可知寛子×福田えり×森加織が喋り倒
す!『ミュージカル・リレイヤーズ』
初の配信イベント〜Shall We Talk〜
現地レポート

2021年にスタートしたSPICEの連載企画『ミュージカル・リレイヤーズ』初の配信イベント「SPICE Presents『ミュージカル・リレイヤーズ』配信版~Shall We Talk」が、2022年12月14日(水)夜に開催された。
本イベントは、連載初期に登場した可知寛子、福田えり、森加織の3人が、ミュージカル人生を振り返りながら約90分間喋り倒すという趣旨の企画。過去・現在・未来という時間軸でトークテーマを設けつつ、時折思い出のミュージカルナンバーも披露された。最初から最後まで笑いに包まれ大盛況で終えた本イベントの現地の模様をレポートする。
20年来の仲間であり戦友の3人
(左から)福田えり、可知寛子、森加織
冒頭は、これから始まるトークにぴったりな「ハッピートーク」(ミュージカル『南太平洋』より)の歌唱から。スタジオには3人の突き抜けるような明るい笑顔と歌声が広がり、一気に華やかな雰囲気に。実はこの曲、彼女たちが高校生のときに初めて出会ったとある大学のオープンキャンパスの課題曲。「このメンバーが集まるなら、これを歌わないわけにはいかない」と選曲した思い出のナンバーだったのである。
素敵な演奏をしてくださった菅谷詩織さん!
直近の3人の状況も紹介しておこう。可知は『ヘアスプレー』、森は劇団☆新感線『薔薇とサムライ2』の大千穐楽を迎えていた。一方、福田は『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト〜』の全国ツアー真っ最中。今やそれぞれ演劇・ミュージカル界の第一線で活躍している彼女たちだが、本格的なキャリアのスタートはユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)だったという共通点がある。
「一生喋れる」〜某テーマパークでの珍事件〜
某テーマパークのショーのとあるルールを実践で説明してくださった可知さん(右)。
というわけで、トークテーマは「USJ」から始まった。福田と森はUSJの『WICKED』のショーの立ち上げメンバー。可知は2年目に加わったため共演はしていないものの、同じ作品に携わっていた過去がある。テーマパークならではの思い出として挙がったキーワードは「鳩」と「冬」。当時ショーを行っていたのが半屋外のステージだったため、屋内型の劇場では考えられないようなハプニングの数々が明らかにされた。
可知寛子
例えば、隣で開催されているショーで放たれた“プロの鳩”が本番中のステージ上を歩いていたり、冬の極寒の中キャミソールのドレス姿で白い鼻息が隠せない問題が勃発したり、鳩のみならず虫がステージに乱入したり・・・・・・本人たち曰く「一生喋れる」程エピソードてんこ盛り。こうした環境のお陰で鍛えられたという彼女たちは、上京してからは屋内型劇場の快適さに「寒くないし、暑くないし、西日とかこないし」と衝撃を受けたそうだ。
USJの話で一盛り上がりしたところで、思い出のナンバー「For Good」(『WICKED』より)を披露することに。可知がグリンダパート、福田がエルファバパートという、ここだけでしか聴けない奇跡の組み合わせだ。互いに長年ミュージカル界で切磋琢磨してきた二人ならではの、それぞれの想いが滲む感動的な歌唱となった。
(左から)可知寛子、福田えり
(左から)可知寛子、福田えり
“オーディション百戦錬磨”のあの人
続いてのトークテーマは、ミュージカル俳優に欠かすことのできない「オーディション」。もはやベテラン俳優の彼女たちだが、今もなおオーディションを受け続けているという。幾度もオーディションを受けてきたからこその爆笑エピソードを明かしてくれた。
森がスキニーパンツを履いていたために脚上げに失敗したエピソードからは、オーディション時の服装の大切さがひしひしと伝わってくる。一度合格したときに着ていた服を験担ぎで何度も着ていくというのも、役者あるあるなのだとか。可知は以前オーディションに参加した際、まさかのプロボクサー、主婦、芸人と同じグループになり「『ミュージカルをやっています』というだけじゃ通用しないんだ、これからの時代は」と衝撃を受けたという。
森加織
最高潮に盛り上がったのは、以前ミュージカル・リレイヤーズの連載にも登場した後藤晋彦の話題だ。福田は「アンサンブル業界で“オーディション百戦錬磨の人”といえばこの人しかいない!」と断言。「たとえ振り付けを忘れたり間違えたりしてもなぜか受かってしまう」「筋肉でポップダンスを踊って受かる」「この人を取らないと損した気分にさせる天才」と、後藤エピソードが止まらない。気になった方はぜひ、ミュージカル・リレイヤーズ file.7の記事もチェックしてほしい。
福田えり
悔しかった思い出として森が挙げたのが、『アイ・ガット・マーマン』のオーディション時のエピソード。「2日後に1曲丸々歌ってください」と課題曲を渡された森は必死に特訓。オーディションでは一体どこで止められるかわからない状況のため、実際に最後まで歌いきれたのか定かではないという。そんな悔しい思い出のナンバー「Some People」(『アイ・ガット・マーマン』より)に、森がリベンジ。「ここで受かる!」と意気込み、とびきりパワフルで迫力のある歌声を響かせてくれた。
森加織

