アヴリル・ラヴィーン 20年分の経験
の重みを実感、ヒット曲をもれなく詰
め込んだ8年ぶりの来日ツアーの公式
レポートが到着(画像:全13枚)

8年ぶりとなるアヴリル・ラヴィーンのジャパン・ツアーが開幕した。本記事では11月9日の東京ガーデンシアター公演のオフィシャルレポートをお届けする。

パンデミックの影響で二度にわたって延期された末に、実に8年ぶりとなるアヴリル・ラヴィーンのジャパン・ツアーが、ようやく実現。11月7日の横浜公演で幕を開け、9・10日の東京、12日の名古屋、14日の大阪まで計5公演が行われた。このうち、8,000人を収容する東京ガーデンシアターでの9日の公演では、2022年版のアヴリルとデビュー当時のアヴリルが交錯。一貫して独自の道を歩んできた彼女の軌跡が浮かび上がるようなパフォーマンスが展開され、満場のオーディエンスをエキサイトメントとノスタルジアで包み込んだ。
アヴリル・ラヴィーン(11月10日東京公演) 撮影=KAZUMICHI KOKEI
もとを正せば19年のアルバム『ヘッド・アバーヴ・ウォーター』に伴うツアーの一環として、20年5月に予定されていた今回の来日。それから2年以上が経過し、今年2月にポップパンクのルーツに回帰する最新アルバム『ラヴ・サックス』がリリースされただけでなく、ファースト・アルバム『レット・ゴー』の発売20周年も巡ってきた。よってこれら2枚のアルバムを中心に選曲がなされ、残る5作品からも1曲ずつ代表曲を選び、それぞれにイントロダクションを添えた3幕でセットリストを構成。まず第1幕は、『バッド・レピュテーション』(ジョーン・ジェットの曲のカヴァーで、日本では映画『ONE PIECE FILM Z』の主題歌として大ヒットした)に乗せてアヴリルの20年間を振り返るモンタージュで盛り上げると、『ラヴ・サックス』からのファースト・シングル『バイト・ミー』へとなだれ込んだ。
アヴリル・ラヴィーン(11月10日東京公演) 撮影=KAZUMICHI KOKEI
アヴリル・ラヴィーン(11月10日東京公演) 撮影=KAZUMICHI KOKEI
5ピースのバンドを従えて、アルバム・ジャケットと同じように巨大な黒いバルーンを手にして登場したアヴリルは、『バイト・ミー』のオープニングの高音を気持ち良く響き渡らせ、バルーンをどんどん客席に蹴り出していく。そして「アイタカッタヨ!」と早速日本語MCで会場を沸かせ、次の『ワット・ザ・ヘル』を挿んで、「一番最初からファンでいてくれたみんな」に記念すべきデビュー・シングル『コンプリケイテッド』を捧げた。背後には懐かしいミュージック・ビデオの断片が映し出されたが、声も見た目もほとんど変わっていないことにビックリさせられる。
アヴリル・ラヴィーン(11月10日東京公演) 撮影=KAZUMICHI KOKEI
続く第2幕も、グランジーなセカンド『アンダー・マイ・スキン』(04年)からの『マイ・ハッピー・エンディング』を始め様々な時代から6曲が用意されていたが、このセクションに副題を添えるとしたら、“男性ポップパンク系アーティストたちとの交流”が相応しいのかもしれない。
11月4日に公開されたばかりのヤングブラッドとの共演曲『I’ m a Mess』及び、ブラックベアーとコラボした『ラヴ・イット・ホウェン・ユー・ヘイト・ミー』を披露しただけでなく、なんと『ラヴ・サックス』にプロデュースなどで関わり、現在アヴリルと交際しているモッド・サンが飛び入り参加!威勢良く現れた彼は「プリンセス・アヴリル・ラヴィーンに拍手を!」と煽ってアヴリルをハグし、彼女をフィーチャーした自身のシングル曲『Flames』を聞かせてくれた。アヴリルと言えば次世代の女性シンガー・ソングライターたちに及ぼした影響の大きさに注目が集まっているが、男性たちからも慕われ、インスピレーション源と目されていることを印象付けた感がある。
アヴリル・ラヴィーン(11月7日横浜公演) 撮影= MASANORI NARUSE
アヴリル・ラヴィーン(11月7日横浜公演) 撮影= MASANORI NARUSE
さらに『ネヴァー・グローイング・アップ』をオーディエンスと合唱して第2幕を終えた彼女は、バンドが『ハロー・キティ』をプレイする中でステージに戻ってくると、ライブに必須の鉄板アンセム『ガールフレンド』で第3幕をスタート。さらに、これまた後輩の男性アーティスト=マシン・ガン・ケリーをフィーチャーした『ボーイズ・ライ』(彼のパートはバンドのメンバーが担当)と、説明無用の『スケーター・ボーイ』でポップパンク一色に塗り上げ、一旦セットを締め括った。
アヴリル・ラヴィーン(11月10日東京公演) 撮影=KAZUMICHI KOKEI
こうしてひたすらアップビートで攻め続けたアヴリルは、アンコールになってようやくスローダウン。前述したように冒頭から喉は絶好調だったが、10年代と00年代の彼女を象徴する二大バラードで、いよいよそのパーフェクトなヴォーカルをじっくり堪能させてくれた。1曲目は『ヘッド・アバーヴ・ウォーター』の表題曲、そしてもう1曲は誰もが待っていたファーストからの『アイム・ウィズ・ユー』だ。どちらも絶望の淵から救いを求める曲であり、自分の強さだけではなく脆さや弱さも率直に綴ってきた、アヴリルらしさを象徴していると言えるのだろう。それはまさに彼女の言葉が共感を呼ぶ理由のひとつでもある。オーディエンスに手を差し伸べて、あの澄み切った声で“あなたと共にある(I'm With You)”と繰り返し歌いかけたアヴリルと、「ああ、だから彼女の歌を聴き続けてきたんだな」と絆を再確認したファンも多かったんじゃないだろうか?
以上、決して長いライブではないものの、ヒット曲をもれなく詰め込んでエンターテインし、オーディエンスが気を抜く隙を一瞬も与えなかった彼女。20年分の経験の重みを実感できる、アニバーサリー・パーティーとなった。
アヴリル・ラヴィーン(11月7日横浜公演) 撮影= MASANORI NARUSE

文=新谷洋子

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