水瀬いのり

水瀬いのり

【水瀬いのり インタビュー】
どれも一貫して前を向いていて、
未来を諦めていない

約3年振りとなるアルバム『glow』にはTVアニメ『現実主義勇者の王国再建記』オープニングテーマ「HELLO HORIZON」をはじめ、田淵智也、TAKU INOUEなど豪華なクリエイターが楽曲提供した新曲9曲を含む全14曲を収録。コロナ禍という3年を経て感じた、当たり前にあることの大切さ、日常やアーティスト活動で感じた光が込められた、水瀬いのりにとっての新たな原点と呼べる作品となった。

私とファンとの絆の表し方は、
やはり“僕ら”が合っている

『glow』は3年振りとなるアルバムですが、どんなテーマで制作しましたか?

コロナ禍という時間を経過して、当たり前だった日常が戻りつつある中で、大切なものや大切にしたいものが、本当はとても身近にあったと感じました。我々の日常はたやすく失われてしまうものであり、毎日元気に過ごしていることが、どれだけかけがえのない時間で尊かったか。その中で得た大切なものを守っていきたいという気持ちを、このアルバムに投影したかったので、過去の作品と比べても一番、人間味や親しみやすさ、“側にいるよ”ということを感じていただけるアルバムにしたいと思って制作に取りかかりました。特にラストに収録したリード曲「glow」は、アルバムのタイトルでもあり最後の曲ということで、アルバム全体のメッセージを汲んだ楽曲にしたいと思ってコンペで選ばせていただきました。

「glow」は日常のさまざまなところに“輝き”があると歌っていますね。

自分が歩いている道には、忘れ物、落とし物、贈り物、いろんな物があって。その大きさや輝きは大小異なるし、人によって正解不正解は違っても、やはりそれらはかけがえのないものなので、私はそれに気づける人になりたいと思っています。迷った時はその光が道しるべになる…そんなテーマで岩里祐穂さんに作詞していただきました。

曲の最後でドンドンパンと鳴るところはライヴで盛り上がりそうですね。

デモを最初に聴いた時、ライヴの絵が見えました。ライトに照らされた私とバンドメンバーがステージにいて、それをお客さんが汗をかきながら観ていて、泣いてる人もいてくれたらいいな…という状況で、私が“最後の曲です”と言って歌うみたいな。そんな映像が容易に想像できたので、アルバムのゴールにすごく相応しいと思って選ばせていただきました。

「glow」のMVは洗濯物を干している日常を感じさせるシーンもあるなど、水瀬さんのさまざまな表情を堪能することができますが、水瀬さん的な観どころはどこですか?

日常シーンは太陽の光が輝き、夜のシーンではオレンジ色の灯火になって、私が歩く道も輝いていくというふうに、「glow」という楽曲を映像としても表現していただきました。その日常で見つけたいろいろな光が輝いている様子を表現したシーンと、ドレッシーな衣装で歌う夜のシーンとの対比を楽しんでもらえたら嬉しいですね。

今作にはUNISON SQUARE GARDENの田淵智也さん、TAKU INOUEさんが楽曲提供で初参加しています。まず、田淵さん作詞作曲「僕らだけの鼓動」ですが、間奏っぽい部分がなく一気に駆け抜けるかのような楽曲ですね。

私もライヴで歌うのが大変そうだなと思いました。でも、ひとつ前のデモはもっと詰まっていて、これでも間を作っていただいたほうなんです。まさしく疾走感という言葉がぴったりの流れるような感覚で、気づいたら連れて行かれていたみたいな(笑)。“準備はいい?”と尋ねる間もなく、有無を言わさず輝く世界に連れて行ってくれる、ロケットスタートの楽曲ですね。

曲名の“僕ら”というのが水瀬さんらしく、《僕だよ》という歌い出しもインパクトがあって。

私も斬新な始まりだと思ってすごく驚きましたし、歌詞がつく前のメロディーだけでは想像もしていなかった言葉を当てはめられていたからハッとしました。でも、私の楽曲では“僕”という一人称がわりと多く使われることからも、きっと私の歌声や表現が“僕”という言葉とすごくフィットしているんだと思うんです。《私だよ》ではなく《僕だよ》になっているところに、田淵さんの私への理解度の高さを感じますね。「僕らは今」と同じアルバムに収録されていることもあり、私とファンのみなさんとのチーム感と絆の表し方は、やはり“私たち”ではなく“僕ら”が合っていると改めて感じます。

田淵さんとはどういう経緯で?

田淵さんに曲を作っていただきたくて、以前から話は進めていたんですけど、タイミングがなかなか合わなくて、今回やっと念願が叶ってご一緒できたんです。事前の打ち合わせで、私の中でどこからがカッコ良すぎて、どこまでが可愛すぎるのか、決してキャラソンっぽくならない線引きを、田淵さんが時間をかけて探ってくださったので、迷いも臆することもなく、安心してレコーディングに臨むことができました。数多くの方の楽曲を手がけていらっしゃる田淵さんの中に、新しいサンプリングじゃないけど、私の名前も刻んでいただけたと思って、とても光栄なレコーディングでした。

その「僕らだけの鼓動」につながる1曲目のインスト「sunrise glow(overture)」には時計の音が入っていますが、あれにはどういう意味が?

時計の針が進んで夜明けを迎えて、新しい陽が昇ってくるようなイメージです。最初は静かですけど、徐々にいろんな音が重なって、何もなかった世界に何かが重なって入っていくことによって音楽が出来上がっていく。私自身も最初はソロ活動だと思っていたけど、周りに大勢のスタッフがいて、ファンのみんながいて、それがどんどん大きくなっていったので、そういうアーティスト活動の軌跡を「僕らだけの鼓動」の編曲もしてくださったebaさんが音で表現してくれました。「僕らだけの鼓動」だけではなく、その次の「We Are The Music」にもつながる、アルバム前半を象徴したイントロになったと思います。

その「We Are The Music」はTAKU INOUEさんの作詞作編曲ですね。

“音たち”の物語というか、音符たちに見えている世界。私たちが生み出していく音楽も、呼吸さえも、メロディーやリズムになる。つまり、“生きているだけで奏でられているものがあるよね”という、ただ歌うだけが音楽じゃなく、ただ話しているだけでも音楽になる。それくらい大きな世界で、音を楽しむことを歌った楽曲になっています。

トリッキーなサウンドがTAKUさんらしいと思いました。

ビートをゆったり刻むと思いきや、サビはわりと変則的だったりしますからね。練習中もグルーブにうまく乗れなくて、課題を抱えながら本番のレコーディングに臨んだので、もっと手こずると思っていたんですけど、思ったよりスムーズで、いい意味で拍子抜けしてしまいました(笑)。

TAKUさんも念願が叶ったひとりですか?

はい! kz(livetune)さんと以前にご一緒させていただいたんですけど、同じようなミュージック感があると思ってすごく気になっていたんです。実際にTAKUさんがディレクションをしてくださったのですが、すごくやわらかい印象の方で、程良い距離感というか、親しみやすく話しかけてくださり、とてもリラックスして臨むことができました。
水瀬いのり
アルバム『glow』【初回限定盤】(CD+Blu-ray)
アルバム『glow』【通常盤】(CD)

OKMusic編集部

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