走り競いゴール目指すウマ娘達の躍動
と激情…それが間違いなくステージに
存在した! 舞台『ウマ娘 プリティ
ーダービー』~Sprinters' Story~ゲ
ネプロレポート

日本競馬の歴史を彩った名馬達と同じ名前と魂を受け継ぎ、ウマの耳と尻尾、そして最高時速70キロオーバーで疾走する脚を持った少女「ウマ娘」。そんな彼女達が仲間やライバルと共にレースで競い合う姿を描き、アニメ・ゲーム・コミック・ライブコンサートなど様々なメディア社会現象級の大ヒットを続けるクロスメディアコンテンツが『ウマ娘 プリティーダービー』だ。そんな『ウマ娘』がいよいよ2.5次元舞台へと進出。独特の世界観を舞台でどう描くのか? 何よりも多数のウマ娘が鎬を削るレースを舞台でどう表現するのか? そんなファンの期待を背負いながら幕が上がった舞台上で繰り広げられたのは、紛れもなく『ウマ娘』の熱い物語と躍動感あふれるレースだった。
2023年1月15日(日)の開幕に先立ち、ゲネプロが行われたのでレポートする。
※ネタバレが気になる方はご注意ください。

■期待と重圧、走ることを楽しむ情熱……ウマ娘達の様々な思いが交錯する
「華麗なる一族」と呼ばれて活躍した祖母や母に続こうと奮闘するも、桜花賞・オークス・エリザベス女王杯の「トリプルティアラ」で結果を残せず、短距離レースでの戦いで再起を目指す令嬢・ダイイチルビー(礒部花凜)。
そんな彼女のまばゆい走りに一目惚れして、同じレースで走りたいと彼女を追いかける太陽のように明るいギャル・ダイタクヘリオス(山根 綺)。
ダイタクヘリオス役:山根 綺    (c)舞台「ウマ娘 プリティーダービー」(c) Cygames, Inc.
レースやライバル達の思いを様々な「風」に例える独特の感性で、そよ風(ゼファー)という名前とは裏腹な熱い走りを見せるヤマニンゼファー(今泉りおな)。
そしてかつて二度も生死の境を彷徨いながら「奇跡的に」一命をとりとめた経験から、自分を助けてくれた人々に走りで恩を返そうと、命を燃やすような鮮烈な走りでレースに挑むケイエスミラクル(佐藤日向)。
今回の舞台は、そんな四人のウマ娘のモデルとなった競走馬達が鎬を削った、1991年の中央競馬・短距離戦線をモチーフに描かれている。
ダイイチルビー役:礒部花凜    (c)舞台「ウマ娘 プリティーダービー」(c) Cygames, Inc.
何としても短距離路線で「華麗なる一族」の名に恥じぬ結果を出そうと、プレッシャーを背負いながらレースに挑むダイイチルビー。そんな彼女と一緒にレースを楽しみたいとダイタクヘリオスが絡んでくるが、レースに対する姿勢の違いから無視に近い冷たい態度を取ってしまう。そんな彼女は、寮のルームメイトで同じ短距離路線を目標とするケイエスミラクルの輝くような高速の走りに心奪われる。
幼い頃に生死の境を彷徨い、様々な人の助けで走れるようになった恩に報いるために走ると語るケイエスミラクル。そんな彼女に自分と同じものを感じて惹かれていくダイイチルビー。だが、少しでも速くGIレースでの勝利を掴もうと無茶なローテーションでレースに挑み続けるケイエスミラクルの姿に、自身も怪我やコンディションに苦しみながら走っているヤマニンゼファーは危うい不安を感じとっていた。
ヤマニンゼファー役:今泉りおな    (c)舞台「ウマ娘 プリティーダービー」(c) Cygames, Inc.
それぞれの思いを秘めながらレースで競い合う四人。そしてダイイチルビーはかつて母や祖母が勝利したGII・高松宮杯に必勝の覚悟で挑むが、彼女に仲間でライバルとして認めてもらおうと全力の走りで挑んできたダイタクヘリオスの前に敗れてしまう。ダイタクヘリオスの強さを認めながらも、結果を出すことに固執する彼女の心は次第に追い詰められていく。
ケイエスミラクル役:佐藤日向    (c)舞台「ウマ娘 プリティーダービー」(c) Cygames, Inc.
