北園涼

北園涼

【北園涼 インタビュー】
暗い世の中で再び灯りをともそう
という意味での“Ignition”

自分の大切な人を心から愛して、
愛される人になってほしい

それだけのメッセージがこもっていると聞くと、表題の「Ignition」が今までになく壮大なサウンドになっているのも納得です。

そうですね。最初に“Ignition”というテーマを決めて、どの曲を表題にするかはすごく迷ったんですけど、サビ感だったり後ろに鳴っている音たちに、未来へと向かう感じが一番したのがこの曲だったんです。

ちなみに、こんな灯りが消えたような世の中で、もう一度灯をともすために北園さんが心がけていることって何でしょう?

気持ちを“取っておく”ということでしょうか。「Ignition」の歌詞で言うならば、ガレージに停めた車にキーを刺しておく。その詞には、後ろ髪を引かれるという想いと同時に、また走れるように取っておくという意味もあるんですよ。僕の場合だったら“マスクを取って、みんなで声を出すライヴがしたい”という願いは未だに取ってあるけど、今の時代に合わせたライヴもしないといけないという気持ちもある。その両方を大事にしていくことが、もう一度走れるようになるための自分なりの答えかな?

時が来れば走れるように、いつでも準備をしておくことが大事だと。アツいロックチューンばかりではなく、これまでとは少し趣の異なる楽曲がアルバムに収められているのも、その一環かもしれませんね。特に「sad day」は打ち込み要素が強くて、それでいて重低音が利いているというのも面白い。

僕の低音好きをサウンドプロデューサーの方が分かってくださっているんでしょうね(笑)。ただ、バラードの作詞をやりたいとは、ずっと考えていたんですよ。「sad day」はいわゆる応援歌で、悪いことって何かと重なったりするじゃないですか。でも、そんな時でも落ち込むんじゃなく、“仕方ないよね”っていう気持ちになってもらえたらいいなと。流れに身を任せるというか、そんなメッセージのある楽曲にしたいと思いながら作詞していきました。

特に《夢を叶えた人の裏で 今日も誰かが泣いてる》というフレーズは、気づきたくない真実だなとドキッとしました。まして俳優のお仕事なんて、オーディションで受かる人がいれば落ちる人もいるわけですし、この歌詞を実感することも多いのでは?

まぁ、僕自身は落ちても“今回は合わなかったんだ”と切り替えられるタイプですけど、わりと楽に受けたほうが良い結果が出たりするし…まぁ、人生何から何までうまくいくわけじゃないですから。自分の知らないところでいろんなことが起きていたりもするし、そこに目を向けたり感じるだけで人ってやさしくなれるんじゃないかと思うんです。

そこから続く「I'll buy」はアコースティックかつエモーショナルなラヴソングで、恋愛感情を描くのに“buy(=買う)”という単語を使うのが斬新だなと。

そこはひとつのこだわりで、“あなたの嫌いなものや負の感情を僕が全部請け負いたい”という意味で“buy”を使っているんですよ。そして、あなたの目に映るもの全てが美しくあってほしいという、本当に純粋なラヴソングですね。こういう楽曲が受け入れられるのかという不安もあったんですけど、そこに怯えていたらいつまで経っても作れなくなってしまうので、このタイミングに書かせてもらいました。

ただ、そんなふうに苦しみを請け負いたい、目に映るものを美しいもので満たしたいと願う存在って、恋愛対象に限らないのでは?

