『氣志團万博2022』3年ぶりの現地開
催で痛感した、生じゃないと伝えられ
ないこと、あの場にいないと受け取れ
ないメッセージ

氣志團万博2022 ~房総魂~

2022.9.17,18,19 千葉県・袖ケ浦海浜公園
3年ぶり、ここで逢えた――。
千葉・袖ケ浦海浜公園にて、『氣志團万博2022 ~房総魂~』が開催された。新型コロナの流行により、去年はWOWOWでの放送のみ、一昨年は配信での開催。実に3年ぶりの現地開催となった『氣志團万博2022』。初日のトップバッターで登場した氣志團が、1曲目「房総魂」で《当たり前じゃなかった ここでまた逢えること》と歌っていたように、毎年、夏の終わりに千葉で『氣志團万博』が開催されることは決して当たり前じゃなかった。袖ケ浦の海が見える大きな公園に全国から仲間が集い、ともに豪華アーティストたちのライブに熱狂して酔いしれて。『氣志團万博』でしか起きない数々の奇跡を目撃できることが、いかに尊いことだったか? 日常を奪われた3年間、僕はあの場所を想うたびに懐かしく寂しい気分になり、再会の日を本当に待ちわびていた。だからこそ、『氣志團万博2022』初日を迎えて、会場に足を踏み入れて、3年前と変わらない会場のあの景色を目にした瞬間、この場所に戻って来られた喜びで泣きそうになってしまった。空には3年ぶりの現地開催を祝福するような青空が広がり、会場はマスク越しでも分かるみんなの笑顔で溢れている。当たり前じゃなかったこの風景。それを見るだけで嬉しくて幸せで、胸がいっぱいだった。
世の中は決して平穏無事な日常に戻ったわけではないし、フェスにもガイドラインが設けられて、マスクもしなきゃなんねぇし、ライブ中に声だって出せない。それでも、氣志團はこの場所で『氣志團万博』を開催することを選んだ。「やっぱり生じゃないと伝えられないことがあるなって、より感じさせられた2年半でした」と綾小路がVTRで語っていたが、開催決断に至るまではハンパない苦悩や苦労があっただろうし、腹を括らなきゃいけない瞬間もあったはず。それでも生で伝えることの重要さに改めて気付き、『氣志團万博』ファンや出演者の期待を受け、『氣志團万博』にしかできないことを信じて、氣志團は『氣志團万博2020』の現地開催を決断した。それも3日間、全44組の豪華アーティストを招聘しての全力開催。やるからには徹底的にやる、とことん楽しませる。そんな気概に満ちた充実の内容や驚愕のラインナップを提示されたら、僕らがやるべきことはただひとつ。全力で楽しむだけだ。
ニューロティカ 撮影=釘野孝宏
松平健 撮影=上山陽介
3年ぶりにこの地に爆音を鳴らしたのは、ウェルカムアクトでMOSSAIステージに登場したニューロティカ。今年の正月には結成38年目にして、初の日本武道館公演を成功させた“絶対、諦めない”を地でいく、尊敬する大先輩バンドがしっかり場を温めると、YASSAIステージではオープニングセレモニーアクトの松平健が「マツケンサンバ」で会場中を踊らせる。ロティカからのマツケンというあり得ない流れや、賑やかで派手やかなオープニングに“これぞ、万博!”とテンションが爆上がりしたところで、“俺たちがやるしかねぇ!”とばかりに、YASSAIステージのトップバッターに名乗りを上げたのは氣志團。いよいよ『氣志團万博2022』が本格的に幕を開ける。
氣志團 撮影=上山陽介
ここでまた逢えたことの喜びを高らかに歌った「房総魂」で万感の想いを伝えると、最高の3日間の始まりを告げる勇ましく堂々としたステージを見せ、主催者として、トップバッターとしての役割をしっかり果たした氣志團。「One Night Carnival」の曲中には、この曲でみんなの合唱が聴けない悔しさを語り、「春から全国各地のフェスに呼ばれて、みんな大好きなフェスを取り戻すために情熱だけで頑張ってて。夏フェスのアンカーで秋フェスの第一走者の俺たちは、来年に向けてこのバトンを大切に繋いでいかなきゃいけない。だから、一番厳しいガイドラインを選んだ。ごめんな、大きな声で歌わせてあげられなくて。でも俺、来年は全員のことをハグするから。『氣志團万博』、3日間優勝させようぜ!」と『氣志團万博』に向けての熱い想いを語り、想いを受け取ったオーディエンスからハグより温かい拍手が起きる。ヤバイTシャツ屋さん、SiM、打首獄門同好会coldrainサンボマスター10-FEETといった、ロックフェス常連の豪華出演者がズラリ並んだ初日。フェスの現状や主催者の想いをしっかり理解した上で見せた、この状況下での最高のアクトはどれもグッと来たし感動的だった。来年は声出しもモッシュも解禁されて、“そんなこともあったね”と笑って話せるようになればいいなと心から思った。
ヤバイTシャツ屋さん 撮影=青木カズロー
SiM 撮影=青木カズロー
打首獄門同好会 撮影=青木カズロー
coldrain 撮影=上山陽介
サンボマスター 撮影=釘野孝宏
10-FEET 撮影=青木カズロー
木梨憲武藤井フミヤ布袋寅泰香取慎吾と、綾小路 翔のルーツと言えるスーパースターが勢ぞろいし、綾小路が幾つもの夢をえたのも初日の見どころだった。とんねるず楽曲も連発したオールタイムベストなセットリストで沸かせた木梨憲武と「ニホンノミカタ」など矢島美容室の楽曲をコラボし、チェッカーズ楽曲の連発でオーディエンスを震撼させた藤井フミヤとまさかの「ギザギザハートの子守唄」のコラボ。布袋寅泰とは氣志團がデビュー前からSEとして使用している「BE MY BABY」の夢のコラボを実現し、アイドルと狂犬の奇跡の融合を果たした香取慎吾と自身提供曲である「I’ m so tired」をコラボ。3年ぶりの現地開催の実現、そして幾つもの奇跡のコラボの実現で、“諦めなければ、夢は叶う”と体現し、証明してくれた『氣志團万博2022』初日だった。
木梨憲武 撮影=釘野孝宏
藤井フミヤ 撮影=上山陽介
布袋寅泰 撮影=中野修也
香取慎吾 撮影=上山陽介
氣志團 撮影=青木カズロー
>>次のページは、ゴールデンボンバーHYDE、ももクロ、岡崎体育ら“万博ファミリー”が集結した2日目をレポート。

