椰月美智子著「しずかな日々」で懐か
しむ少年時代の夏休み 「阪口くんと
釘宮さんのブックトラベラー」コラム
第5回

 声優の阪口大助さん、釘宮理恵さんをパーソナリティに迎え、ラジオ大阪、アニメハック公式YouTube、ニコニコチャンネルプラスで、毎週日曜深夜12時(24時)から放送&配信中のラジオ番組「阪口くんと釘宮さんのブックトラベラー」。番組内では、読書好きという共通の趣味をもつ2人が「本」をメインテーマに、さまざまな話題について語り合っており、月1回ペースでの生配信(前半無料)も行われている。

 番組内で語り尽くせなかった“こぼれ話”を中心にお届けする本コラム第5回では、2人が8月の課題図書「しずかな日々」の感想を語り合いながら、過ぎ去った少年・少女時代の夏休みを懐かしく振り返った。
――7月の課題図書だった森博嗣さんの「すべてがFになる」は、視聴者の皆様からの反響が想像以上でしたね。
阪口:すごかったですね!
釘宮:もともとファンだった方が多かったみたいですね。
阪口:アニメやドラマにもなっていますからね。
――今回課題図書になったことがきっかけで、シリーズを読み始めたという人もいました。
阪口:いま、僕もシリーズを読み進めているんですが、追いつかれてしまいそう(笑)
――8月の課題図書は椰月美智子さんの「しずかな日々」です。野間児童文芸賞、坪田譲治文学賞をダブル受賞した感動作とのことですが。
阪口:いつものように、タイトルと表紙裏の紹介文に惹かれて購入した本なのですが、当たりでしたね。もっと和やかな、夏休みの絵日記みたいな内容だと思っていたのですが、結構不穏な展開だったのは意外でした。お母さんにはお母さんの人生があり、ああなってしまったことにも理由があった、という考えさせられる物語でしたね。
 僕は押野というキャラクターがイチオシです。いわゆるクラスの人気者で、お調子者的なポジション。そういう子ってウザくなりがちなんですが、押野は主人公に寄り添ってくれるし、空気も読める。1冊読み終わる頃には、大好きになっていました。
釘宮:そんなに押野くんに思い入れがあったんですね。
阪口:僕にとっては、理想の小学生男子です。スポーツができて、おもしろくて、思いやりもある。クラスのなかで派閥を作るのではなく、中心にいて、ひとつにまとめ上げているというのが、また魅力的で。
――小学生だったころに、なりたかった理想像ということなんでしょうか。
阪口:うーん、自分がなりたかったかと言えばちょっと違うかもしれません。小学生当時の自分もとても楽しかったのですが、押野みたいなやつが友だちにいたら、毎日がもっと楽しかっただろうなと思います。読んでいるうちに、自分も小学生の夏休みを過ごしているような気分になれる……タイトル通り、あの頃にタイムスリップしたような「しずかな日々」が味わえる本でした。
釘宮:私は不穏な空気に、緊張しながらページをめくっていました。いろんなジャンルを読むからか、「ここから何が起こってもおかしくないぞ」って身構えてしまって……。途中で少し肩の力が抜けてみると、おじいちゃんと孫の、古きよき日本の夏休みを追体験させてくれるような作品でした。私の小学生時代に、このお話で描かれているような体験がそのままあったわけではないのですが、お年寄りがいて、仏壇があって、麦茶やスイカを出してくれて……みたいなことは経験があるので、とても懐かしい気持ちになりました。
阪口:自分が経験したことではないのに、どこか懐かしい。
釘宮:そうそう。
阪口:昭和の空気感なので、今の子たちが読んで、同じように感じるかどうかはわからないですけどね。
――おふたりは、夏休みをどう過ごしていましたか。
阪口:毎日遊び倒していましたね。海に泳ぎに行ったり、あちこちを探検したり。虫採りや釣りも楽しかった!
