YURiKA Live tour「KiRA ☆︎KiRA」
横浜公演レポート 目指せ、輝きのそ
の先へ!

YURiKA Live tour『KiRA ☆︎KiRA』横浜公演 2022.10.29(SAT)F.A.D YOKOHAMA
アニソンシンガーのYURiKA初の全国6ヵ所を巡るワンマンツアー『YURiKA Live tour「KiRA☆KiRA」』が10月29日の横浜公演を皮切りにスタートした。11月11日に発売を控える1stアルバム「KiRA ☆︎KiRA」を引っ提げ、横浜・大阪・小倉・埼玉・札幌・渋谷の都市を巡回するのだが、小倉・札幌のみはアコースティック編成というのも特徴のひとつだろう。今回はアルバムの発売より先行して行われた横浜公演の様子をレポートする。10月29日が誕生日当日だったということもあり、サプライズもありの暖かい一夜となった。

横浜中華街を眼前にする会場のF.A.D YOKOHAMAには誕生日をお祝いするフラワースタンドもいくつか届いていた。規模感や雰囲気も”これぞライブハウス”といった様相で、入場直後から気分が高まる。また場内では開演前ラジオが流されており、これはツアー各地で別々な内容のモノが流れるように既に収録済みとのことなので、他会場での参加予定の諸兄諸氏は、なるべく早めに入場されることをオススメする。この横浜公演では、テッパンの中華街のおすすめグルメなどのお便りが読まれており「公演後に行ってみようかな?」なんて気分になってくる。開演前から参加者を楽しませようとする工夫が凝らされている点も、この後のステージをより楽しみにさせてくれる。
逆光に包まれてアルバムのメインビジュアルの衣装でYURiKAが登場すると、まずはアニメ『ロマンティック・キラー』の主題歌にも抜擢された新曲の「ROMA☆KiRA」を披露。続けて「ふたりの羽根」では歌いながらジェスチャーで起立を促すと、待ってましたと言わんばかりにペンライトを振ってフロアも応える。タイアップ作品の「はねバド!」にちなんで、曲の最後には「27歳、初バドミントンするよ!」とステージから数発、シャトルを打ち込むパフォーマンスで一気に場内のテンションも跳ね上がる。
2曲を終え「初のツアー、KiRA☆KiRAへようこそ!」と堂々の開会宣言をすると、場内からの拍手が鳴り止まない。ファンクラブイベントでの開催発表から3ヶ月。「私はどれだけこの日を待ち望んだか……って、きっとみんなも同じだよね?(笑)みんなで楽しみに待ち望んでたこの3ヶ月でした」と、その胸の内を語る。今年はデビューから5周年の節目の年。念願のアニサマへの出演も果たし、ワンマンライブを開催したことこそあれど、実はツアー公演は初めて。それだけに滾る想いを熱くマイクに乗せて語ってくれていたが、「その日限りのパフォーマンスを出来るように、悔いのないように最後まで駆け抜けていきます!」とその想いを強く結んだ。
また今回は11月11日発売の1stアルバム「KiRA☆︎KiRA」 を引っ提げてのツアーということなのだが、まだ発売前ということで、先行配信をしている楽曲もいくつかあるものの、当然、今日が初披露となる新録曲も多く披露された。3曲目の「Key to my next gate」も、まさに初披露の楽曲で、後のMCで熱く語っていたが、彼女の大好きなゲームブランド Keyの作品の彩る楽曲をモチーフに妄想を膨らませて出来た曲なのだとか。「曲のこの部分で絶対に”cv.〇〇〇〇”って出ると思うんです!」と既にYURiKA監督の頭の中ではOP映像まで構想が固まっているほどの熱量で制作に臨んだ。
続いて「タオル持ってますか?寒いけど、サマーテイル!」とそんなKey作品から彼女が歌う『Summer Pockets』のキャラクターソングを披露。赤いハートの縁をしたサングラスをつけてゴキゲンにタオルを回していくのだが、壇上の彼女に合わせて同型のサングラスをつけるファンの姿も見かけたりと、フロアの準備も万全な所からも、やはり彼女と同じくらいこのツアーをファンも待ち望んでいたのだろうなと改めて感じさせられた。
「さぁ、みんなまだまだ盛り上がっていくよ!じょいふる!」とTVアニメ『アニマエール』の挿入歌としてカバーしたいきものがかりの「じょいふる」を披露。チアリーダーよろしく金のボンボンを持って、文字通り飛んで跳ねてのエネルギッシュなパフォーマンスに勢いを付けて、『怪人開発部の黒井津さん』挿入歌の「ミラクルステップ」と続いていく。MCなしの圧巻の5曲目はTVアニメ『宝石の国』より「鏡面の波」。場内は一気にエメラルド色に染まると、雰囲気もガラリと変わる。改めて曲の持つパワーと奥深さを感じる。
