「第28回OMS戯曲賞」大賞作品、山本
彩『花を摘む人』、初の関西公演を実

内藤裕敬や松田正隆など、関西の名だたる劇作家たちが大賞を受賞してきた、大阪の戯曲賞「OMS戯曲賞」。2021年に実施された「第28回OMS戯曲賞」で、初応募にして大賞に輝いた、山本彩の戯曲『花を摘む人』が、彼女が所属する大阪の劇団「空の驛舎(えき)」で、関西で初めて上演される。
『花を摘む人』は、もともと山本が高知県の団体「ショープロジェクト」に依頼されたものの、執筆中に新型コロナウイルスの影響で公演が白紙に。しかし、上演実績のある戯曲のみ応募可能となっていたOMS戯曲賞が、第28回は未上演の戯曲も審査対象としたため、それを目標にして完成させたという誕生経緯がある。なおショープロジェクトの公演は、今年の7月に高知県で実現した。
「第28回OMS戯曲賞」授賞式より。右側が大賞を受賞した山本彩。 [撮影]吉永美和子
本作の主な舞台は、山本の故郷をモデルにした、高知県の山奥にあるダムと、そこに隣接する過疎の村。とある理由で毎年ダムを訪れる青年、村おこしに奮闘する役場の職員&それを冷ややかに見つめる都会暮らしの妹、さらにはダムの底に沈んだ村の記憶などを、4つの物語に分けて見せていく。
人間の生と死、故郷に抱く愛憎、そして失われた風景への憧憬が、土佐弁を多用した自然体の台詞で描かれ、戯曲賞の審査員からも「それぞれの話の振り幅が広いことにも驚いた……(台詞の)短いやり取りで個人と背景を確実に把握させる力には脱帽した」(土田英生)「書かれている文字の向こう側に色彩鮮やかな風景が見える……優しさの言葉は実はとても残酷に辛辣に、人間の弱さを突きつけてくる」(樋口ミユ)などの称賛が寄せられた。
空の驛舎第26回公演『コクゴのジカン』(2022年/作・演出:中村ケンシ)より。 [撮影]はまなみ
今回の上演は、山本が演出を希望した一人だった、空の驛舎主宰・中村ケンシが演出を担当。ヒルガオやヒマワリなど、タイトル通り様々な「花」をアクセントにした世界を、どのようにビジュアル化するのかに期待がかかる。
山本からは、以下のようなコメントが届いた。
『花を摘む人』は、戯曲のまま終わるのだと覚悟した物語でした。幸運にも憧れの賞をいただき、演劇となる機会を得ました。けれど、演劇は戯曲の延長ではない、parallelな関係にある、と思います。私は、空の驛舎がつくる『花を摘む人』という演劇を、ぜひどうか、ご覧いただきたいのです。引き裂かれる身体、呼吸、人間への希望に、触れてほしい。大阪という大都市の真ん中。劇場を出た後、この街はどんな風に見えるんでしょうか。ウイングフィールドで、ご来場をお待ち申し上げております。
なお本作は、公演終了後に有料の映像配信を実施。関西から生まれた新しい才能が紡ぎ出す世界を、ぜひ確認してほしい。また高知県に限らず、日本国内のどの過疎の村にも通じるような、普遍的な課題が描かれているので、この問題に興味を持っている人は、特に必見だ。

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