Suara

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【Suara インタビュー】
やっぱり前向きに生きたいんだなと
自分自身で再確認した

4年半振りとなるニューアルバム『Infinity 希望の扉』は、収録16曲中12曲を占める『うたわれるもの』シリーズの楽曲で“命”と“魂”にまつわる壮大な世界観を描きながらも、Suara自身が見据える“希望の光”を確かに落とし込んだ一作。実に7年振りとなるワンマンライヴ『Suara LIVE TOUR 2023 ~Infinity~』も決定し、ファンとともに歌でつながっていく無限の未来への扉は、今、開かれようとしている。

Suaraのアルバムとして届けるのなら、
“今の自分の気持ち”を込めたかった

実に4年半振りとなるアルバム『Infinity 希望の扉』ですが、タイトルはご自身で作詞作曲をされたラスト曲「希望の扉」から取られたそうですね。

前作の『星灯』(2018年3月発表のアルバム)以降の4年でタイアップ曲がかなり溜まって、今回は全16曲中13曲がタイアップものになったんですね。その大半が『うたわれるもの』関連の曲ということで、言ってみれば『うたわれるもの』歌集の第二弾みたいなアルバムになったんですけど、8枚目のSuaraオリジナルアルバムとしてみなさんに届けるからには、やっぱり今の自分の気持ちを込めたかったんです。アルバムにはできるだけ自分で作詞作曲(巽明子名義)をした曲を入れたいと考えていて、今回も1曲作ろうと決めたんですが、アルバムの制作をしていた時期って、正直言ってあんまり元気がなくて。いろいろ悩んだり、それこそ《あと何回泣けば 笑える日が来るのだろう》っていう歌詞どおりの心境だったんですよ。なのに、いざ曲を作ろうとしたら、メジャーコードなサビのメロディーが自然に出てきて、“あぁ、やっぱり明るい曲を作りたいんだな。前向きに生きたいんだな”っていうのを、自分自身で再確認したんです。いろいろ悩んだり立ち止まることはあっても、希望は忘れずにいたい…そんなシンプルな想いを込められたらなぁって。

だから、歌詞も極めてシンプルなんでしょうか?

そうですね。“今、自分が抱えている悩みに答えはあるんだろうか?”とか、“この道は正しいんだろうか?”とか、いろいろ突き詰めていくと哲学的だったり宗教的な言葉が浮かんできたりもするんですけど、いろんな方に届けたかったから、みんなに感情移入してもらえるような言葉を探していくと、どんどんシンプルになっていって。そもそも今回はメロディーが先に浮かんだので、メロディーがシンプルなぶん、難しい言葉を乗せると合わないんですよね。あと、ライヴで盛り上がれる曲にもしたかったから、自然と口ずさめたりノレる曲にしたいっていう想いもあったんです。

それでサウンドもシンプルなバンド調なんですね。

はい。みんなで盛り上がれる曲というイメージと、ロックだけどちょっとキラキラしている感じというのを、編曲の半田麻里子さんにお伝えさせていただいて。結果、音色的にもキラキラな曲になったので、ライヴ映えする曲に仕上がったんじゃないかと思います。何よりも希望を伝えたいという想いが強かったので、レコーディングでも明るく歌いました。

ちなみに“希望の扉”というタイトルもメロディーに合わせて言葉を探す中で出てきたもの?

そうですね。希望の“扉”なんで、まだはっきりと希望やゴールが見えているわけではないんですよ。進みかけて、また立ち止まって…みたいな状況で。でも、サビには《遠く光る未来》があって。それが見えかけたり、また見えなくなったりという感じの心境ですよね。

そんな不安定な状況でも光る未来を目指して進んでいきたいというメッセージは、リスナーからしても非常に共感できますよね。そう考えると、曲を作った時がつらい状況であったのは、むしろ良かったのかもしれない。

今までのアルバムを振り返ってみても、自分が悩んだり、人生の節目を迎えたりっていう波とアルバムの制作時期が、不思議なことにいつも重なっているんですよね。だから、毎回何かしら書くことがあるんです。逆に幸せな時って、その心境を書こうとは思わないというか、共感を得られそうな気がしない。むしろ憂いたり、悩んだりしてる時に出てくる言葉ほど人に伝わる気がするんです。そういう曲を作るために今、試練を受けているのかもしれないと思うことも多いし、“今の感情をかたちにしておきたい!”という気持ちにもなりやすくて。自分の生きてきた歴史としても書き残しておくことで、そこを乗り越えて今があるというのを、未来の自分が振り返った時に自分の糧にしたいんですよね。

