作・演出 石丸さち子×鈴木勝吾主演
! 生きる喜びや輝きを見つけていく
物語、S-IST Stage『ひりひりとひと
り』が開幕へ

舞台『ひりひりとひとり』が2022年6月10日(金)からよみうり大手町ホールで開幕する。

 
ミュージカル『Color of Life』(作・演出)、舞台『BACKBEAT』(翻訳・演出)、舞台『キオスク』(演出)、ミュージカル『マタ・ハリ』(翻訳・演出)、ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』(演出)など、多数の作品を熱量高く世に送り出してきた石丸さち子。本作は、石丸が作・演出をする舞台演劇作品を、東映プロデュースにて実施するという企画「S-IST Stage(エスイストステージ)」の中で作られた。
 
初日を前にした6月9日(木)、ゲネプロ(総通し舞台稽古)が行われ、キャストらのコメントも発表された。 
『ひりひりとひとり』のゲネプロの様子
ーー初日を迎える今の心境は?
 
石丸さち子(作・演出):2020年、緊急事態宣言下で公演中止になった作品が、こうして今初日を迎えようとしていることに、感謝でいっぱいです。一緒に企画を立ち上げ、東映のプロデューサーとご縁をつないでくれた鈴木勝吾さんに。渾身で物語を立ち上げてくれる俳優たちに。この物語に感動したと、作品を支えてくれるクリエイターたちに。作・演出家としては、はじめてお客様の前で作品が息をする瞬間を前に、大きな緊張感を覚えていますが、ともに作った仲間を信じて、その時を迎えようと思います。
鈴木勝吾(工藤春男役):オリジナル作品を観劇してもらう、というハードルの高さを感じています。その中でも、この作品を届けることができるのが単純に嬉しいですし、誉れです。モノを創り届ける、高揚を頼りに仲間を信じて創ってきました。どのように皆様の目に写るのか今から楽しみでなりません。
梅津瑞樹(ぴーちゃん役):波間を揺蕩うような、落ち着いた心持ちです。稽古場で積み重ねてきたことが、劇場でどのように受け取ってもらえるのかが楽しみで仕方ありません。そういえば、以前よみうり大手町ホールで上演した違う作品の折もそのようなことを考えながら小屋入りしたのをふと思い出しました。
牧浦乙葵(りぼん役):ただただドキドキしています。稽古に参加した初日、もう既に半分出来上がった『ひりひりとひとり』の世界を見ました。美しい音と生きたお芝居が私を『ひりひりとひとり』の世界に引きずり込みました。そこにりぼんとして入ってもがいた稽古期間。劇場入りして、音と光が合わさって、劇場にお客さんが来てくれて、感じてもらってやっと完成。思いの強い作品だからこそ緊張しますが、楽しみです。
『ひりひりとひとり』のゲネプロの様子
百名ヒロキ(玉木賢役):稽古初日からずっと自分の俳優人生にとって、とてもこの作品に携われることを俳優冥利に尽きる時間だと思っていたので、劇場でお客様と共有することが本当に楽しみです。
周本絵梨香(伊達夏子役):みんなで励まし合い、協力して白熱した稽古を重ねてきたので、本番の舞台上でどのようにそれが乗るのか楽しみです。
塚本幸男(西郷さん役):稽古を約1ヶ月、毎日ヘトヘトになりながら稽古をしてまいりました。初日にその成果をお見せしたいです。石丸ワールドかな? 本当、仲の良いカンパニーです。みんなで助け合いながらつくってきました。このカンパニーで最後まで走り抜けられるよう頑張ります!
森大輔(鉱石ラジオの音楽家役/音楽・演奏):とても楽しみであると同時に、作中の音楽がどのような印象でお客様に届くのか、まだ予想しきれません。客観的な立場からバランスを取るというよりも、とにかく主人公である工藤春男のそばにいることを強く意識したいと考えています。
『ひりひりとひとり』のゲネプロの様子
ーー作品の見どころを教えてください。
 
石丸:『ひりひりとひとり』は、傷ついた心と心が出会って、勇気を持ってつながりながら、支え合いながら、絶望を超えて、生きる喜びや輝きを見つけていく物語。そして、生きにくい時代でも、悲しみの多い時代でも、作品を創りお客様に届けることを喜びにする人たちの物語。
 
