aikoがフェス初出演、トリはSUPER B
EAVER、Creepy Nuts、Superflyらと喜
びを分かち合った『FM802 RADIO CRA
ZY 2022』3日目レポート

『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2022』2022.12.27(TUE)インテックス大阪
大阪のラジオ局・FM802が主催する関西最大級のロックフェス『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2022』(以下、『レディクレ』)が、12月25日(日)〜28日(水)の4日間にわたり大阪・インテックス大阪にて開催。今年はコロナ禍を経て3年ぶりにインテックス大阪での開催で、4日間で総勢約100組のアーティストが出演する「ロック大忘年会」となった。観客にとっても、アーティストにとっても、スタッフにとっても念願となるインテックス大阪での『レディクレ』も3日目にさしかかり、日々会場の熱量も増幅。大型フェス初出場となるaikoや『レディクレ』初参戦のCreepy Nuts、そしてトリを飾ったSUPER BEAVER など、ピックアップしてダイジェストでレポート!
【Spotify Early Noise LIVE HOUSE Antenna
■RADIO∞INFINITY「電波無限大」
RADIO∞INFINITY「電波無限大」 撮影=ハヤシマコ
LIVE HOUSE Antennaステージのトップを飾るのは、毎週木曜深夜に放送中の番組、FM802『RADIO∞INFINITY』の企画で誕生したコラボユニット、電波無限大。関西のライブハウスシーンを牽引するRe:namethe paddlesCAT ATE HOTDOGSBye-Bye-Handの方程式の4バンドメンバーによるスペシャルバンドは、FM802秋のサーキットイベント『MINAMI WHEEL 2022』でも入場規制となり注目を集めた。まずは自己紹介がてら各バンドが2曲ずつ披露。爽やかなハーモニーで身体を目覚めさせてくれたRe:name、「手加減なしでやるぜ! よろしく!」と短い時間の中でもこのステージへかける想いを爆発させたBye-Bye-Handの方程式がライブバンドとしての底力を見せつけた。
RADIO∞INFINITY「電波無限大」
そして、「彼らの音と言葉は胸をえぐります」と『RADIO∞INFINITY』DJの樋口大喜が紹介したのは、the paddles。「ライブハウスでやってきたことを証明して帰ります!」と鳴らした真摯でポジティブなギターロックにオーディエンスは呼応し、ライブハウスさながらの景色を作り出していく。そしてラストは、CAT ATE HOTDOGS。中毒性のあるダンサブルなビートに身をゆだねたあと、電波無限大によるコラボ曲「サカサマデイドリーム」へつなぎ、各バンドから高木一成(Re:name、Ba.Vo)、柄須賀皇司(the paddles、Vo.Gt)、ひこ(CAT ATE HOTDOGS、Gt.Vo)、汐田泰輝(Bye-Bye-Handの方程式、Vo.Gt)らシンガーが中心となり、POPで華やかなサウンドとともに祝祭感たっぷりに盛り上げた。最後はメンバー全員がステージに集合。深夜ラジオのような楽しさでライブハウスの熱狂をそのままに届けた。
取材・文=岡田あさみ
なきごと 撮影=ハヤシマコ
