LUNA SEA 問題を乗り越えるたびに強
度も絆も深まるバンドの姿を見た、『
復活祭』を振り返る

LUNA SEA 復活祭 -A NEW VOICE- Day2「Naked Voice」

2022.8.27 日本武道館
2022年2月から活動を休止していたLUNA SEAが、RYUICHI(Vo)の新たな声のお披露目とともに、日本武道館で2日間に渡って両日コンセプトを変えてワンマン公演『LUNA SEA 復活祭 -A NEW VOICE-』を開催。ここでは「Silky Voice」をテーマに掲げて行なったDay1公演の翌日、8月27日に「Naked Voice」をテーマに開催したDay2公演のレポートをお届けする。
ミディアム、スローテンポの曲に絞ってRYUICHIの新しい声にスポットを当てた【第1部】と、アンコールの“GACHI SEA”登場のエンターテインメント性を絶妙なバランスで配置し、復活祭を印象づけたのがDay1だとしたら、Day2は【第1部】、【第2部】を通して、RYUICHIの新しい声でLUNA SEAの全キャリアのアルバムを網羅しながら、歴史を一つひとつ塗り替えていく。そんな復活祭だったように思う。
RYUICHI
360度、見渡す限り天井までパンパンに人、人、人で埋め尽くされた武道館の眺めは、迫力満点。客電が落ち、場内が照明で真っ赤になったなか、ゆっくりとメンバー5人がオンステージ。割れんばかりの拍手に包まれる中、J(Ba)の前には冒頭からマイクスタンドがセットされている。SUGIZO(Gt)が右手を上げ、真矢(Dr)に合図を送り、始まったのはまさかの「a Vision」。バンド史上初のオープナーソング抜擢に、武道館の空気がどよめく。《食い尽くせ 駆け足で 今 無心で 恐れないで どうでもいい》と歌うRYUICHIの声は歌詞通り、1曲目から剥き出しで襲いかかる。曲中のラップパートは、ライブバージョンではJとSUGIZOが交互に掛け合いで行なうのだが、このパートがやってくると、場内はさらに大興奮。そこに「カモン!」といってRYUICHIがフロアを煽ると、声が出せないオーディエンスの代わりにINORAN(Gt)がマイクに向かって叫ぶ。そのINORANが舞台中央に立ち、モニターに足をかけ、リフを弾きだし、武道館はさらにボルテージを上げる。
そして始まったのはあの曲、「TONIGHT」だ。客席は拳を突き上げてぶち上がり、歌詞どおり、この日だけの夜の祭典をオープニング2曲で作ってみせる。すごい夜の幕開けだ。RYUICHIも第一声からこの“復活祭”に「たどり着けてよかったと思います」と笑顔を浮かべる。そうして次の「Sweetest Come Again」へ。いまの彼らの技量をもってプレイすると、この曲はグルーヴ感がしびれるほどカッコよくて、この日の「Sweetest~」はまるでスタジアムロックのような響き方をしてきた。ここまでアルバム『LUNACY』(1991年4月発売)からタイプの違う曲を3連発したあとは、SUGIZOのギターフレーズが空気を掻きむしるように立ち上がり、『A WILL』(2013年12月発売)からアッパーのギターグルーヴチューン「The End of the Dream」へ。Dメロ部分でINORANとRYUICHIが向かい合う光景にこの日はSUGIZOも加わり、そこでRYUICHIが2人のギターのポジションまで体を沈めて《もう一度 君よ 掴んで欲しい 心の叫びを》と歌う場面は胸に熱いものがこみ上げてきた。
SUGIZO
歌い終えたRYUICHIが一呼吸おいたあと、優しい声で観客に「またみんなで新しい夢を見ませんか? 俺たち31だか32?(SUGIZOが“33”とすかさず訂正)33周年だけど、さらに先を見たくて、いまめちゃくちゃワクワクしてます」と現在の心境を伝え、曲はアルバム『CROSS』(2019年12月発売)から「宇宙の詩~Higher and Higher~」へ。ワクワクする想いを、さらに未来へと向かって拡散するように巨大なミラーボールとレーザーが光を放つ。SUGIZOのギターと真矢の叩き出すビートは武道館の天井を遥か上まで突き抜けていき、観客を連れ宇宙までトリップ。宇宙までいったあと、場内は真っ暗な闇に包まれた。INORANが奏でるアコギのアルペジオにSUGIZOがヴァイオリンを重ね、始まったのはアルバム『LUV』(2017年12月発売)のなかのハイライト曲「闇火」だった。