the GazettE 真摯に音楽でぶつかり
合い、心を動かすことを追求してきた
バンドの20周年イヤー最後のライブを
振り返る

the GazettE LIVE TOUR2022 -MASS- / PHASE 02-"The Unknown"

2022.12.21 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
「the GazettEというモノは一生続くものだと思って俺らやってるから、安心してください。俺らとお前らが一緒になってデカくならないと意味がないんで」
ツアー最終日のアンコールで発せられたRUKI(Vo)の言葉は、コロナ禍でライブが制限され、愛するバンドと同じ空間を共有することが著しく困難になってしまったことによるファンの不安を、まっさらに払拭してくれた。
昨年リリースされた10thアルバム『MASS』と歴代のアルバムそれぞれを掛け合わせ、日本全国、東西それぞれ6箇所で行われた『the GazettE LIVE TOUR2022 -MASS- / PHASE 02-"The Unknown"』。2002年の結成から20年を迎えて開催された本ツアーには、ある意味アニバーサリー的な意味合いもあったものの、RUKIいわく「ただ懐かしいものだけにはしたくなかった。the GazettEがなぜ、こういう形になったのか? どういうプロセスや音楽性を通ってここまで来たか?を、全国に伝えたかった」という意図が、そこにはあったという。つまり、この20年間で彼らが生み出してきた楽曲や成してきた活動は全て“今”に繋がり、無駄なものは何一つ無かったということ。1ツアー12本のライブを経て、それを証明できたからこそ、万全の自信を持って“一生続く”という言葉が飛び出したに違いない。
RUKI(Vo) 撮影=Kyoka Uemizo
この日、12月21日にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で行われたツアーファイナルのタイトルは『[MASS]✕[NINTH]』。タイトルの通り9枚目のアルバムとなった『NINTH』は2018年に発表された直近作であり、結果『MASS』の世界観とは最も違和感なく馴染んで、最新の“the GazettE”を提示するに至った。オーディエンスの手拍子を受けて5人がステージに上がり、RUKIのシャウトと戒(Dr)のブラストビートで「BLINDING HOPE」が爆裂するという幕開けも、昨秋のライブ再開から今春のアルバムツアーを経て既にお馴染みのもの。天井の高い会場の構造もあってか、その重低音はより“上”へと抜け、《ここが世界の果て》というキラーフレーズも、ライブを重ねた今は嘆きではなく、優しい温もりを感じさせる。さらに「ROLLIN'」へと雪崩れ込むとヘッドバンギングの嵐が吹き荒れ、スポットを浴びたREITA(Ba)のゴリゴリベースが唸るが、そんなヘヴィ極まる音塊から感じられるのは観る者をねじ伏せんとする攻撃性ではなく、共に楽しもうという強い意志。その熱に客席では曲中から拍手が自然発生し、続いてRUKIがシャウトを繰り返す「NINTH ODD SMELL」でも、猛烈なエネルギーの発露にステージの上も下もトランス状態に陥る。
麗(Gt) 撮影=Keiko Tanabe
「ツアー最終日、そして2022年最後のライブになります。俺らももちろん悔い残さないように死ぬ気で行くんで、お前らも死ぬ気で来いよ。今日はとことん楽しもうぜ!」