他2曲の新曲はどういったテーマから生まれたものなんでしょうか? 既存のタイアップ曲と見比べつつ、足りない曲調や要素を補っていくパターンもありますが。

そういう意味で言うと、今回はタイアップで本当にいろんな曲調のものがあったから、足りないものはなくて。とはいえ、シンプルなバラードを歌いたかったので、13曲目の「哀哀」は作曲の松岡純也さんに、歌が際立つようなシンプルなアレンジのバラードをお願いしました。この手の普遍的なバラードは今までもたくさん歌わせてもらってきたんですけど、いつもAメロの雰囲気作りが本当に難しくて。今回は自分に言い聞かせるように、ちょっと噛み締める感じで歌いました。14曲目の「Find me」は半田麻里子さんにお任せで。ただ、アレンジに関しては静と動のコントラストが面白い遊び心のあるものっていうディスカッションはしましたね。イメージ以上にアルバムならではの面白い曲になったのではないでしょうか。

半田さんは「哀哀」の歌詞も書かれていますが、かなり生々しい状況と心境が描かれていますよね。恋人と通じ合わないものがあって未来を不安視しながらも、自分の中で誤魔化して日々を送っている女性の歌というとらえ方で良いんでしょうか?

私もそう解釈しました。漠然と恋愛系の歌詞が合う気がしたので、ラヴソングでというお願いはしつつ、その恋愛の方向性に関してはお任せしたんですよ。そしたら不安や疑惑がだんだん確信に変わっていくような、こんな心に刺さる痛い歌詞が出てきて…切ないですよね。「Find me」も相手と自分の心のずれであったり、相手の気持ちを探っていくような、心の奥深い部分が描かれているんですけど、こっちは恋愛に限らず友達だったり、いろんな関係性に当てはまる雰囲気のように感じます。アウトロのコーラスは半田さんと私とで一緒に重ねて歌っていて、浮遊感のある感じがすごく好きですね。

なんとなく似通った世界観の2曲ですよね。しかし、1曲目の「トキノタイカ」から12曲目の「百日草」まで『うたわれるもの』シリーズのタイアップ曲が壮大に続くので、13曲目の「哀哀」が来た時、ものすごいギャップがあったんですよ。生と死だとか輪廻といったテーマにどっぷりと浸かった異世界から、いきなり現実へと引き戻されたようで。

そうですよね(笑)。今回はCDだけじゃなく、レコードも作らせてもらうことになった(アナログレコードは2023年春頃の発売予定)ので、全16曲を4曲ずつに色分けしたんです。それぞれを2枚組のA面B面に収めることで、Suaraの曲の世界をより違った角度から楽しんでもらえたらいいなと。具体的に言うと、1曲目の「トキノタイカ」と8曲目の「愛おしき欠片」は11月に発売されるゲーム『モノクロームメビウス 刻ノ代贖』のオープニングとエンディングで、これも『うたわれるもの』に登場するオシュトルの若い頃のお話なんですよ。なので、この「トキノタイカ」から『うたわれるもの』の世界が始まり、最初の4曲ではアップテンポな曲が続いて、次の4曲はバラードですね。で、9曲目の「天命の傀儡」からまた新たな雰囲気になり、ラスト4曲にポップで身近な世界観の曲が集まっているという流れです。

なるほど。タイアップ曲の中で「Pure Contrast」だけが15曲目という終盤に入っている理由が、それを聞いて分かりました。アルバムの中で唯一『うたわれるもの』シリーズ以外のタイアップ曲で、まったく世界観が違いますから。

乙女ゲーム『片恋いコントラスト ―way of parting―』のオープニングテーマなので、ちょっと甘酸っぱい青春ものみたいな曲なんですよね。奇しくも作曲が半田さんなので、新曲との並びもすごく馴染みがいいんじゃないかと。教室だったり学生時代を彷彿させる歌詞だから歌のトーンも明るいですし、この曲があるから最後の「希望の扉」に入っていきやすいっていうのもあるんですよね。
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アルバム『Infinity 希望の扉』【初回限定盤】(2CD)
アルバム『Infinity 希望の扉』【通常盤】(CD)

OKMusic編集部

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