デビュー・リサイタルを控えるヴァイ
オリニスト林周雅にインタビュー「初
々しい姿を見守っていただけたら」

クラシックからポップスまで幅広いジャンルで活動を展開し、注目を集めているヴァイオリニストの林周雅が、大阪(10月8日)と東京(12月25日)でデビュー・リサイタルをひらく。東大阪市出身で、スーパーキッズ・オーケストラのコンサートマスターも務めた林にとって、大阪は地元。また彼は、東京藝術大学を卒業し、現在、東京をベースに活動を行っている。そんな林周雅に初リサイタルへの思いなどをきいた。
――ヴァイオリンを始めたきっかけを教えてください。
母がピアノの先生をしていて、2歳半の頃から母にピアノを教えてもらっていました。ヴァイオリンは、最初、トイザラスでおもちゃのヴァイオリンを買ってもらって。それからヴァイオリンを始め、生活の中にヴァイオリンがあるのが当たり前になりました。
――そして、佐渡裕さんが芸術監督を務める兵庫県立芸術文化センターのスーパーキッズ・オーケストラ(SKO)に参加されたのですね。
小学校4年生から高校3年生まで9年間在籍しました。小さい頃は、佐渡さんのお膝に乗ったりしていましたね(笑)。SKOでは、小学校の同級生とは違う、同じ目標を持つ同世代の友だちと出会えて、一緒に演奏する喜びを感じました。SKOにいると、僕も頑張らないと、という意識にもなりますし、辛いことやたいへんなことを共有できたこともよかったと思います。
――関西を離れて、東京藝術大学に入学されましたが、大学生時代はいかがでしたか?
小学生のときにお兄ちゃんだった先輩たちと交流する機会が増えて、いろんな仕事に呼んでいただくことになり、18歳からスタジオ・ミュージシャンをやり始めました。そしてポップスの世界が広がっていきました。僕はいろんなジャンルの音楽が好きでしたので、その頃から、自分がやりたいと思う音楽を続ける音楽家になりたいと思っていました。
――東京藝術大学卒業後は?
卒業後は、東京でフリーランスで仕事していくつもりでした。でも、卒業の年(2020年)にコロナが流行って、僕たちの卒業式はなくなり、3~4か月の仕事がすべて飛びました。どうしようかなと思っていたときに、『題名のない音楽会』(テレビ朝日の番組)の「題名プロ塾」という企画を知り応募したんです。2020年3月のことです。「題名プロ塾」は、プロを目指すにはどうすればいいのかを、葉加瀬太郎さんがレクチャーするというもので、1次、2次を通って、ありがたいことに賞をいただくことができました。そして、葉加瀬さんのような第一線で活躍されている方のツアーやCD制作にも参加させていただいたんです。大きな経験となりました。
その後、『題名のない音楽会』にも何度も出演することができました。その楽屋で、(今、所属する)日本コロムビアのマネージャーと出会ったのです。それまでは、オーケストラやミュージカルなどで弾くことが多かったのですが、今年4月からは日本コロムビアのアーティストとして、ソロ活動をすることが増えました。また、他の日本コロムビアのアーティストと共演することも多くなりました。
――今回のデビュー・リサイタルについてお話ししていただけますか?
リサイタルは初めてなので、プログラムには凝りました。いろいろなお客さんにクラシックの魅力を伝えたいと思い、だいたい5分以内で、一度でも聴いたことのあるような曲、聴きやすい曲を中心に選びました。クラシックを聴いたことのある人も、ない人も、リラックスして楽しんでいただけるコンサートになっていると思います。
――プログラムについて教えていただけますか?
「愛の喜び」や「前奏曲とアレグロ」など、クライスラーの小品をたくさん弾きます。そしてポルディーニの「踊る人形」。「ヤンキー・ドゥー・ドゥル」は、「アルプス一万尺」の旋律をヴュータンが変奏曲にしたものです。大阪では、最後に、15分くらいの大きい曲、ヴィエニャフスキの「創作主題による変奏曲」を弾きます。
――初リサイタルで、自作も初演されるようですね。
これまでも何曲か自分のためにヴァイオリン曲を書いていたのですが、今回、1曲、披露しようと思います。無伴奏ヴァイオリンの軽快な曲です。初めてのリサイタルということで、楽しい、うれしい気持ちを表現できたらいいなと思っています。
――リサイタルでの共演者について教えてください。
大阪では、ピアノのロー磨秀さんと共演します。彼は優れたピアニストですが、クラシックも歌(シンガーソングライター)もやっているので、いろんな波長が合うと思いました。東京では、最近よく共演している、ピアノの高橋優介さん、チェロの佐山裕樹さん。リサイタルでも一緒に演奏したいと思い、お願いしました。
――ご自身の特徴をどうとらえていますか?
しゃべるのが好きですし、今回のリサイタルも、トークをどこまでするか悩んでいます(笑)。お客さんとの距離を短くするのが得意です。あとは、いろんなジャンルの音楽が好きなことでしょうか。
――影響を受けた音楽家、好きな音楽家を教えてください。
クラシックでは、ヴァイオリンの長原幸太さん(読売日本交響楽団コンサートマスター)とチェロの山崎伸子先生。この二人の先生には特に影響を受けました。
長原さんは大学時代の師匠です。長原さんは、自分の音楽を押し付けることなく、「君はどういう音を出したいのか?」とおっしゃられる方。言葉の一つひとつがいつも的確です。山崎先生には、5年くらいカルテット(「ほのカルテット」)を、見てもらっています。「ほのカルテット」は、宗次ホール弦楽四重奏コンクール(2018年)で第3位をいただいて、それから、ほかのコンクールにも出ました(2019年、秋吉台音楽コンクールで第1位)。今年からは、サントリーホール室内楽アカデミーで学びます。カルテットは、どういう音楽を作るのかをメンバーに向けて言語化して伝えなければならず、ソロの活動にも役立っているので、続けていきたいと思っています。
ポップスでは、佐藤竹善さん、玉置浩二さん、ピーボ・ブライソンさんですね。佐藤竹善さんは、「RISE」の動画でのバンド・メンバーを紹介する瞬間が好きです(笑)。
――好きな作曲家は?
ベートーヴェンですね。弾いていて楽しくなります。作品にちゃんと向き合えば向き合うほど素敵になる作曲家です。聴くのでは、ベートーヴェンの交響曲第5番の第3楽章の終わりから第4楽章の始まる瞬間にかけてが好きで、そこを何回も聴きます。
――最後に、デビュー・リサイタルに向けてメッセージをお願いいたします。
僕の初リサイタルは、一生の中でも初めてということなので、僕の初々しい姿を温かく見守っていただければと思います。頑張りますので、応援していただけたら、うれしいです。
取材・文=山田治生 撮影=池上夢貢 

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