童謡「たき火」歌詞の意味を考察!当時の日常の風景に心が温まる

童謡「たき火」歌詞の意味を考察!当時の日常の風景に心が温まる

童謡「たき火」歌詞の意味を考察!当
時の日常の風景に心が温まる

「たき火」が制作された背景とは
秋から冬にかけてどんどん寒さが増していくと、日本人ならきっと多くの人が童謡『たき火』を思い出すことでしょう。
『たき火』は作詞を岩手県出身の児童文学者・巽聖歌が、作曲を童謡の作曲家・渡辺茂が担当して制作された童謡です。
1941年にNHKのラジオ番組『幼児の時間』で発表されましたが、戦時中だったためにたき火が攻撃目標になることや落ち葉も貴重な資源であることを理由に軍部からのクレームを受け、予定よりも早く放送が打ち切りになってしまいました。
しかし、戦後の1949年に同じくNHKのラジオ番組『うたのおばさん』で松田トシや安西愛子が歌ったことで全国に広まっていきました。
素朴な雰囲気で子どもたちも歌いやすい曲は小学校の授業でも歌唱されるようになり、2007年には日本の歌百選にも選出され日本を代表する音楽となっています。
『たき火』が制作された当時、作詞者の巽は東京都中野区上高田に在住していました。
自宅近辺には樹齢300年を越す大きなケヤキが6本ある“ケヤキ屋敷”と呼ばれる家があり、その家にはさらにムクやクスノキもあったため、住人は枯れ葉でたき火をすることが多かったようです。
巽は付近をよく散歩で通っていたので、その身近な風景を元に作詞しました。
ケヤキ屋敷は一般の住宅ですが、『たき火』発祥の地として区による説明板が建てられています。
その風景をどのように歌詞にしたのか、改めて意味を考察していきましょう。
北風の吹く音が面白い1番
「かきね(垣根)」とは、家の敷地と隣家や道路との境界に背の高い植物を植えて作った自然の囲いのことを指します。
たくさんの木に囲まれたケヤキ屋敷の垣根沿いに歩いて曲がり角を曲がると、たき火の火や煙が見えてパチパチと火が爆ぜる音が聞こえてくる様子が想像できますね。
「おちばたき(落ち葉焚き)」は落ち葉を集めてたき火をしていることを指しています。
そして「あたろうか あたろうよ」という会話は、おそらく近所の子どもたちの会話でしょう。
外で遊んでいた子どもたちがケヤキ屋敷の敷地でたき火が焚かれているのに気がついて、温まりに行こうかと話しているのです。
ユニークな「ぴいぷう」という表現は、北風が吹く音を表しています。
風の音といえばよく「ヒューヒュー」といった擬音が使われますが、あえて半濁音が使われていることで親しみやすく楽しい雰囲気が伝わってくるのではないでしょうか。
この印象的なフレーズは北国出身の巽ならではの表現なのかもしれません。
初冬の鮮やかな光景が広がる2番
たき火 歌詞 「由紀さおり,安田祥子」
https://utaten.com/lyric/zk15102248
赤や白、ピンクといった花を咲かせる「さざんか(山茶花)」は、秋の終わりから初冬にかけて咲く花。
どうやらケヤキ屋敷の垣根は山茶花の木だったようです。
色鮮やかな花の美しさと爽やかな香りに、地域の人は心を和ませていたことでしょう。
子どもたちにとっても、たき火で温まりに行こうかと話すほど親しみやすい雰囲気があったと思われます。
冬になると「しもやけ」に悩まされるという人もいますよね。
寒さで血流が悪くなることで手や足の指などの部位が赤く腫れてしまうもので、特に子どもは発症しやすいと言われています。
この歌詞に出てくる子どもたちも、手がしもやけになっていてかゆみを感じているようです。
温まるとかゆみが少し収まるので、たき火で温まりたいと思っているとも考えられます。
当時の何気ない楽しさが伝わる3番
たき火 歌詞 「由紀さおり,安田祥子」
https://utaten.com/lyric/zk15102248
「こがらし(木枯らし)」は10月半ばから11月末にかけて吹く強い風のことなので、やはりこの曲の季節はちょうど晩秋から初冬の頃だと分かります。
落ち葉を吹き散らす木枯らしの冷たい風を受けながら、身を寄せ合う子どもたちの姿が見えてくるようです。
その子どもたちは相談するだけで、結局本当にたき火にあたったのかは曲の最後まで分かりません。
無邪気な子どもと言えど、知らない人に話しかけるのには勇気がいるものです。
たとえあたらないことにしたとしても、子どもたちがたき火を見ながら楽しそうに話している風景こそが温かさを感じさせます。
現在は安全面への配慮からたき火は禁止されていますが、当時は冬の風物詩で日常の光景でした。
そこにはきっと寒ささえも楽しく感じさせてくれるような人との関わり合いという温もりがあったのではないでしょうか。
心温まる童謡の世界を味わおう
童謡『たき火』は、今は見られない昭和の穏やかな風景を見せてくれます。
たき火はできないとしても、人と交流する時間を大切にすることはどの時代でもできるはずです。
心を温かくしてくれる日本の童謡をいつまでも残していきたいですね。

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