藤巻亮太、『Mt.FUJIMAKI 2022』3年
ぶりの現地開催を前に主催者としての
想いを語る

あの素晴らしい場所に、あの素晴らしい音楽をもう一度。藤巻亮太が主催する野外音楽フェス『Mt.FUJIMAKI 2022』が、今年は2日間に日程を拡大して帰ってくる。コロナ禍により2年間の中断(昨年はオンライン開催)があったが、藤巻の地元である「山梨に素晴らしい音楽を」「山梨を訪れる方に最高のもてなしを」を合言葉に、3年ぶりの現地開催が決まった。ずらりと並んだ錚々たる顔ぶれは、大ベテランから気鋭の若手まで、藤巻が絶対の自信を持ってお勧めするアーティストばかり。もちろん藤巻自身の、弾き語りとバンドセットの二つのステージにも注目が集まる。主催者として、出演者として、そして一音楽ファンとして、開催から2か月を切った今の思いを藤巻亮太が語る。
――1、2年目を開催して、3年目が中止、4年目はオンライン。5年目の『Mt.FUJIMAKI 2022』に臨む思いを聞かせてください。
状況を見ながらではありますけど、去年、一昨年とはエンタメ業界を取り巻く環境も違いますし、理解も深まってきているところはあると思っていて、ようやく現地開催できるかなということになりました。こちらもいろいろノウハウを積んできていますし、まずは来てくださるお客さんも、演者さんも、安心安全で過ごせるように準備するということと、僕自身は久しぶりに現地開催できてうれしいという気持ちです。やっぱりね、とても気持ちのいい季節なので。暑くもなく寒くもなく。
――10月初めの山梨、山中湖のほとり。以前にうかがった時も最高でした。
秋の初めというか、気候のいい季節ですから。ロケーションとしては、どなたが来ていただいても胸を張ってご招待できるような環境なので、そこは楽しんでもらいたいなと思います。そしてラインナップを見ていただくとわかる通り、素晴らしいアーティストの方々がステージに立ってくださるので、間違いなく心に残る2日間になると思います。みなさんは日ごろ、コロナを含めて、いろいろ大変な環境で生活されている方も多いと思うんですけど、ちょっと日常を離れて、こういう場所でゆっくり音楽を聴いていただけたらと思います。
――この2年半くらいは、観光も含めて地元は大変な状況だったと思います。そこから一歩を踏み出す起爆剤としても、『Mt.FUJIMAKI 2022』の開催の意味は大きいんじゃないかと思います。
山中湖村というところは観光地ですし、たくさんの人に来ていただきたいという思いは、村長さんをはじめ、役場の観光課の方からもいろんな話をうかがっています。今回は2日間あるので、宿泊していただくことで、よりゆっくりと魅力が伝えられるかなと思っています。そんなプランで来ていただける方も、藤巻としてはとてもうれしいですね。もちろん日帰りでもうれしいですし。だから観光ということもそうですし、飲食もそうですし、できる限り山梨の風土を楽しんでもらえるような、フードエリアも用意したいと思っているので、そちらも楽しみにしてほしいと思います。
――それに加えて、新しい企画として「石井スポーツ甲府店アウトドアキャンプスタイル2022 in 山中湖」として、会場に隣接したフリースペースエリアでキャンプギアの展示体験会もあると聞いてます。
それも縁ですよね。藤巻が登山好きだということもあって、その縁でお話をしたら、一緒にやってくださることになって。アウトドアと野外フェスは、とても親和性が高いと思うので、ステージの転換時間とかにも楽しんでいただければいいと思います。
こういうフェスを主催すると、大好きなアーティストに直接かかわることができる。ミュージシャンとしてすごくうれしいし、宝物だなと思います。
――2日間のフェスに拡大したことで、音楽的にも多彩になったり、観光や宿泊の可能性が増えたり、フードやキャンプグッズとのコラボレーションが増えたり。5年間にはいろいろありましたけど、藤巻さんの中ではだんだん理想の『Mt.FUJIMAKI』に近づいていってるんじゃないですか。
そうですね。2年間は現地開催できませんでしたけど、その思いも含めて、どうやって「おもてなし」ができるかということを、いろいろ練ってきたので。より楽しんでいただけるようになっているんじゃないかと思います。
――そして、ステージに立つアーティストたちも、素晴らしいラインナップが揃いました。
