五条院凌、2022年集大成のコンサート
開催「わたくしとともに“おゴージャ
ス”な人生を歩みましょう」

まるで五条院凌とピアノが融合して、1つの生き物として音を奏でているのではないかと感じる瞬間があった。ピアノの音色が、鼓動や息づかいや鳴き声のように、生々しく響いてきたからだ。生命力あふれるピアノの調べが、観客を包み込んでいくようなステージだった。2022年11月3日、東京・品川インターシティホール。
赤い円形のラグの上にピアノが置かれている。鳥のさえずりと川のせせらぎのSEに続いて、教会音楽が流れる中、五条院凌がゴージャスな白と黄金の衣装を身にまとって登場すると、会場内から拍手が起こった。彼女がピアノの上に薔薇の花を置き、息を整えている。月の映像がスクリーンに映し出される中で始まったのは、1stミニアルバム収録曲「ARTEMIS」だった。アルテミスはギリシャ神話に登場する月の神の名前だ。月の光が差し込むような、密やかで神秘的なピアノの音色が、湖面に降る雨粒の波紋のように会場内に広がっていく。やがて波紋が湖に吸収されるように、緩やかかつ静かなエンディングへ。続いては同じく1stミニアルバム収録曲「CASTLE〜迷宮の城〜」のピアノソロバージョン。音の迷宮といいたくなるような変幻自在な旋律に、身も心も委ねるのが気持ちいい。ステージ背後には「五条院凌」という文字が映し出されている。彼女の魅惑の世界へと、いざなわれていくような序盤だ。

「本日はわたくし、五条院凌の麗しくおゴージャスなお音色にお魂から浸ってくださいませ」とのMCもあった。「ラブカ?」では、側面に設置されたカメラの映像が映し出される中での演奏。演奏しながらのカメラ目線や眼鏡にふれる仕草も、彼女の音楽表現の一環だろう。TikTok降臨が始まりであるだけに、映像の使い方も鮮やかだ。さらに「愛して愛して愛して」、「うっせぇわ」とカバー曲が続く構成。演奏テクニックも秀逸だが、アレンジの自在さも際立っている。曲の本質をつかみ、曲の中にあるエモーションを解き放っていくような演奏だ。ブレイクの瞬間にライトがレッドからブルーへと切り替わるなど、ピアノ演奏と連動した照明も見事。演奏の終わりには優雅な動作でのフィニッシュ。まるでバレエダンサーのようなポーズが絵になっている。彼女の手にかかると、ステージ全体が黄金色のゴージャスな額縁になっていく。
彼女の衣装チェンジの時間には、森の映像が映し出された。風の音に深いチェロの音色が重なり、五条院凌がミラーボールドレスを身にまとって登場。キラキラ度がさらに増している。赤い薔薇の映像が映し出され、その赤色に導かれるようにして、「Song of Fire〜炎の唄〜」が始まった。人間の業に肉薄していくような深みのある演奏からは、燃え上がる炎の揺らぎが見えてくるようだ。続いては「明け星」。物語のような起伏に富んだ演奏に揺さぶられた。ステージの壁に演奏する彼女のシルエットが浮かび上がっていたのだが、その影も一緒に演奏しているかのようだった。幻想的であると同時に内省的。彼女の演奏は、聴き手の想像力のスイッチを入れる機能を備えているようだ。「みなさま、幻想的な湖を思い浮かべて浸ってください」というMCに続いては、2ndミニアルバム収録曲の「ILLUSION」。深遠な旋律に導かれて、ファンタジーの世界へと誘われていくようだった。

「深い悲しみに陥り、行き場のない感情がさまよっているわたくしを救ってくれたのがピアノでした。数々の楽曲をおカバーし、お魂に響く言葉がつづられた楽曲に出会いました。<世界は残酷だ それでも君を愛すよ><なにを犠牲にしても それでも君を守るよ>というお言葉でした。それからは、みなさまの美しいお心をお守りしたいという一心で五条院の楽曲を作り、奏でております。音楽への愛、そしてみなさまへの愛をこめて」という言葉に続いて、「悪魔の子」が演奏された。激しいタッチから深い悲しみがにじみ、穏やかなタッチの中から強い覚悟がにじむ。さまざまな感情や意志がそのまま音楽に変換されダイレクトに届いてきた。続いて演奏されたのは「人生のメリーゴーランド」。ダンスのステップを踏むような流麗なピアノに体が揺れる。薔薇の花が舞ってのフィニッシュ。
城の映像が流れて、ブラック&ゴールドの衣装を着て、五条院凌が再登場した。2ndミニアルバム収録曲の「TOCCATA」だ。高速の打鍵で始まり、先の読めないミステリーを紡ぐように自在に展開していく。嵐のようなSEが流れて、トラックありバージョンでの「CASTLE〜迷宮の城〜」。ピアノのみの演奏とはまた違う立体的な広がりを味わっているうちに、またしても迷宮の中へ。さらにトラックありの「Fantastic Planet」へ。ブルーの光が降り注ぐなか、クールなビートとミステリアスなサウンドに乗って、神秘的なピアノの音に包まれていく。「お楽しみのお時間でございます」というMCに続いて、ハンドクラップが加わり、「ENDLESS SUMMER」へ。彼女はジャケットを脱ぎ捨てている。躍動感あふれるグルーヴィーな演奏によって、会場内に開放的な空気が生まれていく。演奏が終わると、再びジャケットを羽織り、ピアノを鏡替わりにして、髪の乱れを直している。ワイルドでありつつ、気品もキープ。