仙台貨物 撮影=上山陽介
ゴールデンボンバー 撮影=青木カズロ
ももいろクローバーZ 撮影=上山陽介
湘南乃風 撮影=釘野孝宏
HYDE 撮影=上山陽介
私立恵比寿中学 撮影=釘野孝宏
RIP SLYME 撮影=釘野孝宏
開場時から荒天に襲われながら、土砂降りの中で体を張ったパフォーマンスを見せてくれた仙台貨物で幕を開けた2日目。2012年の初開催時から出演し、氣志團と共に『氣志團万博』の歴史を作ってきたゴールデンボンバー、ももいろクローバーZ、湘南乃風、HYDEに加え、これまた『氣志團万博』の物語や伝説を作ってきた私立恵比寿中学、RIP SLYME、岡崎体育といった“万博ファミリー”が大集結。土砂降りさえも笑顔で楽しみ、圧倒的なパフォーマンスを見せてくれたゴールデンボンバーやももクロのステージも最高だったが、悪天候さえ演出として利用し、新たな伝説と会場の一体感を生んだ岡崎体育のステージは実に印象的だった。
岡崎体育 撮影=上山陽介
2016年の初出演時からYASSAIステージへの出演を懇願するも、一向に願いが叶わなかった岡崎。開き直ってMOSSAIステージを守る“MOSSAI様”を名乗り始めたところで、YASSAIステージに抜擢! というここまでの物語だけで十分面白いのだが。MOSSAI様をいたずらにYASSAIステージに動かした天罰か、YASSAIに立てた感涙か。この日のために作った1曲目「MOSSAI様 鎮静の儀」が終わった瞬間、豪雨が会場を襲う。しかし、長年夢見て、ようやくたどり着いたこのステージ。豪雨も意に介さず、巧みなトーク術とライブ運び、「Quick Report」のEDMの爆音で会場を熱狂の渦に巻き込んでいくと、観客のボルテージは一気に最高潮。こんな状況だからこその強い一体感が会場に生まれる。ラスト「The Abyss」を気持ちいっぱいに歌い上げる中、雨は小降りになり、空が明るくなっていく様子は決して計算できない自然の演出が効きまくって、感動的でさえあった。豪雨になったり、気まぐれに晴れたりと、すっかり天気に振り回された2日目だったが、こういったライブはその時の風景や気持ちも含めて、きっと忘れられない思い出になるはず。
聖飢魔II 撮影=青木カズロー
2日目のトリは、袖ケ浦の地に7年ぶり2度目の降臨となった聖飢魔II。棺桶から蘇ったデーモン閣下が「フハハハハ!」と高らかに笑い、ヘヴィなハードロックサウンドに痛烈なシャウトを響かせると、会場は暗黒世界へと叩き落とされ、この時間、この場所を聖飢魔IIが完全占拠。この日登場したHYDEもそうだったが、フェスながらワンマンさながらのバンド世界を構築し、短い時間ながらその世界観にどっぷり浸れるのも『氣志團万博』の楽しさ。代表曲「蝋人形の館」では、悪魔に血を売った鬼死團(氣志團)と血の色クローバーMAD(ももいろクローバーZ)が召喚され、ここでしか見られないスペシャルなコラボを披露。ラストはすっかり雨も上がった袖ケ浦の空に2日目の終わりを告げる花火が上がり、大団円で終演。力強い万博ファミリーが大集結した上、悪魔も来たりてヘヴィメタり、悪天候さえ良い思い出となった2日目だった。
聖飢魔II 撮影=青木カズロー
聖飢魔II 撮影=中野修也
>>次のページは、ライブ最強アーティスト揃い踏みの最終日をレポート。
森山直太朗 撮影=上山陽介
倖田來未 撮影=中野修也
Creepy Nuts 撮影=釘野孝宏
女王蜂 撮影=中野修也