2年間現地にお招きできなかった方に、再度オファーをさせていただいたり、新しくお声がけをさせてもらった方もいて、ありがたいことに、多くのアーティストの方がOKしてくださって。そうすると1日だと時間が足りないぞということで、ゆっくり聴いていただきたいという思いで2日間にしました。両日とも素晴らしいミュージシャンの方々が出てくださいますので、楽しんでいただけたらなと思います。藤巻の個人的な喜びとしては、こういうフェスを主催すると、大好きなアーティストに直接かかわることができるということがあって(笑)。それが縁になって、『Mt.FUJIMAKI』を機におしゃべりできたりとか、一緒に音を鳴らすことができたりとか、それはミュージシャンとしてすごくうれしいし、宝物だなと思っているので。先輩方から若手バンドまで、素晴らしいラインナップだと思いますので、実は藤巻が一番刺激を受けてるんじゃないか、という部分もありますね。そうやって刺激を受けたぶんを、藤巻は自分のステージでしっかりお客さんに返していこうと思います。
>>次のページでは、奥田民生をはじめ各出演者たちへの想いを訊いています。
――すでにタイムテーブルが発表されています。初日は藤巻さんから始まって、奥田民生さんがヘッドライナー。2日目は藤巻さんが最後のステージを務めるという構成です。
僕に関しては、初日は弾き語りをして、2日目はバンドアクトで、トリを務めさせてもらおうと思っています。あの場所の空気を想像すると、とても気持ちのいいところなので、初日の弾き語りは「こういう場所で聴けたら気持ちいいだろうな」という曲を歌えたらいいなと思いますし、2日目のバンドアクトはやっぱり、みんなで盛り上がって、「2日間終わりました!」というような、大団円を迎えられるようなステージにできたらなと思っていますね。あとはもう、それぞれのアーティストの方々が、たとえば竹原ピストルさんが弾き語りをしてくださったりとか、それぞれのスタイルでやってくださいます。僕としては「Mt.FUJIMAKIバンド」というハウスバンドでお迎えして、その中で歌ってくださるアーティストもいらっしゃって、1日目は奥田民生さんと岸谷香さん、中島美嘉さん、2日目は真心ブラザーズさんです。そこで、それぞれの世界観を楽しんでもらえたらなと思います。……僕、「楽しんでもらえたら」としか言ってないですね(笑)。
――いいんです(笑)。それ以外ないんです。
そうなんですよ。あと、なんかありますかね(笑)。
――アーティストの方々を一人一人紹介してもらおうかなとも思ったんですけど、説明不要な方ばかりですし。
そうなんですよ。「はじめまして」の方もいますし、自分がずっと聴いてきた方もいますし。どちらにしろ、自分が「いいな」と思って、心からリスペクトしているみなさんですね。
――はじめましてで言うと、たぶんSaucy Dogは初共演ですよね。
まだお会いできてないですけど、すごく楽しみですね。僕もスリーピースバンドでデビューしているので、歌声とか、楽曲のポップさとか、新しい風が吹いているなということを感じます。20代で、勢いがあって、自分のロックでポップスをやっていくという佇まいには、すごく刺激を受けますね。
――あと、Salyu(✕salyu)さんとは以前から近いところにいましたし。MONGOL800は、ちょっと意外に思う感じもありますが。
彼らはちょっと先輩ですね。キヨサクさんとは他のフェスで何回かお会いしたことがあって、キヨサクさんのラジオに呼んでもらったことがあるんです。それが縁で、お互いに沖縄のルーツと山梨のルーツみたいな話をしながら、意気投合した部分があって、「ぜひとも地元・山梨に来てくださいませんか?」というつながりからのオファーです。
ご一緒できるだけでも幸せですし、曲たちを一緒に演奏することで、その日に、この場所でしか聴けない響きになったらいいなと思います。
――一人ひとりにいろんなつながりがあるんですね。小山田壮平さんとは、たぶんandymoriの頃に接点はあったでしょうし。
小山田くんとは、フェスでの共演はあるんですけど、そこまでちゃんと話したことはなくて。でもandymoriの「1984」とか、大好きですし、すごく好きなアーティストです。結局みなさん、スリーピースバンドなんです。橋本絵莉子さんにしてもね。
――そうですね(笑)。やっぱり共通項を感じるんですかね。