「わたくしとみなさまの熱気で大変なことになっておりますが、おバイブスは高まっておりますか?」という言葉に、会場から拍手が起こっている。「悲しい時もつらい時もおハッピーな時も、わたくしとみなさまと一緒、一心御同体なのでございます。わたくしとみなさまのお美しい思い出は永遠」という言葉に続いて、「echo」が演奏された。美しき旋律が会場内に満ちていく。寄せて返す波のような大きさと揺るぎなさを備えていて、いとしさや懐かしさを喚起させる音色だ。ゴージャスな光景も捨てがたいが、目を閉じ、耳を澄ませて聴きたくなる素晴らしい演奏だ。優しさと悲しさとは少し似たところがあるかもしれない。彼女のピアノを聴いていて、そんなことも感じた。
一転して、リズムトラックと観客のハンドクラップも加わって、「phony」へ。エネルギッシュな演奏が一気に全開。さらに「お魂を解放する準備は出来ていますか」という言葉に続いて、「VIE」と、ボーカロイド曲が続く展開だ。ピアノの打楽器的な側面が強調されるアグレッシブなプレイ。「本日、おラスト、弾かせていただきます」というMCで演奏されたのは「INFERNO GATE〜煉獄の門〜」だった。全身を使っての華麗で幻惑的で劇的な演奏が会場内にカタルシスをもたらしていく。本編終了とともに盛大な拍手。そのクラップの音が揃い、アンコールを求める拍手へと変わった。

アンコールでは10月に『TEPPEN 2022 秋 芸能界ピアノ頂上決戦』で優勝した時の衣装で登場し、優勝を決めた曲「残響散歌」をその時のバージョンで演奏したのだ。しかもこの日のピアノは、その番組で使用したヤマハ C7だった。あの瞬間の思いも、今の瞬間の感情も注ぎ込むような情熱的な演奏だ。ドラマティックかつエモーショナルなプレイに拍手の嵐。ピアノの演奏は途切れることないが、最後のMCは感極まって、途切れがちとなった。「こうしてお生で、しかもこんなにたくさんの皆さまの前で披露することができて、幸せでございます。ついついお涙してしまいました」とのこと。さらに1stアルバム『Fabulous』のリリース、クリスマスパーティーの開催、来春のホールツアー決定などの告知もあった。
「2022年のお集大成ということだったのですが、みなさまのおかげで幸せな一日に、いえ、幸せな一年になりました。いえ、まだ終わりませんね。まだまだわたくしとみなさまのおゴージャスな旅は続きます」との言葉があり、最後の曲「Rose Waltz」が演奏された。薔薇の花のように艶やかで可憐な演奏が、観客の未来を祝福するかのように響いた。ピアノを弾き終わると、ピアノの上に置いてあった薔薇の花を背後に飛ばしてのフィニッシュ。やはり絵になる麗しきエンディングだ。
「みなさまのお美しい夢を絶対に諦めないでください。わたくしとともにおゴージャスな人生を歩みましょう」と最後の挨拶。彼女の奏でるピアノは実に多彩で、表情が豊かだった。歌うピアノ、踊るピアノ、祈るピアノ、祝福するピアノ、そして問いかけるピアノ。喜怒哀楽も情熱も衝動も、10本の指先から白と黒の鍵盤へと流れ込み、黒いモノリスのような物体の中で、音楽へと変換されていく。五条院凌のゴージャスな音楽は、暗がりの中でキラキラ輝く発光体のようだ。足元をただ照らすだけじゃない。モノトーンの世界にカラフルな彩りをもたらしてくれるに違いない。

取材・文/長谷川誠 撮影/ViVi 小春

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