INTERVIEW / さらさ 自身の軌跡を作
品に刻むさらさ。内面をさらけ出した
アルバム『Inner Ocean』を経て見え
てきたものとは

さらさが1stアルバム『Inner Ocean』を12月14日(水)にリリースした。
前作となるEP『ネイルの島』よりおよそ8ヶ月、その間にはシングルのリリースやフジロックを始めとした各種注目のイベントに出演。着実に認知を拡大させてきた。
湘南出身の彼女らしいタイトルを冠したアルバムには、先行シングルの「火をつけて」や国内ヒップホップ・シーンの名匠ビートメイカー/プロデューサーであるOlive Oil、DJ Mitsu the Beatsによるリミックス、名古屋のクルー〈D.R.C.〉所属のラッパー・NEIとのコラボも含む全11曲を収録。持ち前のソウルネスや憂いを帯びたボーカルはそのままに、より幅広い表現方法を獲得。軸がぶれることなく自身の世界観を拡張させたような、堅実な成長が感じられる快作だ。
今回のインタビューでは前作からの足取りからアルバムの制作背景まで、じっくりと語ってもらった。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Official
再び見出した“歌うこと”の楽しさ
―― 前回のインタビュー(https://spincoaster.com/interview-salasa) で、EP『ネイルの島』は浮き沈みも含めたそれまでのおよそ3年間ほどの人生がパッケージされた作品になったとおっしゃっていました。それから半年ほどのこの期間はどのように過ごされていますか?
さらさ:前回のときはダウンした気持ちをまだ少しだけ引きずっている部分もあったというか、これからの道筋を見つけようとしていた時期だったと思うんです。EPをリリースして以降はあの頃に感じていた曲作りに対する何かちょっとこう……もやもやしたものとかがなくなったような気がしていて。気づいたら曲作りに対しても前向きになっていましたし、よりワクワクできるようになっていました。すごく自然に自分が変化していった半年だったなと思います。
――今振り返ってみて、その変化には何か特定の要因やきっかけがあったと思いますか?
さらさ:私生活でちょっとショッキングなことがあったんです。それですごく落ち込んでいたら、その反動で昔の感覚が戻ってきたというか。何て言うんでしょう、たぶんコロナ禍で長らくライブができなくなったり、あまり外出もしなくなって、刺激もないし感情があまり揺れない状況が続いていたところ、その出来事がきっかけで以前の感覚を取り戻せたという感じ。
落ち込んでいてもライブは決まっていたので、そんな状況で歌うのは申し訳ないなと思いつつ、いざライブをやってみたらそれまで薄れていた歌うことの喜びや感情の起伏が以前よりも増幅されている気がしたんです。以前、コロナ禍で曲も中々作れなくなった、音楽もあまり聴けなくなったとお話したと思うんですけど、やっぱり正負関係なく感情が動かないと人って鬱々としてしまうんだなということを改めて体感しました。
――きっかけとなった出来事自体はショッキングというかネガティブな内容だったけど、結果的にポジティブな作用があったと。
さらさ:今振り返ってみると必要な経験だったのかなって思います。もちろん当時はかなりしんどくて、1ヶ月くらいはネガティブな感情に支配されていました。でも、それを経て歌うことがより楽しくなったんですよね。
――今作でその落ち込んでいた時期に作った曲、もしくは時期の感情が反映されている曲はありますか?
さらさ:「火をつけて」のアレンジを詰めていたときがそのタイミングだったのかな。歌詞を書いたりはしてなかったんですけど、逆に言うとそれも今回のアルバムのテーマに繋がっていて。ガチで落ち込んでいるときって、それまでお守りのように持っていた言葉ですらも響かなくなっちゃったり、自分が大事にしていたものさえも綺麗事に感じられてしまう。そういうことも今回のアルバムを通して表現したかったことのひとつなんです。なので……夏くらいかな、そのときは結構落ち込んで、ギリギリで仕事しているような感じだったと思います(笑)。
――その落ち込んでいたときに着手していたのが「火をつけて」だというのが興味深いなと思いました。この曲は今回のアルバムの中でも、というかさらささんのキャリアの中でも最も明るく、開けている1曲だと感じました。
さらさ:あくまでアレンジをそのときに詰めていただけであって、曲自体は結構前に書いた曲なんです。ただ、作った時期は違えどその落ち込んでいた時期の自分にもリンクする部分もあって。自分のコントロールできない感情と向き合って作った曲なんですけど、自分が作った曲にあとからめっちゃ共感する、みたいな(笑)。
私、結構こういうことあるんですよね。自分が昔作った曲を聴き返して、すごく腑に落ちたり。自分の根本的な考え方などはあまり変わってないんだなっていうことなのかもしれません。
――深層心理が滲み出ているというか。
さらさ:そう。あ、やっぱり同じ人なんだなって(笑)
――なるほど(笑)。では「火をつけて」を書いたときのことについて教えて下さい。個人的にはフックの《触れてはいけないところに火をつける》や《慣れてはいけない気持ちに目を向ける》というラインがすごく耳に残りました。
さらさ:まずサウンド面から言うと、コロナ禍で今まで聴いていたような曲が聴けなくなった時期に、それまでとは違う方向性の曲を求めて色々と聴いていたなかで、Charaさんの90年代後半頃の楽曲からすごくインスピレーションを受けて。バンドでこういうサウンドの曲をやりたいなと思ったのがきっかけのひとつです。
歌詞もCharaさんから影響を受けていて。Charaさんの曲はそれ以前からも聴いていたんですけど、女性性を感じるというか、いい意味でフェミニンな歌詞がそのときすごく新鮮に感じられたんです。これまでの私の歌詞にはあまりなかった要素だなと。ステージで歌っているときに、自分の中にある女性性みたいなものをナチュラルに出せるような歌詞が書きたいなと思って、言い回しとかは特に意識しました。
――歌詞の主題や題材とかの部分はいかがでしょう。どういう風に浮かんできたのか、覚えていますか?
