THE ORAL CIGARETTESは2度目の主催イ
ベント『PARASITE DEJAVU』を前に何
を語るのか

新曲「BUG」とともに夏フェスシーズンを駆け抜けたTHE ORAL CIGARETTESが、10月22・23日、さいたまスーパーアリーナで『PARASITE DEJAVU 2022 ~2DAYS ARENA SHOW in SAITAMA~』を開催する。DAY1はワンマンショウ、DAY2はオムニバスショウという形式の自主企画イベント『PARASITE DEJAVU』(通称:パラデジャ)は今回が3年ぶり2度目の開催。2019年のパラデジャはオーラル第2章の幕開けとしてエポックメイキングな2日間となったが、今年はいったいどんなライブになるのだろうか。まもなくリハーサルに入るというメンバー4人を捕まえ、話を訊いた。
――「BUG」のMV、めちゃくちゃいいですよね。鈴木さん、「お母さん役をお願いします」と言われた時、どんな心境だったんですか。
鈴木重伸(Gt):性別すら変わるということで1回「え?」とは思いましたけど、そのあと「まさやん(中西)はそもそも人間じゃなくなるよ」と聞いて「なるほど」と。そこから、今回はそういうMVなんだと馴染んでいった感じですかね。実際やってみたらすごく楽しかったですし。
――確かに中西さんのインパクトも強かったですね。あの姿で助手席に座っているのがシュールで。
中西雅哉(Dr):特殊メイクは前にスペースシャワーTVの番組でしてもらったことがあったので、あんまり抵抗なかったですね。僕が思ったのは、MVにちょっと遊びを入れられるようになったんだなということで。今まではコンセプトがあって、かっちりカッコよくというMVが多かったんですけど、「MACHINEGUN」辺りからファニーなものもアリになっていったというか。肩の力が抜けてきたんだなと。
山中拓也(Vo/Gt):20代の頃は“あのバンドはちゃんとキメるバンドなんやな”と思ってもらえるような見せ方をしてきたんですよ。だけどもう、カッコつけるの飽きたなって。30代に入って、じゃあ次は30代後半に向かっていきますよという時に、自分らのやりたい音楽やバンドの理想像を考えたら「もうカッコつけるの、要らんのちゃう?」と思ったんです。元々は関西の兄ちゃんだし、楽屋裏ではボケてばかりいるような4人なので。それでより自由にやろうということで、「MACHINEGUN」くらいからはMVのストーリーも自分で提案しています。
――「BUG」という曲の中には怒りや苛立ちの感情も入っていると思うんですけど、そういうものをそのままアウトプットするのではなく、ちょっとファニーな感じ、遊び心を混ぜる方が今のみなさんにとってはしっくりくるんでしょうか?
山中:そうですね。元々ファニーに比喩するような表現が好きやったんですよ。エミネムのMVでマイケル・ジャクソンの鼻がとれるのを見て「これ、逆にめっちゃカッコええな」と思ったし。でも、今まではバンドの段階に合わせてMVを作らなきゃと思ってたから、20代の俺らがそれをやるのは自分ら的にもしっくりこなくて。だけど今は、全員肩の力が抜けた状態で、メンバーというより友達・家族という感覚でバンドをやれてるから、ファニーでポップなことをやったとしてもお客さんにちゃんと伝わるんやろなと。それでちょっとずつそういう表現をやり始めてる感じです。
――今日は『PARASITE DEJAVU 2022 ~2DAYS ARENA SHOW in SAITAMA~』へ向けたインタビューなんですけど、2019年の『PARASITE DEJAVU』がどんなライブだったかを思い出すために自分のメモを見返していたら、“山中さん、開始2曲で号泣”と書いてあって。
山中:そうでしたね(笑)。
あきらかにあきら(Ba/Cho):2日ともすぐ泣いてたよな(笑)。
――で、なぜ最初に「BUG」の話をしたのかというと、今のオーラルの“信頼できる仲間と肩を組んで、自分たちが笑って過ごせる場所を作っていこう”というモードって、元を辿れば2019年の『PARASITE DEJAVU』から始まっていたんじゃないかと思ったからなんです。そこで聞きたいんですが、今振り返ると、2019年の『PARASITE DEJAVU』ってどんな2日間だったと思いますか?
あきら:自分たちにとってご褒美のような日やった気がしてます。よう頑張ったな、ここからはちょっと肩の荷下ろしてええで、みたいな。この景色を見るために努力してたんやな、あの苦労を乗り越えられたからこれが見れたんやな、という感覚が強かったです。そのあとはコロナ禍に入ってまたいろいろと考えることが増えましたけど、あのライブを境にバンドに新しい血が入ったし、僕自身も生まれ変わったような気がします。
――あきらさん自身はどんなふうに生まれ変わったんですか?
