『CLASSICAL LEGEND ストーリー・コ
ンサート』第二弾はラフマニノフvsス
クリャービン~「二人の作曲家の人間
ドラマと音楽の関連性を目と耳で感じ
てもらいたい」

フランスの作曲家ドビュッシーの生誕160年を記念して2022年6月に初めて開催された『CLASSICAL LEGEND ストーリー・コンサート』。クラシック・ジャンルとしては異色のこのコンサートは、人気の声優・岡本信彦や人気急上昇中のピアニスト石井琢磨、「ピアノの森」で知られる髙木竜馬を迎え、大好評のうちに終了した。本格的なクラシック・ピアニストたちによるドビュッシーの名曲の数々とともに、岡本が演じ語った、その曲が生まれる背景となった作曲家自身の愛憎劇は、感動と驚きでオペラシティのコンサートホールを満たした。
そして先日、シリーズ第二弾となるsession 2「ラフマニノフvsスクリャービン焔の青春編」の開催が発表に。出演は、声優の狩野翔、中澤まさとも、そして第一弾に続きピアニストの石井琢磨。さらにこのたび、追加ピアニストとして、9月24日(日)にサントリーホールでのリサイタルを目前に控えた外山啓介の出演が決定した。
企画したライブエグザムのプロデューサー青木聡氏に、どのようなコンサートになるのか、話を聞いた。
――声優の狩野翔さん、中澤まさともさん、国際的にも活躍しているピアニスト外山啓介さん・石井琢磨さんという豪華な出演者が発表されていますが、『CLASSICAL LEGENDストーリー・コンサート』session 2ラフマニノフvsスクリャービン焔の青春編、いったいどんなコンサートになるのでしょうか?
声に存在感のある声優さんと本格的なクラシック演奏家の組み合わせで、作曲家のユニークなライフ・ストーリーとその音楽を楽しめるコンサート・シリーズにしたいと思って、この企画を立ち上げました。つまり、狂言回し的な声優お二人のナレーションで進行してもらいつつ、時に彼らが作曲家になりきって朗読劇のように、ラフマニノフとスクリャービン、ふたりのドラマティックな青春群像劇を演じてもらう。そして、そのライフ・ストーリーから、二人の大作曲家の音楽自体も、本格的なクラシック・ピアニストのおふたりの演奏で、届けられれば、新しいエンタテイメントが生み出せるかもしれないと考えました。これまでありそうでなかった「朗読劇」と「クラシック・コンサート」のハイブリッド・スタイルを模索していきたいと言うのが発想の原点です。6月のドビュッシーでは、あの美しい音楽の背景にこんなドロドロとした人間的な愛憎劇があったなんて!と観客の皆さんは驚かれたようですし、その音楽の魅力を感動と共に再発見いただいたように感じました。2回目の企画となる今回は、より熱く感動的な二人の作曲家の人間ドラマと音楽の関連性を目と耳で感じてもらいながら、これまでのクラシック・コンサートでは決して得られなかった深い感動と音楽への理解をきっと感じていただけると思います。
――今回、ラフマニノフとスクリャービンを選ばれた理由は何かあったのでしょうか。
もちろん、スクリャービンの生誕150年のアニバーサル・イヤーにあたるということもありますが、ラフマニノフとスクリャービン、同じモスクワ音楽院の同級生として同じピアニストで作曲家というアイデンティティをもちながら、ライバルとしても友人としても切磋琢磨した、二人のエピソードに惹かれました。二人のライフ・ストーリーのドラマ性が、こうした企画にフィットすると思いました。
――二人は同級生で、やはりライバルだったんですか?
はじめは、ラフマニノフは作曲家として、スクリャービンはピアニストとして将来を嘱望されていました。ところが実際のピアノ科の卒業試験ではラフマニノフが一番の成績で、スクリャービンは二番手でした。さらにラフマニノフのほかにジョゼフ・レヴィーンという、これまた化け物級のピアニストがいて、彼と超絶技巧を競っていたスクリャービンは、酷使の結果右手を痛めてしまったのです。スクリャービンのピアノ曲は、ピアニストに聞くと左手が非常に難しいらしいのですが、右手をかばいながら弾くために、左手の書法がどんどん大変なものになっていったと言われています。左手のための曲があるのも、そのためです。ラフマニノフはラフマニノフで、作曲家として認められるのには時間がかかりました。そんな青年ラフマニノフやスクリャービンの鬱屈した気持ちが、当然音楽に昇華されているではないでしょうか。
――人生の葛藤が、音楽にも反映されているのですね。
そうですね。もちろん、ストレートにそのまんまと言うわけではないと思いますが、影響はありますよね。体が弱かったスクリャービンは、虫刺されがきっかけで43歳の若さで亡くなるのですが、ラフマニノフは彼の葬儀で棺を担ぎ、彼の曲を弾き、その後も自分のコンサートのレパートリーとしてスクリャービンの曲を加えたそうです。ライバルではありましたが、それと同じくらい、いやそれ以上の友情と音楽的な尊敬の念がきっとあったんだと思います。
――なるほど、とても心の琴線に触れるエピソードですね。
こんな素敵な人間ドラマを、実力派人気声優の狩野翔さんと中澤まさともさんがどんな風に演じてくれるのか、私も本当に楽しみで仕方ありません。
――そして、共演する2人のピアニストも贅沢なキャスティングですね。
石井琢磨さんも外山啓介さんも、国境を越えて活躍する本格的な実力派ピアニストですが、二人とも若くてこうした新しい取り組みに柔軟な感性で向き合ってくれるタイプなのです。この企画を話した時にもとても喜んでくれました。スクリャービンをここまで弾くようなコンサートもアニバーサリーイヤーとはいえ、そんなにたくさんあるわけではないですし、クラシック・ピアニストとしてこの企画に賛同してくれて、とても燃える!そんな風に言ってくれたのが嬉しかったですね。そんな二人の演奏と狩野翔さん・中澤まさともさんの朗読と演技がどんな化学反応を起こすのか、企画した自分自身もドビュッシー編以上にとてもワクワクしてますね。
取材・文=神山薫

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