一日中雨という予報をぶっ飛ばし、時々訪れる通り雨以外はほぼ晴天という、天候に恵まれた最終日。綾小路の盟友、森山直太朗の開会宣言に続き、トップバッターで登場したのは、『氣志團万博』初登場となるポップディーバ、倖田來未。セクシーで美しくしなやかな歌とダンスで魅せる「キューティーハニー」で始まり、「愛のうた」、「め組のひと」とヒット曲を連発して会場を沸かせ、最終日の幕を華々しく開ける。倖田來未で始まり、Creepy Nuts、きゃりーぱみゅぱみゅマキシマム ザ ホルモン、東京スカパラダイスオーケストラ、女王蜂と、日本のみならず世界で活躍するグローバルな出演者が揃ったこの日は、初めて見る人も絶対に楽しめる、ライブ最強アーティストが揃い踏み。タイムテーブルを眺めて“全部見たいんだけど、どのタイミングでメシを食えばいいの!?”と悩むのは、『氣志團万博』あるある。教えましょう、YASSAIからMOSSAIへの移動中にメシを買って、少し離れたところからライブを観ながら食べればいいんです!
純烈♨ダチョウ 撮影=釘野孝宏
きゃりーぱみゅぱみゅ 撮影=上山陽介
マキシマム ザ ホルモン 撮影=浜野カズシ
「『氣志團万博』の出演がなかったら、この歌を歌うことはなかった」と裏話を話し、「白い雲のように」を故・上島竜兵に届けるべく、空に向かって気持ちいっぱいに歌った純烈■ダチョウ(※注:■=温泉マーク)。突然降り始めたどしゃ降りの雨に打たれながらも“カワイイ”を保ち続け、笑顔を絶やさずパフォーマンスする姿が感動的だったきゃりーぱみゅぱみゅ。前日深夜に音楽番組『LOVE MUSIC』で互いのリスペクトを語っていた、マキシマム ザ ホルモンとR-指定の「ぶっ生き返す!!」の旬すぎるコラボなど、見どころ満載だったこの日。すっかり陽が落ちたYASSAIステージの大トリ前に登場し、僕を含めたライブを初めて観るであろうオーディエンスを釘付けにしたのは、氷川きよし
氷川きよし 撮影=上山陽介
キラキラしたセクシーな衣装で登場し、美しく華麗なパフォーマンスで魅せながら、夜空に美声を響かせた氷川。「氷川きよし業をやってました、kiinaと申します」と自己紹介して披露した、kiina名義で自身が作詞した「You are You」では“あなたはあなた、自分らしく生きましょう”とメッセージを贈る。「きよしのズンドコ節」では綾小路とコラボし、「この曲が、悟空が、自分の心を開いてくれました」という曲紹介に大きな拍手が起きた「限界突破✕サバイバー」で、限界突破の奇跡的な盛り上がりを生む。さっきまでマキシマム ザ ホルモンで暴れていた人たちが、氷川に熱狂している姿に“これぞ、『氣志團万博』の面白さ!”と改めて思わされたし。生氷川の圧倒的な歌唱力、カッコ良さや色気や可愛らしさといった人間的魅力に“やっぱり、生のライブに勝るものなし!”と思わされた。
氷川きよし 撮影=上山陽介
氣志團 撮影=上山陽介
氣志團 撮影=青木カズロー
そんなお祭り騒ぎの3日間を締めくくったのは、もちろん氣志團! 「One Night Carnival」で始まり、ど頭からガッツリ盛り上げると、「自分自身も半信半疑だったけど、3日間完走できました。ありがとうございました!」と、全ての人への感謝を告げた綾小路。コロナ禍で中止になったフェスを想って描いた「No Rain,No Rainbow」、故郷の風景を歌った『氣志團万博』に欠かせない曲「落陽」と、いまここで歌う意味のある楽曲を一曲一曲、丁寧に力強く届けると、今年の『氣志團万博』のテーマ曲と言える「房総魂」をスカパラホーンズをゲストに迎えて派手やかに披露。するとラスト、「『氣志團万博』と言えば、この曲でしょう」と始まった曲は、なぜかCHAGE and ASKAの「YAH YAH YAH」。氷川きよしや森山直太朗、ナヲ(マキシマム ザ ホルモン)も加わって大熱唱したこの曲。サビで純烈■ダチョウが登場して“ヤー! ヤー! ヤー!”と歌ったところで、“あ、そういうことか!”と納得。ステージを見守るオーディエンスが幸せそうな失笑を浮かべる中、大・大団円で『氣志團万博2022』が幕を閉じた。