あきら:それまでは“上に、上に”、“広く、広く”って感じやったんですけど、あの2日間があったからこそ“今これだけの財産を持ってるということに感謝しよう”と思えるようになったんですよ。バンドやメンバーとの関係性に対してよりちゃんと向き合おうというふうに変わったのは、今思えばあのタイミングやった気がしますね。前日に拓也と2人で奈良に帰って、実家に泊まったんですよ。そしたらなんかすごい……空が綺麗やったんですね。東京じゃ見られない広い空。それを見て、戦いから帰ってきたじゃないですけど「ああ、奈良に帰ってきたなあ。そんで明日ワンマンかあ」と思って。拓也とは「ここまで連れてきてくれてありがとう」みたいな会話をして。
――逆に言うと、それまではとにかく目まぐるしくて、自分たちのことを褒めてあげられる機会がなかったんでしょうね。
あきら:でしょうね。周りはライバルだらけやったし、目の前のことに必死だったと思います。だけど今はそのライバルたちが仲間みたいな感覚で。
鈴木:やっぱりあの場所で自分らのイベントができるのがすごく嬉しかったから、前日のリハーサルから全力だった記憶があるし、“ああ、こんなに仲間がいるんだな”と安心できた2日目の景色もすごく好きやったし……。あのあとコロナ禍に入ったので、もしもあの2日間がなかったら、バンドのモードも今とは違うものになってたかもしれないと思います。あそこで一度それまで頑張ってきたことが肯定されて、それが自信に繋がって、今のオーラルができてる気がしますね。
中西:ライブが始まって、拓也が泣いてる姿やそれに対するお客さんの感じを見た時に“あ、これが正解やったんや”と思ったんですよ。その時点で“ああ、この2日間、どう転んでもオーラルにとっては正解の2日間になるな”という気持ちになって、気が楽になったというか。大阪城ホールとか横浜アリーナでのワンマンもありましたけど、大きな舞台であんなに力を抜けたのは『PARASITE DEJAVU』が初めてだったと思います。
山中:多分、それまではめっちゃバリアを張ってたんですよ。「なんで上手くいかへんねん」という感じで責任の矢印をずっと自分にばかり向けてたし、自問自答して、自分の中だけでぐるぐるやってて。だけどそのバリアが2日間でバーンと崩壊した。お客さんがあんだけいてくれて、あんだけ声掛けてくれて……となった時に“一人で抱え込むのもバカらしいな。みんながおるな。これだけやさしく包んでくれるんやな”という状態にようやくなれた瞬間やったと思います。
――だからこそ涙が出たと。
山中:そうですね。自分が泣いてしまった時もバリアが崩壊してしまった瞬間やったと思います。そもそも当時は、『PARASITE DEJAVU』は毎年やるようなフェスにはしませんというテンションだったんですよ。それはなぜかというと、フォーリミ(04 Limited Sazabys)やブルエン(BLUE ENCOUNT)を仲間と言いつつずっとライバルやという意識が強かったからなんですけど、バリアが崩壊したことで、“やっぱり一緒にシーンを盛り上げていく仲間やな。ツレやな”と思えるようになった。しかもそのタイミングで、自分がプライベートで仲良くしてたアーティストとも一緒にフェスを作ることができて、達成感や充実感を味わえたのも僕にとってはすごくデカかったんですよね。そこから“みんなツレ! お客さんも、お客さんじゃなくてツレ!”みたいな感覚に変わっていったし、いい子いい子するのも疲れたから、よりありのままでいられることを選ぼうと各々が思うようになった。『PARASITE DEJAVU』はその一発目のきっかけになったんやろうなと思います。それが俗に言う、第2章の始まりで。
――第1章、第2章という言葉は当時も使っていましたけど、今話してもらったようなことが起こる想定で銘打っていたわけではないですよね。
山中:そうですね。あの時は楽曲の振れ幅やスピリチュアルな部分を指して第2章という言葉を使ってたんですけど、今になって振り返ってみると、ああ、そういう意味やなかったんや、とすごく感じてます。
――でもそう考えると、2019年の時点で“2日目は対バン形式にしよう”と企画できたのが不思議ですよね。
山中:当時の自分たちは、“俺らはちゃんとトップを目指していきます”、“ドームまで行きます”というテンションだったけど、同時に“ドームでライブしてるアーティストの中にロックシーンを大切にしてるバンドっている?”という疑問もあって。俺らはシーンもちゃんと大切にする、でも俺らは行くところまで行く、という姿勢を表現する方法として、“2日目には俺らのバンド人生に絶対に必要やったバンドを呼びましょう”というふうになったんやと思います。そこはこだわりやったし、「俺らはちゃんとやってきたよな」と自分たちに言い聞かせるような意味もあれば、お世話になった人には恩返ししなきゃという気持ちもあったと思う。だけどここ3年でここまで話してきたような変化があって。コロナ禍でバンドマンと連絡をとる機会がより増えて、“さあ、これからみんなでどうしていきましょうか”という輪の中に入れてもらえたりとか、SiMが今年のフェスで「次はパラデジャがあるから」と言ってくれたりとか……そうやって仲間に入れてもらえるような場面が増えたんですよ。昔やったらそこで“いい距離感で”とか考えちゃってたと思うんですけど、今はすごくナチュラルに、輪の中に入っていけるようになっていて。
