【カノエラナ インタビュー】
“アニソンを歌いたいです!”という
自己紹介盤みたいなものにもなった
今後アニソンを作っていきたいので
その壁は乗り越えていきたい
「ヤコウレッシャ」はどのようなイメージで作られたのですか?
「ヤコウレッシャ」はすごく仲が良かったふたりが何らかのかたちですれ違って、離れていく瞬間を電車に例えて曲にしました。
この曲がもしアニメで流れるとしたらエンディングでしょうね。
エンディングですね。“何もない場所を歩いて行って、ちょっと振り返ってみたり”っていうシーンが私の頭の中にあったので、MVに少し取り入れていただいています。
《意外にも丈夫な心はさ/簡単に壊れたりしなくて》っていうフレーズがいいです。“悲しくてつらい時、こう感じることはあるよなぁ”」って聴きながら思いました。
私自身が病まないっていうのがあって、それが悩みだったりもするんです。考え込んだことを次の日には全て忘れてしまうのは良いことでもあるんですけど、良くないことでもあるのかなと。そういう部分を肯定してほしくもあり、“それではダメだよ”と言ってほしくもあり…っていう私の本音が出ていますね。私のことを知っている方々は“やっぱりこういう感じなんだ”と思ってくださるのかもしれないです。
カノエさんのことをよく知らない人は病み系と勘違いしますよね?
そうなんですよ! 見た目のイメージでそうなるんですかね?ファッションとかも含めて見ると、サブカル的なものを感じるのかもしれないです。
“サブカル=病んでいる”って、実は結構ひどい誤解なんですけどね。
そうなんですよね。私もそう思われることに関して“どうなんだろう?”っていうのはあります。サブカルが好きな人はいろいろ楽しんでいて、意外とリア充ですから。
カノエさんの明るい側面は「心に愛論」からすごく感じます。歌始まりなのがアニメのオープニング主題歌っぽいじゃないですか。
“現代の音楽は最初にヴォーカルを持ってこないと聴いてもらえない”っていう噂を聞いて、ちょっとチャレンジしてみました。
《ココロにアイロンかけましょう》っていう歌声が響いた直後に、アニメのタイトルロゴが画面に映し出される感じがイメージできます。
なるほど!(笑) これはポップに戦う系のアニメのイメージなんです。…ポップなのかな? でも、とにかく戦う系ですね。
前向きなメッセージを届けるこういう曲は新しい作風だと感じました。
前向きなメッセージを真正面から歌うのが苦手で、今までしてこなかったんです。どうしてもひねくれた部分が自分の中にいつもあるので。でも、アニソンを作っていきたいので、その壁は乗り越えていきたいです。この曲は自分のひねくれた部分と折り合いをつけながら、苦手としていたことができたと思います。『盾と矛』(2019年12月発表)というアルバムの「花束の幸福論」のわりと明るい感じが、ライヴでやった時に良かったんですよ。お客さんもバンドメンバーも楽しそうだったし、私も楽しいのに気づいて“こんな曲がもう一曲あればいいなぁ”って思いながら作った曲でもあります。早くライヴでやりたいですね。
「心に愛論」の次に始まる「無垢なる主人のpuppet show」は、翳を感じる作風ですね。健気な女性主人公をイメージしながら聴きました。
これは前回のコンセプトアルバム『昼想夜夢』(2021年9月発表)の「アリスは夢を見ることが出来ない」からイメージを引っ張ってきたんです。“前作からつながっているよ”っていう意味で収録しました。だから、サウンドも通ずるものがありますし、《三月兎は放っておいて》っていうのも、「アリスは夢を見ることが出来ない」とのつながりを聴いて取れると思います。主人公は別々なんですけどね。「アリスは夢を見ることが出来ない」の主人公はどっちに行くのか迷いながら兎を追いかけている状態で、「無垢なる主人のpuppet show」の女の子は主人から旅立つ方向に進みながら成長しているんです。聴きながらいろいろ考察をしていただけたら嬉しいです。
ダークな雰囲気が漂うファンタジー的な曲ですね。
「ラフレシア」もダーク系のファンタジーですよね? 誰にも理解されない秘密の能力を持っている主人公のもとに理解者が現れるストーリーを想像しています。
まさに(笑)。自分自身を受け入れてくれる絶対的な存在が現れて、“この人と一緒だったら世界を壊せちゃうかも!?”っていうところまで行き着く曲になっています。
ラフレシアをモチーフにしているのが面白いです。
