Questionだらけの世の中を穿つ、シン
プルなAnswer『GRANRODEO LIVE TOUR
2022 "Question"』追加公演千秋楽レ
ポート

実に3年ぶりとなるライブツアー『GRANRODEO LIVE TOUR 2022 "Question"』の追加公演の千秋楽が2022年6月5日(日)に東京・ZeppDiverCityにて開催された。3月末に発売された9thアルバムを引っさげての、全国7都市15公演を巡った約3ヶ月にも渡るツアーの最終日ということもあり、2階には追加の立ち見席が設けられるほどの大入りでこの日を迎えた。以前、SPICEではアルバムリリース時に2人にインタビューを行なっており、その際に「Questionツアーと銘打つからには、必ずAnswerを見つけなければならない」とKISHOWは語ってくれた。果たしてこの3ヶ月の巡業で2人はどんなアンサーにたどり着いたのか。

ライブの話をする前に、まずはアルバムについての話を軽くしたいと思う。「9枚目だから”Q”なんだよね!(笑)」といったフックから話は始まり「最近は特に色んなことについて考えさせられるというか、常に「?」が付いて回るような時代になってしまったな、と思うし……」と、アルバムのタイトル”Question”に込めた想いを以前に語ってくれていた。確かに振り返れば、前例のないことの連続で、色々と難しく考え込んでしまうような世の中だったように思う。それに対するGRANRODEOのアンサーはシンプルで我々に「Take it easy」と語りかけているようなステージだった。
ステージ上で”GR”の文字が光ると、懐かしい8bitサウンド風の出囃子に乗せてGRANRODEOの2人が姿を現す。まるでRPGの新たな”ぼうけんのしょ”の1ページ目を開いたかのような演出に感じたのは1曲目が「BEFORE the DAWN」だったからかもしれない。新たな旅の始まりを予感させるようなファンファーレの音が場内に鳴り響く。「この曲はほぼインストみたいな所があるから、いつもちょっと手持ち無沙汰になっちゃってステージ上でどうしようなんて考えてるんですよ(笑)」と冗談交じりでKISHOWが語っていたのを一瞬思い出したが、この日は長かったツアー千秋楽の”終わりの始まり”を噛みしめるように、会場のファンの顔を見渡していく姿が印象的だった。
続く2曲目は「時計回りのトルク」。時にメロウに、時に激しく。円熟味のあるGRANRODEOの魅力がこれでもかと詰まった楽曲であるが、同時にKISHOWにとっては「久々にド直球でカッコいい曲が作れた!という手応えを感じた」曲でもあるのだという。e-ZUKAがフレットの光るVシェイプのギターに持ち帰ると「silent DESIRE」のイントロのベースが聞こえてきた。3曲続けた所でKISHOWが上着を脱ぐと「ごきげんよう、昨日(の公演)よりも多いんじゃない?」と満員御礼の挨拶を行う。「帰りたくないよ〜!と惜しんでもらえるくらいに楽しい空間にしたいと思います。とにかく、ただただ楽しくやりましょう!」と語り、「それじゃ、e-ZUKAさんにバトンを繋いでみようかなと……」と話を振ると、まさにリレーの選手のように走りながらバトンを受け取るジェスチャーでおどけてみせるe-ZUKA。2人の息はバッチリだ。「今日は座席ありのライブなので、皆さんの顔がよく見えます!最終日なので噛みしめるように楽しみたいと思います!」と意気込みを語ってくれた。
また「足掛け3ヶ月ほどツアーを回ってみて気付いたことがあります。このツアーを”Question”と銘打ったからにはAnswerを見つけなければならないと思っていましたが、ボクたちにとってのアンサーはやっぱり皆さんだなと。そしてこんな世の中ですが、神も仏もいるもんだなと思える楽しいツアーでした」とこの3ヶ月を振り返り、4曲目の「カミモホトケモ」を披露。続く「ロンリーファイター」ではレゲエ調のリズムに合わせて照明もジャマイカンなカラーリングで場内を照らし出す。「wonder color」はe-ZUKAの軽快なギターソロから始まり、思わず踊りだしたくなるようなベースのスラップが絡みつき、ダンサブルなナンバーが続く。極め付きの「恋はハチャメチャ」は事前に予習の時間も設けられ、歌謡曲のようなルンバのようなムーディーサウンドに合わせて「皆さんなりに色っぽくね!」と指示も入ると、サビでフリを合わせて踊る。照明もピンク一色に染まり、e-ZUKAからの投げキッスも飛び交った。