そしてケイエスミラクルは、自分が走れる時間が残り少ないことを悟り、秋のマイルチャンピオンシップかスプリンターズステークスに照準を定める。すでに彼女がかなりのダメージを抱えていることを知ったヤマニンゼファーは止めようとするが、命がけの覚悟を決めたケイエスミラクルにその願いは届かなかった。
ケイエスミラクルの決意にショックを受けながらも、自分も同じように覚悟を持って走っているダイイチルビーに彼女を止めることはできなかった。だが、それを知らずに「レースを楽しもう」と語りかけてきたダイタクヘリオスに、ダイイチルビーは思い詰めた感情を爆発させてしまう。
ダイイチルビーとケイエスミラクルの思いを知ったダイタクヘリオスは、二人に「走りを楽しむこと」と「自分のために走ればいい」ということを証明すべく、マイルチャンピオンシップでの勝利を宣言する。もっと一緒に楽しく走り続けたい二人を呪縛から解き放つために……。
   (c)舞台「ウマ娘 プリティーダービー」(c) Cygames, Inc.
■ハイスピードのタップダンスとスクリーン演出が生み出すウマ娘達の激しいレース!
物語の主役となる四人のウマ娘をゲームやアニメで各キャラクターを演じる声優自身が演じていることもあり、演者とキャラクターが見事な一体感で重なり、舞台上にウマ娘がリアルに存在しているかのように感じられた。特に今回が舞台初体験となるダイタクヘリオス役・山根 綺とヤマニンゼファー役・今泉りおなの活き活きとしたウマ娘ぶりは必見だ。そしてゲームでもまだ登場したばかりのため、この舞台で初めてそのキャラクターが掘り下げられたダイイチルビーとケイエスミラクルも、数多くの舞台経験がある礒部花凜と佐藤日向が演じることで、自らが科した宿命に苦しむ複雑なキャラクターが見事に描かれていた。そんな四人の演技の積み重ねが織りなす終盤で見せる、ダイイチルビーとケイエスミラクルの膨れあがった苦しみ、そして持ち前の明るさを失わないままで二人と向き合い救おうとするダイタクヘリオスの決意のシーンは必見だ。
そんなウマ娘達の思いがぶつかり合うレースシーンは、舞台という限られた空間の中で実際のレース場(競馬場)を感じさせるアイデアと演出が詰まった大きな見せ場だ。
舞台の背後に備えられた二枚のスクリーンにはレースコースがアニメーションで映し出され、その流れとアップテンポなBGMに合わせてウマ娘を演じる出演者達はタップダンスでその走りを表現。スタート直後はそれぞれが異なる走り(タップ)でポジションを争い、コーナーでは全員が斜めに隊列を広げて駆け抜け、登り坂では深い前傾姿勢で駆け上がっていく。そして最後の直線では音楽と共にその脚の動きも加速しながら一着目指して競り合う様が大迫力で繰り広げられる。物語の鍵となるレースでは、演者の表情がリアルタイムで舞台上側のスクリーンに映し出されるなど、物語的な臨場感も満点だ。
マニアックな見所としては、レース展開がモデルとなった実際のレースに準じている点も見逃せない。四人以外のウマ娘達も名前こそ明記されないが実際に走った競走馬を参考としており、その走る様子もしっかり再現されている。それぞれのレースをリアルタイムや映像で見た事があるという人なら「あのウマ娘は○○か!」という楽しみ方もできるのだ。
   (c)舞台「ウマ娘 プリティーダービー」(c) Cygames, Inc.
レース以外でもパドックでの顔見せや練習シーンなど随所にタップダンスが織り込まれ、ウマ娘の躍動感に満ちた舞台作りにも一役買っているのだ。
■会場ではぜひコンサートライトを手にしてウイニングライブも楽しもう!
