【reGretGirl インタビュー】
今回は自ずと“tear=涙”っていう
ところで日頃から意識していた
経験をもとに曲を書いているけど、
それを脚色できるようになってきた
4曲目「ダレヨリ」と5曲目「KAWAII」は思い込み激しい系で。
平部
ここの曲順は迷ったというか、歌詞自体のつながりは全然ないんですけど、どうしようかと考えた時に、「ダレヨリ」でやさしくなったところをぶった切ってやろうと思って、一個フックとして「KAWAII」を挟みました。
作家として書ける感じが出てきたんじゃないですか?
平部
そうですね。基本的には自分の経験や思ったことをもとに曲を書いているんですけど、それをいい意味で脚色できるようになってきたというか。そういう部分ではより一層物語っぽくなったと思います。
「KAWAII」の何をやっても可愛いと褒める男性の描き方とかも。
平部
「KAWAII」はこういう曲なんですけど、世間に対するアンチテーゼの部分も含んでいるんですよ。SNSだ、映えだ、なんだの時代になって“うるせえ!”と思う自分もいるので。そういうところがここに思っきり出てしまった(笑)。
「サムデイルーザー」は何をやってもうまくいかない日常が書かれていますが、それだけではないところがいいですね。
平部
そうですね。常日頃からreGretGirlはライヴで“泣きたい時は泣いてもいい”“あなたに寄り添うバンドでありたい”と言ってきているので、その点が色濃く出ているんじゃないかな?
しんどいことばっかり並んでるけど、ユーモアを感じるんですよ。悲しい曲にしてしまわない心意気を感じるというか。
平部
失恋や恋愛以外の曲も書きたいとずっと思っていて…失恋だけじゃないと思うんですよ、悲しい出来事とか嫌なことっていうのは。だから、そういう楽曲を作りたくて、この「サムデイルーザー」って曲ができたんです。歌詞だけを読むと本当につらいことばかりと書かれているんですけど、それをキャッチーにポップに昇華するのがreGretGirlだと思ったので、曲調を明るくしました。
後半も新しいですよね。「ハングオーバー」はちょっとエロティックだし。
平部
これはエロティックにしました。今までも女性目線の曲を書いていたんですけど、さらに一歩踏み込んだものができたというか。ぶっちゃけて言ってしまうと、“僕はきっとあの時、あの子にこういう想いをさせていたんじゃないかな?”みたいなところから始まって書いたんです。だから、女性男性で限定できないし、異性に振り回される人間っていうのは一定数いて、そこのもどかしさみたいなのものをreGretGirlっぽいキャッチーな曲に乗せました。
ひとりでいるより退屈じゃないからという逃げとか。
平部
“このままずっと一緒にいても幸せになれないだろうな”と思いながらも一緒にいてしまう…惰性じゃないですけど、そのぬるい感じの気持ちも人間臭さがあっていいと思うし、そういう時にぶっ刺さってくれたらいいかなと。
曲調として新しかったのは「remind」でした。
平部
一般的に2ビートと言われるものなんですけど、その2ビートをやりたいと思っていたんですが、やっぱり速くて大変なので、バンド全体としての技術がしっかり身についてからだと何年も思っていたんです。それが今回、ようやく自分の中でゴーサインが出ました(笑)。
(笑)。2ビートをやりたかった理由というのは?
平部
もともと好きだというのもあるし、今までやってきていなかったうちの要素として、我々っぽくないというのがあったんですけど、別に自分らが出す曲なんだから、自分らの“ぽさ”を決めすぎなくていいと思ったのがきっかけです。“やりたいことをやっちゃえ! どうせreGretGirlの曲になるから”って速い曲をやりました。
でも、歌われている内容がちゃんとしているから飲み込めるというか。すごい差し迫った内容なので。
平部
やっぱ記念すべき一発目の2ビート曲なんで、“怨念こもったreGretGirl”みたいなとこを引き出した感じがあります。これでいきなりハッピーな曲を歌われても“reGretGirl、どうした!?”ってなりそうなんで(笑)。なので、ここはこのアルバムで一番怨念のこもった曲になっているというか。
ラストの「tear」で景色が変わる感じがあって。アルバムタイトルチューンでもあるのですが、いつ頃どういうタイミングでできた曲なんですか?
平部
「tear」は前々からこういうテーマで書きたいと思っていて。でも、順番で言うと一番最後にできた曲ですね。歌詞の内容にもあったりするんですけど、数年前に友人を亡くしていて、その気持ちを歌にしたい想いはずっとあったので。で、このアルバムを作るにあたって最後にできたのがこれで、そこから“tear”っていう曲にしようと決めたんです。今まで出してきた曲とか、このアルバムに入る曲を踏襲したものになると思ったし、最後にこの壮大な曲ができて良かったです。
この曲をその友達に贈りたいという気持ちですか?
平部
友達に贈りたいとまでは思わないですけど、たぶんこれは一生消えない記憶だし、しかもこの悲しみっていうのは他の友達とも共有していることなので、亡くなったあいつによりも、自分の周りの大切な人にそういう想いが届けばいいなと思いますね。
それがアルバムタイトルにまでなったのはどういう経緯なんでしょう?
平部
アルバムタイトルは曲目からとるんですけど、今回一番伝えたいというか、アルバム通してのテーマにもなっていると思ったので、もうこれは“tear”しかないと。
コロナの時期は理由がよく分からない涙が流れることも多かったと思うんですよ。そうじゃなくても漠然とした不安とかも多いですし。
平部
そうですね。そういうものを少しずつ自分でも理解できるなようになってきたというか、どんな感情でも涙って流れてくるじゃないですか。怒ってても、嬉しくても、悲しくても。最近はその中に“懐かしくて”みたいなのが入ってきたりして。だから、僕は泣く頻度が上がっていくと思っていて…全員がそうなるとは思わないんですけど、涙腺は年齢とともに緩くなるって聞くし。そういうところに本当に寄り添える一曲だし、アルバムになったと思います。
涙腺って緩くなるんじゃなくて、平部さんがおっしゃったみたいに感情とかが加わっていくんですよね。