さらさ:すごく感覚的なものなんですけど、コントロールできない感情に支配されているときの自分のエネルギーみたいなものを出したいなと思って。フックとかもエネルギッシュな歌い方ができるように歌詞、メロディを詰めていきました。
――かなり自分の内側に向き合った曲なんですね。
さらさ:そうですね。今回のアルバムにはこれまで見せてこなかった部分を出している曲が多くて。「火をつけて」もそうですし、「午後の光」、「退屈」とかもそうかな。自分の弱さとか脆い部分だったり、あまり人には見せたくなかった一面も、ありのままに出すっていうことを意識しました。
EPではもっと客観的な視点で書いていて、自分を救いたいという感覚があったんですけど、本当に切羽詰まっているときってそういうこともできなくなる。だから、制御不能な感情に支配されているなら、それをそのまま出してやろうと。先ほどお話しした落ち込んでいた時期に書いたわけではないんですけど、やっぱり繋がっているんですよね。
――今作の曲は結構昔に書いた曲が多いのでしょうか。
さらさ:まちまちなんですよね。それこそ「踊り」と「朝」はコロナ前に書いた曲なんですけど、「太陽が昇るまで」や最後の「Virgo」、あとはNEIくんと一緒に作った「Blue」はこの半年以内に作っていますし。全体としては去年〜今年の始めくらいに書いた曲が多いかもしれないです。
――ということは、ちょっと落ち気味だった時期に書いた曲が多い?
さらさ:確かにコロナ禍でしんどい気持ちだった時期の曲が多いかもしれません。「午後の光」とかは本当に辛いときに書いていて、あまり人には見せたくない感情も綴っています。「Virgo」はそこから抜けたときに書いているので、前のEPみたいに自分自身を救うような、第三者的な目線も入っていて。メンタルヘルスで歌詞の書き方が変わるんだなって改めて思いましたね。
――この前のEPもアルバムも、少し前の自分ともう一回向き直すというか、その当時の自分が切り取られている。それって音楽というか録音芸術のすごくおもしろいところですよね。
さらさ:私自身もこうして曲を並べないとわからないことも多くて。今年、EPとアルバムを作って本当によかったなと思いました。すごくいい経験になったなって。
初のバンド・レコーディングやラッパーNEIとの共作
――話が戻ってしまうのですが、「火をつけて」のサウンド、アレンジ面について改めてお聞きしたいです。Charaさんの作品から得たインスピレーションをどのように膨らませて、落とし込んでいったのか。
さらさ:弾き語りで曲を作ってから、バンド・サウンドにするためのアレンジを考えていったんですけど、今回はいつもさらさバンドでベースを弾いてくれているオオツカマナミちゃんにお願いしました。私からリファレンスを挙げて、「ここはこういう音で」とか「こういう始まりで〜」といったように細かくイメージをお伝えして。マナミちゃんがそれを汲んだ上でトラックを作ってくれて、それを元にバンド・メンバー含めて最終的に仕上げていきました。
ちょっと変わった作り方だと思うんですけど、今回レコーディングでは全パート頭から最後までがっつり盛り盛りで弾いてもらって、あとから引き算をする形でアレンジを詰めていきました。
――今まではやってこなかった手法ですか?
さらさ:そもそもバンドでレコーディングしたのが初めてだったんです。前作は生音も入っていますが基本的にはDTMで制作していて、主に〈w.a.u〉のKota Matsukawaが作ってくれたんですけど、彼も引き算が得意で、極力トラック数を増やしたくない人なんです。結果的にそれがさらさの音楽性にも繋がっていると思うので、今回バンドでレコーディングはしたけど、ある程度のミニマルさは意識しました。
――Kota Matsukawaさんは今作にも大きく貢献していますよね。ちなみに、他にもバンドでレコーディングした曲はありますか?
さらさ:「踊り」と「jjj」ですね。「踊り」は全部バンド・レコーディングで、「jjj」はドラムだけ打ち込み、ギターとベースが生音です。「火をつけて」のギターはYogee New Wavesの竹村郁哉さん、「踊り」はフジロックでも演奏してくれた磯貝一樹さんが弾いてくれています。
――「踊り」はアシッドフォーク〜カントリーみたいなサウンドと、終盤の一気に開ける展開がおもしろい曲ですよね。
さらさ:「踊り」は3年くらい前に作った曲なんですけど、作曲を始めたばかりだったので、初期衝動っぽいというか、何も考えずに勢いで作った感じがありますね。バンドでのレコーディングに際して結構整えたんですけど、弾き語りバージョンはもっと揺れていて。そのバージョンもおもしろいなと思ったので、タワレコ限定特典のCD-Rに収録しました。betcover!!さんの作品にめちゃくちゃハマってたときに、影響されて作った記憶があります。
――終盤の展開はレコーディングに際して生まれたのでしょうか。
さらさ:いや、弾き語りのデモ段階で入ってたので、完全に初期衝動ですね。すごく没頭しながら、ライブのような感覚で作りました。バンドで演奏するとさらにおもしろい感じになりましたね。
――「jjj」についてもお聞きしたいのですが、この曲はまずタイトルが気になってしまって(笑)。ラッパー/プロデューサーのJJJさんがどうしても頭をよぎってしまうというか。
さらさ:ですよね(笑)。スタッフさんに言われてから気づきました。これは曲を作ってるときに付けた仮タイトルのままなんです。メロディを作ってるときに《I just wanna〜》という歌詞と同時に「jjj」という言葉が浮かんできて。それが印象的だったので、ファイルを保存するときに付けたんですけど、そのまま制作が進んでいって、結局タイトルもそのままになりました。
――この曲はKota Matsukawaさんと?
