上村祐翔×小野賢章×福山潤が語る 
TVアニメ『ツルネ -つながりの一射
-』への思い 高校時代の思い出と共
に作品の魅力をクロストーク

弓道をテーマに描くTVアニメ『ツルネ -風舞高校弓道部-』の第2期『ツルネ -つながりの一射-』の放送が2023年1月4日よりスタートした。美しい映像や音楽と、ひたむきに弓道と向き合うストーリーで多くの人を魅了する本作で鳴宮湊役を演じる上村祐翔、藤原愁役の小野賢章、そして新キャラクターの二階堂永亮役の福山潤にインタビュー。新キャラクター二階堂の印象や人々を惹きつける美しい映像について、また本作を通して知った弓道の魅力、さらに3人の高校時代の悩みや学校帰りの寄り道エピソードなどを聞いた。

――ティザービジュアル公開時には新キャラクター・二階堂のイケメン度も話題に。新キャラ二階堂の印象をお聞かせください。
福山:ビジュアルの第一印象は「やばいな」です(笑)。こういうキャラクターが好きな人には多分、すごく期待をさせるであろうビジュアルだったので、引っ張られないように頑張ろうと思いました。(役作りは)いただいた資料と台本から読み解いていくスタンスでしたが、自分の役割のようなものは最初の1言、2言を話した段階で大体理解できたので、あとはもう、みなさんの期待を裏切らないようにしたいという思いです。キャラクターとしては大変面白い人物です。言えないことも、そして僕も分かっていないこともまだまだありますが、湊とは対極のポジションとして描かれていくので、みんなと仲良く朗らかに…とは違うように見えるのかなと。実際は複雑なところもあるのかな、みたいな。表層以外の部分で「なんとなくこうじゃないかな?」と僕的には理解しやすく、セリフから表情ひとつから拾えるものが多い人物という印象です。
二階堂永亮 CV福山 潤 (c)綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネII製作委員会
上村:『劇場版ツルネ -はじまりの一射-』で少しだけ登場したときには、ミステリアスさや不気味な印象があって(笑)。人と話すときには朗らかというか爽やかな印象があるけれど、部内(風舞高校ライバル校で新登場の辻峰高校弓道部)で話すときの雰囲気には底知れぬ怖さがあります。抱えているものをこれから出していくんだろうなって気がしています。湊にとっては中学時代にお世話になった先輩でもあるので、傍から見ると二人のやりとりはほんわかした印象なのですが、そんな場面でも「何を考えているのかな?」という雰囲気が漂っていて、これからどんな風に湊たちと絡んでいくのか。面白そうだと思うと同時にちょっと怖いなと。なんか、怖いもの見たさのような気持ちがあります。
小野:『ツルネ』の登場人物にはいろいろなタイプのイケメンがいるのですが、「まだいたか、イケメン」と思いました(笑)。愁との絡みは今のところないので、本当に印象だけの話にはなるのですが…。二階堂の話が出るときには毎回意味深なカットが入ることがあります。愁も二階堂に対して思うところはあるのかなと感じています。何らかの負の感情みたいなものがあるのか、すごく気になっています。
――美しい映像も本作の見どころかと。みなさんの印象に残っている美しいシーンを教えてください。
福山潤
福山:収録の段階でここまで仕上げてくれるのは、京アニ(京都アニメーション)さんの作品であれば不思議ではないこと。他の作品でもアフレコの段階で100%に近い映像が入っているというのはよく聞く話ですが、中でも『ツルネ』はスペシャルな感じがしました。僕たちに「こうして欲しい」「こういう気持ちで作っています」という作り手の意図のようなものを映像に落とし込んでくれている印象が強かったです。所作やキャラクターの表情はもちろん、矢の飛び方やそれこそアップにするのか引きにするのかなども含めて、台本と照らしながら見ていくと、僕たち演じる側にインスピレーションをたくさん与える映像にしてくれていると感じました。アフレコする側に対しての橋渡しがちゃんと出来上がっている映像だと思いました。
上村:本当に福山さんがおっしゃった通りで。『ツルネ』って静けさが印象的な作品なのですが、ここはどういう場所で、どういう空気なのかを映像から読み取れることがすごく大きいと感じています。そんな中で僕がすごく感動したのは、第1期や劇場版にもあった試合のシーンです。湊の一射を見つめる仲間たちだけでなく、試合を見ている観客一人一人にもちゃんと表情があって、どういう風に見つめているのか、漂う緊張感までも映像が際立たせてくれています。完成版を観たときには、得も言われぬ感情になりました。アフレコでは空間を想像しながら演じるのですが、完成版では奥行きが出て来てて、すごいなと思いました。
小野:『ツルネ』の登場人物はみんなすごく表情が豊かなんです。オーバーという意味ではなく、すごく細かく人間的な表情をしています。例えば、ちょっとピクッとしたり目線が少し外れたり。些細な目の動きひとつで、心情が汲み取れます。何かひっかかりがあるのかな、と思うようなところまで、映像から得られる情報がたくさんあるという印象があります。僕がすごく好きなのは矢が放たれて的に当たるまでの瞬間。一瞬のシーンだけど、毎回鳥肌が立つし、実際の弓道を見に行きたくなるほど惹きつけられます。
福山:なんであんなめんどくさいことするんだろう、ってくらいすごいよね(笑)。
小野:本当に。一滴の雫が落ちて、その水滴から波紋が広がるような感じというのかな。個人的に面白かったのは第2期の第1話の体育祭。名もなきモブキャラもみんなイケメンでした(笑)。
上村:確かにそうだね。
福山:基本的に美しい世界だから。
小野:この学校はみんなイケメンなのかって笑ってしまうくらいにかっこよかったです。
――作品を通して感じた弓道の魅力とは?
