ストレス、睡眠不足、喫煙は大敵
 その傾向は、スマートフォンなどの普及で更に身近なものとなってきました。物がゆがんで見える加齢黄斑変性や、白内障など、加齢が主な原因となる目の病気症状は多くありますが、女性に多くみられる症状に甲状腺眼症があります。

 甲状腺は甲状腺ホルモンなどを分泌する、のどの辺りに存在する器官です。目を動かす筋肉や眼球の周りの脂肪の中に、甲状腺に関係した抗体(免疫などに関与するもの)が存在しています。甲状腺眼症は、この抗体が何らかの原因によって攻撃されることで炎症が起きます。決して珍しくない病気で、甲状腺機能の異常が原因のバセドウ病(甲状腺機能亢進症)や橋本病(甲状腺機能低下症)の場合だけでなく、甲状腺の機能が正常な方にも起こる病気です。この病気は、必ずしも甲状腺の機能を正常にすれば改善するとは限らないようで、甲状腺の異常がみられる場合は甲状腺の治療も行いますが、目の治療は別と考えた方が良いようです。甲状腺の異常は男女差があることで知られ、バセドウ病は男性の5倍、橋本病では男性の20倍といわれます。そのため甲状腺眼症も女性が気をつけたい疾患といえそうです。

 甲状腺眼症の症状ですが、眼球の周りが腫れることによる眼球の突出をはじめ、筋肉が炎症によって動きが悪くなることから物がだぶって見える複視と呼ばれる症状などがあげられます。出てしまった目や腫れてしまった筋肉は、時間が経つと戻りにくいといわれています。また、甲状腺眼症の初期症状は結膜炎や眼精疲労などの症状と似ており、眼科医でも初期の診断は難しいことがあります。

 甲状腺眼症の診断は、目の後ろの断層写真をCTやMRIで撮影して診断されます。甲状腺眼症と診断された場合の治療ですが、主にステロイドという炎症を抑える薬を全身に投与して腫れや痛みを取っていきます。軽症の場合は内服薬でよいのですが、内服薬での効果が乏しい場合や症状が強い場合にはステロイドを点滴で投与するパルス療法を行います。炎症が治まり複視が改善した場合などは内服薬に戻す場合もありますが、再燃することもあるため急に減薬しないようにします。

 他の治療法としては、放射線で患部の治療をおこなうものがあります。これは、ステロイドほどの即効性はありませんが、ステロイド療法で持病の悪化が懸念される方、高齢のためステロイドの全身投与が難しい場合などに良いとされています。

 甲状腺眼症はストレス、睡眠不足、喫煙などにより悪化するといわれています。ストレスはなかなか減らせなくても、睡眠を改善して禁煙を続けたことで症状が軽くなった症例も多くあります。目の病気だけでなく体の不調を感じたら、こまめに自分の体を労わるようにしたいですね。

Written by Gow! Magazine編集部
Photo by Hillary the mammal.

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