さらさ:そうです。フジロック前にMatsukawaがトラックを作ってくれて、アレンジは(磯貝)一樹さんのスタジオで練っていきました。Matsukawaのトラックをベースに、一樹さんとマナミちゃんがアレンジを考えてくれたんですけど、ちょっとおもしろい出来事があったんです。
Matsukawaが送ってくれたトラックのパラデータを一樹さんのDTM上で開いたら、各トラックの音量バランスがバラバラになってしまって。そしたら元々入っていたパーカッションみたいな音がすごく大きく聴こえるようになって、ちょっと変わってるけどこれはこれでおもしろいねということになり、最終的にそのアイディアのまま完成に至りました。
――磯貝一樹さんとはスタジオに行くくらいの仲なんですね。
さらさ:一樹さんはフジの3ヶ月くらい前に池袋のSomethin’ Jazz Clubでセッションで初めてちゃんとお話したんですけど、以前からDino Jr.のバンドでギター弾いたりしていて、私も観に行ってましたし、SNSでは繋がってたんです。そのセッションのときに「フジロックでギター弾いてくれる人を探してるんですよね」って言ったら、「予定合ったらやるよ」って言ってくれて。それから仲良くさせてもらっています。
――他の曲についてもお聞きしたいです。1曲目の「朝」はライブでもすでに披露されている曲ですよね。
さらさ:「朝」と「踊り」は以前からライブでも演奏していて。ありがたいことに「早くリリースしてほしい」という声も頂いていたので、アルバムに収録しようと。ちなみに、これを1曲目にしたのは、レコードで聴いたときのことをイメージして、めっちゃいい流れになるんじゃないかと考えたからなんです。声とギターから始まるんですけど、その感じがレコードにぴったりだなって。今のところレコードを作る予定はないんですけど(笑)。
――アルバム収録に際して、前々から温めていた構成やサウンド感などは変化しましたか?
さらさ:以前から大きくは変わっていませんね。自主制作で作ったCD『グレーゾーン』にも収録しているんですけど、そこからボーカルを録り直して、ミックスもやり直しました。歌詞はよく恋愛についての曲だと思われるんですけど、実はそのとき読んでいた量子力学の本に影響されて作ったんですよね(笑)。
《I&I》っていう言葉があって、これはBob Marleyなどレゲエの曲にもよく出てくる言葉なんですけど、量子力学の世界では“あなたも私もひとつの自分”、“本当はひとつのもの”みたいな考え方があって、それを引用してみたり。
――そういった内容を、物語を想起させるように書いたのは意図的ですか?
さらさ:意図的ですね。自分が最近考えていることと、本を読んで印象深かった言葉や内容、それに加えて、自分でギターを弾いたときに浮かんでくる映像もあって。朝、布団の中でうずくまっていて、陽が差している部屋で誰かがコーヒーを淹れてて……っていう感じ。それが全部ドッキングした形です(笑)。
――フックの《いい感じでいたい》っていうラインがすごくいいですよね。シンプルだけど、すごくパンチが効いているというか。“いい感じ”っていう、振り切れてない絶妙な感情をフックに持ってくるのがさらささんらしいなと。
さらさ:嬉しいです。シンプルな歌詞の繰り返しなので、より耳に入ってくるのかも。
――先ほどもちらっとお話に挙がりましたが、「Blue」では名古屋のラッパー・NEIさんを迎えていますよね。このコラボの経緯というのは?
さらさ:7月に名古屋で開催された『DAYPOOL』(トド アリトル ナレッジ ストア × cultra共催企画)というイベントでNEIくんと共演したんです。それまで存じ上げなかったんですけど、シンプルにアー写がすごくカッコいいと思って、曲もチェックさせてもらってすごく好きになったんです。曲や歌詞の感じから、ちょっと繊細というか内向的な方なのかなと思っていたんですけど、実際にお会いしたらとても気さくな方で。そういうところにも共感したんですよね。しかも同い年だということもわかって。
さらさ:元々アルバムの中で1曲、ラッパーの人と一緒にやりたいなと思っていたし、名古屋のイベントのときにも「何か一緒にやれたらいいね」っていう話をしていたので、今回NEIくんにオファーしました。
――構成やテーマの共有など、制作はどのように進めましたか?
さらさ:アルバムに向けてMatsukawaと2人で私の実家で制作合宿をしたんですけど、そのときに「NEIくんに合うトラックを作って」っていうすごい雑なお願いをしたら、あのトラックが上がってきて。めっちゃ気に入ったので、すぐにフックを作ってNEIくんにお送りしました。テーマなどは特に決めずに、「NEIくんが今言いたいことを書いてほしいです」っていう感じでお伝えして。
――さらささんはフックの部分をどういうイメージで書きましたか?
さらさ:私はMatsukawaが作ってくれたトラックを聴いて、浮かんできたメロディからイメージしていきました。あと、NEIくんのラップに馴染むようにっていうことも意識していて。これまで以上にベタなR&Bっぽい、艷やかな夜のテイストを出したいなと思いました。歌詞も具体的なテーマを考えていたわけではないんですけど、夜のイメージでお酒の話しが出てきたり。
――「Blue」というタイトルをつけたのは後からですか?