「デビュー曲から最新作まで全部入ってるアルバム」と振り返るように、当然ではあるが1stアルバムということでこの5年間の足跡が詰め込まれた1枚になっている。「アニソンシンガーなのでそれぞれの作品に寄り添っている。だからジェットコースターのようなセトリになるのを楽しんでほしいです。」と指南が入る。
「お次は今回のアルバムに縁のある方の曲をカバーさせて頂くのですが……、ちょっと準備するので繋いでて(笑)」と、ギターの吉田氏にマイクを預け、いったん袖へ。「私、ホントにただのオタクなので!」とアニメイトで買った私物という彼女の大好きな作品『黒子のバスケ』の誠凛高校のジャージを羽織って登場。GRANRODEOの飯塚昌明が作編曲を務める楽曲も収録されているということで「27歳、なんでも出来る年にしたい!」とGRANRODEOの「Can do」をカバー。各地でアルバムに携わった方に関連する曲をカバーしていくようだ。
「baby baby flow」では「横浜いけるかー!?」高くジャンプ。アグレッシブな動きにフロアも激しいヘドバンで応じる。そして先ほどアナウンスもあった「Crave」は先行配信中の新録曲だ。作詞はZAQ、作編曲が飯塚氏という豪華な並びもさることながら、ズシリとした重みのある鳴きのギターフレーズは飯塚を彷彿とさせるし、今日のライフハウスの音響にピッタリな演奏だった。また彼女が”アニメありきのアニソン”と言うのなら、逆にそれを活かした演出がとても良かった。先ほどの「鏡面の波」はもちろん、続いて披露したTVアニメ『BEASTERS』ED主題歌の「眠れる本能」はアニメのエモさを引き出すようTVアニメ『BEASTARS』サントラ「BEASTARS」から続いて始まる構成にすることにより、楽曲への没入感が増す演出となっていた。
再びMCパートでは「全然、座って聞いてね。高いところから失礼します(笑)」と、まずは大好きな黒バス、GRANRODEOへの熱い想いから語りだす。「Can do楽しかったよね?今年で黒バスも10周年なので!おめでとうございます!!」とまくし立てるように振り返り、飯塚さん作編曲の「Crave」はとにかくアダルトな色気づいたカッコよさで満ち溢れており「これから大切に歌ってくぞ!」とその想いを確かめた。また「色んなパターンのED歌わせてもらう経験なんてなかなか出来ないですし、 BEASTERSは私にとっても本当に大切な作品です。」と、ここからはBEASTERS楽曲の流れに。
せっかくなのでそのまま着座で、ひとりひとりに優しく微笑みかけながら「マーブル」「月に浮かぶ物語」「Le zoo」を披露。「Le zoo」ではハーモニカの演奏も披露し、しとやかなムードのまま、再び楽曲を振り返る。BEASTERS楽曲は最近のライブでよく披露する機会が多いということで、中でも印象的だったと語るのが『ユリパ!』という初主催ライブでのひとコマ。大原ゆい子nonoc亜咲花安月名莉子といった同世代シンガーの子らをゲストに迎えて行った第1回の際に、最後に「Le zoo」を全員で歌ったのだが「多幸感半端なかった!」と当日を振り返り、「BEASTERSのみんな違ってみんな良いみたいな部分を伝えてる楽曲だとは思うんですけと、私たちの仲間でありライバルであり、同じ場所で頑張ってるメンバー同士でこの曲を歌えたことに、また違った物語を感じちゃって、より大切な楽曲になったなって感じたんですよね」と噛みしめた。
「夜奏花」「パーソナリティ」と、そのままバラードナンバーが続く。指先まで意識を集中させ、ライブハウスの天井を感じさせない、遥か遠くを見据えた目配せで歌い上げるその表現力の高さに驚かされた。ギターやベース、ドラムといったいわゆる普通のバンドセットに加え、ストリングスにコーラスを交えた、彼女の透き通るようなハイトーンを活かすバンド編成も非常に良かった。
暗転から『リトルウィッチアカデミア』の劇伴「シャリオのテーマ」が聞こえてきた。”シャリオ”とは作中に登場する伝説の魔女”シャイニィシャリオ”のことだ。舞台袖から箒を持ってYURiKAが登場すると「ラストスパート盛り上がっていくよ!!」と、”リトアカ”のターンへ突入。まずはゲーム『リトルウィッチアカデミアVR ほうき星に願いを』主題歌 の「Dream Flight」を披露。ここからは再びスタンディングで盛り上がりを見せる。「まだまだ終わらないよー!」とTVアニメ第2クールOPの「MIND CONDUCTOR」では、ギターソロで箒のエアギターも飛び出し、最後は箒にまたがり「みんな飛ぶよー!」と最後へ向けての助走をつける。