続いて登場したのは、なきごと。水上えみり(Vo.Gt)が「来たぞ『レディクレ』ー!」と気合いのシャウト。初登場とあって、1曲目「不幸維持法改定案」から並々ならぬ想いが、力強い歌声と細やかで美しい音からヒシヒシと伝わってくる。「ここはライブハウスを模したステージです。一番カッコ良いライブハウスを見せるのは、なきごとです。あなたとこの場所をつくりたいと思ってやってきました!」と宣言。この日のFM802で初OAされることになっていた、来年1月11日(水)リリースの1stフルアルバム『NAKIGOTO,』に収録されている「私は私なりの言葉でしか愛してると伝えることができない」も披露され、「メトロポリタン」では岡田安未(Gt.Cho)の冴え渡るギターに釘付けに。
めくるめく展開していくステージはあっという間で、「ライブハウスじゃなきゃ受け取れないものが間違いなくここにあって。音源のその先をあなたに見せたくて。あなたの毎日に寄り添えるように」とラストは「癖」へ。「想いが溢れすぎて、35分じゃ足りないな」と水上が漏らしていたが、観客も同じ気持ちだったはず。この名残惜しい余韻が明日からの日常にも漂い、またライブハウスに足を運びたいと思う、ライブバンドの底力を見せつけるようなステージだった。
取材・文=大西健斗
マルシィ 撮影=ハヤシマコ
今年メジャーデビューを果たし、会場の熱気からもその注目度の高さが伺えたのは、マルシィ。早々にハンズアップが起こる一体感に包まれた「プラネタリウム」から「君のこと」と、情景が浮かぶナンバーが続き、吉田右京(Vo.Gt)の歌声が心の奥へと語りかけるように届けられる。shuji(Gt)とフジイタクミ(Ba)はステージを移動しながら、メンバーそれぞれが向き合いながら奏でたり、歌ったりととにかく楽しそうで。観ているこちらも楽しくなる、というかずっと観ていたいと思うほど愛くるしくて、胸が高鳴る。
MCでは、吉田が『レディクレ』初登場の喜びを伝えつつ、この日がフジイの誕生日であるとを明かす。そんな特別な日だからこそ、ABEMA『恋愛ドラマな恋がしたい in NEW YORK』のドラマ主題歌にも起用された特別な楽曲「幸せの花束を」をじっくりと届ける。ラストの「最低最悪」に至るまで、まっすぐと誠実に歌い鳴らされた楽曲は、どれだけ観客の胸に染みたことか。それは終演後、会場を後にする観客が特によかった曲の感想を伝え合ったり、思い思いに口ずさんで人たちの温かい表情が物語っていたと思う。
取材・文=大西健斗
リュックと添い寝ごはん 撮影=ハヤシマコ
この日のSpotify Early Noise LIVE HOUSE Antennaでトリを飾ったのは、リュックと添い寝ごはん。「青春日記」から「ノーマル」とインディーズ時代からの代表曲でライブはスタート。続けて、メジャーデビュー盤『neo neo』から「PLAY」、最新アルバム『四季』から「疾走」へと軽快にライブを展開していく。このコロナ禍でライブとリリースを重ね、この日のステージに辿り着くまでハイスピードで駆け上がってきた、彼らの歩みを辿るようなセトリにドラマを感じずにはいられない。
MCでは、『レディクレ』初参戦への喜びやaikoのライブに興奮と感動を隠せない様子のメンバー。衣装を互いに披露し合いながら、FM802の番組にもたびたび出演することができた1年の感謝を伝える。<大阪はホームさ/僕たちの>と歌詞を変えて歌われた「home」では、観客も体を揺らして応えるハイライトも。ラストは「Thank you for the Music」という、にくいセトリにハッピーなムードが会場に満ち溢れる。「次はでっかいステージで!」と宣言された約束が、また来年の『レディクレ』で果たされることを見届けたい。
取材・文=大西健斗
【R-STAGE】
androp 撮影=井上嘉和