さらさ:後からです。フックで《飲みかけのChinese Blue》って歌ってるんですけど、これまではあまり固有名詞を歌詞に出したことがなかったから、自分でも新鮮で。それを前面に出したいなと思ったんです。
――期せずしてだとは思うのですが、NEIさんのヴァースのイメージとも合うタイトルだなと感じました。
さらさ:そうですね。NEIくんの歌詞には大事な人と自分が進む道との間で葛藤するような思いが垣間見れて、すごく素敵な内容だなって思いました。
――内省的というか叙情的というか。
さらさ:うんうん。なんか、やっぱり通じるところがあったんだなと勝手ながらに思いました。それこそ彼にも“ブルージーに生きろ”感があるというか。上手くハマってよかったなと思います。
人間の感情やエネルギーを海に見立てた『Inner Ocean』
――最初の方でちらっとお話に出たと思うのですが、改めてアルバムのトータルとしてのテーマやコンセプト的な部分についてお聞きしたいです。後から見えてきた要素も含めて、どのような作品になったと思いますか?
さらさ:今回のアルバムはコントロールできない感情とかエネルギー、もしくは自分のエゴみたいなものをそのまま出さざるを得なかったタイミングで作っていたので、自然とそういう曲が多くなったんです。それは結果的に私にとって新しい曲の作り方だなって思ったので、そういう自分や人のエネルギーみたいなものを表現するタイトルを付けたいなと思いました。
私は自分のエネルギーを川のように捉えている部分があって。普通に流れていたものが何かの拍子で逆流し始めたらなかなか元には戻せない。自分では気付かないうちに濁流になったりもする。そういう感じで、水とか川のようなものとして表現したいっていうのが一個あったんですね。その思考の延長線上で思い浮かんだのが海だったんです。
海って外から見ると穏やかでも、水面下では流れが早かったり、渦巻いていたりする。そういう外から見たイメージと内面の違いみたいなものが人間の感情やエネルギーとリンクするなと思って、『Inner Ocean』というタイトルが出てきました。曲が揃ってきてから感じたことではあるんですけど、アルバムのテーマやコンセプトを挙げるとするならば、そこに帰着するのかなって思いますね。
――自分のアンコントローラブルなエネルギーや感情と向き合って、これまで見せてこなかった一面も出した。こういった作り方はさらささん自身にとっても新鮮なことだったとおっしゃっていましたが、今後の曲作りに関してはどのように考えていますか?
さらさ:また変わっていくと思いますし、変えていきたいです。というのも、内に内に向かっていくと、とても他の人と一緒に仕事ができない状態になってしまうというか、チームにめちゃくちゃ迷惑を掛けちゃうと思うんです。あと、自分の音楽を多くの人に届けるためには、もっと開けていかないとダメなのかなとも。
それは決して取り繕った内容になるということではなくて、伝え方をシンプルにしていきたい、的を射た表現を目指したいということで。今後2ndアルバム、3rdアルバムを作るぞってなったとき、色々な技術も上げていきたいですし、自分との向き合い方も変えていきたい。それがアーティストとしての今後の目標みたいなものになるのかなって。
――より洗練された表現を目指すというか。
さらさ:そういう意味では、1stアルバムですごく内に内に向き合って、自分の繊細な部分をそのまま表現できたっていうのは、結果的によかったのかなとも思うんです。ここでそういった表現をみせたことで、よりスムーズに次のステップへと行けるというか。自分の精神性も作品の音楽的クオリティも一緒に上げていって、いい意味でシンプルな表現や作品に辿り着ければいいなって。
EP『ネイルの島』では自分の中にあるハイヤー・セルフ的な部分が自分自身を救うための作品っていう感じだったんですけど、結果的にリスナーさんからも「救われました」って言ってもらえた。それが今回のアルバムでは自分の中にある“激しさ”をそのまま出すことによって、ハイヤー・セルフではなく、より素の私自身にアクセスしてもらえるんじゃないかなって。そういう考え方になったことで、とても自由になった気がするんです。見せたくないものを見せることにも意味がある、価値があるんだなと。
さらさ:今後はより開けた作品を目指しつつも、きっとこれからもズドーンと落ちてしまうことはあると思うので、また「午後の光」のような曲も生まれるんだろうなって思います。
――EPと今回のアルバムを通して、さらささんはめちゃくちゃ強くなったというか、成長されたんだなと感じました。
さらさ:ミュージシャンとしてだけでなく、人としても成長したのかな(笑)。仕事でもプライベートでも本当に色々なことがあった1年だったので、自分の変容の境目でEPとアルバムをリリースできたっていうのは、私の人生にとってすごく大きなことだったなって思います。
【プレゼント企画】
SpincoasterのTwitterアカウントをフォロー & 下記ツイートをRTで『Inner Ocean』のサイン入りCDを3名様にプレゼント。発表通知はTwitterのDMにて行わせて頂きます。
キャンペーン期間:12月22日(木)18:00〜12月29日(金)18:00

※3枚の中からランダムでの発送となります。

※当選のお知らせに対して48時間以内に返信がない場合、誠に勝手ながら辞退とさせて頂きます。
※住所の送付が可能な方のみご応募下さい。頂いた個人情報はプレゼントの発送以外には使用致しません。
※フリマサイトなどでの転売は固く禁じます
【リリース情報】
※CD/Digital
■ 購入/配信リンク(https://asteri.lnk.to/innerocean)
【イベント情報】
チケット一般販売:12月24日(土)10:00〜 e+(https://eplus.jp/sf/detail/3779740001-P0030001P021001?P1=1221) / ぴあ(Pコード:233-446)(https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=2244149&rlsCd=001&lotRlsCd=) / ローソンチケット(Lコード:71468)(https://l-tike.com/order/?gLcode=71468)
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【さらさ】 Inner Ocean発売記念 ミニ・ライブ & サイン会

日時:2023年1月28日(土) 集合 14:30 / 開演 15:00
会場:東京 タワーレコード渋谷店6F TOWER VINYL
料金:観覧フリー
出演:
さらさ
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■さらさ: Twitter(https://twitter.com/omochiningen_) / Instagram(https://www.instagram.com/omochiningen/)
さらさが1stアルバム『Inner Ocean』を12月14日(水)にリリースした。
前作となるEP『ネイルの島』よりおよそ8ヶ月、その間にはシングルのリリースやフジロックを始めとした各種注目のイベントに出演。着実に認知を拡大させてきた。
湘南出身の彼女らしいタイトルを冠したアルバムには、先行シングルの「火をつけて」や国内ヒップホップ・シーンの名匠ビートメイカー/プロデューサーであるOlive Oil、DJ Mitsu the Beatsによるリミックス、名古屋のクルー〈D.R.C.〉所属のラッパー・NEIとのコラボも含む全11曲を収録。持ち前のソウルネスや憂いを帯びたボーカルはそのままに、より幅広い表現方法を獲得。軸がぶれることなく自身の世界観を拡張させたような、堅実な成長が感じられる快作だ。
今回のインタビューでは前作からの足取りからアルバムの制作背景まで、じっくりと語ってもらった。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Official
再び見出した“歌うこと”の楽しさ
―― 前回のインタビュー(https://spincoaster.com/interview-salasa) で、EP『ネイルの島』は浮き沈みも含めたそれまでのおよそ3年間ほどの人生がパッケージされた作品になったとおっしゃっていました。それから半年ほどのこの期間はどのように過ごされていますか?
