(C)2021 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

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カンバーバッチが異能の天才を演じる
『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻と
ネコ』 ドウェイン・ジョンソンの活
躍に口あんぐりの『ブラックアダム』
【映画コラム】

『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』(12月1日公開)
 イギリスの上流階級に生まれたルイス・ウェイン(ベネディクト・カンバーバッチ)は、早くに父を亡くし、一家を支えるためイラストレーターとして働いていた。
 やがて妹の家庭教師エミリー(クレア・フォイ)と恋に落ちたルイスは、周囲から身分違いと猛反対されながらも彼女と結婚するが、エミリーは、末期ガンを宣告される。
 そんな中、ルイスは庭に迷い込んできた子猫をピーターと名付け、エミリーのためにピーターの絵を描き始める。
 19世紀末から20世紀初頭にかけて、猫をモチーフにしたイラストで人気を集めたイギリスの画家ルイス・ウェインの生涯を描いた伝記映画。『女王陛下のお気に入り』(18)のオリビア・コールマンがナレーションを担当。監督は日系イギリス人のウィル・シャープ。
 『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(14)のアラン・チューリング同様、ここでもカンバーバッチは、生き方が不器用で変わり者だが、異能の天才でもある人物を見事に演じている。
 さて、この映画、猫を描いて売れっ子となった画家と、妻や猫との心温まる愛の物語かと思いきや、妻は早々に亡くなり、残されたルイスは家族とトラウマを抱え、おまけに版権を持たなかったため、いくら絵を描いても経済的には恵まれず、最後は精神疾患に陥るという、何ともやるせない話になっていた。
 そんな中で救いとなるのは、ルイスが描いた猫のイラストと、全体を貫く絵本や絵画を思わせる映像美、そして、何かとルイスの面倒を見るウィリアム・イングラム卿(トビー・ジョーンズ)と、最後にルイスを救う旧知のダン・ライダー(アディール・アクタル)の存在だった。
 特にライダーは、ルイスがたびたび口にする「電気」(この映画の原題は「The Electrical Life of Louis Wain」)という意味不明な言葉の意味を、「愛」と解釈し、見事にラストシーンにつなげる役割を果たしている。
 ところで、今では考えられないことだが、イギリスでは、古来ペットといえば犬が主流で、猫好きは肩身の狭い思いをしていたらしい。そんな風潮を、ルイスの絵が改めさせ、猫たちの地位を向上させたのだという。そうした意外な事実もこの映画で知らされた。
『ブラックアダム』(12月2日公開)
 5千年の眠りから目覚めた破壊神ブラックアダム(ドウェイン・ジョンソン)。彼の強大な力は、息子の命と引き換えに得たものだった。そのことに苦悩と悔恨を抱くブラックアダムは、息子を奪われたことへの復讐(ふくしゅう)のため、その強大な力を使って暴れ回り、破壊の限りを尽くす。
 そんなブラックアダムの前に、彼を人類の脅威とみなしたスーパーヒーローチーム「JSA(ジャスティス・ソサイエティ・オブ・アメリカ)」が立ちはだかるが、圧倒的なパワーを持ち、常識もルールも無視するブラックアダムにはかなわない。そんな中、JSAの前に新たな強敵が現れる。
 JSAのメンバーは魔術師ドクター・フェイト/ケント・ネルソン(ピアース・ブロスナン)、チームリーダーの空の王者ホークマン(オルディス・ホッジ)、嵐を操るサイクロン(クインテッサ・スウィンデル)、巨大化する能力を持つアトム・スマッシャー(ノア・センティネオ)という布陣。
 この映画は、DCユニバースの新章として、ジョンソンがアンチヒーローに扮(ふん)したアクションエンターテインメント。プロデューサーも兼ねた彼が、自身の魅力を最大限に引き出し、見せることに重点を置いた感がある。
 これまでの出演映画でも、筋骨隆々の肉体を駆使したジョンソンのアクションや存在感にはすさまじいものがあったが、ついに超能力まで手にし、空は飛ぶわ、怪光線は出すわと、もはややりたい放題。見ているこちらも口あんぐりで、思わず笑ってしまうほど。
 おまけに、アダムがテレビで『続・夕陽のガンマン』(66)のクリント・イーストウッドを見て、まねをするシーンまであった。
 この映画では、リーアム・ニーソンとのコンビ作で知られるジャウム・コレット・セラ監督が、『ジャングル・クルーズ』(21)に続いてジョンソンとタッグを組んでいる。前半は説明過多でいささかテンポが悪いが、途中から一気に加速するところはさすがだった。
 さて、今後、このブラックアダムはスーパーマンやバットマンとどう絡んでいくのだろう。この映画を見ると、これからのDCは、ブラックアダム=ジョンソンを中心にして展開していくのでは、と思わされた。
 マーベルもDCも既成の曲の使い方がうまいが、今回は、懐かしの「ベイビー・カム・バック」(プレイヤー)と「ペイント・イット・ブラック=黒くぬれ」(ザ・ローリングストーンズ)が印象に残った。
(田中雄二)

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