UVERworld 『THE LIVE』というタイ
トルを掲げたライブに見た反骨精神、
「音楽には力があると証明できるチャ
ンスだと思う」

UVERworld “THE LIVE”

2022.7.21 日本武道館
ステージの中央から突き出しているサブステージが立方体状に幕で覆われ、隠されているんだから、誰もが予想したに違いない。ははーん、開演と同時に幕が落とされると、そこにTAKUYA∞(Vo)の姿があるに違いない、と。案の定、SEが流れる中、幕が落とされ、サブステージでTAKUYA∞が「AVALANCHE」を歌い始める。しかし、予想通りだったのはそこまでだった。次の瞬間、TAKUYA∞の背後の床が開き、ドラムセットがせり出してきたんだから、思わず身を乗り出さずにいられなかった。予想の斜め上を行く演出にびっくりしているうちにステージに勢揃いした彰(Gt)、克哉(Gt)、信人(Ba)、誠果(Sax, Manipulator)、真太郎(Dr)がTAKUYA∞の歌に音を重ね、UVERworldによる日本武道館2デイズ公演の2日目は、一気にヒートアップしていった。
「ぶちかましていくぞ! この中で一番暴れられるのは誰だ!?」
開演の1分前から立ち上がり、手拍子を始めていた満員の観客をさらに煽るようにTAKUYA∞が声を上げ、バンドは「I LOVE THE WORLD」「stay on」「PLOT」「ENOUGH-1」「在るべき形」といったロックナンバーを、前掲の宣言通り立て続けにぶちかます。ラスサビで彰、克哉、信人、誠果もパーカッションを打ち鳴らした「stay on」をはじめ、ラウドなサウンドの衝撃もさることながら、観客の気持ちを高揚させる、それぞれの楽曲が持つ力強いメッセージもまた、UVERworldならではだ。
TAKUYA∞
克哉
声を出せない観客の代わりにメンバーが“Wow Wow Wow Wow”とシンガロングした「stay on」の《君と一緒に行きたいんだ》という言葉や、「全員が心の声を出して!」とTAKUYA∞が言った「PLOT」の、《Won’ t be defeated(負けてたまるか)》というパンチラインは、どれだけ観客の気持ちを鼓舞したことだろう。
そして、「あと1ヵ月我慢したら、あと1週間、仕事を頑張ったらUVERworldのライブだ。そんな日々を経て、たくさんの人が集まってくれてることはわかってる。初めてUVERworldのライブに来たという人も、何度も来ているという人も、全員まとめて最高の夜を作っていきたい。UVERworldにしか作れない音があると信じてる!」とTAKUYA∞が語ってから演奏したエスニックな音色も鳴る「ENOUGH-1」では、世の中に溢れる虚飾や欺瞞をぶった斬りながら、(だから)《俺達のことを聴くんだろ?》とTAKUYA∞は歌い、ダメ押しで、「おい! 武道館、そうなんだろ!?」と観客に問いかけた。
信人
誠果
真太郎
『UVERworld “THE LIVE”』というシンプルなタイトルを掲げた今回の日本武道館2デイズ公演は、ライブがやりたいというメンバーたちの気持ちから急遽決まったという。開催1ヵ月半前の発表だったにもかかわらず、両日ともチケットが2、3分でソールドアウトしたことを、真太郎は感謝とともに誇らしげに語ったが、リリースライブやメンバーの生誕祭と違って、掲げるテーマが特にない、それこそ“THE LIVE”が、どんなセットリストになるのか興味津々だったというファンも多かったんじゃないか。1日目のセットリストはさておき、この2日目はバンドの反骨精神や臥薪嘗胆の経験を印象づける新旧の曲が多数選ばれていたように思うのだが、どうだろう?
テーマを掲げずに選んだ、これこそがバンドの本質と捉えることもできるが、そんなことを思ったのは、「在るべき形」を演奏する前にTAKUYA∞がシンガロングの代わりに精一杯のアクションで応える観客に対して、こんなことを語りかけたからだ。
「まだ声を出さなくてもいいんだよ。大丈夫。スポーツや格闘技はめっちゃ声を出しているけど、音楽だけ規制が厳しい。だからこそ、音楽には力があると証明できるチャンスだと思う。ダイブができなくても、声が出せなくても、ライブは楽しめるはずなんだよ」
もしかしたら、新型コロナウイルスの感染者がまた増え始めた現在の状況にTAKUYA∞をはじめ、メンバーたちは危機感を抱いているのかもしれない。かつてのように、また音楽が新型コロナウイルス感染拡大の原因とされ、ライブを奪われてしまうんじゃないか、と。音楽だけがまだ規制が厳しいのは、前述した偏見によるところも大きいんじゃないかと思うが、だからと言って、恨み言や愚痴を言ったりせず、その状況を音楽の力を証明するチャンスだと考えるのがTAKUYA∞をはじめ、UVERworldなのだ。もちろん、彼らだってそんな状況を不公平、不条理だとは思っているかもしれないが、だったらそれを跳ね返す力を自分たちのエネルギーにしていこう――「One stroke for freedom」で《向かい風も 足枷も いかなる時も反骨精神になって》と歌っているように、UVERworldはこれまでずっとそうやって活動してきた。そんなことはcrewの異名を持つ彼らのファンなら、もちろんご存じだとは思うが、「EN」で《これが人生の全て!》と表現した音楽に対する昨今の風当たりについて抱いた気持ちが、この日のセットリストには反映されていたんじゃないか。