福山:弓道には妙にかっこいい印象もあったし、始めたくても簡単には始められない競技だと思っていました。そもそも弓道場のある場所を探さなければいけないなとか、やってもいないのに勝手にイメージだけでハードルを上げていて。でも、動画や資料で型について学んだり、試合を参考にする中で、思っていた以上にしっかり“武道”だという印象になりました。
鳴宮 湊 CV上村祐翔 (c)綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネII製作委員会
上村:弓道とアフレコはすごく似ている気がします。アフレコはマイク前に一人一人立ってお芝居をし、掛け合いをします。弓道は、団体戦なら弓を引き、それぞれのポジションで順番にバトンを渡していきます。劇場版では、全編新規でアフレコ収録して、キャラクターを再構築しました。緊張感を持って挑んだアフレコ現場にはピリッとした空気が漂うと同時に何とも言えない温かみも感じられ、まるで弓道の試合のように感じました。
小野:同じ動作を繰り返すのって、相当な集中力や努力がないとできないこと。どうしても飽きが来ちゃうし、自分と向き合い同じ所作を繰り返し極めていくのは、相当メンタルが鍛えられると感じました。団体戦になれば、自分と向き合うだけでなく、仲間からのバトンを受け取って弓を引きます。すごくレベルの高いことをやっている、極めるためにテクニカルなことだけでなく、精神面でもすごく頑張っている競技だと『ツルネ』を通して感じました。
――みなさんは高校時代に湊たちのように悩みもがいた経験はありますか?
福山:悩みあったかな?
小野:身長伸ばしたいくらいしかなかったかも(笑)。
福山:妬み嫉みはいっぱいありましたね。学校にはヒエラルキーっていうのがあるでしょ? あくまで僕の学校での話だけど、野球部とサッカー部に異常なくらい「プライドをへし折ってやろう」みたいな気持ちを持ち続けていたかな。
上村:アハハハ。
小野:僕もサッカー部苦手だったかも。
上村:基本、モテるから?(笑)。
福山:基本的に勢力図の一番大きいのが嫌いなので(笑)。群れて幅を利かせている面々を個の力でどう対抗しようか、みたいなことをずっと考えている高校時代でした。例えば、普段から鍛えている野球部、サッカー部の面々が、到底鍛えていないであろう漫画研究部の僕に体力で負けたらどう思うのか、とかそういう系のやつです。
上村:なんか二階堂みを感じます(笑)。
小野:僕も当時サッカー部はチャラいとか思っていたけれど、もしかしたら自分も同じくらいそう思われていたのかなって。軽音部だったんですけど、「練習しなきゃ!」というよりは「今日、練習どうする?」みたいなノリで、悩みなんてなかったくらいだし(笑)。
上村:サッカー部とかって何となくモテる、花形みたいなイメージがあるからかな。
福山:サッカーや野球は観るのも好きだけど、僕の通っていた高校でのヒエラルキーの問題でたまたまこの2つの部に妬み嫉みを……。で、悩みはあった?
上村:ありましたよ。
福山:よかった、悩みが出てきて。僕が話すと妬み嫉みになるから(笑)。
上村祐翔
上村:剣道部だったのですが、弓道と似ているところがあって、個人に委ねられる競技なんです。相性もあるし、結構もがきました。戦い方のスタイルをいろいろと試すんです。大きな声を出して威圧してみたり、ちょっとクールでカッコいい感じにしてみたり。
福山:得意技は何だったの?
