ジミー・ロジャースなくして
アメリカのポピュラー音楽は
ここまで育たなかったと、
聴けば聴くほど確信!

黒人音楽をバックグラウンドにした
米国初のシンガーソングライター

ジミー・ロジャースを“カントリー音楽の父“とするのに異存はありませんが、それだけにとどまらない広い音楽性の持ち主であったことは、本稿で取り上げている25曲を聴くだけでも納得いただけると思います。先述のカーター・ファミリーが主に英国やアイルランドに由来し、南部アパラチア山系に伝播した民謡(フォークソング)やゴスペル(教会音楽)をベースとした音楽をレパートリーとしたのに対し、ロジャースは放浪時代に見聞きした演芸(ボードヴィル・ショー、ミンストレル、メディシン・ショー)の音楽、ニューオリンズで暮らしていた時期に見聞きしたアフリカ系移民など、要するに黒人たちの奏でる音楽をベースとしたオリジナルソングを披露したのです。

現在でもカントリーからフォーク、ロックまで、多くのアーティストにカバーされている「Waiting For a Train」、マリア・マルダーが70年代にリバイバルヒットさせた「Any Old Time」、ウディ・ガスリーやボブ・ディラン、ブルーグラスのアーティストにも頻繁にカバーされている「Mule Skinner Blues」、サッチモことルイ・アームストロングと共演した初期ジャズの香りただよう「Standing On The Corner:Blue Yodel No.9」、エミルー・ハリスがカバーした哀愁のメロディーが美しい「Miss the Mississippi and You」など。今ならアメリカンルーツと言われたりするポピュラー音楽の骨になるような音楽、現代でも十分に通用するような音楽が、彼の手によってこの時代にすでに作られていたというその引き出しの多さ、多様な音楽をミックスさせるセンスには感心するばかり。本当に、彼なくしてハンク・ウィリアムスもエルヴィスも、ディランもスプリングスティーンも、ベックも登場しなかったのではないかと、思えてくるのです。
※そのボブ・ディランは1997年に自身が起こしたレーベルEgyptian Recordsから、『The Songs Of Jimmie Rodgers A Tribute』というアルバムをリリースしています。ディラン本人のほか、ジョン・メレンキャンプ、ヴァン・モリソン、アリソン・クラウス、アーロン・ネヴィル、ウィリー・ネルソン、ジェリー・ガルシア、アイリス・ディメント、他からなる、実にロジャース愛あふれるコンピレーションです。

OKMusic編集部

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