8曲目は一変からは、バイクの排気音のような唸るベースから始まる「Scorn」ではKISHOWのハイトーンのシャウトも飛び出し、続く「Give me your eyes」とまるでアメリカのハイウェイを走り抜けるようなパワフルな選曲で応じる。9曲続けた所で再び流れを振り返り「竹をスコーンと割ったようなe-ZUKAさんのオマージュが効いた曲だから「Scorn」ってタイトルにしましたけど、改めて変な曲だよね(笑)」とKISHOWが語りかけ、「本当だよ!「我々ハ宇宙人デアル」とか「よし!イントロでバイクの音入れちゃお!ブルンブルン!」とか1人で家でやってんだから(笑)」とe-ZUKAが笑う。ここでサポートメンバーの紹介も挟み、3ヶ月を共にしてきたドラムのSHiNへは「五七五でツアーの思い出を振り返って」とe-ZUKAからの雑なフリにも「ツアーして体重6kg 増えていた」と返すと「分かる!ツアーあるあるだよね。全国どこへ行っても美味しいものがあるんだもん(笑)」と100点満点の返しに思わずe-ZUKAも一本取られた様子。ベースの瀧田イサムも「ボクも札幌公演からずっとお腹いっぱい!」と続くと「いつもこうやってフザケてるけど、GRANRODEOのステージに立てることが幸せだし、今回はちゃんとツアーを完走できそうで嬉しい!」とマジメに語るも「そんなこと言ったって、これまでの事が帳消しになるワケじゃないんだからね!」と瀧田に対する2人の塩対応もご愛嬌(笑)。「せっかくだから今日もみんなにアンケートを取りたいな!」とライブはオルスタ派?座席派?や小麦派?お米派?というのを学級会スタイルで目を閉じて挙手を促すと、最後は”ふっかつの呪文”で、起立・気を付け・礼でMCパートを締めた。
続く10曲目はリクエストコーナーということで、各公演でGRANRODEOの楽曲にまつわるクエスチョンをファンから募り、それに答えつつ楽曲を披露するというコーナーが設けられていた。今回は「ずっとこの曲の歌詞が気になっていました。相手に否定的な想いを抱きつつも障害を乗り越えていくのってどういう心境なのでしょうか?」と質問を読み上げると「この曲は実は締め切りのギリギリに思いついて、2時間ちょっとでRecまで一筆書きで作ったのよ」とe-ZUKAから制作秘話も飛び出す。「多分そんなだから、なんか何処かで聞いた事あるようなダンサブルな曲に仕上がってるのかな?」と言うKISHOWに「何の曲にも似てない、オリジナリティ溢れるこの曲を聴いて頂きましょう!」とe-ZUKAが被せ「Fake lover’ s true heart」を披露した。楽曲の制作時からも2人の和気藹々としたやりとりが垣間見える会話だが、やっぱり演奏時も何より楽しそうにしている様子にこちらも笑みが溢れる。
11曲目はアルバムのリード曲でもある「Question Time」。e-ZUKAなりの今っぽいサウンドも吸収しつつ制作された意欲作だ。「思い通りじゃなくても」、「なんとなく消したストーリー」とバラードの流れに持ち込むと気付けばライブも終盤戦に突入している。改めて、ここまで少しずつMCパートを挟みつつも、立て続けにMCなしでバンバン演奏していくバイタリティの高さに驚かされるが、例に漏れず「今日は日曜日の夜ですけども、明日のことなんか考えず、今この時のことだけを考えて、ここから更に4曲続けてツアーの集大成に入りたいと思います」と宣言。
14曲目の「SUGAR」では「前略中原中也様、ボクの汚れちまった心はZeppが浄化してくれたみたいです!」とファンに向けて感謝のアピール。「SEED BLASTER」ではラストに向け、ギアを更に入れ直し、ツインペダルのバスドラムがドコドコと鳴り響き、KISHOWはマイクスタンドを投げ捨て、パフォーマンスの激しさも増していく。「NO PLACE LIKE A STAGE」ではお客さんの首が取れんばかりに激しくヘドバンする様で会場が埋め尽くされる。「Once & Forever」ではいよいよラストスパートといった所だ。
「ツアーが3年ぶりということは、トレジャーを探しにいくのも3年ぶりだし、プレジャーを皆さんから貰ったり、ボクらからおすそ分けするのも3年ぶりということなんですよね」とKISHOWが語りかけると「最後に我々のQuestionを爆発させましょう!現在進行形の今日という日が、皆さんにとってのアンサーであってほしい!」と願って「Treasure Pleasure」を披露。この時勢もそうだし、この日のライブ、延いてはこのツアーに込められたメッセージは全てこの曲が語ってくれているのではないだろうか。e-ZUKAのギターとKISHOWの歌声が語りかけてくる言葉の重みをズッシリと感じる、堂々たる最後の1曲であった。