上村:小手です。
福山:気持ちいいよね、僕も出小手が得意だった。10年くらい剣道やっていたけれど、僕が勝てるのは出小手だと見出して、得意技にしてた(笑)。
上村:何が自分に向いているのか、みたいなことは常に考えていました。毎日感覚は変わるし、剣道は竹刀を握っていないと(その感覚を)忘れてしまうので、剣道のことばかり考えて悩む日々でした。
小野:青春だね。軽音部は本当に楽しくて。「今日、練習どうする?」みたいなノリだから悩みとは無縁だったなぁ。
福山:妬み嫉みとかめんどくさいことを並べたけれど、僕も悩みはなかったな(笑)。どうやって授業をサボろうかとか、苦痛な勉強の時間を楽しむための工夫をいつも考えていたけどね。隣のクラスで授業を受けてみたりとか……。
上村・小野:え?
福山:隣のクラスに行って休みの人の席にシレッと座って授業を受ける。先生にいつバレるのかを試してみたり。
小野:実験的なこと?
福山:一番後ろは気づかれやすく、教卓の目の前は一番気づかれない!
小野:統計があるんだ(笑)。
上村:楽しそう(笑)、他にはどんな実験を?
福山:高校3年目は自主性を重んじ、自分で授業を組み立てなさいという時間があって。1年の頃はめちゃめちゃ頑張って2年では学年トップにもなったことがあったのね。だけど3年になって自主性を重んじる授業だというから全く出席しなかった。でも、なぜか担当教師がつけた出席簿では全部出席していることになっていて。イメージってすごいなというのを学びました(笑)。
小野:悩みのなさそうな高校生活(笑)。
――学校の外ではいかがでしたか? 湊たちのように寄り道してお好み焼きを食べるみたいなことは?
福山:学校の近くのお米屋さんで売っていたイカ焼き。基本は150円くらいで、ツナなどのトッピング増し増しで230円だったかな。安くて味も良くて、ヤンキーや留年した先輩たち(もちろん普通の学生もいる)のちょっとした溜まり場になっていて、いろいろ学べる場所でした。
上村:校門を出て徒歩10秒くらいの場所にパン屋さんとコロッケ屋さんがあって。部活終わりに毎日交互に寄って仲間と食べて帰るのが定番でした。早く帰らなきゃいけないのに、寄り道が楽しくて。青春を感じる時間でした。
小野賢章
小野:高校は新宿だったので立ち寄るところがいっぱいありました。大体、テスト期間中は昼前に学校が終わるので、帰りはコンビニで買ったラーメンマップを手にラーメンを食べに行くのが決まりでした。3年間ずっとやっていたので、マップで紹介されているお店はほぼ制覇。3年生になる頃にはもうマップを見ずに自分たちで店を探すようになっていました。
福山:ラーメン評論家のやり方だよね(笑)。
小野:確かに。新宿に関しては食べ尽くしました。僕のラーメン好きの原点は高校時代のラーメン巡りから来ている気がします。
――では、最後に。2期の見どころとファンへのメッセージをお願いします。
福山:二階堂はどんな人なのかを探す話にもなっていると思います。みなさんが期待していた『ツルネ』の世界、従来の物語の中に異分子として入っていく二階堂がどのようなエッセンスとして交わっていくのか。タイトルの「つながりの一射」の意味も第2期を観終わる頃には見えてくるはずです。タイトルバックも含めてかなりものを詰め込んでいる作品なので、期待して見届けていただけますと幸いです。
小野:劇場版を通してキャラクターを再構築したことで、しっかりと自分の中に落とせた状態で第2期に臨めたのはすごく大きかったです。愁は湊の幼馴染ではあるけれど、強豪校でライバルという立ち位置で出てきたこともあり、これまではどうしても“敵側”のような描かれ方をしてきました。第2期では愁が通う桐先高校の様子、その中での人間関係や愁自身が普段思っていることなども描かれているので、そんなところも楽しんでいただけたらと思います。
藤原 愁 CV小野賢章 (c)綾野ことこ・京都アニメーション/ツルネII製作委員会
上村:賢章さんがおっしゃったように、劇場版で役を再構築したことでスムーズに第2期に移行できた気がしています。これまでは風舞高校弓道部、特に湊にフォーカスを当ててきた物語ですが、第2期では愁率いる桐先高校や二階堂率いる辻峰高校それぞれが変化した先で絡んだときの化学反応に見応えがあると思います。一言で表せない弓道という競技を、それぞれの人物がどのように捉えているのか、すごく丁寧に描いているので、一射にかける思いをいろいろな角度から楽しんでほしいと思います。見どころは全部です(笑)。流れがすごく綺麗な作品なので、ひとつひとつ見落とさないように楽しんでいただければうれしいです。
取材・文=タナカシノブ

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