その言葉をえるかのように『MASS』から「HOLD」、『NINTH』から「裏切る舌」と、2枚のアルバムから高速チューンを投下し、弦楽器隊によるパワーコーラスも相まって客席はカオスの渦に。ひたすらパワフルな猛攻は、しかし「NOX」から色を変え、艶めかしくうねるような旋律が満場の拳を突き上げさせながらも、頭上に張られる赤レーザーの膜と共にどこか妖艶な空気感を創り上げる。そして『NINTH』のリード曲でもある「Falling」からの中盤ブロックは、the GazettEにしか為しえない濃密な世界観を構築して、まさしく圧巻。スモークが揺らめくなか、囁くようなRUKIのハイトーンで幕を開けるやシャウトでバンドインして会場ごと地の底へと叩きつけるという、その激烈な展開は《さあ目を開け落ちていこう》というサビ詞を見事に具現化し、漂う絶望を青と白のレーザーが冷たい光で彩っていく。対照的に、赤いライトが蜘蛛の巣のように舞台を覆ったのが「濁」。囚われの呪縛から解き放たれんと大きく身体を振りかぶりながらプレイするメンバーが、逆光によるシルエットとなって視界に映る姿はいっそ神々しいほどだ。一転「THE PALE」では、星々が瞬く天井の下、全員が動きを止めて黙々と演奏に専念しながらも、闇の中から夜明けを望む昂りを音で表現。天から降る光をつかみ取ろうと手をかざすRUKIの動きも切なく、葵(Gt)の爪弾く清らかなアルペジオで「その声は脆く」が始まると、さらにボーカルは艶やかに張って静謐な美しさで悲しみを表してみせる。しかし、喉が張り裂けんばかりの叫びが放たれた瞬間ミラーボールが眩い光を放ち、麗(Gt)がエモーショナルなソロで場を席捲するという鮮烈な進展には、5人の生む音と景色にひたすら五感を凝らしていたオーディエンスからも割れんばかりの拍手が。そうして場内に広がる感情のほとばしりを「MOMENT」のアコースティックな響きが優しく鎮め、永遠の想いを残すという幕切れに至るまで描き出された濃厚な時間も、この日の『MASS』✕『NINTH』というコンセプトがあったればこそだろう。最新2作からディープなナンバーを選りすぐって、あえて固め打ちするという大胆なメニューは彼らの自信の表れでもあり、その戦略には完全に“してやられた”と言うほかない。
葵(Gt) 撮影=Kyoka Uemizo
建物自体は異なるものの、14年ぶりに“渋谷公会堂”と名の付く場所に立てたことを語り、「2022年最後のライブなんで死ぬ気で来い! 首落とす気で来い!」とRUKIが号令をかけてからの終盤は、おなじみのナンバーで渋公を揺らしまくり。“野蛮人”というタイトルの意味通りの暴れっぷりを「BARBARIAN」で見せたオーディエンスは、続く「FRENZY」でも物理的な意味で床を揺らし、「声出せないなんて関係ねーよな!」と叱咤された「UGLY」で凄まじい手拍子と拳の雨あられを降らせる。それを牽引するメンバーの演奏も緩急豊かにスリリングで、戒のタフなドラミングが支える轟音に麗のライトハンドが色を添える一方、REITAはいち早くセンターに乗り出して場を挑発。「もっともっとイケるよな! 最愛を贈るぜ!」と「UNFINISHED」をブチ上げたRUKIも、ステージ上を端から端まで渡りながら終わることのない約束を歌い聴かせ、「LAST SONG」でも「揺らせ、渋谷!」といつになく熱情を剥き出しにする。その言葉に応えて目いっぱい跳ねるファンたちに葵がジッと目を向け、さらに手で煽れば、会場内の温度は急上昇。本編を終え、おのおの客席に向けてアピールしながらステージを去る姿からも満足感の大きさは窺えたが、事実、アンコールに再登場して「最高です!」と発した戒の声音には万感の想いが籠っていた。
REITA(Ba) 撮影=Keiko Tanabe
さらに「今年最後のライブということで、もう後のことは考えなくていいから。今日終わったらいったん倒れていいから、暴れていこうぜ!」と続けると、マーチのリズムが楽しい「INSIDE BEAST」に、キャッチーな旋律と疾走感に分厚いサウンドを併せ持った「VERMIN」というオイシいナンバーで、オーディエンスを高揚の極みに引き上げる。2020年から2021年にかけthe GazettEは2年もの間ライブを控えてきただけに、時間と空間と熱をファンと共有できる喜びは大きく、それに対する感謝をRUKIはこんな言葉で表した。
「こういう状況下でツアーを回れるようになるのは時間がかかった。今回、全国を回って思ったのは……そりゃあ声を出せるのが一番いいよ。でも、声以外にも身体で応えてくれたのが一番嬉しかった。(中略)やっぱライブやってないと生きてる心地がしねーんだよ! ライブやってこそthe GazettEっていうものができるし、俺らがあってこそお前らの首っていうのは生かされるだろ? 2022年、非常に楽しませてもらったなと思うので感謝してます。今日、残りのライブも2023年に続けられるような最高の締めにしたいと思うので、よろしくお願いします」