1度メンバーがステージから去ると、どこからともなく「ア・イ・シ・テ・ル」のサインのように「グ・ラ・ン ロ・デ・オ」のリズムで拍手が起こると、しばらくしてステージ上の”GR”の文字も場内に合わせて点滅させる照明スタッフに粋に感じる。ツアーグッズを身にまとった4人が再び現れると「セツナの愛」を披露。続けて7月30日(土)31日(日)の2DAYSで河口湖ステラシアターで開催される『GRANRODEO LIVE 2022 SUMMER L△KE "Hot OH〜!! 河口湖!!”』の告知が改めてされた。また結成15年を記念したアニバーサリーブックの発売、お渡し会や、7月1日で丸10年を迎えるファンクラブ”ロデオ組”のファンクラブ限定イベントなど、めでたい告知が目白押し。「告知が多いよねまったく、言われなくてもHPをチェックするっての!」と毒付くのもまた2人らしいが、「この3ヶ月、共に過ごした時間を心に留めておいて欲しい。そしてボクと周りの人たちがいつまでも健やかで幸せに過ごせますように」と「HAPPY LIFE」を披露した。最後に「あと1曲やるか!SHiNちゃんドラムちょうだい!」と最後まで全力投球の「シャニムニ」で文字通りの完走を果たす。
鳴り止まない拍手に応じて、頭にタオルを巻いたKISHOWが再登場すると「OK、お前らの気持ちはよ〜く分かった!まだやれんのか?!」とダブルアンコールの「Can Do」で締める。「もっと!もっと!」と最後まで客席を煽り、3年前のツアー『FAB LOVE』ではアキレス腱を切ってしまい、止むを得ず追加公演を中止にしてしまった分も取り返す熱量で、最後まで駆け抜けた。だからこそ余計に「健やかで幸せに」の言葉に重みが生まれるのだが、それはさておき「17年目のGRANRODEOですけど、まだまだ応援しがいがあると思うよ。オレら全然辞めるつもりも無いので」とサラッと言えるKISHOWに胸がアツくなる。何よりこんなにも全力のアクトの後だから余計にそう思う。最後に2人はステージ上で熱い抱擁を交わし、その絆を確かめた。
実に3年ぶりのツアーを終え、活動17年目に突入したGRANRODEO。特にこの3年間というのは激動の世の中ではあったものの、良い意味でGRANRODEOは何も変わらず、以前同様のありのままの姿でいてくれた点がやはり非常に印象深かった。アルバム『Question』のリリース時のインタビューで「GRANRODEOは部活みたいな感覚」とe-ZUKAが語っていたが、活動の根底にあるそんな”部活感”をヒシヒシと感じるステージだったと思う。MCでは、じゃれあうようにすぐフザケ出す2人の姿が可愛らしくもあり、くだらないのだが、何より2人が1番この瞬間を全力で楽しんでいるというのが手に取るように分かり、こちらも嬉しくなる。冒頭のMCで「久々のライブですが、ただただ楽しい時間を一緒に過ごしましょう!」と語っていたが、やはり2人が率先してエンジョイしている姿を目の当たりすると、スカッとした爽快感すら感じる。そんな2人の姿を、同じ部員として、もしくは部活のマネージャーとしてまだまだ、もっとずっと見ていたいなという気持ちになった。
「Questionツアーと銘打つからには、必ずAnswerを見つけなければならない」とKISHOWが語っていたが、自分がこのステージからもらったアンサーはまさにそんな事だった。”部活感”というキーワードはGRANRODEOとしての原点であり、存在理由でもある。17年目に突入した今でも、これだけ仲睦まじく活動を続けていられるのは、GRANRODEOという存在が2人にとって”童心に戻れる場所”だからだし、また年齢を重ねるにつれて、そういったものへの憧れが増していくというのは世の男性の皆さまにはきっと分かってもらえるはずだ。好きなことに対して全力で無邪気になれるオトナのオトコはカッコいい。つまりボクにとってのアンサーはそんな2人に対する”憧れ”だった。皆さんは一体、どんなアンサーを持ち帰っただろうか?
対する GRANRODEOのアンサーはシンプルだ。言葉の力というものはもちろんあるけれど、彼らは音楽家なワケだし、トークであれこれ湿っぽい話を語るよりも「ただただ楽しんで!」と音楽の力で語りかけているのはセットリストの曲数からも感じ取れるし、誰よりもステージ上をパワフルに駆け巡る姿で我々に示してくれていた。どんな未来も今というこの瞬間から続いていく。だからこそ「この瞬間をとりあえず、ただただ楽しもうよ!」というメッセージと受け取ったし、それが2人からのアンサーだったように私には思えた。刹那的かもしれないが、決して短絡的ではない。なぜならば、そうした時間の積み重ねこそがGRANRODEOが過ごしてきた17年なのだから。だからボクらは大船に乗った気持ちで身を預ければいい。いつだって今を最高にエンジョイできる2人と過ごす空間が、これから先も退屈なワケがないじゃないか。
レポート・文:前田勇介

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