nobodyknows+の
『Do You Know?』は
個性が活きた5MCと
DJ MITSUのセンス溢れるトラックが
見事に合致した良作
多層的かつ多彩なトラック
最後にトラックについて思ったところを記す。作曲クレジットはDJ MITSUになっているので、そこは彼がほぼ一手に引き受けていることで間違いなかろう。『Do You Know?』はラテンフレイバーのファンキーチューンが多い印象。きびきびとしたホーンセクションがあしらわれているのも耳を惹く。そんなダンサブルで躍動感のある楽曲、「ココロオドル」に代表される陽気で元気はつらつとしたテイストのナンバーが本作の中心と言える。ただ、パッと聴きには確かにそうであるが、よくよく聴くと、そう簡単に切り捨てられない多層的なトラック、メロディーであることにも気付く。能天気なだけではない…という言い方でいいだろうか。アッパーはアッパーなものの、そこにセンチメンタルな成分も垣間見える。文字通り、M13「センチメンタル バス」がその最右翼…と言いたいところだが、個人的にはM2「以来絶頂」をその事例として上げたい。コードにその要因があるのだろう。M5「熱帯夜」もそうだ。ギターサウンドが典型的なスパニッシュでありながら、これもどこかセンチメンタルである。共にリリックは乱痴気気味ではあるけれど、馬鹿騒ぎに終始しない空気が所々に漂っている。どこか冷静というか、悲哀を飲み込んだ上での享楽というか、決して単純ではない印象があって、そこが何とも味わい深い。
サンプリング元がはっきりと分からないので断言できないけれど、意外にも…と言うべきか、お洒落なサウンドも多々確認できる。M10「understan'?(Theme from nobodyknows+ pt.0)」、M14「slow down」のスムースジャズのテイストはその最たるものだろう(すなわちM6「Theme from nobodyknows+ pt.9」も同様)。所謂シティポップの要素も随所に感じられる。軽快というよりは爽やかと言ったほうがぴったりと来るようなギターのカッティング、綺麗なピアノの旋律やキラキラとしたシンセの音色など、これまたトラックだけで見たら馬鹿騒ぎとは真逆のアーバンさを見出せるところである。また、M4「SUMMER」では不思議な感じであったり(こればかりは何とも上手い表現が見つからない)、cobaのアコーディオンをフィーチャーしたM9「RASH feat.coba」であったり、多層なだけでなく多彩でもある。これはひとえにDJ MITSUのセンスの成せる業であろう。トラックメイキングだけでも普遍性と不偏性があるということだ。そこに5MCという独特のスタイルが乗っているのだから、今回「ココロオドル」が話題になったように、nobodyknows+の楽曲が時代を超越したのも“それはそうだろうなぁ”と納得させられるのである。
TEXT:帆苅智之