さらさ:前回のときはダウンした気持ちをまだ少しだけ引きずっている部分もあったというか、これからの道筋を見つけようとしていた時期だったと思うんです。EPをリリースして以降はあの頃に感じていた曲作りに対する何かちょっとこう……もやもやしたものとかがなくなったような気がしていて。気づいたら曲作りに対しても前向きになっていましたし、よりワクワクできるようになっていました。すごく自然に自分が変化していった半年だったなと思います。
――今振り返ってみて、その変化には何か特定の要因やきっかけがあったと思いますか?
さらさ:私生活でちょっとショッキングなことがあったんです。それですごく落ち込んでいたら、その反動で昔の感覚が戻ってきたというか。何て言うんでしょう、たぶんコロナ禍で長らくライブができなくなったり、あまり外出もしなくなって、刺激もないし感情があまり揺れない状況が続いていたところ、その出来事がきっかけで以前の感覚を取り戻せたという感じ。
落ち込んでいてもライブは決まっていたので、そんな状況で歌うのは申し訳ないなと思いつつ、いざライブをやってみたらそれまで薄れていた歌うことの喜びや感情の起伏が以前よりも増幅されている気がしたんです。以前、コロナ禍で曲も中々作れなくなった、音楽もあまり聴けなくなったとお話したと思うんですけど、やっぱり正負関係なく感情が動かないと人って鬱々としてしまうんだなということを改めて体感しました。
――きっかけとなった出来事自体はショッキングというかネガティブな内容だったけど、結果的にポジティブな作用があったと。
さらさ:今振り返ってみると必要な経験だったのかなって思います。もちろん当時はかなりしんどくて、1ヶ月くらいはネガティブな感情に支配されていました。でも、それを経て歌うことがより楽しくなったんですよね。
――今作でその落ち込んでいた時期に作った曲、もしくは時期の感情が反映されている曲はありますか?
さらさ:「火をつけて」のアレンジを詰めていたときがそのタイミングだったのかな。歌詞を書いたりはしてなかったんですけど、逆に言うとそれも今回のアルバムのテーマに繋がっていて。ガチで落ち込んでいるときって、それまでお守りのように持っていた言葉ですらも響かなくなっちゃったり、自分が大事にしていたものさえも綺麗事に感じられてしまう。そういうことも今回のアルバムを通して表現したかったことのひとつなんです。なので……夏くらいかな、そのときは結構落ち込んで、ギリギリで仕事しているような感じだったと思います(笑)。
――その落ち込んでいたときに着手していたのが「火をつけて」だというのが興味深いなと思いました。この曲は今回のアルバムの中でも、というかさらささんのキャリアの中でも最も明るく、開けている1曲だと感じました。
さらさ:あくまでアレンジをそのときに詰めていただけであって、曲自体は結構前に書いた曲なんです。ただ、作った時期は違えどその落ち込んでいた時期の自分にもリンクする部分もあって。自分のコントロールできない感情と向き合って作った曲なんですけど、自分が作った曲にあとからめっちゃ共感する、みたいな(笑)。
私、結構こういうことあるんですよね。自分が昔作った曲を聴き返して、すごく腑に落ちたり。自分の根本的な考え方などはあまり変わってないんだなっていうことなのかもしれません。
――深層心理が滲み出ているというか。
さらさ:そう。あ、やっぱり同じ人なんだなって(笑)
――なるほど(笑)。では「火をつけて」を書いたときのことについて教えて下さい。個人的にはフックの《触れてはいけないところに火をつける》や《慣れてはいけない気持ちに目を向ける》というラインがすごく耳に残りました。
さらさ:まずサウンド面から言うと、コロナ禍で今まで聴いていたような曲が聴けなくなった時期に、それまでとは違う方向性の曲を求めて色々と聴いていたなかで、Charaさんの90年代後半頃の楽曲からすごくインスピレーションを受けて。バンドでこういうサウンドの曲をやりたいなと思ったのがきっかけのひとつです。
歌詞もCharaさんから影響を受けていて。Charaさんの曲はそれ以前からも聴いていたんですけど、女性性を感じるというか、いい意味でフェミニンな歌詞がそのときすごく新鮮に感じられたんです。これまでの私の歌詞にはあまりなかった要素だなと。ステージで歌っているときに、自分の中にある女性性みたいなものをナチュラルに出せるような歌詞が書きたいなと思って、言い回しとかは特に意識しました。
――歌詞の主題や題材とかの部分はいかがでしょう。どういう風に浮かんできたのか、覚えていますか?