鈴木勝吾さん演じる主人公“工藤春男”は、とても辛い過去を持つ役ですが、彼が演じるからこそ、辛さよりも、見つける希望が際立ってくる。彼の、演劇への、出会う仲間への、観客への愛情が生む光を、丸ごと受け取ってほしい。梅津瑞樹さんはクールビューティーの佇まいの内に、とびきり熱い演劇愛を持っているホットな人。その愛が、演劇的センスに昇華しています。
百名ヒロキさんは今回、純粋過ぎるほどに純粋な役を、痛いほど純粋に演じていて、彼の中に、揺れ動く俳優の日常を感じていただけると思います。周本絵梨香さんは、硬質な心を大きく揺らしながら、勇気のある強い女性、強いからこそ無理をして生き、壊れやすい女性を表現してくれています。
塚本幸男さんは、年齢を重ねた男の持つ経験の重みや、父性の持つ残酷さなどを感じさせて、とても魅力的です。そして、残念ながら降板された伊藤純奈さんから役を引き継いでくれた牧浦乙葵さんは、10代の少女のまっすぐな瞳で世界の美醜すべてを受け止める、難しい役を短い期間で実現してくれました。
森大輔さんの生演奏は、この作品の心です。彼が主人公の耳の中に届け続ける音楽の光は、きっとお客様にも大切な光になるはず。俳優と音楽家がお客様に届けるラストソングが素晴らしいのです。
鈴木:今歩いている道にはたくさんの石ころが転がっていて、良いものも悪いものもあって、不幸も幸せも、ドス黒いのもキラキラ輝くものもいっぱいあって、人は不幸を嘆くけれど、たまたま踏んでなかっただけ、石ころは等分に転がっていて、いつどうやってどの石ころにぶつかるか、わからない。
けれど、それでも何故人は生きていくのか、何故人は繋がりを求めるのか、幸せってどこにあるのか、希望ってどこにあるのか。そんな、人生のいろいろが転がっているような作品だと思うので、その辺りを感じてもらえたら。
梅津:ままならない現実の前に、それでも這いつくばるようにして生きていかねばならない苦悩や葛藤と、何処かにあるかもしれない救いの姿がシニカルかつ人間讃歌的に描かれている点です。
牧浦:森さんが生で演奏してくださる音楽です。私自身、音楽と共に生きてきて音楽の持つ壮大なエネルギーを信じているのですが、それが生のお芝居の中で、生で演奏される、綺麗な音が今生まれている。そのことがとても素敵だなと思います。
『ひりひりとひとり』のゲネプロの様子
百名:人間の持っている繊細さと激しさの功防、そしてそこに絡むいろいろな形をしている愛を見ていただきたいです。違った形でも誰もが感じたことのあるきっと大事な感情だと思います。時代が目まぐるしく動くこのとき、ご来場の皆様それぞれに気づきや、共感が生まれることを祈っています。
周本:この座組みでしかできない作品になっていると思います。すべての役が大きな役割を担い、それぞれの課題に奮闘しているので、群像劇のようにみんなを愛おしく思ってもらえるんじゃないかな。
塚本:見どころは、春男の中でいろいろなことが起きて、それを取り巻く仲間が春男を助けていくところだと思います。人は人の中で育っていくな〜とちょっと感じています。現在の若者が父の死を前に、どう考え、前に進んでいくのか。心の葛藤も見どころです。
森:主人公の工藤春男は、表向きは人とは違う性質や生い立ちを持つ人物ですが、彼の痛みや悩みというのは意外にも誰しも共感できることだったりします。ひりひりとした思いをひとり心の中に抱えていますが、それを劇場でたくさんの人と共感・共鳴できることがこの作品の醍醐味ではないでしょうか。
『ひりひりとひとり』のゲネプロの様子
ーーお客様へのメッセージをお願いします。
石丸:この作品は、演劇という芸術が苦しんでいたときに、劇場に足を運び、配信を観て、応援し支えてくださったお客様へのお礼状のような物語。ひりひりした物語なのに、ラストソングを聞き終わった後には、光と温もりをたくさん受け取っていただけるはずです。
鈴木:この時代に、しんどいこともたくさんあると思います。そのことは何も変えられないけれど、それでも懸命に生きている光を客席で見届けてほしい。もし何かにつまずくことがあるなら、ひとりだと思わないで。ひとりは変わらないけど、どこかで、こうやってずっと繋がっていけると思う。少なくとも僕はなんとか演劇で皆様に光をみせたい。ぜひぜひ劇場でお待ちしております。
梅津:ままならないことの多い現実を生きています。でも、どんなに辛いことがあっても、明日が来る以上僕たちは生きていかねばならず、また明日が来るということはそこに赦しを求めて然るべき。明日にはなくても、また明日、また次の明日へとさすらい続ける中で、いつしか本当に生きやすくなるかもしれない。この作品が、どこかの誰かの心を少しでも楽に出来れば。
牧浦:物語の中で春男と音楽家を結ぶ、りぼん。りぼんの存在がこの『ひりひりとひとり』という作品と観劇してくれる皆さんを結ぶ小さな欠片としていれるように。ただ繋ぐ。観てくれた人が、少しでもあったかくなってくれると嬉しいです。劇場でお待ちしています。
『ひりひりとひとり』のゲネプロの様子
百名:2年前に上演がわなかった出演者、観劇が叶わなかったお客様、そして今回出演が叶わなかった出演者もいます。自分ができることは、全ての思いを背負い、ご来場くださるお客様お一人おひとりとこの作品を共有できる奇跡に感謝しながら進むことです。真ん中に春男が居る『ひりひりとひとり』という世界、ひりひりしてます。ぜひ劇場で体感してください!
周本:皆様に観ていただいて初めてこの作品がどこに導かれるのか、わかるような気がしています。私たちはひとつの方向性に向かって進んでいますが、観客の皆様が最後のピースです。ひとりでも多くの方に劇場で観ていただけると嬉しいです。
塚本:コロナ禍の中、劇場に足を運んでいただくだけでも、本当、感謝いたします。まずそれが一番です。ありがとうございます。そして出演者・スタッフ全員で作り上げたこの作品をどうか楽しんでいただけたらと心より願います。ぜひ楽しんでくださいね!
森:工藤春男とという人物を、音楽を通してより深く感じていただけたら幸いです。彼の心情のみならず、そのときどきの空気の「匂い」のようなものをお届けできればと思っています。
『ひりひりとひとり』のゲネプロの様子

