【前Qの「いいアニメを見にいこう」
】第46回 「僕とロボコ」と「ジャン
プ」のすごさとテレビアニメらしさと

(c)宮崎周平/集英社・僕とロボコ製作委員会 1月21日に「日本オタク大賞2022」というトークイベントにアニメ部門のプレゼン担当として出演しまして(アーカイブ配信の有料チケット、2月20日まで好評発売中!)、そこでも昨年のアニメを振り返るトピックのひとつとして取り上げたのですが、いやー、最近の「ジャンプ」アニメの勢いはとてつもないですな。日本国内はもとより、海外でもすごい。質・量・そして商業的成功と合わせて、黄金期と呼んでも過言ではないくらいかと。
 というわけで、今回はそんな「週刊少年ジャンプ」発のアニメを取り上げるんですよ。
 「僕とロボコ」をね。
 ……なんで意外そうな顔するの? 失礼しちゃうわね。あんなにおもしろいのに。
 20XX年、家事全般を有能にこなすメイド型ロボット「オーダーメイド」が一般家庭に普及している日本。そこで暮らすオーダーメイドがほしくてたまらない平凡な少年・ボンドの元に、ある日、立派な膝をした謎めいたメイドロボのロボコが現れた。家事全般のスキルどころか、一般常識すら欠けているくらいのポンコツAIだけれども、やたらめったら頑丈で、一緒にいると飽きなくて、何よりご主人さまへの愛は一級品。
 そんなボンドとロボコが、まわりの家族・友人・よくわからない濃いメンツを巻き込んで繰り広げるあたたかな日常生活を、掟破りのパロディ満載で描いたスラップスティックなギャグアニメ……というのがざっくりとした作品の概要で、つまるところは、いわゆるひとつの児童誌・少年誌の同居ものマンガ(「ドラえもん」とか「オバケのQ太郎」とか)の最新形。で、あると同時に、作品全体がそのジャンルのパロディなのでありますケロ。一見スネ夫とジャイアンっぽい雰囲気の同級生がめちゃくちゃいいやつだったり、クラスの可愛い女の子がちょっとぶっ飛んだ性格だったりする。
 この原稿ではそうしたパロディ的な笑いの部分を掘り下げない。大メジャーなもの(ただ、人気作でも世代が上で、本来の雑誌の想定読者である10代だと若干通じなさそうなものも……)からちょっと渋めのネタまで、いい塩梅で取り上げていて好感を持ってはいるのだけど、ま、そういうの触れ過ぎるの野暮じゃん? 概要紹介でも書きすぎたくらい。
 じゃあ何を書くのかってえと、この作品を見ているとあらためて感じるのが、ギャグはつくづく「間」というか、緩急の問題だということ。5分枠のショートアニメということもあってギュッと内容は凝縮されているのだけれども、そのなかで間を取るところはがっつりと取り、畳み掛けるところは動きも、ネタも勢いよく詰め込む。
 未見の人は、試しに1話を見てみてほしい。最後の最後、とあるシチュエーションが描かれるのだが、直前のスローモーションからの、思わず画面に「……いや、車体長すぎだろ!」と突っ込みたくなってしまう、たっぷりと尺(映像の長さ)をとった豪快な大破壊に、年甲斐もなく放送時に大笑いしてしまった。そこまでに描かれた質の高いパロディや際どいジョークよりも何よりも、そこのタイミングにしびれた次第。
 他の話数でも、ラストのシークエンスでたっぷりと尺を使ってオチを見せることが多い。そこの時間のコントロールの巧みさにしびれてしまう。監督は大地丙太郎さん。私と同世代より上のアニメファンには、この名前を聞けば深くご納得いただけることだろう。「セクシーコマンドー外伝 すごいよ!マサルさん」の、「ギャグマンガ日和」の大地監督です(ギャグからシリアス、ほのぼのまで数々の代表作がある監督ですが、ここで挙げるべきはなんといってもこの2作ではないかと)。
 そしてそもそも、この作品を30分枠作品にすることを選ばないという企画の立て方の時点で見事なのであり、ここに今の「ジャンプ」のクロスメディア展開の強さが端的に現れているように感じるのだった。
 緩急、メリハリという意味では、動かすところに豪快に労力を注ぎ、それでいて全体はシンプルに、テレビアニメらしい画面の密度感で構築されている点も好ましい。しばしばこの連載で書いてきたことだけど、テレビにはテレビの、映画には映画の、それ相応のほどよいバランスというものがあると私としては考えているんですよ。超絶作画で仕上げや撮影にもものすごい手間のかかった作品をありがたいと思いつつ、テレビ番組らしさから生じるおもしろさも、アニメに関わる人たち、見る人たちには忘れてほしくない。その意味でも「僕とロボコ」、いい作品です。ロボコもかわいいし。
 ……でも家に置くならやっぱり、メイコちゃんみたいなオーダーメイドがいいです(に、人間めぇ〜!)

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