4年ぶりの出演となったandropは、サポートメンバーにJuny-a(Sax)、森谷優里(Key)を迎えた5人編成で登場。ハンドクラップが鳴り響く中、ステージに一筋の光が差すようなキラメキに満ちた「Voice」からスタート。サックスとピアノが加わった奥行のあるアレンジと内澤崇仁(Vo.Gt)の柔らかな歌声がじんわりと体温を上げてくれる。<やっぱり俺らは大阪が好きだ>と歌詞を変えた「MirrorDance」、AORテイストの「Lonely」へと続く心地良いグルーヴに身体を揺らさずにはいられない。
androp
後半は、ゴージャスな赤い照明の中、内澤のボイス・パーカッションからセッションで次第に音が重なり合うジャジーなアンサンブルで魅了。「SOS!」では、<自粛してコロナと戦っていくつものライブ無くなってしまった>とアドリブで歌詞を紡いだ内澤だったが、ハレルヤ! と静かな情熱を讃えた彼らの明るいサウンドで未来への希望を共有できた気がした。
取材・文=岡田あさみ
Galileo Galilei 撮影=井上嘉和
2016年の日本武道館公演をもって活動を終了したGalileo Galileiが、ちょうど6年の時を経て、2022年10月11日に新体制でまさかの活動を再開! その発表後初のライブとあって、「Galileo Galileiです、今日はよろしく」という尾崎雄貴(Vo.Gt)の何気ないあいさつにも、計り知れない重みと感動が去来する。決して当たり前ではないその景色を見届けようと、演奏中も途切れずにR-STAGEへと集まってくる観客たちの目の前で、「恋の寿命」、「サークルゲーム」と立て続けによみがえる珠玉のポップソング。オリジナルメンバーである尾崎雄貴、尾崎和樹(Dr)、長年活動を共にしてきた岡崎真輝(Ba)、そして、2012年に一度は脱退した初期メンバーの岩井郁人(Gt)が構築する新たなアンサンブルが、みずみずしく心を潤していく。
「今年僕たちは始動して、初のフェス出演となりました。こんな機会をいただいてありがとうございます。FM802、そしてDJの大抜卓人さんには僕が高校生の頃に出会って。まだ僕らが北海道の稚内にいた頃にラジオで曲をかけてくれて、そこから長いお付き合いになります。僕の高校の卒業式にも802のスタッフの方が来てくれたり……そんなこともあって今日があるんだなと思っていて。改めて感謝をお伝えしたいです。ちょうど僕が高校生だった頃に書いた曲を、大抜卓人さんに捧げたいです」(雄貴、以下同)
そんな感謝を込めたデビュー曲「夏空」が、R-STAGEいっぱいに広がっていく。その後も、尾崎雄貴が鍵盤を奏でた優しき「Imaginary Friends」や、「来年アルバムを出したいなと思ってるんですけど、その中からまだ1回もやってない新曲を」と清涼感漂うラブソング「I like you」を聴かせ、ライブもいよいよ終盤に。「来年Zeppツアーが決まっていて。もし今日観ていいなと思ってくれた人がいたら遊びに来てください」と告げ、エバーグリーンな「青い栞」を経由し、壮大なサウンドスケープで送る「Sea and The Darkness II (Totally Black)」へ。Galileo Galileiの残してきた足跡と新たな息吹を縁ある地で鳴らした、記念碑的な40分間となった。
取材・文=奥“ボウイ”昌史
【L-STAGE】
milet 撮影=田浦ボン
バックバンドとコーラスを従え登場したのは、3年ぶりの『RADIO CRAZY』出演となったmilet。年末には3年連続となる『NHK紅白歌合戦』への出場も決定しているとあって注目度は高く、Lステージには多くの人が集まった。クールな黒のセットアップ&ブーツで華麗にステージを闊歩する姿に目を奪われていると「関西大好き人間が関西を思って作った歌です!」とミラーボール輝く中、関西愛たっぷりに「レッドネオン」を披露。包容力たっぷりにブルージーに歌い上げると、最後は「おおきに♡」とキュートな笑顔。