釘宮:絵に描いたような、ほのぼのした夏休み(笑)
阪口:もちろん宿題にはまったく手がついておらず、残り日数がわずかになってから慌てだすパターンでした。本当になにもやらないまま遊び続けてしまっているので、結局宿題が終わらない(苦笑)。9月1日は、僕にとっては冬でしたね……。
釘宮:すごく意外!! 私は7月中に宿題を終わらせて、後は悠々自適というタイプでした。やらなければいけないことが残っていると、安心して遊べないので……。
阪口:僕は、夏休みが始まった瞬間にテンション爆上げになって、遊ぶことしか考えられなくなっちゃうんだよなあ……。生まれ故郷である新潟の夏って、街中がすごく盛り上がるんですよ。しかも、お盆を過ぎると海にクラゲが出てきてしまうので、それまでが勝負! という感じで。だから、家でおとなしくお勉強、なんていう選択肢はなかったですね。
 僕が通っていた小学校は1学年21人しかいないという過疎地域にあったので、夏の前半は生徒全員が水泳部として水泳大会まで頑張るんです。後半は陸上部になって、秋の陸上大会までやる。それが終わったら、11月のミニバスケ大会に向けてバスケットボールに励む。で、3学期は卓球とバドミントンの選択制になるっていう。だから、実はいろんな部活を経験しています(笑)
釘宮:すごい流れですね! そういうことなら、ずっとクラスメートと一緒だとお付き合いしている方や、結婚した人も多いのでは?
阪口:同級生同士ではなかったかな。
釘宮:そうなんだ! 幼なじみは恋愛対象にならないのか……。
阪口:そうだよね、6年間一緒だったのに。中学校では4つの小学校が集まって1学年7クラスにもなるから、そこで外の世界を知っちゃうんだよね(笑)
釘宮:私の夏休みは、学校で本を借りて読んでいるか、プールで泳いでいるかのどちらかでした。学校のプールにも通いましたが、たまに親が連れて行ってくれる、ショッピングモールに併設された遊び場のあるプールも楽しかったですね。ほかには、父がお肉を焼ける調理台を庭に作って、近所の人たちを呼んでバーベキューをしたり。
阪口:そういうのいいよね。うちも町内で肝試しをしたり、スイカ割りをやったり楽しかったです。
――お祭りも夏休みの醍醐味ですね。
阪口:そうですね。新潟にはたこ焼きのお店がほとんどないので、年に何回かだけ食べられるお祭り屋台のたこ焼きこそが、僕らにとって本当のたこ焼きでした(笑)
釘宮:たこ焼き屋台って、子供のときはパチンコ屋さんの駐車場とかに普通にあるものだと思っていました。
阪口:そんなのはないです! 少なくとも僕の子ども時代にはなかったです。たこ焼き大好きでしたから、お祭りは今でもテンション上がりますね。ろくに完成しない型抜きも楽しかったです。
釘宮:私も、親戚が大阪に住んでいて、毎年帰省する際の楽しみでお祭りに行っていました。そこで金魚すくいをして、(金魚がとれたら)1年間ずっとおじいちゃんに育ててもらっていました。今考えると、ちゃんと自分で育てないとダメだなと。でも、金魚すくいって、ついやりたくなってしまう魅力がありますよね(苦笑)。
――話は変わって、9月の課題図書「パラドックス13」についておうかがいします。こちらは、東野圭吾さんの作品ですね。
釘宮:「東野圭吾さんなら間違いない」と思い、新幹線移動の際に読もうと購入したのですが、この機会に読破したいなと思いまして。大助さんは東野圭吾作品を1作しか読んだことがないということだったので、新鮮な味わいがあると思いますよ。
阪口:ドラマは見たことがありますが、著作にはほとんど触れたことがないんです。
釘宮:東野圭吾作品はいいですよ。絶対に面白いっていう信頼感があります。ミステリアスな感じと人物描写、ドラマのバランスがとれている作品だと思います。どれかに偏っていると、好みから外れてしまうのですが、絶妙なんですよね。「パラドックス13」の内容はうろ覚えで、人がたくさん死んで、世紀末みたいな世界になっていた記憶があります。大助さんも楽しめるといいんだけどなあ……。
阪口:そういうのも、たまにはいいと思う。いろんな作品に触れていきたいからね。
――これまでに映像化されていない作品なんですよね。
釘宮:そうみたいです。「ブラックホールの影響が……」みたいな、SF要素を含んだ作品なので、実写ドラマ化は難しかったのかも。
阪口:よきよき! SFは大好物です!! どうやら「すべてがFになる」に引き続き、頭脳をフル稼働させないとついていけない作品みたいですが、ここはやらねばなるまい!! 僕が1冊だけ読んだ東野圭吾作品は「恋のゴンドラ」っていう、すごくライトな作品だったので、ついにハードな東野圭吾の世界に触れることになると思うとドキドキです(笑)
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