それが筆者の見立てなのだが、ともあれ、タイトなアンサンブルで曲が持つ疾走感を最大限に表現した「在るべき形」で3年ぶりに無数の銀テープを飛ばして、序盤からハイライトと言える光景を作ったバンドは、さらに「シリウス」「誰が言った」「ace of ace」「Making it Drive」とロックナンバーの数々を披露していった。曲間でTAKUYA∞が語る言葉も、「コロナ禍になって以降、1日2公演を2デイズでやって来たから、体が強くなっちゃって。余裕なんだよね」とか、「ここぞとばかりにUVERworldってところをまざまざと見せてやる!」とか、自信に満ち溢れたものばかりなのだから頼もしいかぎり。
生きる意味、生まれた意味は自分で作るしかないというメッセージを、アンセミックな曲調に込めつつ、かつてcrewのみんなと同じ場所に立っていた自分は、そこからここまで上り詰めた、だからみんなにもできるはずだと叱咤激励する「Q.E.D.」で前半戦を終えると、中盤は「えくぼ」、8月17日にリリースする新曲の「ピグマリオン」――心の中の大切なことを歌ったバラードをじっくりと聴かせる。
そして、「Ø CHOIR」のダンサブルなビートで観客全員をジャンプさせると、「メンバーからの音のメッセージ!」とTAKUYA∞が他の4人にバトンを渡した「ANOMALY奏者」から後半戦がスタート。その「ANOMALY奏者」はフュージョンとラウドロックのミクスチャーなんて言ってみたいインストナンバーだ。誠果、信人、克哉、彰、真太郎と繋げていったソロのリレーで会場を盛り上げたところに前半の白を基調とした衣装から、黒を基調とした衣装に着替えたTAKUYA∞がステージに再登場。「最高の夜を!」というTAKUYA∞の雄叫びに誠果のサックスのブロウが応え、無数のレーザービームが飛び交う中、「ナノ・セカンド」になだれこむ。そして、そこに繋げた「Touch off」とアンセミックなロックナンバーの連打にジャンプで応える観客をさらにジャンプさせたのが、「ヤバい一体感をコロナ禍の中で作り上げるぞ!」とTAKUYA∞が声を上げた「IMPACT」。
バンドサウンドに落とし込んだEDMのダンスビートとメンバーによる“Wow wow wow”というシンガロングに煽られるように観客が大きく跳ねる! アリーナはもちろん、スタンド席のてっぺんまで揺れる、クライマックスにふさわしい光景の中、「音楽の真の力を探しにいこうぜ!」という歓喜に満ちたTAKUYA∞の声が響き渡った。
そして、コロナ禍の中、それまで誰にも奪われないと思っていたライブを奪われたとき、今一度見詰め直した自身の信念を言葉にした「EN」を、「今一番UVERworldが大切に思っている曲。心を込めて、この素晴らしい夜に歌いたいと思います」と披露。この曲の歌がスポークンワードになったのは、《願う以上に自分で変えろ!》をはじめ、溢れ出てきた思いがメロディに収まりきらなかったからだと想像するが、「次のライブでは絶対一緒に歌おうぜ。次がダメなら、その次でもいい。あきらんめなって話だ!」とTAKUYA∞は歌いながら、さらに胸の内から溢れ出てくる思いを言葉にしていった。
そして、バンドが経験した雌伏の日々を振り返りながら、自由でいたいと歌う曲が昨年12月にリリースした目下の最新アルバム『30』の収録曲だという事実に改めて驚かされる。「One stroke for freedom」から、誰でも1回生まれて、1回死ぬという死生観と、だからこそ後悔したくないという気持ちを歌ったロックバラードの「7日目の決意」と繋げ、ダメ押しで反骨精神をアピール。観客の手拍子の中、本来ならそこで終演を迎えるはずだった。
しかし、この日はUVERworldが普段やらないアンコールがセルフアンコールとして実現した。メンバーたちがこの日のステージにいかに大きな手応えを感じていたかが窺える。
「いつもはみんなが歌ってくれるけど、今日は1人で歌う歓びを楽しみながら歌います」(TAKUYA∞)
バンドがセルフアンコールに選んだのは、10年以上にわたって、歌い続けてきたバラード「MONDO PIECE」。《本当に出会えてよかったと思ってるよ》という最後の歌詞は、今この瞬間のメンバー全員の気持ちだったのだろう。どうしてもそれを伝えたくて、急遽、1曲追加したところは、まさにライブならでは。2時間を超える熱演を締めくくるには最高の選曲だったと思う。
「本当に最高の夜になりました! 今日のことは忘れません! 必ず今日以上の最高の場所でまた会おうぜ!」とTAKUYA∞は最後に再会を約束した。そして、終演後、UVERworldは再び『THE LIVE』と掲げ、8月9日からライブハウスとアリーナを回る10会場19公演のツアーを開催することを発表した。コロナ禍の世の中に抗おうという気持ちも少なからずあるのかどうか。いずれにせよ、バンドの背骨とも言うべき反骨精神は、ここに来てさらに強いものになっていっているようだ。
取材・文=山口智男 撮影=森好弘

アーティスト

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

新着