milet
そんな開始数分でくるくると変わる表情が自然で、圧倒的な歌唱力、ショーアップされたパフォーマンスともに誰もが心を掴まれてしまう。L-STAGEの空間をいかしたアレンジと、遠くへ伸びやかに響き渡るmiletの歌声が特別な時間をつくり出した「Fly High」を経て、「目立ちたいから赤着てきました!」とジャケットを脱いで後半へ。「みんなの体力が余っている内に使い果たさせておこう!(笑)」と宣戦布告し、アップテンポなナンバーを続けると、L-STAGEにはタオルを振るオーディエンスの笑顔が咲いた。
取材・文=岡田あさみ
Superfly 撮影=田浦ボン
2番目に大きいL-STAGEを早々に超満員にしたSuperfly。入場待機列は折り返され、屋外広場に設置された大型モニターの前も人で埋め尽くされた。もちろん会場でもざわめき立っていたが、屋外でも歓声が響いたのは「タマシイレボリューション」。痺れる歌声と大型バンドの演奏につられて拳が突き上げられた場内は、サッカースタジアムさながらだった。
Superfly
パワフルなパフォーマンスから一変し「大阪でのライブも、新幹線に乗るのも3年ぶり。こんなに新幹線は速かったんだ、なんて(笑)」と和やかなムードに。そして「FM802の皆さんにたくさんかけていただいた曲を」とデビュー曲の「ハロー・ハロー」につなげ、優しく言葉を紡いだかと思えば、「Alright!!」で再び会場を熱狂の渦へと誘い込む。Superflyの伸びやかな歌声と一緒に、小声でも<Na, na, na, …>、<yeah>と歌えることがとにかく嬉しい。続けて翌日(本日)リリースとなったTVアニメ『アオアシ』OPの「Presence」を披露。天井を突き破るほど高いキーを美しく歌いあげ、太陽のように暖かく爽快な歌声で観客のもやを全て吹っ飛ばしていった。
取材・文=川井美波
東京スカパラダイスオーケストラ 撮影=田浦ボン
SEの時点で異様に高ぶるL-STAGEに伊達男9人が並び、加藤隆志(Gt)のギターが空を切り裂くや怒濤のホーンの総攻撃! たった今ライブが始まったとは思えない熱量で、「We are 東京スカパラダイスオーケストラ!」と谷中敦(Baritone Sax)が雄たけびを上げるや、「DOWN BEAT STOMP」でも問答無用の狂乱のるつぼを創出。いとも簡単にL-STAGEを掌握する、これぞライブバンド、これぞスカパラ!
「今年のレディクレはヤバいね! 盛り上がってるね!」と、ステージから見渡すその絶景には谷中も高揚。茂木欣一(Dr)のボーカル曲「会いたいね。゚(゚´ω`゚)゚。」ではその歌唱のみならずドラミングでも魅せ、名曲「Can’ t Take My Eyes Off You/君の瞳に恋してる」のカバーでも、華しかないライブパフォーマンスに見ほれるばかりだ。
東京スカパラダイスオーケストラ、aiko、石原慎也(Saucy Dog
そして、スカパラと『RADIO CRAZY』と言えば、これまでもさまざまなコラボレーションを実現させてきたのは言わずもがな。「いくぜスペシャルゲスト!」の呼び掛けに、今年はSaucy Dogの石原慎也(Vo.Gt)が登場! 前日に続く『レディクレ』出演となった石原は、スカパラと揃いのピンストライプのスーツを身をまとい、「紋白蝶 feat.石原慎也(Saucy Dog)」でその伸びやかな歌声を響かせ、間奏ではチューバの演奏でも見せ場を作るなどフル回転。沖祐市(Key)の激しくも美しいピアノが圧巻の「水琴窟 -SUIKINKUTSU-」の後は、Z-STAGEでライブを終えたばかりのaiko が駆け付け、「Good Morning~ブルー・デイジー feat. aiko」を『RADIO CRAZY』にて再現! 同じくストライブのスーツもキュートなaikoが、その可憐でしなやかなボーカルをスカパラサウンドと共に届け、「めっちゃ緊張した!」というaikoに「最高!」と返すスカパラメンバーとのやりとりもほほ笑ましい。