――今話してもらったように、自分たちの立ち位置を踏まえた上での“こうしなければいけない”ではなく、もっと純粋な“こうしたい”という部分をこれからはやっていこうよというふうにオーラルは変わっていったわけだけど、2019年の『PARASITE DEJAVU』がそれに気づかせてくれたライブだったとしたら、今年はそれを初めから自覚した上で行うライブであって。同じタイトルのイベントだけど、全く違う内容になるでしょうね。
山中:うん、そうですね。だいぶ違うと思います。
――そんな中で、今年の10月にさいたまスーパーアリーナで開催しようと決めた理由についてはいかがでしょうか。
山中:2020年に予定していたアリーナツアーが中止になってしまったというのが一つの理由にはなっていますね。『VIVA LA ROCK』に出る度に「いつかここでワンマンさせてください」と言い続けてたんですよ。だからアリーナツアーが決まった時はめちゃめちゃ嬉しかったしお客さんも喜んでくれたんですけど、それができなくなってしまったので「いつかはやりたいね」と言ってたんです。そしたら同時進行で『PARASITE DEJAVU』の頻度をもう少し増やしていってもいいんじゃないか、移動型フェスみたいにしていくのもアリだよね、という話も出てきて。だったら2回目はさいたまでやればいいんやないか、と。思い立ったらすぐやりましょうということで、このタイミングでの開催に決まりました。
>>「ちょっと異色なメンツで攻めてみよう」──7組の対バンについて語る
――では、ここからは2日目の出演者について聞かせてください。タイムテーブル順に1組ずつ、誘った理由や現時点での印象などを教えていただければと。まず、トップバッターのCVLTEから。『DREAMLAND TOUR 2022』で競演済みで、山中さんがいろいろとディグってる中で見つけたバンドでしたね。
山中:はい。最初は「北海道のバンドなんや」って思いながら音楽だけ聴いてたんですけど、東京でライブをする日を見つけたので、個人的にライブハウスに遊びに行って。そこから連絡を取り合うようになりましたね。共感する部分がすごく多いんですよ。「これ、俺らも昔やってたな」とか、「あ、こういうMCしたら実はマイナスになるのに……」とか(笑)。でもこういう時期にしか出せへん良さって絶対あるんですよね。すごく人懐っこいやつらやし、兄ちゃん兄ちゃんって言ってくれるから、「じゃあDREAMLANDのメンバーとしてこれから先ずっと面倒見よう」という感覚で。だから、これから一緒にやる機会がすごく増えていくと思います。
――2組目はVaundy。イベントで一緒になったことがあるんでしたよね。
山中:『バズリズム LIVE 2021』ですね。Vaundyくんが挨拶に来てくれたんですけど、「学生時代から聴いてます」と言ってくれて。「え、Vaundyくん、俺ら聴いてたんや!」と思って。喋ってみたらただの大学生のお兄ちゃんで、そこがまたよかったですね。
鈴木:僕はこの前の武道館も観させてもらったんですけど、ステージ上での自分の力をすごく信じてるんやろなと思って。今回出演してもらう7組の中で唯一のソロアーティストなので、バンドの中であのメンタルの強さがどう発揮されるのか、すごく楽しみですね。
山中:CVLTEもVaundyもそうやけど、若いやつらは恐ろしいっすね。
あきら、鈴木、中西:(深く頷く)
山中:音楽から上の世代へのリスペクトを感じるというか……どこまで遡るのか分からないけど、超大物J-POPシンガーへのリスペクトまで見えてくるやないですか。俺らは正直理論とかをあんまり勉強してこなかったバンドで、歳をとってから学び始めた感じなんですけど、彼らは最初からそういうことを踏まえて作ってるから、すごく秀逸な音楽なんですよね。音楽が本当に好きな子たちなんやなと思います。
――3組目のKEYTALKとは親交が深いですよね。
あきら:前回で言うONAKAMAのポジションというか、僕らの歴史を知ってる同世代のバンドを呼びたいなと思ってオファーしました。まさやんが入る前の頃、奈良の100人のライブハウスでツーマンしたのが最初やったんですけど、その頃から知ってて未だに仲のいいアーティストって少なくて。僕はほぼ毎日遊んでるので、つい関係性に甘えてしまって「まあどうせどっかで会うし」という感じになっちゃってたんですけど、改めて自分たちのイベントに迎えられるということで嬉しいですね。
――あきらさんから見て、今のKEYTALKってどんな感じですか?