物語やレースと並ぶ今回の舞台の見所が、レースの勝利をウマ娘と共に分かち合う「ウイニングライブ」だ。舞台では様々な歌のシーンが盛り込まれているが、物語と密接に絡むミュージカルシーンとは別に、レースを走ったウマ娘と客席のファンが共に盛り上がるウイニングライブのシーンが用意されている。ウイニングライブの前後には舞台の左右両サイドにあるスクリーンでコンサートライトのON/OFFの指示が表示されるので、それに合わせてコンサートライトを輝かせて振ったり、曲に合わせてのクラップなどを楽しみながら、劇中のウマ娘ファンになった気分で盛り上がれるのだ。
劇場売店では公式コンサートライトが販売されており、舞台の序盤で使い方に関するレクチャーコーナーもあるので、ライブとかに行ったことのない人もこの機会にぜひ楽しんでみてほしい。なお、違法改造したものや大型のコンサートライト、折って使うケミカルタイプのライトなどレギュレーション違反のものは観劇を妨げるため持ち込み・使用禁止となっているのでご注意を。
熱い物語とレース、そして多彩な楽曲と共に繰り広げられるミュージカル&ライブと、『ウマ娘 プリティーダービー』の世界をリアルで体感できる今回の舞台。ウマ娘ファンはもちろん、2.5次元舞台のファンも楽しめること確実の舞台に仕上がっているので、ぜひとも劇場に足を運んで楽しんでほしい。
なお、本公演は2023年1月15日(日)~1月29日(日)まで品川プリンスホテル ステラボールにて上演。
   (c)舞台「ウマ娘 プリティーダービー」(c) Cygames, Inc.
スタッフ・キャスト 初日コメント
■演出:児玉明子
いよいよ本日より、舞台『ウマ娘』が出走致します! 今回のSprinters'Storyという作品、まずストーリー自体がとても胸熱なのですが、それに負けじと本当に熱量の高い稽古場でした。たくさん笑い合い、時には涙を流したり……。この運動量の多い稽古でみんなが流した汗とその涙は、必ず作品に表れて、客席のトレーナーの皆さまに届くと、私は確信しています。お芝居も歌もレースもウイニングライブもある、盛りだくさんの最高のエンターテインメントをお楽しみ下さい!
■ダイタクヘリオス役:山根 綺
いよいよ本日15日、舞台『ウマ娘』の幕が上がります。そしてなんと大安吉日! すっぴんわっしよいな日です。 ヘリオスに出会ってから約3年。
声優の枠を超えて、役者としてヘリオスを生きることができ、大変光栄です。底抜けに明るい彼女が私に教えてくれた、本当に大切なこと。
そして、舞台に立つ一人ひとりが抱える想いを胸に、カンパニー全員で、全22公演全力で駆け抜けます! 是非、あなたの推しウマ娘を見つけてくださいね!
この物語がたくさんのトレーナーさんに届きますように。 一生忘れられない最高の時間を、一緒に作りましょう! 劇場でお待ちしています! !
■ヤマニンゼファー役:今泉りおな
トレーナーさんのみなさんっ!
やっと! 舞台『ウマ娘』が出走します!!
今泉的ゼファーさんの見どころは、普段穏やかなゼファーさんが見せるお茶目な顔や、感情を露わにするシーンです。振付の動きで遠くに移動するところがあり、そんなときでも本気の全力で走っているところも見所のひとつです!!
みんな命を燃やすくらい全力で駆けてきました。本番も燃え尽きるほどに全力で駆け抜けます。私たちの巻き起こす風をせひ感じてください。
■ダイイチルビー役:碩部花凜
いよいよ、舞台『ウマ娘』の物語をトレーナーさんの元にお届けする日がやって来ました。
正直なところ、ドキドキだったり、楽しみだったり、責任であったり、今は色んな気持ちが入り混じっています。様々な試行錯誤を繰り返し、キャスト・スタッフさん一丸となり、そしてルビーと共に研鑽を重ねた日々がひとりの作品として形になりました。
それをトレーナーさんにお届けできる日を目指して今日までやってきたので、その日を迎えられることがとても有難いです。私たちの全力、そしてルビーの華麗なる走り、どうぞご照覧あれ……!
■ケイエスミラクル役:佐藤日向
まもなく『ウマ娘』初の舞台の幕があきます。
ゲートイン、初出走です。色々なことが目まぐるしく起こる稽古期間でした。驚きと悔しさで演出の児玉さんの隣で大号泣した日もありました。
ここまで私が駆け抜けて来られたのは先生方、そして沢山の方の支えがあったからだと強く感じています。支えてくれたみんなにケイエスミラクルと共に恩返しを、最高の舞台で届けたいです。
千秋楽までカンパニー一同足並みを揃えてゴールイン目指します! 品川のステラボールというレース場にてお待ちしております!
取材・文=斉藤直樹

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