さらさ:すごく感覚的なものなんですけど、コントロールできない感情に支配されているときの自分のエネルギーみたいなものを出したいなと思って。フックとかもエネルギッシュな歌い方ができるように歌詞、メロディを詰めていきました。
――かなり自分の内側に向き合った曲なんですね。
さらさ:そうですね。今回のアルバムにはこれまで見せてこなかった部分を出している曲が多くて。「火をつけて」もそうですし、「午後の光」、「退屈」とかもそうかな。自分の弱さとか脆い部分だったり、あまり人には見せたくなかった一面も、ありのままに出すっていうことを意識しました。
EPではもっと客観的な視点で書いていて、自分を救いたいという感覚があったんですけど、本当に切羽詰まっているときってそういうこともできなくなる。だから、制御不能な感情に支配されているなら、それをそのまま出してやろうと。先ほどお話しした落ち込んでいた時期に書いたわけではないんですけど、やっぱり繋がっているんですよね。
――今作の曲は結構昔に書いた曲が多いのでしょうか。
さらさ:まちまちなんですよね。それこそ「踊り」と「朝」はコロナ前に書いた曲なんですけど、「太陽が昇るまで」や最後の「Virgo」、あとはNEIくんと一緒に作った「Blue」はこの半年以内に作っていますし。全体としては去年〜今年の始めくらいに書いた曲が多いかもしれないです。
――ということは、ちょっと落ち気味だった時期に書いた曲が多い?
さらさ:確かにコロナ禍でしんどい気持ちだった時期の曲が多いかもしれません。「午後の光」とかは本当に辛いときに書いていて、あまり人には見せたくない感情も綴っています。「Virgo」はそこから抜けたときに書いているので、前のEPみたいに自分自身を救うような、第三者的な目線も入っていて。メンタルヘルスで歌詞の書き方が変わるんだなって改めて思いましたね。
――この前のEPもアルバムも、少し前の自分ともう一回向き直すというか、その当時の自分が切り取られている。それって音楽というか録音芸術のすごくおもしろいところですよね。
さらさ:私自身もこうして曲を並べないとわからないことも多くて。今年、EPとアルバムを作って本当によかったなと思いました。すごくいい経験になったなって。
初のバンド・レコーディングやラッパーNEIとの共作
――話が戻ってしまうのですが、「火をつけて」のサウンド、アレンジ面について改めてお聞きしたいです。Charaさんの作品から得たインスピレーションをどのように膨らませて、落とし込んでいったのか。
さらさ:弾き語りで曲を作ってから、バンド・サウンドにするためのアレンジを考えていったんですけど、今回はいつもさらさバンドでベースを弾いてくれているオオツカマナミちゃんにお願いしました。私からリファレンスを挙げて、「ここはこういう音で」とか「こういう始まりで〜」といったように細かくイメージをお伝えして。マナミちゃんがそれを汲んだ上でトラックを作ってくれて、それを元にバンド・メンバー含めて最終的に仕上げていきました。
ちょっと変わった作り方だと思うんですけど、今回レコーディングでは全パート頭から最後までがっつり盛り盛りで弾いてもらって、あとから引き算をする形でアレンジを詰めていきました。
――今まではやってこなかった手法ですか?
さらさ:そもそもバンドでレコーディングしたのが初めてだったんです。前作は生音も入っていますが基本的にはDTMで制作していて、主に〈w.a.u〉のKota Matsukawaが作ってくれたんですけど、彼も引き算が得意で、極力トラック数を増やしたくない人なんです。結果的にそれがさらさの音楽性にも繋がっていると思うので、今回バンドでレコーディングはしたけど、ある程度のミニマルさは意識しました。
――Kota Matsukawaさんは今作にも大きく貢献していますよね。ちなみに、他にもバンドでレコーディングした曲はありますか?
さらさ:「踊り」と「jjj」ですね。「踊り」は全部バンド・レコーディングで、「jjj」はドラムだけ打ち込み、ギターとベースが生音です。「火をつけて」のギターはYogee New Wavesの竹村郁哉さん、「踊り」はフジロックでも演奏してくれた磯貝一樹さんが弾いてくれています。
――「踊り」はアシッドフォーク〜カントリーみたいなサウンドと、終盤の一気に開ける展開がおもしろい曲ですよね。
さらさ:「踊り」は3年くらい前に作った曲なんですけど、作曲を始めたばかりだったので、初期衝動っぽいというか、何も考えずに勢いで作った感じがありますね。バンドでのレコーディングに際して結構整えたんですけど、弾き語りバージョンはもっと揺れていて。そのバージョンもおもしろいなと思ったので、タワレコ限定特典のCD-Rに収録しました。betcover!!さんの作品にめちゃくちゃハマってたときに、影響されて作った記憶があります。
――終盤の展開はレコーディングに際して生まれたのでしょうか。
さらさ:いや、弾き語りのデモ段階で入ってたので、完全に初期衝動ですね。すごく没頭しながら、ライブのような感覚で作りました。バンドで演奏するとさらにおもしろい感じになりましたね。
――「jjj」についてもお聞きしたいのですが、この曲はまずタイトルが気になってしまって(笑)。ラッパー/プロデューサーのJJJさんがどうしても頭をよぎってしまうというか。
さらさ:ですよね(笑)。スタッフさんに言われてから気づきました。これは曲を作ってるときに付けた仮タイトルのままなんです。メロディを作ってるときに《I just wanna〜》という歌詞と同時に「jjj」という言葉が浮かんできて。それが印象的だったので、ファイルを保存するときに付けたんですけど、そのまま制作が進んでいって、結局タイトルもそのままになりました。
――この曲はKota Matsukawaさんと?