あきら:今、全50本のツアーをやってるんですよ(※取材時)。僕も何ヶ所か観に行ったんですけど毎回すごくいいライブをしてるし、ライブやりまくってすごく脂が乗ってるなと思いますね。変わらないところは変わらないし、それが面白い。飽きないバンドです。
――4組目はMY FIRST STORY。『DREAMLAND TOUR 2022』にも出演していましたし、ボーカルのHiroさんは『Bullets Into The Pipe』にも参加していましたね。
山中:最初に声掛けたのがマイファスだった気がします。俺とHiroが仲直りしたタイミングで、Hiroが「横アリでツーマンやろうぜ」と誘ってくれたんですよ。そこで仲直りしたって言ったら、めっちゃおもろない?って(笑)。結局それは実現しなかったんですけど、「いつか大きいところで一緒にやれたらええな」という話はずっとしてたんですよね。今回パラデジャをやることが決まって、その話を一番に思い出したので「パラデジャ、やることになったわ」ってHiroに電話したら、「そうなん。てことは……?」「そういうことです(笑)」という流れになって。今までの俺らとマイファスの歴史を知ってもらった上で足を運んでもらえたら、お客さんはよりライブを楽しめると思うし、バンドと客席の相乗効果であいつらもより力を発揮するんじゃないかと思いますね。
――5組目はマキシマム ザ ホルモン。そもそもみなさんってホルモンは通っているんですか?
山中:バリバリ通ってますね。高校生の頃なんてずっと聴いてました。
あきら:ホルモン聴きながら数学やると速く解けるよな(笑)。
山中:あはは! あと、コピーしようとして驚愕するという。
中西:そうそう(笑)。
山中:「無理無理、ムズすぎる!」って。
――ホルモンとはどういう繋がりなんでしたっけ。
山中:前に、SiM、coldrain、ホルモン、フォーリミ、マンウィズのボーカルとSHANKのドラムで温泉旅行に行ったことがあって。そのあと俺らのツアーに誘ったんです。そのタイミングで亮君が活動休止に入ってしまったから、結局ホルモンは出られなくなっちゃったんですけど、メンバーみんなが俺らに対してすごく良く接してくださって。この1年なんて、ホンマずっと会ってるんちゃう?という感覚になるくらい結構会ってるんですよ。メンバー同士すごく仲よくなったので、もう一度誘ったところ、「絶対にやりたいね」と言っていただいて。だから、実はプライベートではずっと絡みがあったけど、今回ようやくみんなの前で一緒にやれるという感じです。
――なるほど。6組目の凛として時雨についてはいかがでしょう。
山中:時雨は俺がただのファンという(笑)。TKさんとはLINEで音楽の話とかめっちゃするんですよね。「今回のミックス、どこですか?」とか「マスタリングは誰にやってもらいました?」とか。すごくリスペクトしてます。このメンツの中に時雨が入ってるのってめちゃめちゃ面白いし、パラデジャにしかできへんことやと思うんですよ。うちの兄も時雨の大ファンなので、この日アメリカから日本に帰ってくるって言ってました(笑)。ほとんど時雨のためというか(笑)。
――そして7組目はMAN WITH A MISSION。トリ前ですね。
山中:マンウィズはツアーに誘ってもらったことがあったんですけど、俺らからマンウィズにアクションを起こすことがずっとできていなかったんですよね。というのも、テレビとかでよく見るし、ちょっと違うところにいる先輩というイメージがあったんですよ。だけど、オーバーグラウンドに向けてやることやりつつ、復興のイベントに出演したりとか、見えないところでそういうことをやってるという話は聞いてて。ああ、この人たちってすごく人間っぽい人たちなんやなーって。
あきら:……ん?(笑)
中西:人間?(笑)
山中:ごめん間違えた(笑)。マンウィズのライブを観ると「やっぱりレべチかも」って思うんですよ。なので、俺らとしては挑戦する気持ちというか。自分たちの前にマンウィズがいてくれることで、「よし、やるぞ」という感じでステージに上がっていける気がしてます。
――この7組、そしてオーラルが一堂に会するということでどんな日になるのか……ちょっと想像つかないですよね。
鈴木:想像つかないですね。
