芸術監督 熊川哲也に聞く~Kバレエ
カンパニー『クレオパトラ』 、5年ぶ
りの大阪公演実施

2017年に初演し、大変話題となった熊川哲也率いるKバレエ カンパニーの、完全オリジナルとなるグランドバレエ『クレオパトラ』が、5年ぶりに大阪・フェスティバルホールに登場する。
絶世の美女、エジプトの女王クレオパトラの波乱に満ちた人生をモチーフに、カール・ニールセンの音楽、斬新な造形美と空間使いの舞台美術、個性引き立つ洗練された衣裳、クラシックバレエの既成概念を大胆な創意で押し広げた振付、これらすべてが完璧な融合を果たした最高傑作が、新たなキャストでよみがえる。
芸術監督の熊川哲也はダンサーとしてジュリアス・シーザー役で、夜公演に出演。久しぶりの出演という事も有って、夜公演のチケットはソールドアウトという事だが、昼公演は今からでも大丈夫だ。Kバレエ カンパニー史上、最高傑作の呼び名が高い『クレオパトラ』について、熊川哲也があんなコトやこんなコトを語ってくれた。
Kバレエカンパニー芸術監督 熊川哲也  (c)Toru Hiraiwa
―― 『クレオパトラ』誕生秘話を教えてください。
新作バレエの題材を探していた時に、「クレオパトラってどうですか?」と言ったスタッフの一言がきっかけでした。バレエのタイトルロールとして、これほどインパクトのある名前は無いんじゃないか。「よし、それで行こう!」となったものの、原作はもちろん、音楽も振付も何も無い。何か参考になればと壁画の絵を見ていたら動き出すかのように見えてきて、その感覚を参考にしました。一番大変だったのが音楽です。エジプトをキーワードに、徹底的に調べた結果、辿り着いたのがデンマークの作曲家、カール・ニールセンの『アラジン組曲』でした。1曲目の冒頭を聴いた瞬間にシナプスが繋がり、「これだ!」と。インターネットの情報をもとに(笑)、壮大なスペクタクル作品が完成しました。世界初演となった初日は、「自分なりの完璧という領域」にニヤケが出るほどでしたよ。
『クレオパトラ』はスタッフの発した一言がきっかけで誕生しました    (c)H.isojima
―― 今回、大阪ではクレオパトラ役を飯島望未さんと日髙世菜さんが演じられます。
飯島望未は大阪出身です。アメリカで活躍をしていて、2021年にKバレエ カンパニーに入団し、2022年にはプリンシパルに昇格。『シンデレラ』や『ロミオとジュリエット』などのタイトルロールを務めて来ました。人気と実力を兼ね備えたダンサーです。バレエに対して真面目で実直で努力家ですし、目の奥に光るものが有る。クレオパトラの役は、手足が長いキャストが演じてきましたが、比較的小柄な飯島には、日本人離れした表現力、並外れた演技力に期待しています。
Kバレエカンパニー プリンシパル飯島望未 『ドン・キホーテ』(2021)より  (c)Hidemi Seto
ファッション業界も注目する存在で、19年からシャネルのビューティアンバサダーを務めています。インスタグラムのフォロワーは10万人近くいて、若いファンの多いことが特徴ですね。髪の色もころころ変わるところなどは、まるでカメレオンのようですね(笑)。フォトジェニックでインパクトのある見せ方が、若い世代にカリスマ的な位置付けで支持されていますが、バレエを何より優先している姿はぶれませんよ。
Kバレエカンパニー プリンシパル飯島望未
―― 今回の『クレオパトラ』のメインビジュアルとなっている日高さんは如何でしょうか。夜公演では、ジュリアス・シーザー役を熊川さんが務められます。(夜公演のチケットは、既にソールドアウト)
彼女も関西で、西宮の出身です。外国でのキャリアが長く、日本での知名度はそこまでは無かったのですが、度肝を抜かれました。持って生まれたフィジカルを最大限に使いこなしています。足首が強く、身体のコントロールが効くのでテクニシャンですが優雅です。日本にはあまりいない、ヨーロッパの香りのするダンサーです。夜の公演は僕がジュリアス・シーザーを演じるので、彼女が僕との共演でどんな化学反応をみせるか、こうご期待ですね。
Kバレエカンパニー プリンシパル日髙世菜 (『クレオパトラ』メインビジュアル)
Kバレエカンパニー プリンシパル日髙世菜
―― そうですね。大阪では夜公演だけですが、熊川さんがジュリアス・シーザー役で出演されるのも話題です。(夜公演のチケットは、既にソールドアウト)
どうも熊川哲也は歳を取らないと思われているようですが、若かりし頃のような“限界を知らない少年”のようには行きません(笑)。50歳を迎えて、「時は有限だな」と思うことも増え、この先に思いを馳せたとき、「50才だったらまだ踊れたのに。ステージに立っておけば良かった」と将来後悔したくないなと思い、今のうちに少し出てみようと思ったのです。もしかしたら1ジャンプくらいはするかもしれませんが、歩くだけですよ(笑)。初演ではシーザーは権力者というよりファミリーマンとして描いていました。僕が踊ると権力者の面が強くなる気はしています。ただ、長い間苦労して、一人のスターダンサーに頼らないと運営できないバレエ団にならぬように頑張って来たのに、また僕が出演して元に戻ることのないように、とは思っています。
『クレオパトラ』前回公演から (c)Ayumu Gombi
『クレオパトラ』前回公演から  (c)Hidemi Seto
―― 夜公演だけと言わず、昼公演にも出演して欲しいと思うファンも多いはずですが。
僕が出なくてもチケットが売れるカンパニーにしなくてはいけません。飯島は、自分の力で若い世代の人たちを集客できると思います。彼女は想像力を掻き立てられる存在なので、いつか新作を創って上げてもよいかもしれない。その時は共演があるかもしれませんね。
僕が出なくてもチケットが売れるカンパニーにしなくてはいけません   (c)H.isojima
―― 『クレオパトラ』の見どころは何処でしょうか。
舞台上で行われているすべてが見どころです。どの瞬間を切り取っても美しいと思います。例えば、夕陽を見て感動する。それと同じで、理由は要りません。音楽、衣裳、舞台美術、振付などどれを取っても拘っていますので、どうぞご期待ください。
『クレオパトラ』前回公演から  (c)Hidemi Seto
『クレオパトラ』前回公演から  (c)Hidemi Seto
―― 最後に「SPICE」読者にメッセージをお願いします。
僕の振付は大変なようです。しかしながら、疲れているダンサーが発する色気とかオーラには、素晴らしい芸術性があります。へとへとになって踊っているからこそ、カーテンコールの笑顔が良い。皆が必死になり極限状況にいて、本番の殺気だった瞬間がお客様に伝わることで舞台と客席が一体となれる。ダンサーにはその境地まで行って欲しいですね。
5年ぶりにフェスティバルホールに戻って来る『クレオパトラ』にご期待ください   (c)H.isojima
取材・文=磯島浩彰

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