不気味なモチーフを出したかったんです。お花をモチーフとした曲は今までも出してきたので、今回のアルバムでもその続きをやりたいと思っていました。
そこでラフレシアを出してくるところが、なんともカノエさんらしいです。花モチーフと言えば、桜、タンポポ、チューリップとか、可愛い系が一般的なんでしょうけど。
挙げていただいた花、全部まだ曲にしたことないです(笑)。花言葉に恨みつらみの意味がある曲を作りがちなので。ラフレシアの花言葉は何だったかな? 結構ダークな感じだったと思います。
このアルバムを締め括る「秋の空またはオレンジの夕暮れ」も独特な仕上がりですね。ラブソングですけど、ロマンチックではなくて現実的で。しかも、変態エッセンスも入っているじゃないですか。
《はじめてのキスは涎の味/甘いだの酸っぱいだのマボロシ》って、なかなかパンチが利いています。
世の中の人が思っているカノエラナの変な曲と言えば、こういう感じなのかなと。1曲目の「思春期中二話症候群」が陰キャとするならば、「秋の空またはオレンジの夕暮れ」は陽キャなんですよ。“それぞれの主人公は同じくらいの年齢なのに、スクールカーストが違うだけでこんなに世界が異なっているのが分かればいいなぁ”と思って、アルバムの最初と最後に入れました。この2曲は歌い方も寄せています。
この曲を聴いたあとに幸せそうなカップルを見かけたら、“あいつら涎を交わし合っているんだよなあ”ってなりそうです。
でも、それは否定できない事実ですから。
そうなんです。この曲の前に入っている「無垢なる主人のpuppet show」と「ラフレシア」はファンタジーなので、最後に現実に突き落としてみました(笑)。でも、明るく終わる曲ですからね。
多彩な切り口で曲を作れたアルバムなので、今後、本当にアニソンのオファーが来るかもしれないですよ。
アニソンをどんどん作るようになったら海外のみなさんに聴いていただける機会も広がると思います。
自分自身が発信したものが広がって、それが気に入っていただけるっていうのは、めっちゃ嬉しいことなんですよね。聴いてくれた全員にティッシュを配りに行きたいくらい(笑)。
(笑)。アニメはどういう作品に特に思い入れがあるんですか?
3歳にならないくらいの頃から、『新世紀エヴァンゲリオン』とか父の影響でいろいろ観ていました。中でも『ルパン三世』が好きで、初恋の人は石川五ェ門です。『うる星やつら』のドタバタ感みたいなのも好きで、それは作る曲にも出ていると思います。私はアニメからめちゃくちゃ影響を受けていますね。自分の足でアニメオタクとして歩んで行くようになり、東京に来てからも現在進行形です。“今期のアニメはこれかぁ”ってポチポチ録画していくガチガチのアニメオタクなので。アニソンも大好きですから作品に少しでも寄り添える曲を作っていけたらいいなぁって思っています。
今後の活動に関しては10月にバンド編成での東名阪ツアーがありますね。
はい。バンド編成のライヴは今年の4月にやったのが3年振りくらいだったんです。今まではギターと私だけの弾き語りをずっとやりながら強化してきたんですけど、バンド編成はそれとはまた別のものになるんですよね。歌い方も変わりますし、CDとは違う部分も見つけていただけると思います。
取材:田中 大
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アルバム『歌楽的イノセンス』2022年8月3日発売
KING RECORDS
- 【初回限定盤】(CD+Blu-ray)
- KICS-94074
- ¥4,950(税込)
- 【通常盤】(CD)
- KICS-4074
- ¥3,300(税込)
『カノエラナ アルバムリリースバンドツアー2022 「思春期東名阪症候群」』
10/14(金) 大阪・Live House ANIMA
10/15(土) 愛知・Electric Lady Land
10/21(金) 東京・Spotify O-WEST
1995年12月4日生まれ、佐賀県出身シンガーソングライター。無類のアニメ好きで多くのアニメ作品から影響を受け、独特な着眼点から生まれる歌詞や世界観に合わせて色とりどりに変化する歌声と歌唱力で同世代を中心としたZ世代から圧倒的な支持を集めている。カノエラナ オフィシャルHP
「思春期中二話症候群」MV
「グラトニック・ラヴ」MV
「ヤコウレッシャ」MV
「キンギョバチ」MV
『歌楽的イノセンス』全曲トレイラー