山中:元々パラデジャは泉大津か奈良でしかやるつもりがなかったんですけど、ここまで喋ってきたようにいろいろあった中で「今回は関東でやろう」というテンションになって。そのうえで「ああ、この人ね」と思われるようなメンツを発表しても面白くないというか……その土地土地のフェスでセットリストを変えるのと同じように、地元の関西にはこういうメンツを呼ぶ、関東は第2の故郷だからこういうメンツを呼ぶ、という感覚で考えていきましたね。それで今回は、周りから見たら意外かもしれないけど実は繋がってたんですよという、ちょっと異色なメンツで攻めてみようと。だから今後いろいろな場所で『PARASITE DEJAVU』が行われることになったら、その土地に対する自分たちのテンションで誰を呼ぶか決めていくことになるんやと思います。
――なるほど。最後に、オーラルのライブはどんな感じになりそうか、言える範囲で語っていただきたいなと。抽象的な言い方になってしまいますが、2019年の『PARASITE DEJAVU』は死生観が真ん中にあって、その上で“生きていくための音楽を鳴らす”というようなライブだったように思うんです。
山中:うん、まさにそうでした。
――それに対して、今回はどうなりそうですか。
山中:今回は死生観とかではなく、生きていくということをよりリアルに表現していきたいなと。前回の『PARASITE DEJAVU』では俺らが想像し得ない世界――自分が死んだあとの世界はこうあってほしいとか、今まで30年間生きてきた中での“こういう気がする”、“こういうことなんじゃないか”という思想の部分が前面に出てたと思うんですよ。それは、亡くなった友達に対する想いがめちゃめちゃ強くあったから、そういうテーマになっていったんですけど。だけど前半に話したように、2019~2022年に自分たちのスタンスや思考回路が変わっていって、その中で感じたことがすごく多かったので、今回のライブではそういう部分を表現するような――“生きていくということは、こういうことなのかもしれない”という部分を伝えると同時に、“俺らはこういうふうに生きていきますよ”という決意表明にもなるような、そういうライブになっていくのかなと思ってます。
――オーラルの場合、山中さんの思想がそのままライブのテーマになっていくじゃないですか。そういう部分ってメンバーにどう共有しているんですか?
山中:多分、普段から漏れてるんだと思います。「拓也はこういうスタンスだから、今ここにイラついてるな」という部分が言わずとも生活の中で共有されてるというか。だからライブのMCで何を言うかも普段メンバーには全く伝えてないくらいで……でもパラデジャはオーラル4人でやる大きいイベントだから、普段のライブよりも特に共有するようにしてますかね。ステージの図面を描いてたら自然と「これは何に使うの?」って話になるから、「実はこういうテーマで、最後にこういうふうにしたくて……」みたいな話をしたり。
――心の中のかなり深い部分に関わる話なので、完璧に共有できることではないと思うんですよ。お三方は山中さんから何か説明された時、「正直よく分からないな」と思うことってないんですか?
あきら:あります、あります。
――そういう時はどうするんですか?
あきら:僕も半分お客さんみたいな感じで「へえ、拓也は今そんなことを思ってるんだ」と思いながら……でもオーラルの一員ではあるので「このバンドはこう思ってるんだぞ!」っていう顔をしてます(笑)。
山中:あははは!
あきら:でもそこに対しては特に何も思わないですよ。「俺はそう思わんで」ってケンカになることもないし。拓也の今言いたいことをこのライブで伝えるんだ、オーラルが吐く言葉はこれなんだ、という。
中西:人それぞれ考えを持ってるから、他の人からは「ん? そこなん?」って思われるようなことを誰でも考えてたりすると思うんですよ。だけど拓也はみんなが持ってる感情、みんなが経験してることに照らし合わせながら言葉をチョイスして、自分の思考を人にちゃんと伝えられるから、僕はその言葉を聞いて腑に落ちることがいっぱいあります。きっとライブに来てるみんなも、そういうふうに拓也の言葉を受け取って自分なりに解釈してるんやと思うし。
鈴木:だから感情としては「うん、そうやろな」「すごく理解できるな」と思う場面の方が多いんですよね。それに、拓也の発する言葉に対して信頼を置いてるから、1から10まで聞かなくても不安にならないので。これからリハーサルに入っていくんですけど、さっき言ってた図面の話みたいに、準備を進めていく中でキャッチできることもいっぱいありそうやなと。それがまた楽しみですね。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=西槇太一

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