東京スカパラダイスオーケストラ
ラストの「Paradise Has No BORDER」では再び石原とaikoを交え、壮絶なグルーヴまみれのエンディング! 今年も『レディクレ』の歴史に忘れられない名シーンを刻んだスカパラだった。
取材・文=奥“ボウイ”昌史
10-FEET 撮影=田浦ボン
L-STAGEのトリを飾るのは、5年ぶりのアルバム『コリンズ』がリリースされたばかりの10-FEET。お馴染みのSEとともにタオルが掲げられると、「よっしゃいこかー! ついてこいよ! ドアホウ!」とTAKUMA(Vo.Gt)の合図とともにKOUICHI(Dr.Cho)がカウントし、ヒリつく感情が剥き出しに紡がれる「アオ」からいつにも増してエモーショナルなスタートをきった。「goes on」で「しゃがめ! よう聞いとけよ! いくぞ!」とジャンプさせる場面も含め、久しぶりに一緒に歌える喜びは格別で、会場には「これこれ!」という笑顔が満開に。そして「ハローフィクサー」や映画『THE FIRST SLAM DUNK』のエンディング主題歌「第ゼロ感」で、同期音が取り入れられた最新のステージングをみせ、25周年を迎えた10-FEETが辿りついた現在地を示す。「映画(『スラムダンク』)の曲演りよったし! と(他のステージに)移動したら、爆発するシステムなってます」(TAKUMA)とのこと(笑)だったが、すっかり捕らわれてしまった人も多かったのでは。
10-FEET
NAOKI(Ba.Vo)のキックが空を舞うフェス映え最強な「その向こうへ」で覚醒したあとは、TAKUMAがシリアスに語り出す。「ネットでは炎上することが普通になってきていて。せめて顔みて目を見て言ったらいいのに。相手の目を見て、顔を見て。大事なことは会って言いたい」そして、文字以上に音楽やラジオの伝える力を信じていることを切々と語って繋いだのは「シエラのように」。曲中にも音楽で「また会おうな!」と語りかけ続ける、そんな人間味あふれる姿をありのままに見せてくれる彼らのライブそのものが何より雄弁だった。「802ありがとう!」とFM802 DJの名前を呼びかけていくTAKUMA。ラジオに携わる人々に最大級のリスペクトを伝えるとともにオーディエンスひとりひとりにも想い届ける「ヒトリセカイ」で本編が終了。そのままアンコールへ突入するとラストナンバーの定番「CHERRY BLOSSOM」でたくさんのタオルが宙に舞った。笑顔と涙の大合唱に包まれたあの景色はいつまでもみんなの記憶に残ることだろう。
取材・文=岡田あさみ
【Z-STAGE】
■Creepy Nuts
Creepy Nuts 撮影=渡邉一生
『レディクレ』初出場となる、Creepy Nuts。開演前から多くの観客が詰めかけ、入場規制となったZ-STAGE。「合法的トビ方ノススメ」でライブの火蓋を切って落とすと、あっという間にハイになって揺れてはうねるフロア。続けてR-指定が、「昨日、いろいろあってまだ寝てないねん。だからまだ夜ってことでいいですか?」と切り出し「よふかしのうた」へ。そう、R-指定が深夜に結婚を発表したばかりとあって、詰めかけた観客の期待も+αで増幅していた。
Creepy Nuts