戒(Dr) 撮影=Kyoka Uemizo
そこからカオティックな「ABHOR GOD」で「頭振れ!」と命令してオーディエンスの首をタフに働かせ、「LINDA~candydive Pinky heaven~」から「TOMORROW NEVER DIES」というおなじみの並びでライブを締めくくるが、ツアーファイナル兼2022年のラストライブに懸ける彼らの想いは人一倍だった。ギター隊はステージの両端に設置されたお立ち台に上り、安定したプレイでその存在を知らしめ、RUKIも「まだ力残ってるか! 出しきれよ!!」と客席のエネルギーを一滴残らず搾り取ろうとする。終盤でフロント陣がセンターに集うのも胸熱で、REITAに至ってはお立ち台に足をかけて懸命に頭を振り、最後の力を振り絞ってターンを繰り返したあげく「マジ死ぬ…!」と漏らしたほど。そして2022年ラストということで、特別にメンバー一人ひとりから2022年を振り返っての言葉が贈られる。
「素直に今日のライブは楽しかったと思います。準備する曲が多くて大変でしたが、昔の曲をやるということが、こんなに有意義だとは思っていませんでした。みんなにも忘れないでほしいし、the GazettEの曲を愛してほしいので、またこういう機会があれば喜んでやりたいです。来年も楽しい景色を見せるので、期待してください」(麗)
「今年は20周年ライブから始まり、ツアーを回って初のファンクラブミーティングもあり。変わらない景色を見せてもらえて、みんなのおかげで楽しい1年になりました」(戒)
「今年は奪われたこともたくさんあったけど、それ以上に与えてもらえた1年でした。声出せなくてもできることを証明できて、本当にみんなよくやってくれました。また来年も可愛がってやるよ!」(REITA)
「今年はたくさんthe GazettEできたなと。1本1本いいライブにしたくて、緊張しっぱなしで、今日もお腹痛くなっちゃったんですけど(笑)、みんなが良い空間作ってくれるから僕らも幸せです」(葵)
書き連ねてみるとわかるが、あれだけ獰猛な音楽を生み出し、アグレッシブにパフォーマンスしながらも、彼ら自身は実に礼儀正しく、その人となりは誠実なものだ。いや、だからこそthe GazettEという存在に対してひたむきに情熱を傾け、努力を惜しまずにいられるのだろう。彼らのツアーファイナルでは終演時、今後の展開が映像で発表されるのが通例だが、この日は「今回は自分の口から伝えます」とRUKIがマイクを取ったのも、まさしく誠実さの証。「2023年3月よりライブハウスツアーをやります!」と伝えると、客席からは堪えきれない歓声があがり、「ライブハウスツアーは『NINTH』ツアーから4年ぶり。最高にヤバいライブにしたいので、ぜひ皆さん来てください。2023年、今年以上に最高のthe GazettE見せますので、またよろしくお願いします!」と約束して、the GazettEの20周年イヤーは幕を閉じた。
撮影=Keiko Tanabe
コロナ禍以前、the GazettEのライブといえば客席の歓声と言ってもいいほど、ファンの声は圧倒的なパワーを持っていたが、昨年のライブ再開以降は驚くほどに静まり返り、ただ手拍子とボディアクションだけで心を通わすファンとメンバーの姿がそこにはあった。「ルールを破るのがロック」などという愚行を犯さず、ただ、真摯に音楽でぶつかり合い、心を動かすことを追求してきた彼らこそ、真にロックなアーティストとファンではないかと筆者は思う。だからこそ、そこに“声”が戻ってきたとき、どれだけの爆発力が生み出されることになるのか? いずれ来るであろう未来への期待に、胸はときめくばかりなのだ。
取材・文=清水素子 撮影=Keiko Tanabe, Kyoka Uemizo

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着