ライブでは、毎回RYUICHIの神懸かった歌唱で、重厚感ある見せ場を作ってきたこの曲への果敢なチャレンジ。場内の空気がとたんに緊張感に包まれていく。ステージ上で特攻の火柱がバンバン上がるなか、RYUICHIの声が下からオクターブ上へと上り詰めていくところは、後半、声が途切れ途切れになり、それをとっさに喉から声を絞り出す叫び声に変えて、渾身の力を振り絞って歌いきってみせた。その気迫溢れる絶唱を聴いたSUGIZOは、演奏が終わるとすぐさまRYUICHIのそばに駆け寄り、背中に手を当てながらそっと声をかける。“余裕の復活祭”では決してなかったのだ。たぶん、怖さもあったに違いない。それでも、ギリギリのところにあえて挑戦していって、未来を切り開いて自らの手で掴み取る。これが、LUNA SEAのRYUICHIなのだ。その気迫に、どこまでも圧倒された「闇火」だった。
そして、このあと次の曲「CIVILIZE」のタイトルコールが場内に響いた瞬間、客席にざわめきが広がっていった。アルバム『MOTHER』(1994年10月発売)からの選曲だ。Jの荒々しいベースで混沌とした狂気の中へと突き進むこの曲では、LUNA SEAのカオスが爆発。これがまた、いまの彼らが演奏するととてつもなくカッコいい。そこからさらなる混沌のなかへと「HURT」の重々しいヘヴィなグルーヴで沈んでいく。『STYLE』(1996年4月発売)からのこの曲で低音、重さ、暗さはマックスに。いまの演奏力をもって作り出す、切迫したこの世界観。LUNA SEAのカリスマ性が武道館全体をじわじわと侵食していく。Jの《Three,Two,One,Break…》の咆哮に応え、ここでも新しい声の可能性を探すように《たとえすべて 失っても》とギリギリを攻めまくる歌唱を続けるRYUICHI。そのRYUICHIが最初にステージを後にすると、メンバーとオーディエンスから大きな拍手が沸き起こったところで【第1部】は終わりを告げた。
INORAN
換気タイムを挟んで、ライブは【第2部】へ。幕開けは「LUCA」だった。INORANの合図で武道館にオーディエンスの軽快な手拍子が広がるなか、RYUICHIのNEW VOICEはこの曲のポジティブなエネルギーをさらに引き出し、フレッシュで光り輝く天国のような美しい景色を場内に作り出す。そこから「JESUS」をプレイ。アルバム『EDEN』(1993年4月発売)に収録されたこのライブアンセムで、シンプル極まりない音なのに、誰にも真似できないバンドアンサンブルを叩きつけ、場内の温度を上げていく。そして、RYUICHIのタイトルコールで会場が湧き上がるのが空気で伝わってきた「END OF SORROW」。“ウォー、オー”の合唱を観客たちが心の声で歌う中、静寂に包まれた武道館にINORANの美しいアルペジオの響き、そこにRYUICHIが“ラーラーラーラー”と切ない歌声を重ね、そのあと楽器隊が徐々に加わっていくと、ボーカルの熱量を高めていって、この曲最大の見せ場を歌でドラマチックに作ったあとは、そこからまさかの「SANDY TIME」を投下。アルバム『LUNA SEA』(1991年4月発売)からのダークナンバーで、RYUICHIが壮絶なシャウトをきめ、そのあとはアルバム『MOTHER』から、凄まじいスピードでバンドが疾走しまくる「IN FUTURE」へ。RYUICHIがJと向かい合って《Rude boy》と叫んだ後、この日はリアルな新月の夜だったせいか(?)、SUGIZOがプレイ中にINORAN、RYUICHIに続いて、まさかのJ、さらには自ら手を差し出してきた真矢にキスを振る舞っていき、このパフォーマンスを見て、会場は狂喜乱舞。最後はキスを貰った真矢が、バスドラを猛烈な勢いで興奮気味にドコドコ連打させていって曲はフィニッシュ。
「この360度の武道館の景色をしっかりと刻み込んで、また新しい旅に出ましょう」と伝えたRYUICHIが「飛ばしていくぞー!」と叫んで客席を煽り、曲はアルバム『IMAGE』(1992年5月発売)から「Dejavu」へ。《Dejavu》のところで勢いよく観客がジャンプをすると、武道館全体が振動で揺れる。さらに「もう一丁いこうか!」とRYUICHIが畳み掛け、キラーチューン「ROSIER」を投下。コール&レスポンスパートは、INORANが力強い声でオーディエンスの心の声を代弁。最後、テンポアップして駆け抜けていったあと、RYUICHIが深々と頭を下げ、天にキスを投げたと、5人はステージを後にした。
J
