、23年9月には2ndフルアルバム『心海』リリースし、国内有数のフェスラインナップにも名を連ねる。神はサイコロを振らない オフィシャルHP

OKMusic編集部

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