Editor's Talk Session

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【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:
それでも世界が続くなら、
最初で最後のレーベル運営に挑戦

僕がいいと思った人だから、
君が好きになる可能性もある

岩田
『YouSpica』には“1アーティストにつき、たった一度だけのリリース”という決まりがあって、その理由として“ずっとそのアーティストを守る力も資金もありません”とコメントしていましたが、この“一度だけ”というのはアーティストのモチベーションも変わると思います。“一度だけならやってみるか”って、今後続けていくか分からないアーティストにとってもチャンスになるんじゃないかなと。
篠塚
なるほど。そこは無意識でしたけど、そうですね。一度だけとなると、例えば人気のイラストレーターさんにジャケットをお願いするよりも、“最後になるかもしれないのなら最後に大好きな仲間を連れてこよう”って気持ちにもなるでしょうしね。現代的なカウンターカルチャーが育っていくようになったらいいなぁ。リリースしたらどんなアーティストでもインタビューしてもらえるところまではやってあげたいんです。僕はインタビューを受ける時に、“誰にも見つかるはずがなかった音楽がメディアに載るなんて一生ものだ”といつも思っているので、インタビューされたことっておじいちゃんになってもたまに思い出す人も居ると思うんです。だから、インタビューはやらせてあげたいなぁ…じゃあ売り上げがないアーティストにそういう宣伝費用をどこから引っ張ってくるのかという話になった時に、結果『YouSpica』をそれでも世界が続くならの事務所としても動かすことで僕たちが稼いでくれば、他のアーティストに回せるんじゃないかって話にもなって。経営的に得策とは言えるものではないけど、それでも世界が続くならという母体があるから、その売上を混ぜようと考えています。
石田
普通、それは逆ですよね(笑)。自分たちが売れたお金で他のバンドを食わすのが嫌だからってレーベルを抜ける人がいるのに。
篠塚
確かにそうかもしれないですね。自分の友人が同じことやろうとしたら止める気がします(笑)。でも僕たちは逆説的にやったことが今につながったバンドなので。勝算とかはないですけど、僕たちの非常識な逆説を成立させてくれたリスナーが応援してくれているという現実もありますからね。それでも世界が続くならは、もう見つけてもらった経験があるバンドだと思っているんですよ。大規模ではないですけど、僕のバンドを応援してくれている人が、僕らのレーベルで出した音源を無下にするとは思えないというか、真剣に聴いてくれると思うんです。ものすごく有名にしてあげられることはできないけど。そういう人に紹介することはできる気がしていて。
石田
それは“届くべきところに届くよ”ってことでもありますよね。それでも世界が続くならが見つけたバンドなら聴いてみようと思う人もいるだろうと。
篠塚
まさにそれです。“僕がいいと思った人だから、僕のことを好きでいてくれる君が好きになる可能性もあるでしょ?”と、“僕が好きな人たちだから聴いてみてよ”と思ってます。もちろん、必ずしもそれが成立するとは思っていないですけど。
石田
その昔、YOSHIKIが作ったExtasy Recordsが、“エクスタシーから出るものは信頼して聴ける”とファンから支持されていたんで、そういうことですよね。
篠塚
そうです、そうです。『YouSpica』は、たくさんあるレーベルの中に“こんな弱小レーベルがもあるよ”っていうイメージなので、まったく新しいことをする感覚はないんですよね。誰かにとっての最後の砦になれたら嬉しいと言いますか。
岩田
毎月一枚、アーティスト発掘コンピレーションアルバムを配信するというのも面白い企画だと思いました。レーベルが出すコンピって久々に聞きましたし、最初は名刺代わりにもなるかなと。
篠塚
嬉しいです。やっぱりリリースが一度きりなのはハードルが高すぎるというか、リリースのタイミングがもうちょっとあとのほうがいいっていう人も出てくるでしょうし、初心者の子もいるので、見つけたらすぐに出すわけにもいかないんですよね。コンピは一般募集をして、それこそボイスメモの一発録りでもいいから、僕がマスタリングして入れちゃおうと思っていて。すでに知名度がある人からしたらそこまで魅力的じゃないと思うけど、これから音楽をやろうとしている人も気軽に応募しやすくて、そのコンピに参加した人が“リリースしてみない?”って話になったあと少しだけ生きていこうかなって思えるかもしれないし、素敵じゃないですか。そういう僕とリスナーが同時に出会えるようなコンピになったら嬉しいです、“みんなで聴こうぜ!”みたいな場ですね。
千々和
『YouSpica』を立ち上げるきっかけになった出来事は全然前向きとは言えないものだと思うんですけど、現状、篠塚さんを含めメンバーのみなさんはバンド活動とレーベルの準備を楽しく取り組まれていますか?
篠塚
信じられないくらい忙しくなりましたけど、気持ちは元気になってきていると思いますよ。レーベルも設立させてもらったし、それを支援してくれた人がいてくれたおかげで、喪失していた自信は現状少しづつ取り戻せて来ているかもしれないですね。もともとはバンドを結成してから10年以上が経っているし、それで赤字ってことは世の中的に必要とされていない、“オワコン”と言われてもおかしくないと思っていたんですけど、“新しいことが始まっているんだから、どうやら終わってはいないんだな”とたくさんの人に教えてもらいました。最終的にはバンドのメンバー全員でバンドとレーベルを仕事にできたらいいなとも思えているので…まぁ、無理だとは思うんですけど。でも、拾って貰った命ですから、そういうつもり生きていきたいと思っています。

【ライヴ情報】

それでも世界が続くなら結成11周年+新レーベルYouSpica設立記念
入場無料ONEMAN LIVE 「水色脱兎緊急避難所」』
12/9(金) 東京・渋谷Spotify O-Crest
※入場無料
※キャンセル無料/無くなり次第終了
来場予約:https://tiget.net/events/211472

OKMusic編集部

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