Dortmund Moon Slidersがmacico、ヤ
ジコ、DJ陣とともに繰り広げた音空間

CHAMPAGNE SUPERNOVA 2022.6.10 clubasia
Dortmund Moon Slidersが自身主催のリリースパーティー『CHAMPAGNE SUPERNOVA』を6月10日に開催した。形態としては4ピースバンドだが、楽曲制作のみならず、映像制作、アートディレクションなど、バンドに関わるすべてのクリエイションをメンバー自ら行っているため、“東京発4人組クリエイティヴチーム”と名乗っている彼ら。
今回のイベントは1stフルアルバム『Life Is Beautiful』のリリースを記念したもので、Dortmund Moon Sliders、YAJICO GIRL、macicoがライブを行ったほか、星原喜一郎(New Action!)、遠藤孝行(New Action!)、U NGSM(SWIMS)、斎藤雄(TIPS)、hisabor(東京定期便)によるDJもあり、絶え間なく音楽が鳴り続けた。DIY精神溢れるDortmund Moon Slidersならではの大人の秘密基地のような空間が金曜の夜、渋谷・clubasiaに生まれたというわけだ。
macico
ライブアクトのトップバッターは、小林斗夢(Vo)、堀田コウキ(Gt)、yukino(Key)の3人組グループ、macico。清涼感溢れる「bloom」を挨拶代わりに演奏した。R&Bにダンスミュージックを取り入れたサウンドはモダンで、小林の声質も相まってどこか懐かしく感じられる。普段はバンド編成でライブすることもあるが、この日はサポートメンバーを入れず3人で出演。ベースとドラムがいない代わりにマニピュレーターを兼ねている堀田が機材を操作してビートを出し、曲と曲をシームレスに繋げるある種クラブミュージック的なスタイルだ。
macico
「それぞれの楽しみ方で自由にゆったり、一緒に踊りましょう」(小林)と促しつつも、メンバー自身もリズムにノリながら心地よさそうに演奏している。セットリストが進むにつれて観客の身体もほぐれていき、「if」では曲に合わせて手を左右に振る観客の様子を見て、小林が親指を立てる場面もあった。ファルセットを中心としたボーカルを筆頭に浮遊感のあるサウンドでまとめた「aloe」、シックでネオソウル的なミディアムバラード「hanataba」などを経て、観客の手拍子とともにアッパーな「essay」でフィニッシュ。「みなさん必ずライブハウスでまたお会いしましょう」と約束を交わしたのだった。
続いては5人組バンド、YAJICO GIRLが登場。ライブ序盤の「VIDEO BOY」から、音はもちろん、ステージ全体を使って観客の心をつかむようなパフォーマンスをするメンバーの姿が目立った。四方颯人(Vo)の歌声も一際力強い。そのまま夏らしいダンスチューン「雑談」に入るが、ここで榎本陸(Gt)のギターネックが折れてしまったことが判明。前代未聞の出来事にメンバーも驚きつつ笑っているが、榎本、「終わってから悲しむけど、今は楽しくやろう。イェア!」とのことで、ギターを替えてからも(さすがに身振りは控えめになったものの)アグレッシブなプレイを見せてくれた。
YAJICO GIRL
演奏を重ねるごとにフロアは彼らの色に染まっていく。すっかり心を開いた観客も思い思いに身体を揺らすなか、四方は「トラブルもありましたが、やっていくといつもと同じように楽しいですね」と実感を語った。この日YAJICO GIRLは、水面をたゆたうような音像と武志綜真(Ba)による泳ぐベースラインが特徴的な「Surfing」、古谷駿のダイナミックなビートや四方のカウント、吉見和起(Gt)の熱量高いプレイから始まった「2019」などを披露。なかでも、5月18日にリリースされたばかりの最新曲「Airride」では、実の詰まった豊かなサウンドを響かせた。
Dortmund Moon Sliders
トリはDortmund Moon Sliders。このリリースパーティーの主催者である彼らは2019年5月に活動を開始するも、曲をいくつか制作し、いざライブをやろうと思ったタイミングでコロナ禍に入ってしまったため、ライブ経験がまだ少ない。途中のMCではPETAS(Vo/Gt)が「今日が初ライブみたいなもんなんですけど、たくさん集まってくださりありがとうございます」と挨拶する一幕もあったが、ライブがなかった分、この日を待ちわびていた観客の高揚感が開演前からフロアには漂っていた。「Mary Lou」で爽やかに幕開けたあと、TATSU(Dr)のビートで曲間を繋げ、「Hakuchumu」を続けることでスタートダッシュを切ったDortmund Moon Sliders。やっとライブができた喜びが一番にあるのか、笑顔を浮かべるPETASを筆頭にメンバー4人ともいい表情をしている。
Dortmund Moon Sliders
バンドのサウンドは昨今のシティポップ・リバイバルとも共鳴するものだが、イベントタイトルからも分かるように、彼らの内にはUKロックへの愛もある。MARU(Gt)のメロディアスなラインやJIPON(Ba)のプレイに滲むロックバンド感をよりダイレクトに味わえること、そしてUKロックというよりはファンクなどがルーツにありそうなTATSU(Dr)のビートがボーカル&他楽器のフレージングと有機的に絡んでいく様を、直に体感できることがライブならではの魅力だ。また、前述の通り、映像制作も自分たちで行っているということで、彼らのライブ中にはスクリーンが登場し、オリジナルの映像が投影された。例えば、JIPONがシンセベースを弾く「Ame」をしっとりと演奏している最中にはスクリーン内で雨が降っている。
この日はアルバム『Life Is Beautiful』のリリースパーティーということで、収録曲10曲のうち、8曲を披露する大盤振る舞い。ミラーボールが星のような光を散らすなかで演奏した人気曲「Night Walk」、クラッシュシンバルがみずみずしく響くなかバンドが白熱する中盤の展開が印象的だった「Jubilee」、風の抜けるようなアンサンブルに乗ってPETASのロングトーンが気持ちよく抜けていった「Paralyzed My Tongue」、そして「Weekend Sun」を経て、本編ラストには、アルバムのラストチューンでもある「Life Is Beautiful」を演奏した。待ち切れなかったのか、一旦捌けたものの即再登場してからのアンコールではクーラ・シェイカーの「Hush」をカバーし、勢いよく走り抜けて終了。充実のリリースパーティーを「また会いましょう!」(PETAS)と初々しく締め括ったのだった。

取材・文=蜂須賀ちなみ  撮影=junyaigarashi

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