さらさ:そうです。フジロック前にMatsukawaがトラックを作ってくれて、アレンジは(磯貝)一樹さんのスタジオで練っていきました。Matsukawaのトラックをベースに、一樹さんとマナミちゃんがアレンジを考えてくれたんですけど、ちょっとおもしろい出来事があったんです。
Matsukawaが送ってくれたトラックのパラデータを一樹さんのDTM上で開いたら、各トラックの音量バランスがバラバラになってしまって。そしたら元々入っていたパーカッションみたいな音がすごく大きく聴こえるようになって、ちょっと変わってるけどこれはこれでおもしろいねということになり、最終的にそのアイディアのまま完成に至りました。
――磯貝一樹さんとはスタジオに行くくらいの仲なんですね。
さらさ:一樹さんはフジの3ヶ月くらい前に池袋のSomethin’ Jazz Clubでセッションで初めてちゃんとお話したんですけど、以前からDino Jr.のバンドでギター弾いたりしていて、私も観に行ってましたし、SNSでは繋がってたんです。そのセッションのときに「フジロックでギター弾いてくれる人を探してるんですよね」って言ったら、「予定合ったらやるよ」って言ってくれて。それから仲良くさせてもらっています。
――他の曲についてもお聞きしたいです。1曲目の「朝」はライブでもすでに披露されている曲ですよね。
さらさ:「朝」と「踊り」は以前からライブでも演奏していて。ありがたいことに「早くリリースしてほしい」という声も頂いていたので、アルバムに収録しようと。ちなみに、これを1曲目にしたのは、レコードで聴いたときのことをイメージして、めっちゃいい流れになるんじゃないかと考えたからなんです。声とギターから始まるんですけど、その感じがレコードにぴったりだなって。今のところレコードを作る予定はないんですけど(笑)。
――アルバム収録に際して、前々から温めていた構成やサウンド感などは変化しましたか?
さらさ:以前から大きくは変わっていませんね。自主制作で作ったCD『グレーゾーン』にも収録しているんですけど、そこからボーカルを録り直して、ミックスもやり直しました。歌詞はよく恋愛についての曲だと思われるんですけど、実はそのとき読んでいた量子力学の本に影響されて作ったんですよね(笑)。
《I&I》っていう言葉があって、これはBob Marleyなどレゲエの曲にもよく出てくる言葉なんですけど、量子力学の世界では“あなたも私もひとつの自分”、“本当はひとつのもの”みたいな考え方があって、それを引用してみたり。
――そういった内容を、物語を想起させるように書いたのは意図的ですか?
さらさ:意図的ですね。自分が最近考えていることと、本を読んで印象深かった言葉や内容、それに加えて、自分でギターを弾いたときに浮かんでくる映像もあって。朝、布団の中でうずくまっていて、陽が差している部屋で誰かがコーヒーを淹れてて……っていう感じ。それが全部ドッキングした形です(笑)。
――フックの《いい感じでいたい》っていうラインがすごくいいですよね。シンプルだけど、すごくパンチが効いているというか。“いい感じ”っていう、振り切れてない絶妙な感情をフックに持ってくるのがさらささんらしいなと。
さらさ:嬉しいです。シンプルな歌詞の繰り返しなので、より耳に入ってくるのかも。
――先ほどもちらっとお話に挙がりましたが、「Blue」では名古屋のラッパー・NEIさんを迎えていますよね。このコラボの経緯というのは?
さらさ:7月に名古屋で開催された『DAYPOOL』(トド アリトル ナレッジ ストア × cultra共催企画)というイベントでNEIくんと共演したんです。それまで存じ上げなかったんですけど、シンプルにアー写がすごくカッコいいと思って、曲もチェックさせてもらってすごく好きになったんです。曲や歌詞の感じから、ちょっと繊細というか内向的な方なのかなと思っていたんですけど、実際にお会いしたらとても気さくな方で。そういうところにも共感したんですよね。しかも同い年だということもわかって。
さらさ:元々アルバムの中で1曲、ラッパーの人と一緒にやりたいなと思っていたし、名古屋のイベントのときにも「何か一緒にやれたらいいね」っていう話をしていたので、今回NEIくんにオファーしました。
――構成やテーマの共有など、制作はどのように進めましたか?
さらさ:アルバムに向けてMatsukawaと2人で私の実家で制作合宿をしたんですけど、そのときに「NEIくんに合うトラックを作って」っていうすごい雑なお願いをしたら、あのトラックが上がってきて。めっちゃ気に入ったので、すぐにフックを作ってNEIくんにお送りしました。テーマなどは特に決めずに、「NEIくんが今言いたいことを書いてほしいです」っていう感じでお伝えして。
――さらささんはフックの部分をどういうイメージで書きましたか?
さらさ:私はMatsukawaが作ってくれたトラックを聴いて、浮かんできたメロディからイメージしていきました。あと、NEIくんのラップに馴染むようにっていうことも意識していて。これまで以上にベタなR&Bっぽい、艷やかな夜のテイストを出したいなと思いました。歌詞も具体的なテーマを考えていたわけではないんですけど、夜のイメージでお酒の話しが出てきたり。
――「Blue」というタイトルをつけたのは後からですか?