観客が灯すスマホのライトが客席を埋め尽くし、360度満点の星がきらめく夜空を武道館に作り、メンバーを迎えたアンコール。RYUICHIが「美しい空です。どうもありがとう」と感謝を述べたあと、アンコールはバラード「I for You」からスタート。まだまだいける、というようにRYUICHIは観客が作る美しい星空に負けない美声を探り探り、届けていく。この後のメンバー紹介は、いつもとは違う順番でINORANからスタート。
「この半年間みんなを心配させてしまった」といい、しかしその間バンドでいろんな話をして、いまは「LUNA SEAの未来はキラキラしすぎて、楽しすぎて見えない」とにこやかにつぶやいた。SUGIZOは「デビュー30周年以上のバンドがこんなにキラキラして、小僧みたいなライブをやるって素敵じゃないですか」と客席に語りかけ、いまも終わりが見えないコロナのパンデミック、ウクライナを始め世界各国で起こっている紛争に想いを馳せ「俺たちが音楽で率先して、この分断が生まれる社会にポジティブなエネルギーを伝えていきたい。33年目、LUNA SEAはいまもっともポジティブ」と宣言。RYUICHIは術後「最初は自分の声が取り戻せるのかということばかり考えていた」ことを告白。だが、いまは「そうじゃなくて、もっと進化して強くなるので。もっと声を磨いて磨いて、手に入れた声で輝いていきたい」と想いを伝えた。Jは「いままでワガママなバンドで突き進んできた」と前置きした上で「これからもそれを貫いて、ときには喧嘩したり?(笑)とか。いろんなドラマを乗り越えられたのは一人ひとり、俺たちの仲間がいたからこそ。全員でここからどこまでいけるか勝負しましょう」と語りかけた。そして、最後に控えていた真矢はRYUICHIに呼ばれるがままステージのセンターに立ち、メンバーの話を「INORANのつぶやきは“イノつぶ”、SUGIZOはもっともポジティブで“もっポジ”、Jはケンカしたりで“Jケン”、RYUちゃんは声が復活したので河村さんの声で“かわ声”」とコミカルにまとめあげて、観客の笑いを誘った。
そうして、ドラムソロの掛け合いの代わりに、“日本”“チャチャチャ”の手拍子を使って“RYUちゃん”“チャチャチャ”、“大好き”“チャチャチャ”のコール&レスポンスで、会場じゅうを笑顔にしてみせた。
真矢
「武道館、もう一丁いこうか」というRYUICHIの掛け声でライブは再開。アリーナ席に銀テープが舞い降りた「WISH」、そして「最後にこの会場に集まってくれたみんな、世界中の仲間たちに贈ります」とRYUICHIがいってアルバム『SHINE』(1998年7月発売)から「UP TO YOU」のタイトルが告げられると、客席は歓喜。《夢を見続けて 終わりはないから 雨に打たれても 夢が滲んでも 明日を信じて この手は離さない》と歌うRYUICHIの声がどこまでも優しく響き、《この手は離さない》というフレーズで、誰もがいろいろあったLUNA SEAとの思い出、自分の人生を回想。と同時に、それでも、いろいろなことを乗り越え、手を離さなかったからこそ、いまここにいるのだと誰もが思った感動的な瞬間だった。
このあと恒例のエアジャンプでメンバーと観客が一つになったあと、「愛してるよ、バイバーイ」といって、ステージから立ち去ろうとしたRYUICHIをINORAN、J、真矢、SUGIZOが取り囲んで抱き合う。まるで映画を見ているようなドラマチックなシーンが目の前で起こり、ファンは思わず感極まる。そのとき、RYUICHIは照れながらもとびきり嬉しそうな笑顔を浮かべていたところもまた、たまらなかった。
こうして、なにか問題を乗り越えるたびに、バンドとしての強度も絆も深まり、最後にはこんなドラマを引き起こしてみせる。これだからLUNA SEAのライブは見逃せないのだ。
そして終演後、ビジョンを通して12月17日、18日にさいたまスーパーアリーナで、『黒服限定GIG』を“LUNACY“名義で開催することが伝えられると、観客は飛び上がって狂乱。2010年、“REBOOT”のタイミングに東京ドームで開催した『黒服限定GIG』。今回はどんな意味を持っての開催なのか、どんなステージを繰り広げてくれるのか、はたまたここではどんなドラマが起こるのか。見逃せない2Daysになりそうだ。

取材・文=東條祥恵
撮影=田辺佳子、横山マサト

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