身近な人は、みんなそうであってほしいですよね。ファンはもちろん、この曲を聴いてくれた人は、みんなそう。要は一緒に幸せな時間を過ごしたいってことですよね。ネガティブな想いを塗り替えられるくらい楽しい時間を一緒に過ごしたい、それくらい愛している…という意味です。

ライヴなんて、まさにそんな時間ですよね。そういう意味では、ファンへの愛も込められていると。

アルバム最後の「ALIVE(Acoustic ver.)」も、いわばファンサービスですからね。今の状況的に静かに聴けるライヴのほうがいいからと、アコースティックライヴをやってみたらすごく評判が良くて、“アコースティックバージョンのアルバムを作ってください”っていう声も増えたんですよ。“じゃあ、アコースティックの曲をアルバムにも入れよう!”という話になって、どの曲にしようかと考えた時、アコースティックライヴでやってみて一番楽しかった曲が「ALIVE」だったんです。編曲を担当してくださった中嶋康孝さんのアレンジがすごく曲に合っていて、バンドサウンドがアコースティックになった時の変化も、一番大きい印象があったんですよね。

前作『Frontier』の収録曲ですが、ポジティブな意志を綴った歌詞も今作のテーマに馴染んでいますしね。

今作は本当に作詞に悩んで作ったアルバムなので、歌詞の中身は特に聴いてほしいんです。“限られた時間”というものをテーマに、僕の中にある大事な言葉たちを散りばめさせてもらったから、そういったものを意識してもらうことで、何か少しでもみんなにとってプラスになってくれたらいいなと。あとは、「I'll buy」でも歌っているように、自分の大切な人を心から愛してほしいし、そして愛される人にもなってほしい。なので、そんな相手を見つけてほしいです。

7月のツアーでは全国5都市を回りますが、全公演2部制で1部はファンミーティング、2部はライヴという構成だとか。

しかも、東京公演でのライヴはフルバンドになるので楽しみですね。バンドでしかできないことをやりたいので、バンドメンバーには苦労をかけるんじゃないかな?(笑) せっかくフルバンドでやる以上は、楽器の皆さんにもガンガン目立ってもらいたいので、そういうコーナーも曲の間には作りたいです。

「fake」の間奏にはメタル系のギターソロも入っていますし、そのへんも個人的には楽しみです。今回は作詞に注力されましたから、次は作曲にも期待したいですね。

ただ、僕は楽器がそんなに弾けないんですよ。なので、今はとにかくパソコンをいじりながら、“どんな音出るの、これ?”ってやってます(笑)。やっぱり俳優でいる期間のほうが今のところ長いから、もう少し音楽を考えることに時間を割いていきたいのは確かなんですよね。実際、今やっている大型公演のライヴメンバーにも音楽に特化した人がいて、彼らと話す機会もすごく増えたんですよ。そこで分からないことを訊いてみたり、分かるようになれば、また別の疑問が生まれてくると思うので、そうやって永遠に成長していきたいですね。

取材:清水素子

アルバム『Ignition』2022年6月29日発売 日本コロムビア
    • COCX-41790
    • ¥3,300(税込)

ライヴ情報

『北園涼 LIVE TOUR 2022 「Ignition」』
7/02(土) 福岡公演・ESPエンタテインメント Live Hall EMY
7/03(日) 福岡公演・ESPエンタテインメント Live Hall EMY
7/09(土) 神奈川・横浜Baysis
7/17(日) 大阪・江坂MUSE
7/18(月) 愛知・SPADE BOX
7/23(土) 東京・代官山UNIT
7/24(日) 東京・代官山UNIT
7/30(土) 東京・赤羽ReNY alpha
7/31(日) 東京・赤羽ReNY alpha

<両日共通>
1部:開場13:30 / 開演14:00
2部:開場17:30 / 開演18:00
<内容>
1部:ファンミーティング
2部:LIVE

北園涼 プロフィール

キタゾノリョウ:1992年生まれ、鹿児島県出身。14年にデビューののち、ミュージカル『忍たま乱太郎』シリーズ、ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ、MANKAI STAGE「A3!」など多くの舞台作品に出演。19年2月にはアーティストとして1stシングル「Long way to Go」を発売し、同年10 月には初のワンマンライヴも行なった。北園涼 オフィシャルHP

「I'll buy」

「sad day」

「believe」

「Awake (Solo ver.)」

「fake」

「Ignition」

北園涼から
「Ignition」の楽曲をご紹介!

OKMusic編集部

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