さらさ:後からです。フックで《飲みかけのChinese Blue》って歌ってるんですけど、これまではあまり固有名詞を歌詞に出したことがなかったから、自分でも新鮮で。それを前面に出したいなと思ったんです。
――期せずしてだとは思うのですが、NEIさんのヴァースのイメージとも合うタイトルだなと感じました。
さらさ:そうですね。NEIくんの歌詞には大事な人と自分が進む道との間で葛藤するような思いが垣間見れて、すごく素敵な内容だなって思いました。
――内省的というか叙情的というか。
さらさ:うんうん。なんか、やっぱり通じるところがあったんだなと勝手ながらに思いました。それこそ彼にも“ブルージーに生きろ”感があるというか。上手くハマってよかったなと思います。
人間の感情やエネルギーを海に見立てた『Inner Ocean』
――最初の方でちらっとお話に出たと思うのですが、改めてアルバムのトータルとしてのテーマやコンセプト的な部分についてお聞きしたいです。後から見えてきた要素も含めて、どのような作品になったと思いますか?
さらさ:今回のアルバムはコントロールできない感情とかエネルギー、もしくは自分のエゴみたいなものをそのまま出さざるを得なかったタイミングで作っていたので、自然とそういう曲が多くなったんです。それは結果的に私にとって新しい曲の作り方だなって思ったので、そういう自分や人のエネルギーみたいなものを表現するタイトルを付けたいなと思いました。
私は自分のエネルギーを川のように捉えている部分があって。普通に流れていたものが何かの拍子で逆流し始めたらなかなか元には戻せない。自分では気付かないうちに濁流になったりもする。そういう感じで、水とか川のようなものとして表現したいっていうのが一個あったんですね。その思考の延長線上で思い浮かんだのが海だったんです。
海って外から見ると穏やかでも、水面下では流れが早かったり、渦巻いていたりする。そういう外から見たイメージと内面の違いみたいなものが人間の感情やエネルギーとリンクするなと思って、『Inner Ocean』というタイトルが出てきました。曲が揃ってきてから感じたことではあるんですけど、アルバムのテーマやコンセプトを挙げるとするならば、そこに帰着するのかなって思いますね。
――自分のアンコントローラブルなエネルギーや感情と向き合って、これまで見せてこなかった一面も出した。こういった作り方はさらささん自身にとっても新鮮なことだったとおっしゃっていましたが、今後の曲作りに関してはどのように考えていますか?
さらさ:また変わっていくと思いますし、変えていきたいです。というのも、内に内に向かっていくと、とても他の人と一緒に仕事ができない状態になってしまうというか、チームにめちゃくちゃ迷惑を掛けちゃうと思うんです。あと、自分の音楽を多くの人に届けるためには、もっと開けていかないとダメなのかなとも。
それは決して取り繕った内容になるということではなくて、伝え方をシンプルにしていきたい、的を射た表現を目指したいということで。今後2ndアルバム、3rdアルバムを作るぞってなったとき、色々な技術も上げていきたいですし、自分との向き合い方も変えていきたい。それがアーティストとしての今後の目標みたいなものになるのかなって。
――より洗練された表現を目指すというか。
さらさ:そういう意味では、1stアルバムですごく内に内に向き合って、自分の繊細な部分をそのまま表現できたっていうのは、結果的によかったのかなとも思うんです。ここでそういった表現をみせたことで、よりスムーズに次のステップへと行けるというか。自分の精神性も作品の音楽的クオリティも一緒に上げていって、いい意味でシンプルな表現や作品に辿り着ければいいなって。
EP『ネイルの島』では自分の中にあるハイヤー・セルフ的な部分が自分自身を救うための作品っていう感じだったんですけど、結果的にリスナーさんからも「救われました」って言ってもらえた。それが今回のアルバムでは自分の中にある“激しさ”をそのまま出すことによって、ハイヤー・セルフではなく、より素の私自身にアクセスしてもらえるんじゃないかなって。そういう考え方になったことで、とても自由になった気がするんです。見せたくないものを見せることにも意味がある、価値があるんだなと。
さらさ:今後はより開けた作品を目指しつつも、きっとこれからもズドーンと落ちてしまうことはあると思うので、また「午後の光」のような曲も生まれるんだろうなって思います。
――EPと今回のアルバムを通して、さらささんはめちゃくちゃ強くなったというか、成長されたんだなと感じました。
さらさ:ミュージシャンとしてだけでなく、人としても成長したのかな(笑)。仕事でもプライベートでも本当に色々なことがあった1年だったので、自分の変容の境目でEPとアルバムをリリースできたっていうのは、私の人生にとってすごく大きなことだったなって思います。
【プレゼント企画】
SpincoasterのTwitterアカウントをフォロー & 下記ツイートをRTで『Inner Ocean』のサイン入りCDを3名様にプレゼント。発表通知はTwitterのDMにて行わせて頂きます。
キャンペーン期間:12月22日(木)18:00〜12月29日(金)18:00

※3枚の中からランダムでの発送となります。

※当選のお知らせに対して48時間以内に返信がない場合、誠に勝手ながら辞退とさせて頂きます。
※住所の送付が可能な方のみご応募下さい。頂いた個人情報はプレゼントの発送以外には使用致しません。
※フリマサイトなどでの転売は固く禁じます
【リリース情報】
※CD/Digital
■ 購入/配信リンク(https://asteri.lnk.to/innerocean)
【イベント情報】
チケット一般販売:12月24日(土)10:00〜 e+(https://eplus.jp/sf/detail/3779740001-P0030001P021001?P1=1221) / ぴあ(Pコード:233-446)(https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=2244149&rlsCd=001&lotRlsCd=) / ローソンチケット(Lコード:71468)(https://l-tike.com/order/?gLcode=71468)
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【さらさ】 Inner Ocean発売記念 ミニ・ライブ & サイン会

日時:2023年1月28日(土) 集合 14:30 / 開演 15:00
会場:東京 タワーレコード渋谷店6F TOWER VINYL
料金:観覧フリー
出演:
さらさ
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Spincoaster

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