まんだらけ「顔写真公開騒動」を現役
万引きGメンが考察

「8月4日17時頃まんだらけ中野店4F変やで25万円の野村トーイ製鉄人28号 No.3 ゼンマイ歩行を盗んだ犯人へ」

「1週間(8月12日)以内に返しに来ない場合は顔写真のモザイクを外して公開します」

 ある弁護士などは、たとえ犯人が捕まったとしても、現行犯ではないから罪に問える可能性は少ないとまで言及する始末だ。これでは、うまく盗めば罰せられないということを公言しているようなもので、類似の犯行を増やすことにもつながりかねない。犯罪者を守るべき立場にいる弁護士の立場からすれば当然の理屈なのかもしれないが、窃盗犯を騒動に巻き込まれた被害者の如く仕立てあげて、反撃の知恵を授けるような発言が繰り返されたことには大きな違和感を覚えた。


 確かに、仇討ち的な画像公開は自力救済行為に値し、名誉棄損にも値する行為といえよう。だが、逃走中の犯人に報復の仕方を教えることが弁護士の役割といえるだろうか。歪んだ人権擁護の意識が、逃げれば勝ちの論理を支え、巧妙な万引きを横行させているように思える。

 高額商品を狙う職業的万引き犯は盗品をすぐに換金してしまうので、被害者である「まんだらけ」からすれば証拠写真を公開してでも、ブツを捌かれる前に捕まえたいところだ。

 しかし、警察による広報は殺人や強盗などの重大事件に限られているので、たとえ所轄署が公開手配を望んだとしても本部の決済が下りることはない。一度でもそうした対応をとってしまえば、全ての届け出において同じ対応をとらなければならない状況に陥るので、窃盗事案での公開手配を許可する訳にはいかないのだ。商店に対して万引きの全件通報を通達してから、その処理に追われて疲弊している警察に、そんな余力はないのである。

 こうした事情から今回のような対応をとった「まんだらけ」は、返還期限ギリギリまで公開の姿勢を崩さなかったが、最終的には顔写真の公開を断念して警察の捜査を見守るとした。確かに、万引きをしたらネット上に写真が公開されるということが常識化されれば、その抑止効果は計り知れない。


 しかし、実際に写真が公開されたことを想像してみれば、大きな不安も感じる。現代版の晒し首は永遠に消えないので、この手法が当たり前になってしまえば、社会から孤立させることにもなりかねないのである。換金目的のプロや窃盗団、常習的な高額万引き犯ならまだしも、魔が差して犯行に至ってしまったような初犯と思しき万引き犯や、少年の画像までもがネットに晒される社会になってはいけないだろう。

 しかし、永年に渡って数多くの万引き事案に携わってきた筆者からすれば、加害者の人権ばかりが尊重される昨今の風潮を打ち破るが如く、行き詰まり感のある万引き防止対策に一石を投じた「まんだらけ」の行動には賛辞を贈りたい。

 被疑者ばかりに有利な法解釈や、引きを扱う警察の対応に数多くの問題があることは紛れない事実であるし、犯行態様も悪質化の一途を辿っているので、より踏み込んだ万引き防止対策が必要な状況にあるのだ。あわよくば、この事件を機に万引き防止についての議論が高まり、万引きを取り巻く悪しき環境が少しでも改善されることを願う。

Written by 伊東ゆう

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