MCに差し掛かると、会場からは拍手が起こり「おめでとー!」と祝福の声が飛び、それにまじって「松永がんばってる」という檄も。これには2人も笑顔を見せ、「普段なら腹立つヤジも嬉しいね」と声出しの解禁への喜びをあらわに。また昨日の今日ということもあり、何が語られるのかと目を輝かせる観客の視線を感じてか、ようやく『レディクレ』がインテックス大阪で開催できたこと、声出し解禁、ライブをまた楽しめる環境が戻ってきたことなど……いかにこのステージが特別で待ち望んだ人がいるかをこれでもかと語り、「そんなとこで私情を……」とR-指定。松永もうれしそうに、「そうだね。……はは、私情で湧いてらぁww」と観客を眺めて煽る、らしい場面も。
Creepy Nuts
ハッピーなニュースも去ることながら、地元大阪とあって、初出場とは思えないほど『レディクレ』のステージがよく似合う。和やかなMCと打って変わって、前半のゴリゴリな展開からより美しいメロディとエモーショナルなリリックが沁みる後半には、松永の指技にゴンフィンガーが続々。「また来年のいい景色に繋げたい。もっともっと先にいい光景が待ってると思っています。俺もお客さんもこのフェスものびしろしかないんですよ!」と、最後は来年への想いを乗せた「のびしろ」。1MC1DJのユニットにしかできない戦い方で、観客を根こそぎ巻き込み、ロックフェスに新たな歴史の一幕を残してステージを後にした。
取材・文=大西健斗
フレデリック 撮影=渡邉一生
最大級のキャパを誇るZ-STAGEに挑んだフレデリック。「40分一本勝負! 俺たちと熱くなろうぜ! 何がしたくてここに来たんですか?」と三原健司(Vo.Gt)が煽り、「オンリーワンダー」などキラーチューンだらけのセトリで前半から果敢に攻めていく。「俺たちの音楽が聴こえますか!?」と、どんな大きなステージであろうと、終始一対一で音楽を届け、ひとりひとりの人生の一ページになろうとする彼ら。熱狂しないはずはない。「Z-STAGEを選んでくれたFM802に感謝しています。何故、フレデリックがココにいるのか。俺らのライブがヤバいからですよ!」という健司の言葉を証明するかのごとく、鮮烈なダンスロックが炸裂すると、オーディエンスも手を上げ応える持久戦が繰り広げられた。
フレデリック
「この曲でみんなが踊ってたら、すげえいい景色になる」と確信し、『RADIO CRAZY』初出演時(2014年)に生まれたという「オドループ」。強力なギターリフが響くと、オーディエンスはハンドクラップでバンドとの完璧なシンクロを見せた。一人残らず踊らせるというバンドの気迫ともにクライマックスを迎えたかと思ったが、こんなもんでは終わらないのが彼ら。「最後に演るのが誰も知らない新曲というのが一番かっこいい」と新曲「スパークルダンサー」で未来を見据える。最後に放たれた「最高やないか!」という健司の言葉が今日のライブの成功を物語っていた。
取材・文=岡田あさみ
[Alexandros]
SEのカウントダウンとシンクロするように沸き立つクラップにいざなわれ、ロックスターの風格たっぷりにZ-STAGEへと現れたのは[Alexandros]。リアド偉武(Dr)がシームレスにリズムをつなぎ、それに呼応するように「歌えますか大阪!」と川上洋平(Vo.Gt)が声を上げれば、広大な空間を瞬く間にシンガロング✕ハンズアップが埋め尽くす。ハンドマイク片手に巨大なステージを端々まで動き回りマイクを向ける川上に応える大観衆に、再び高揚感という炎を注いだのは白井眞輝(Gt)の鮮烈なギターリフ。ド派手な照明もろともブチ込んだ「Starrrrrrr」で、序盤から容赦なくライブを沸点へと到達させる。
「大阪のみんなの声が聞きたかった」という川上の愛あるMCの後も、磯部寛之(Ba.Cho)のベースラインがドライブする、ドラマ『六本木クラス』の主題歌として話題を呼んだ「Baby's Alright」など、アドレナリンを誘発するナンバーを連発!
