70年代末の
ニューウェイブ期に突如現れた
テクノポップ(ロック)の
巨星ディーヴォのデビュー作
『頽廃的美学論』

もっと評価されていい曲作りの巧みさ、
アグレッシヴな演奏力の凄さ

2作目『生存学未来編(原題:Duty Now for the Future)』('79)もまずまずの評価とセールスを示し、3作目となる『欲望心理学(原題:Freedom of choice)』(‘80)はバンド初のセルフプロデュースを実現している。個人的にはバンドの持ち味とも言うべき、どこか温かみのある楽曲をキープしつつ、よりテクニカルになってきたシンセ、リズムボックス、シーケンサーなどの効果的な使用により、ハイブリッドなテクノポップ、いやテクノロックを創り出すことに成功している。シングル「Whip It」はビルボードのチャートで最高位20にまで伸ばすヒットとなり、個人的にはこちらがディーヴォの最高傑作ではないかと思う。リマスタリングされ、ライヴ音源を追加された最新の音源を聴くと、本領発揮とばかりにディーヴォのテクノロックンロールに煽られて観客が熱狂しているのが分かる。“アグレッシブ”と言ってもいいその熱い演奏からは、80年代以降、ニルヴァーナなどのグランジ勢がディーヴォに影響を受けたとするのもあながち嘘ではなかったのだと思えてくる。そうなのだ、特にニルヴァーナはディーヴォの『欲望心理学』(‘80)からのシングル「Whip It」のB面曲「Turn Around」(アルバム未収録曲)をカバーしている。※92年リリースの6曲入りニルヴァーナのEP盤『Hormoaning』のオープニングに収録。

バンドはその後もコンスタントに活動するものの1990年代に入ると所属レーベルとの問題、テクノポップが廃れてきたことも遠因し、バンドはいったん活動を休止する。ところが2000年代に入るとディーヴォは活動を再開し、2003年には『SUMMER SONIC』に出演するために来日している。中年になり、腹のまわりが膨張したマーク・マザーズボウがお馴染みのコスチュームを身につけてコミカルなパフォーマンスを示しているのを観ると、その人間臭さというか、テクノポップ(ロック)の推進者でありながら、そのイメージに反発するようなところに、何か愛おしいものを感じてしまう。スタジオアルバムは『サムシング・フォー・エヴリバディ(原題:Something for Everybody)』(2010)以降途絶えているが、そのぶん発掘ライヴ音源など、次々とライヴ盤がリリースされている。最新のものが『Hardcore Devo Live!』(2017)だが、コロナ禍もあってか、近年はライヴの噂も耳にしないが、 正式な解散表明が出されたとは聞いていない。思わぬタイミングで、またあの黄色いコスチューム(紙製)で騒がしてほしいものだ。

TEXT:片山 明

アルバム『Q:Are We Not Men? A:We Are DEVO!』1978年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. 狂気の衝動/Uncontrollable Urge
    • 2. サティスファクション/(I Can't Get No) Satisfaction
    • 3. プレイング・ハンズ/Praying Hands
    • 4. スペース・ジャンク/Space Junk
    • 5. モンゴロイド/Mongoloid
    • 6. ジョコー・ホモ/Jocko Homo
    • 7. 偏執狂が多すぎる/Too Much Paranoias
    • 8. ガット・フィーリング/Gut Feeling / Slap Your Mammy
    • 9. カム・バック・ジョニー/Come Back Jonee  
    • 10. スラッピー/Sloppy (I Saw My Baby Gettin') 
    • 11. シリベル・アップ/Shrivel Up
『Q:Are We Not Men? A:We Are DEVO!』(’78)/ Devo

OKMusic編集部

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