森加織

アンサンブル経験で身に付いた能力〜タイツ・空間・メイク〜
トークテーマは「アンサンブル」へと移っていく。ミュージカルの世界を作る役割を担うアンサンブルを多く務めてきた3人が、知らず知らずのうちに身に付いた能力を教えてくれた。
アンサンブルは複数の役を演じるが故に早替えが必須なのだが、福田曰く、実はタイツも衣装に合わせて変えることが多いという。早替えに備え、事前にタイツのウエスト部分からつま先までを寄せて靴にセットしておくなど、1秒でも早く着替えられるように涙ぐましい努力をして作品世界を作っているのだ。
森は、決められたアンサンブルの人数で広い舞台を埋める際に身に付いたという空間把握能力を挙げた。限られた舞台稽古の時間の中、上手下手のバランスや踊るときの立ち位置の最適解を自然と判断できるのだという。暗転で大人数が一つの袖にはける際もどの順ではけるべきかが瞬時にわかるそうで、アンサンブルで身に付いた咄嗟の判断力も凄まじいものがありそうだ。
(左から)森加織、福田えり、可知寛子
そして可知が挙げたのが「メイク」。今やYou Tubeチャンネルで数々のメイク動画をアップしている可知だが、いろいろな人に教えてもらいながら自分なりに試行錯誤し続けた結果、今のメイク技術を身につけることができたのだという。この日は生配信中に可知がカメラに向かってメイクをするコーナーも設けられた。可知は一切迷いのない手捌きで眉を消し、新たな眉を書き足し、口紅を塗り、まつ毛をつけ、見事に顔の半分が別人に。もはや芸術とも言える職人技である。ちなみに、残りのトークはこのメイクの状態のまま進行が続いた。
マジックの如く華麗に眉毛を消す可知さん。
ほんの一瞬のメイクで半顔が別人になってしまった可知さん。
これからミュージカル業界を目指す人へ
気付けば配信も後半に。ミュージカル俳優を目指していた頃の自分たちを思い出しながら、今ミュージカルを目指す人たちに向けてのエールが送られた。森は「ありのままで頑張ること」、福田は「失敗を恐れない強い心を持つこと」、可知は「自分で道を決めること」と、長年ミュージカル業界で活躍してきた3人ならではの実感の込もったエールとなった。
トーク中、配信視聴者からのチャットコメントを取り上げる場面も多くありました。
さらにマスクでの稽古、オーディションの動画への移行、舞台配信の増加といった近年のミュージカル業界の変化についても意見が交わされた。中でも画期的なこととして挙がったのは、2022年夏に上演された『シュレック』の日本トライアウト公演。フルキャストをオーディションで選ぶというなかなかない試みに「希望を感じた!」と言う。
ここで、オーディションを勝ち抜いてフィオナ姫の役を射止めた福田が劇中ナンバー「Morning Person」を歌うことに。この曲は可知が個人的に大好きな曲ということで、福田にリクエストしたそうだ。福田は最高にチャーミングなフィオナ姫を伸び伸びと演じきり、束の間『シュレック』の世界を堪能させてくれた。
福田えり

福田えり

90分間ノンストップで繰り広げられたトークの最後は「ミュージカル界 今年の一文字」で締めくくられた。この1年、劇団☆新感線の公演に携わっていた森は「目がチカチカするくらいひたすらに華やかだった」と振り返り「華」を。福田は「大変な時期ではあるけれど、日本オリジナル作品も増えていろんなことをやろうとする活力を感じた」として「活」を。可知は、コロナ禍で一度は劇場が完全に止まってしまう時期もあったが、今年はその歩みが進み、同時に様々な面で進化も感じられたとして「進」を。いずれも明るく前向きな1文字で2022年を振り返った。
今年のミュージカル界の一文字はこちら。華・活・進
配信中は視聴者からリアルタイムでチャットが送られ、本イベントの第2弾、第3弾を望む声も多く寄せられていた。『ミュージカル・リレイヤーズ』の連載は今後もまだまだ続く予定だ。本連載を通して、ミュージカル界で活躍する魅力的な人々の存在を知ってもらえたら嬉しい。
(左から)森加織、福田えり、可知寛子
取材・文・写真=松村 蘭(らんねえ)

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