[Alexandros]
「ライブと音源の違いは、ここでしか演奏しない、歌わない、今日しか聴けない音楽だと思ってるんです。皆さん、自由に遊んで楽しんで騒ぎましょう! 俺が保証します、この街は世界一うるさくて、最高の街です。一緒に踊ろうぜ大阪!」(川上、以下同)
後半戦は、正確無比なデジタルとフィジカルの躍動感がないまぜに導くダンスナンバー群で畳み掛け、川上のなまめかしいステージングがトリップ感をさらに増幅。「本当に美しいです、この光景。耳に入ってくるみんなの声、最高です。ここからまた我々はテッペン目指してブチかましますので! あー終わりたくない」と名残惜しい気持ちを吐露しつつも、トドメのアンセム「ワタリドリ」でZ-STAGEを文句なしにブチ上げた、さすがの[Alexandros]だった。
取材・文=奥“ボウイ”昌史
■aiko
aiko 撮影=渡邉一生
「aikoがフェス初出演!」というメモリアルな『RADIO CRAZY』だけあって、開演前からはち切れんばかりの期待感がZ-STAGEに充満。その思いを託すかのような熱い拍手が彼女を待ちわびる中、姿を現すや一気に場が華やぐそのポップスターぶり。1曲目の「キラキラ」から見る者全てをとりこにし、続く「beat」でも満場のクラップを一身に浴びながら、大舞台をパワフルに駆け回る。イントロからざわめいた初期の代表曲「花火」でも、まるで色あせないポップネスに鳥肌が止まらない。ゴージャスなホーンサウンドが印象的な「夢見る隙間」では一転、真紅の光を背に艶っぽい歌声を聴かせるなど、セットリストが進むにつれ、彼女の底知れぬ魅力に心地よく落ちていくよう。
aiko
大観衆を前に「ヤバー! うれしい!!」と喜びを爆発させるaikoが、「初めて私、フェスに出るんです。それが『RADIO CRAZY』で本当によかったです。会場の裏に芸能人がいっぱいいました(笑)。今日は初めてのレディクレなんで、aikoを聴いたことがない皆さんに出会えるチャンスだと思って、いろんな曲を用意してきました」と人懐っこく語り、その最中にも客席から掛けられる声に、「後ろの皆さん! 「かわいい」入りましたんでよろしくお願いしまーす!」と愛嬌たっぷりにご報告(笑)。気を取り直して、「今からしっとり歌いますんで」と言ったもののイントロを間違え、その場にいるみんなでなかったことにする一体感も何とも楽しい。そんな「ハニーメモリー」では、メロウで切ない世界観にグッと引き寄せられる。
「ここには音楽が好きな人がたくさん集まってると思います。私もFM802の『MUSIC GUMBO』という番組に一部を形成されたんでとても感慨深いんやけど、ここで絶対にやろうと思っていた歌を皆さんに聴いてほしいと思います。柱があって観えにくい人もいるかもしれないけど、絶対に届けるから」
aikoとゲストの谷口鮪、藤原聡、はっとり
aikoが作詞・作曲を担当した2019年のFM802✕TSUTAYA ACCESS! キャンペーンソング「メロンソーダ」では、Official髭男dismの藤原聡(Vo.Pf)、KANA-BOONの谷口鮪(Vo.Gt)、マカロニえんぴつのはっとり(Vo.Gt)を呼び込むや、会場中が一気に大興奮! 豪華メンバーによるスペシャルなセッションに、ひときわ大きな歓声が上がる。「楽しかった! またやりましょう」と感無量のaikoが、「男子ー! 女子ー! そうでない人ー! 全員ー! もうちょっと盛り上がってな!」とライブの鉄板コールから流れ込んだ「be master of life」では特効の銀テープが舞い大盛上がり!
「みんなにいいことがありますように、みんなに届きますように」と放った「ストロー」で大団円かと思いきや、「皆さん、超絶に楽しんでください!」と、当初セットリストにはなかった「ボーイフレンド」まで披露! 「本当に大切な時間をたくさんくれてありがとうございました、またね! バイバイ!」と、最後の最後までライブがもたらす幸福を存分に感じさせた、記念すべき初フェス=『RADIO CRAZY』となった。aiko最高!