最後のMCでは「この箒、UNIVRSさんがくれたの!」とゲームの開発担当企業からの熱いエールに加え「先日の日髙のり子さんのイベントに参加させてもらった時に、日髙さんもこの箒を持ってくれたんです!」とシャリオ役の日髙さんのエピソードになぞらえて「最後まで信じる心で歌いたいと思います!」とTVアニメ第1クールOPの「Shiny Ray」を最後に披露すると、「皆さん今日は本当にホントにありがとうございました!楽しかったです、次は大阪で会いましょう~!YURiKAでしたー!!」とアニメ同様、ハッピーエンドで幕を閉じた。
アンコールではツアーTシャツに着替えて登場。改めて「素晴らしい誕生日になりました」と駆け付けたファンへ感謝のメッセージを送る。今回のアルバムは約3年ぶりにリリースということで、コロナ期間に入ってしまい、その中でもやれることを探しては色々やってきたけど「アニメの主題歌を歌えない時期も、みんなは私をアニソンシンガーとして認めてくれるか?と思うこともあった」」とアニメタイアップでの新曲リリースまで期間が空いてしまったことに対して不安を抱えていたことも語ってくれた。自身の楽曲に対して「共に戦ってくれる戦友」のような感覚で接しているという彼女にとって、新曲の「ROMA☆KiRA」はまさに「3年ぶりにYURiKA、やるぞ!」と言いに来てくれた気がするのだと、自身を奮い立たせる。
最後にグッズ紹介、そしてバンドメンバーの紹介……と思いきや、ここでサプライズコーナー。「まぁ、誕生日だしバースデーケーキくらいの用意はあるか」と高を括っていると、「とある方からメッセージを頂いています!」といつの間にか準備されていたプロジェクターから、彼女が敬愛するLiaさんのビデオメッセージが。「えーっ!Liaさんじゃん!共演しましょうねって、言ってくれた……」とこれにはさすがに驚きと喜びを隠せない様子。もちろん、直後にはバースデーケーキと共にバンドメンバーらが登場し、台本通りの通常進行へ(笑)。
彼女のライブの特徴的な点として、アンコールの曲目をその場で決めるというのが毎度のお馴染みとなっているそうだ。「YURiKAのライブは初めて来た人もいると思うんですけど、アンコールは曲を決めてないんですよ。今日やった楽曲の中から、もう一回聞きたい曲を聞きますので、拍手で決めたいと思います。人数じゃなくて音量で判定しますので、頑張れば聞きたい曲が採用されるかも!(笑)」ということで「MIND CONDUCTOR」と「鏡面の波」が決勝戦へ。拍手の大きさ的には鏡面の波だったような気もしたが……「えー、どうする?鏡面でいい?実は今回、アンコールは動画撮影OKにしようと思ってたんだけど……(鏡面の波じゃ動画映えしなくない?)。いや、マイコンにしよう!箒あるしね!」と大忖度で「MIND CONDUCTOR」へ(笑)。まだアンコールでは「鏡面の波」を披露したことがないそうなので「でも皆の反応を見てると、今回のツアーで本当に”鏡面”が選ばれる可能性も全然ありそうだね」とファンとの対話を楽しんでいた。
「アニソンシンガーである以上、ひとつひとつの関わりを大事に、これからも歌っていきたいと思うのでロマキラもう一回歌わせてください」ともう一度「ROMA☆KiRA」を披露し、最後に記念撮影をして無事に、自身初となるワンマンツアーの初日を終えた。
彼女もMCで語っていたが、やはりアニソンを歌う者である以上、自身の楽曲の方向性がタイアップ元のアニメ作品に寄り添ったものになってしまうのは必然である。だからこそ、アニソンシンガーに1番求められる才能は、器用さなんじゃないかと私は思う。作品のテイストに合わせられる、カメレオンのような歌手とでも例えようか。それに合わせて歌声や、自分自身のキャラクターの部分で、様々な一面を届けられる人が現代のアニソンシンガーには多いように思える。
だとしたら彼女はかなり上手く擬態できている方だと改めて感じた。アップテンポからシリアスまで。かわいいからカッコいいまで。本当にジェットコースターのようなセットリストだったが、最初にズドン!と落ちて後は惰性、のような安直なコースターでもなく、最後まで我々を楽しませようという気概が散りばめられていたライブだったことは、ここまで読んでくれた方には伝わっていると思う。
また、彼女が舞台にするのはきらびやかなアニメ/アニソン業界だ。木を隠すには森の中のように、キラキラの中で生き残るには当然、自分自身もキラキラと輝くしかない。カメレオンと例えたが、目立ちすぎないのも本末転倒。このツアーを経て、彼女に一体どんな磨きがかかるのか?輝きのその先へ、踏み込む一歩がようやく始まった。
文・レポート=前田勇介

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