写真左上段より時計回りに、sindee(Ba)、はやしゆうき(Fl)、だいじろー(Gu&Cho)、猫田ねたこ(Vo&Key)

写真左上段より時計回りに、sindee(Ba)、はやしゆうき(Fl)、だいじろー(Gu&Cho)、猫田ねたこ(Vo&Key)

【JYOCHO インタビュー】
一番トレンディーなかたちの
JYOCHOを見せられている

人類が辿ってきたいろんな情景が
パラパラパラッと見えるようなイメージ

続いて2曲目の「文明開化の模様」にいきましょう。この曲は抒情的なメロディーを配した、澄んだ世界観のミディアムチューンですね。

もともとはゼマイティスさんから“だいじろーさんにオススメのガットギターがあるんですよ”というお話をいただきまして、そのギターを弾き語りみたいな感じでポロポロ弾いていたら出てきた楽曲なんです。澄んだ世界になっているのは、それが大きいような気もしますね。歌詞は“人類が歩んできた歴史”がテーマになっていて、《善悪 捨て歩み始めた 人類》という言葉が出てきたりしますけど、僕は基本的にポジティブなので“人類は悪いことをしてきた”“いろんな過ちを犯してきた”みたいなことを言うつもりはまったくなくて。人類が辿ってきたいろんな情景がパラパラッと見えるようなイメージで書きました。

それを《刈られた 稲穂のように》という言葉で表現している辺りにも、だいじろーさんの感性が表れています。ガットギターを弾いていて出てきた曲ということでガットギターを弾かれていますが、ガットギターを弾くのは苦になりませんか?

僕はもともとガットギターを弾いていたので。ただ、この曲の場合は強く弾くと粗が出るから、パチン!と鳴らす強いピッキングは避けた上でしっかりと強弱をつけて、サビのバッキングとかはかなり弱めに弾くように気をつけました。サビのバッキングはそんなに難しくないんですが、レコーディングは何度か録り直しましたね。

ニュアンスにこだわったんですね。ちなみにガットギターは指弾きでしょうか?

指弾きです。というか、僕はエレキギターでもアコースティックでもバッキングをレコーディングする時にピックを使うことはありますけど、基本的に指弾きがメインなんですよ。

えっ!? ということは「云う透り」も指弾きですか?

全部指弾きです。

えええっ!? それは驚きです。ギターソロを弾く時などもピックは使わず?

ギターソロ自体がJYOCHOではあまりないんですよね。なので、基本的に全部指で弾いています。作家仕事では曲調が違っていてピックで弾く時もありますけど、フィンガーピッキングが僕のベーシックなスタイルなんです。

そうなんですね。入口がクラシックギターだったのでしょうか?

いえ、もともとはフォークソングなんです。お父さんの影響でかぐや姫とか南こうせつさん、あとはゆずさんといった辺りから入って、お兄ちゃんの影響でRed Hot Chili Peppersとかファンク、パンクに走り、その後、押尾コータローさんを始めとしたソロギターに出会ってすごく惹かれて、そこで完全に指弾きになって今に至っています。

音楽的なバックボーンの広さとギタリストとしての幅広さの両方を備えているのは大きな強みといえますね。また突っ込んだことをおうかがいしますが、そうなると「云う透り」のレコーディングはどんなギターを使われたのでしょう?

ギターは2種類使っていまして、オベーションのヴァイパーと…

ヴァイパー!? またレアなギターを使われていますねぇ(笑)。

オベーションが唯一出したエレキギターで、すごく個性的な音なんですよ(笑)。PUとかもちょっと特殊で、どちらかと言うとシングルコイル寄りな感じだとは思うけど、どういうPUなのかよく分からない。でも、レコーディング前にいろいろ音作りをしていてギターとかアンプを試すと、やっぱりオベーションがいいんですよね。変わった音だけど、音色がいいというか。JYOCHOのギターは解像度が高いというよりは、柔らかみがあったり、やさしかったりするから、それに合うんです。もう1本はSAITO GUITARSさんのギターで、テレキャスターをモチーフにしたモデル。SAITO GUITARSさんのギターはめっちゃいい音がするので、2本を曲調などに合わせて使い分けています。

だいじろーさんの美学が使用ギターにも表れていますね。話を『云う透りe.p』に戻しますが、3曲目の「黙祷」は静謐さとアバンギャルドなテイストが混ざり合った曲ですね。

冒頭で「伊藤潤二『マニアック』」のエンディング曲のお話をいただいてデモを3曲作ったお話をしましたが、「黙祷」はその3曲の中で一番暗いイメージで作った曲です。自分の中では結構どんよりした感情を表現しつつ、聴いていただいた方それぞれが心の奥底にある想いを重ねられる楽曲を目指しました。

「黙祷」も「伊藤潤二『マニアック』」をイメージして書かれた曲ということは、デモの3曲が揃って良質だったことが分かります。「黙祷」はサビでシャッフルっぽいリズムに変化するアレンジが絶妙なフックになっていますね。

ありがとうございます。ただ、これは自分の中ではそこまでハードルの高くないというか、深く考えることなく、意外と簡単に出てきました。

うっ、そうですか…。では、イントロなどに出てくるアバンギャルドなユニゾンフレーズは?

イントロは結構考えましたね。この曲は作った時に半分破綻しそうだったんですよ。なので、ある程度コードが見えるように気をつけるとか、そういうことは意識しましたね。わりと調とかがバグったりしていて、イントロが終わって歌い出しまでの間の1コードがまったく違う調になったりしているんです。でも、変じゃない感じにしたくて、しっかり考えました。

かなりトリッキーなアプローチとも言えますが、そういう時は理論に基づいて考えるタイプでしょうか?

コード理論はある程度勉強しましたけど、あまり活かしていないし、そこまで楽譜も強くないんです。5線譜を見て“ドレミ〜”と数えながら読むくらいで(笑)。なので、そんなに理論は強くないですね。

なるほど。感性でかたちにして、それでしっくりとこなかったりしたら、そこで理論的にどうなっているのかを確かめるタイプ?

そうですね。でも、別に破綻していてもいいと思っています。ピアノとかはある程度当たっている音とかに気をつけるけど、ギターに関しては当たっていてもカッコ良ければいい。僕はそういうタイプですね。「黙祷」で一番攻めているのは間奏のギターですね。間奏の最後のタラリラ〜というフレーズは最初はキーに合った音にしていたんですけど、途中からここは事故みたいな音にしたいと思うようになって、まったく違う音を入れました。そこがこの曲で一番破綻している部分です(笑)。

OKMusic編集部

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