チャットモンチーもすごく好きなアーティストですから。そして中島美嘉さんは、「真冬のハーモニー」という曲を一緒にやらせてもらいましたし、岸谷さんは大先輩ではあるんですけど、去年も一緒にやらせていただいて。真心さんは、30周年のライブの時にも声をかけていただいたりとか、この間も佐賀県唐津市のフェスでご一緒させていただいたり。そして民生さんとは最近、何かと共演をさせてもらっていて、いろんな縁がみなさんありますね。そうした大先輩の方々とは、ご一緒できるだけでも幸せですし、曲たちを一緒に演奏することで、その日にしか聴けない……音楽ってそういうものでしょうけど、10月1日と2日にこの場所でしか聴けない響きになったらいいなと思いますね。
――たとえばですけど、民生さんに「この曲をやってくれませんか」とか、言ったりしますか。
そうですね。民生さんとは、ギブソンのYouTubeチャンネルでの共演が大きな縁になっているんです。ユニコーンは僕の原点にあるバンドで、ギターをはじめるきっかけになったのも民生さんで。いろんな話をしていく中で、「粉雪」を一緒に歌わせていただいたんですけど、やっぱり感激するわけですよ。そしたら「あれ、もう覚えたからやろう」って、浜崎貴司さんの『GACHI』というイベントでも一緒にやってくださったりして。山中湖は「粉雪」が生まれた場所でもありますし、そんな場所で、もしよかったら、また民生さんと一緒に「粉雪」が歌えたらいいなという思いはあります。
――それはぜひ聴きたいです。
それぞれのアーティストの、弾き語りであったり、バンドでいらっしゃる方は、その世界観をやっていただくことを僕も楽しみにしていますけど、ご一緒させていただける方々には、自分からもリクエストしたいなと思います。「ここでこれが聴けて良かったな」というセットリストを目指そうと思ってますね。
――あとは、そうですね、毎回恒例の、山中湖中学校のビッグバンド・BLUE LAKE BEATによるオープニング演奏もありますし。
それはやっぱり、地元でやっている意味として、ぜひ聴いていただきたいですね。中学生たちの素敵な演奏を楽しんでもらいたいです。
――藤巻さん、今年のフェスのテーマ曲とか、そういう新曲の予定はないですか。おねだりしてみますけれども(笑)。
どうでしょう(笑)。テーマ曲ではないですけど、今年はどんな曲をやろうかなと考えた時に、藤巻の現在地を知ってもらうような曲を1曲ぐらい演奏したいなとは思っています。新しい曲という意味では。弾き語りでやるのか、バンドセットでやるのか、まだセットリストは決めていないですけど。
老若男女問わず楽しめるフェスだと思っているので、安心して来てほしい。あとはお天気が良くなることを祈りながら、楽しみに待つしかないですね。
――楽しみです。新曲といえば、「マイナビ農林水産ジョブアス」のCM曲になっている「千変万化」が、7月末にCMバージョンとして公開されましたね。
そうなんです。自分の実家で桃とぶどうを作っていることもあって、農林水産業を応援したいという気持ちはずっとあったので、そういうCMに曲を作らせてもらってうれしかったです。わりとアップテンポなナンバーで、自分にとっても新しい佇まいの曲になったので、「千変万化」をやってもいいかもしれないですね。でも、もっといっぱいあるので、何がいいかなと考えているところです。
――何が出てもこちらは楽しむ気満々なので。期待しています。
8月、9月と準備を進めて、どんなステージにしようかな?と、セットリストを考えているので、楽しみにしていてほしいですね。そして、それぞれのアーティストのステージがどんなふうになるのかな?と、楽しみに待っていていただけたらと思います。
――一つ付け加えると、過去に行かせていただいた実感から言うと、大人の観客が多いので、落ち着いた雰囲気というか、フェス慣れしていない人もゆっくり楽しめる場所だと思いましたね。雄大な環境も含めて。
家族連れの方もいらっしゃいますね。小学生以下は入場無料(保護者同伴の場合)ですし、家族でゆったりという方もけっこう多いので。前の方に行って盛り上がるスペースもあるんですけど、うしろの方でゆっくりと、ビールでも飲みながら見ているのが最高だなというロケーションなので。そういう意味では、老若男女問わず楽しめるフェスだと思っているので、安心して来てほしいです。あとはお天気が良くなることを祈りながら、楽しみに待つしかないですね。僕は自分のことを晴れ男だと思っているので、大丈夫じゃないかなと思っています。

取材・文=宮本英夫 撮影=大橋祐希

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