あらすじはこうだ。
ひとりの俳優をめぐる物語。
ひとは向き合う、自分に、他人に、世界に。
ひとは向き合う、過去に、未来に、今に。
たくさんのひとりが、ひりひりと今日を重ねていく。世界はまだ見ぬ明日へ。
工藤春男(鈴木勝吾)は、父の家庭内暴力、それを苦に家族を捨てる母といった、愛情に恵まれない家庭に育った。思春期には烈しい統合失調症の症状とともに暮らしていたが、家を出ること、詩を書くこと、演劇と出会うことで、心は落ち着きを見せ、持ち前の表現力や独創性が評価されはじめていた。
所属する劇団の公演、チェーホフの『かもめ』で、トレープレフをキャスティングされた春男は、いつものように稽古をし、いつものように仲間と過ごしていたが、実家で父が孤独死したという報せが入る。

『ひりひりとひとり』のゲネプロの様子
父という、自分の記憶からすでに消していた深い憎悪の対象の死を、どうして受け容れればよいか分からない春男。心はどんどん過去に遡り、思春期に自分で生み出した珍妙な別人格、ぴーちゃん(梅津瑞樹)と西郷さん(塚本幸男)の2人が現れる。耳の中でずっと聞こえていた雑音はボリュームを増し、やがて新たな幻覚、りぼん(牧浦乙葵)まで登場して……。
春男が突然稽古を休んだ日、恋人でもある伊達夏子(周本絵梨香)は、心落ち着かぬまま稽古場にいた。Wキャストでトレープレフをキャスティングされた親友の玉木賢(百名ヒロキ)は、芝居の最後に突然、セリフが喋れなくなり、夏子の胸に生まれた「ざわざわ」は止まらない。
東京に戻ってきた「ちりちり」した春男と、なんとかつながろうとする夏子と賢。春男はやがて、二人とともに、生まれ育った街に向け「ひりひり」した旅に出る。どこか遠いところで幻聴のように鳴り続ける音楽とともに。それは3人それぞれが、自分と向き合う旅でもあったーー。
 
6人の俳優とひとりの音楽家が絡み合い、ひりひりとした物語を軽妙な笑いと、軽やかな身体、豊かな音楽と共に語っていく。上演時間は約2時間30分(途中休憩を含む)。お見逃しなく!
『ひりひりとひとり』のゲネプロの様子
取材・文・撮影=五月女菜穂

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