取材・文=奥“ボウイ”昌史
■SUPER BEAVER
SUPER BEAVER 撮影=渡邉一生
この日の最後のアクトを待ち構える静寂が包む中、ゆっくりとZ-STAGEへ歩みを進めたSUPER BEAVERは、トリのプレッシャーよりもそれを受けて立つ誇りすら感じる堂々のたたずまいで、ゆったりと、そしてずっしりと、「人として」を歌い上げる。ライブバンドとして積み重ねた18年が紛れもなく音に宿ったオープニングに、いきなり息をのむ。渋谷龍太(Vo)の「今日の出演者に大きな拍手を。スタッフチームに大きな拍手を。そして何より一番の拍手をあなたに。始まってるぞライブハウス!」という何ともらしいMCに、ビーバーはいつ何時もビーバーであると思い知る。
SUPER BEAVER 撮影=渡邉一生
「インテックス大阪! 帰ってきましたね。ずっとずっとお世話になってる『レディクレ』です。まさか今年はトリを仰せ付かるとは……ちょっと思ってましたけど(笑)。ひとえにあなたのおかげたと思ってます。だからこそ、あなたの気持ちが聞きたいです。今日はあなたと音楽を作りに来ました!」(渋谷、以下同)
このMCで、オーディエンスにスイッチがグッと入ったのが分かるぐらいに空気が動く。リーダーの上杉研太(Ba)を筆頭に、いつになく激しくも情熱的なプレイに観てるこっちも自ずと魂が突き上げられるような「名前を呼ぶよ」、そして柳沢亮太(Gt)のソリッドなギターがブッ刺す「ひたむき」と、2022年のビーバーを象徴する2大シングルを投下しこれでもかと心を揺さぶった後に、「東京流星群」。「あなたが大好きなバンドが、宇宙一カッコ良いことを証明しに来た」。藤原“34才”広明(Dr)の強烈なビートに後押しされ、感情が、細胞が、全開放されるかのようなライブのエクスタシーに、自分の居場所がここにあると思わせる確信に、彼らが今この時間帯にZ-STAGEに立っている理由をまざまざと感じさせられる。
SUPER BEAVER
SUPER BEAVER
「声出しが少しずつ緩和されてきて。俺たちも声を出してもらってなんぼだと思ってたの、2020年まではね。歌ってくれと煽りたい気持ちはやまやまなんだ。でも、俺たちは自分たちのツアーでも、声を出してくれってまだ言ってないんですよね。だから俺たちがここで煽る日は、もうちょっと先かもしれない。やっぱり自分たちのところから始めないと、そんなふうに思ってる。それが俺たちの筋の通し方」
あえて言わなきゃ分からなかったことだったかもしれない。でも、だから彼らは言ったんだと思う。何度でも思うビーバーらしさに、今日もどこかで救われる。

SUPER BEAVER
「本日、最後の最後を飾らせていただきました。『RADIO CRAZY』、並びにFM802を、一手に背負わせていただきました。大きな拍手をお願いします。本心を言うと、その倍の拍手を自分自身にお願いします! 今、叩いてくれた手……あなたと一緒に最高の音楽を作りたい。ラスト1曲、愛すべきあなたのお手を拝借。『RADIO CRAZY』史上、一番デカい音楽を一緒に作りましょう」

そこで鳴り響いた満場のクラップと、促さずとも自然と発生した大合唱。求めたのは音量ではなく、形なき音楽の大きさで。そんな願いを一人一人が受け止めた「美しい日」は、渋谷が「あなたと一緒に音楽を作りたい」と言い続けた願いが具現化した最高のエンディングに。物の見事に『RADIO CRAZY』の3日目を締めくくったSUPER BEAVERは、今日もまた「美しい日」を築き上げた。
SUPER BEAVER
取材・文=奥“ボウイ”昌史
写真提供=FM802

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