『赤毛のアン』翻訳者村岡花子の生涯
を、日加共同制作によって舞台化へ

カナダにある、コンフェデレーション・センター・オブ・ジ・アーツが『アンのゆりかご~村岡花子の生涯』(英題:Anne’ s Cradle ~ The Life and Works of Hanako Muraoka)を舞台化する計画を発表した。
著作である村岡花子は、『赤毛のアン』を日本で初めて出版した翻訳家のベストセラー評伝で、日本の激動の時代に、質の高い児童文学を人々に届けるために生涯を捧げ、多くの苦境を乗り越えたひとりの女性。彼女の半生を原案にドラマ化したNHK『花子とアン』は、吉高由里子が主人公を演じ、話題となった。
コンフェデレーション・センター・オブ・ジ・アーツは、カナダのプリンス・エドワード島に拠点を置く総合文化施設。図書館、ギャラリー、劇場などを併設し、モンゴメリーの関連資料を多数所蔵している。メインステージでは、ミュージカル『Anne of Green Gables-The Musical™(赤毛のアン)』が上演されており、このミュージカルは初演の1965年から今日まで演じられているロングランのミュージカルだ。
「ルーシー・モード・モンゴメリ、アン・シャーリー、そして村岡花子は、カナダと日本の文化交流と友好に重要な役割を担ってきました」と、アダム・ブレイジアー(コンフェデレーションセンター舞台監督)は語る。「花子の生涯はとても魅力的で、アンの物語が日本でこのように愛されるようになったのは彼女の功績だと言っていいだろう」とも。
村岡花子は日本の片田舎の貧しい茶商人の家に生まれた。彼女は、カナダ・メソジスト教会が設立した東京の名門女学校に入学することより、大きく変わってゆく。カナダ人宣教師に育まれ、教育を受けて、花子は英語の詩と文学に夢中になる。1941年、日本の真珠湾攻撃の直後、花子を教えた宣教師たちは日本を去らざるを得なくなった。しかしその状況で、花子を癒したのは、カナダの友人から贈られたL.M.モンゴメリの名作『Anne of Green Gables』だった。空襲のサイレンが鳴り響く中、見つかれば投獄されると知りながら、彼女はその物語を日本語に翻訳し始める。
日本の出版社が、それまで全く知られていなかったカナダの作家の作品に注目し、それを『赤毛のアン』と名付けて出版したのは、1952年になってからのこと。本は瞬く間に成功を収め、読み継がれ、いつしか両国間の文学的遺産となった。アンの物語は日本の学校のカリキュラムに取り入れられ、テレビアニメや他の本も生まれ、毎年何千人もの日本人観光客がプリンス・エドワード島を訪れている。
「戦争の悲惨さを知る花子にとって、『Anne of Green Gables』の翻訳は、カナダ人の恩師や友人たちへの“友情の証”でした」と花子の孫であり『アンのゆりかご』の著者村岡恵理は述べている。「祖母はこのモンゴメリの作品を通して、愛する人たちと過ごす平凡な日常が、いかに、はかなく、美しいかを若い人たち伝えておきたかったのだと思います」
(左から)温井健司一等書記官(在カナダ日本大使館)、アダム・ブレイジアー(コンフェデレーションセンター舞台監督)、山野内勘二在カナダ日本国大使  コンフェデレーションセンターのソビーファミリーシアターにて
在カナダ日本国大使の山野内勘二氏はプリンス・エドワード島を訪問中にコンフェデレーションセンターを訪れ、このプロジェクトに対する期待感を表明した。センターは2025年に大阪で開催される万博で、この劇の公開朗読を行いたいと考えているそうだ。そして、「プリンス・エドワード島に滞在し、コンフェデレーションセンター・オブ・ジ・アーツのプロジェクトについて話し合う機会を得たことを嬉しく思っています。村岡花子の残した作品は、日加関係にとって真の財産です」と大使は語っている。また、「『赤毛のアン』の名翻訳と友情の物語は、日本の子供たちに深く親しまれ、戦後の困難な時期に子供たちの心を満たしていったのです。私は在カナダ日本国大使として2025年の万博からその後に向けて、この重要なプロジェクトを支援し最大の努力を払いたいと思います」ともコメント。
現在、センターでは、この小説の舞台化のため日本語と英語に堪能な脚本家を募集しているとのこと。第一次募集の締め切りは、2022年12月31日(土)になっている。詳細は下記を参照。

アーティスト

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

新着