氣志團 撮影=青木カズロー
撮影=上山陽介
全力で楽しむぞ! と意気込み臨んだ、3年ぶりの現地開催となる『氣志團万博2022』。終わってみての感想は、やっぱり“あ~、楽しかった!!”しか無かったし、それが一番良いと思った。そして、何が楽しかったのか? どう楽しかったのか? を文章にしたり、声を大にして語り伝えていくのが、僕の務めだと思った。来場した人は絶対に“来て良かった!”と思うし、来られなかった人は行った人の感想やこういったレポを見て、“来年こそは絶対に行こう!”と思うはず。そんな好循環が少しずつではあるかも知れないけど日常を取り戻してくれるし、当たり前じゃなかったあの風景を再び生み出してくれるのだろう。

撮影=青木カズロー
撮影=青木カズロー
撮影=中野修也
《今約束しようぜ ここでまた逢うことを》
3日目の大トリで氣志團が演奏した「房総魂」。最高に楽しかった3日間を共に過ごしたオーディエンスや出演者に向けて綾小路が届けたこのフレーズは、あの地でまた逢えるようにと祈るように歌った配信ライブとも、ここでまた逢えたことの喜びを歌った初日とも、全く意味が異なり、“来年、ここでまた逢うことを約束しようぜ”とそこにいる全ての人と固く約束をする、希望や期待に満ちたものだった。これは絶対に生じゃないと伝えられないことだったし、あの場にいないと受け取れないメッセージだったし、まだまだシンドい世の中だけど、来年、ここにまた来れるように頑張ろう、とみんなに勇気や力を与える『氣志團万博』にしかできないことだった。『氣志團万博』の翌朝目覚めて、“昨日までの出来事は夢だったんじゃないか?”と思うくらいフワフワしていた僕。袖ケ浦でまた逢える日が、夢みたいな時間が今から本当に楽しみだが、まずは2023年1月1日発売の氣志團のニューアルバムと1月3日の日本武道館公演を楽しみにして、このシンドい世の中をサバイブしていきたい。……と、『氣志團万博』の最大の功労者である、氣志團の宣伝を最後に入れておく(笑)。
撮影=上山陽介

取材・文=フジジュン
撮影=青木カズロー/上山陽介/釘野孝宏/中野修也

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